宴会などの終わりに集まった人全員でおこなう「手締め」は、なんだか一体感が出る風習という印象です。
これまでバラバラだった人たちが、手締めを通して団結する感じです。
宴もたけなわで「皆さん、お手を拝借!いよ〜ぉ!」と声がかかると、一斉に手締めを始めます。
誰に習ったわけではないけれど、大人になると誰もがやり方を知っていますよね。
やり方は知っていても、趣旨に関してはよく知らない人もいます。
今回は手締めの意味やそれぞれの種類の特徴ややり方などを詳しくご紹介します。
手締めをするのはどんな意味をもつ?
各々が楽しんでいてバラバラだった印象の宴会も、手締めをすればみんながひとつになれます。
そもそもどうして手締めをするのか、理由や意味が知りたいところです。
手締めは手をパチンと打つ動作なので、別の呼び方には「手打ち」という呼び方があるのです。
趣旨は集まりを主催した人が、集まってくれたみんなに感謝すること。
「お手を拝借」はみんなを集めている人がおこない、ゲストが手打ちに参加することで集まりの成功を意味します。
会社などでは大きい商談が決まった時や、決起集会などでも良くおこなわれます。
何か良いことが起きた時や、目標が達成された時などにおこなわれる縁起の良い風習です。
種類もさまざまなバリエーションがあり、手打ちの数が異なります。
やり終わってから拍手という流れと思われがちですが、場合によってはおこなわないこともあるのです。
シーンごとに使い分けることが多く、さまざまな手締めを知っておけば素早く対応できますね。
手締めをする際の注意点とは?
集まりの成功など、主にうれしい時におこなわれる手締め。
盛り上がっている時におこなうことだからこそ、注意点もあるのです。
手打ちをおこなう様子を見てみると、中には集まりにきてくれた人に手締めを頼むことがあります。
集まりにきてくれた人に手締めを求めることは、とても失礼に値するのです。
あくまで「主催者が集まってくれた人たちに感謝を伝えるため」におこなうものなので、来賓に手打ちを求めるのは意味を正しく理解していない証拠です。
多くの人は手締めの意味を「みんなで集まりの締めをして盛り上がること」だと意味を履き違えています。
開催している側以外の人がするのは、本来の意味と違うものになるのです。
正しく意味を把握するためにも、全員が「なぜ手締めをするのか」を理解しておくと良いですね。
意味の他にも、掛け声で注意すべきことを挙げていきます。
最初の掛け声は「いよ〜ぉ!」ですが、細かいところで「よぉ〜!」ではないのはなぜでしょう。
実は「いよ〜ぉ!」の掛け声は「祝おう」からきているものなので、ただの「よぉ〜!」はふさわしくないのです。
掛け声をかけるときには「い」を強調して、大きな声を出しましょう。
手締めの種類・一本締めについて
手締めの中でも身近な種類だと思います。
一本締めは「いよ〜ぉ!パン!」と、1回のみだと思っている人は結構多いのが特徴です。
一本締めとは「タタタン・タタタン・タタタンタン」というリズムの手打ちを1回おこなうことを表します。
「パン」と1回のみ手打ちをするのは一丁締めになるので、後の項目で説明していきますね。
まずは主催者が「お手を拝借」と手を開いてスタンバイの声かけをします。
その場にいる人たちがスタンバイできたら、主催者が「いよぉ〜!」と手打ちの音頭をとります。
みんなで「タタタン・タタタン・タタタンタン」と手を打って、最後に「ありがとうございました」と拍手をしたら完了です。
「タタタン」の三拍手だけでなく、最後に「タタタンタン」と一拍手追加する理由を見ていきましょう。
三拍手を3回おこなうと、全部で拍手をする回数は9回。
9という数字は昔から「苦しみ」を連想させるため、避けられてきたのです。
合計の拍手回数が9にならないように、最後の1回を「タタタンタン」と変則リズムにして追加しました。
9を避けるだけでなく、追加をすると「九」に点がつき「丸」になります。
集まりや物事が「丸く収まる」という良い意味になるため、主催者の感謝の気持ちが込められている趣旨にぴったりマッチしているのです。
一本締めは三本締めを略したものなので、時間を割けないときに多く使われます。
手締めの基本・三本締め
披露宴といった、かしこまっためでたい席でおこなう機会がほとんどの三本締め。
手締めの中でも最も長く、正式な形なのが特徴です。
