大晦日から神社や寺院にお参りに行くといったら、おかしいと思われるでしょうか。
確かに初詣はお正月の昼間に行くものだというイメージがあるので、わざわざ大晦日に出かけることはないように思えます。
でも、現在は大晦日の深夜から元日にかけて、初詣を行う人も多くいますし、大晦日だから行われる儀式もあります。
今回は大晦日のお参りについて解説します。
大晦日のお参りに名前はあるのか、行くとしたら時間はいつ頃がよいのか、また東京や大阪など、地域によって違いはあるのか、などさまざま疑問を解消します。
なぜ大晦日の夜にお参りするの?起源の年籠りとは
昔、家長が歳神様をお迎えして、新たな年の幸せを願うために、大晦日の夜に氏神神社にこもる習慣がありました。
この習慣は年籠りと呼ばれ、元日の朝まで続くものでしたが、いつしか大晦日の夜の除夜詣と元日の朝に行う元日詣にわかれました。これが現在も行われている初詣の始まりですが、昔から初詣は大晦日の夜に始まっていたわけです。
私たちがお正月の昼間にお参りするのは、元日詣がもとになっていますが、年籠りをせずに元日詣だけをするようになったのは、明治の中頃のことだといわれています。意外に最近の話ですね。
今は普通に使われている初詣という名前も明治になってから登場しました。それまでは恵方参りという名前が広く使われていました。恵方はお正月にやって来る歳神様がいる縁起のよい方角で、自宅からその方角にある神社や寺院にお参りをしていました。方角に関係なく参拝客を呼べる初詣の方が、神社や寺院にとっては都合がよかったのかもしれませんね。
大晦日のお参りの名前!時間はいつ頃がよい?
現在初詣の時間に決まりはありません。
昔は、日が暮れると1日が終わって、次の日が始まると考えられていました。
つまり私たちの感覚では、まだ大晦日である12月31日の日没以降に新年が始まっていました。夕方からは新年になっていますから、初詣をするのに不都合はありません。
大晦日の午前0時をまたいで行う初詣には二年参りという名前がありますが、深夜で寒いのに多くの参拝客でにぎわう神社や寺院もたくさんあります。
寺院に出かけるなら、午前0時頃はちょうど除夜の鐘が鳴らされる時間です。除夜の鐘は日本の仏教の習慣です。寺院の鐘を鳴らすことで人間の煩悩(人の心の乱れや汚れ)を払うといわれ、煩悩の数と同じ108回鳴らされることが多いです。最近は騒音問題などで、鐘を鳴らさない寺院も増えていますから、近所の寺院で除夜の鐘が聞けるなら、ぜひ耳を傾けてみたいですね。
二年参りは、1950年代から増えてきたということですが、これは「ゆく年くる年(放送開始は1955年)」で深夜の神社や寺院に集まる人々の姿が全国放送されたおかげかもしれませんね。2年にまたがってお参りをするため、功徳も大きいといわれていますが、自宅で歳神様の到着を待ち、一緒にお雑煮を食べた後に出かけるのが本当の初詣だと昔からいわれていました。夜が苦手な人は無理をしなくてもよいですよ。
二年参りに出かけるなら、東京はココ!大阪は?
大晦日の深夜から多くの参拝客を集めるのが、東京なら明治神宮、大阪は住吉大社です。両方とも参拝客ランキングでは上位に入選する常連です。
明治神宮は大晦日の午前6時40分に開門してから、元日の19時頃