「タタタン・タタタン・タタタンタン」の一本締めリズムを三回繰り返すのが特徴ですが、繰り返す際に間に「よっ!」「もう一丁!」といった掛け声を入れます。
非常に盛り上がるやり方で主催者側の感謝の気持ちと、気持ちに応える来賓側の一体感を得られる方法でしょう。
終わったら、拍手をして「ありがとうございました」の挨拶で終えるのがおすすめです。
三本締めでの掛け声は全て主催者側がおこなうので、来賓に頼むのは厳禁。
場の空気が盛り上がると、来賓側から「掛け声やりますか?」などと言われることも。
意味を相手に説明し、丁重にお断りすることも大切です。
「手締めというのは主催した人間が皆さんに感謝の気持ちを伝えるものですから。
どうぞ皆さんは感謝の気持ちを受け止めていただければと思います」
説明とともに感謝の気持ちを伝えるために、三本締めをおこなう前に口頭で説明する方法もおすすめです。
手締めの種類・一丁締めについて
一本締めと間違えられやすく、実は名称を知っている人も少ないのが「一丁締め」。
東京付近では「関東一本締め」で名前が通っているので、わかりにくいんです。
手打ちの音頭をとるまでは、一般的な一本締めや三本締めとやり方は同じです。
やり方は「いよ〜ぉ!」と掛け声をかけたら、全員で息を合わせて1回のみ「タン!」と手を叩くだけ。
手打ちをした後の恒例である「ありがとうございました」や拍手も特におこないません。
とてもシンプルで、簡単なやり方です。
時間が限られている、長い時間は取られたくないといった場合、会場で大声が出せないなどの理由で一丁締めが活用されます。
最も周りに迷惑もかけず、すぐに終わるので会社の集まりなどでの活用がポピュラーですね。
一方でかしこまった席では、一丁締めは適しません。
由来は、江戸っ子は短気だったので長ったらしい挨拶などを嫌う傾向にあったのです。
そこで手順を短くしてしまおうと考えられたのが、一丁締めでした。
手締めの種類・一つ目上がりについて
こんなやり方があったとは!と思うような、ユニークかつ楽しいものもあったのです。
「一つ目上がり」という方法で、流れとしては三本締めとほぼ同じです。
一つ目上がりは三本締めと違い拍手を全部で5回、手の叩き方が特徴的です。
手の叩き方ですが1回目の「タタタン・タタタン・タタタンタン」は、人差し指のみで叩くのです。
2回目は中指を増やして二本の指で叩き、3回目は薬指をさらに増やして三本の指でおこないます。
4回目は小指を増やして四本指で手を叩き、最後の5回目で手のひらで叩くという形です。
どんどん指を増やしていく様が末広がりを連想させて、縁起が良いといわれています。
あまり馴染みのないやり方ですが、一つ目上がりもやってみたくなりますね。
手締めをおこなう前の挨拶とは?
手を叩く前におこなう挨拶ですが、結構大切な意味を持っています。
中には手締めを知らない人もいるため、相手に理解をしてもらうためにも必要なことなのです。
相手が手締めをどういったものなのかわかれば、円滑に進行できるのではないでしょうか。
具体的な挨拶のやり方について、見ていきましょう。
まずは手打ちをする目的について、軽く説明してください。
「会の締めとしまして、手締めをおこないたいと思います。
手締めは我々主催した者が集まってくれた皆さんに、そして会が滞りなくおこなわれたことに対して感謝を伝える意味があります」
前置きでしっかり説明しておくと安心ですね。
次に手打ちの流れについて説明していきましょう。
「今回は一本締めにて執り行いますので、よろしくお願いいたします。
私がいよ〜ぉ!と声をかけますのでタタタン、タタタン、タタタンタンと手を叩いてください」
わからない人のためにも、手打ちのやり方を簡単に説明すると流れがわかって安心ですね。
手締めの前の挨拶では、手打ちがみんな揃うように気を配りましょう。
まとめ
手締めの意味について一本締めや三本締め、一丁締めの特徴ややり方などを詳しく紹介してきました。
会などの集まりで主催者が集まった人たちに向けて、感謝の意味を込めておこなわれるものです。
三本締めが正式なスタイル、1回に略したのが一本締めでさらに手を叩くのを一回きりにした一丁締めがあります。
アレンジ系としては手を叩く際に指の数を増やしていく一つ目上がりというやり方もあるのです。
正しく趣旨を理解して、会の盛り上がりを残したままうまく締めていきたいですね。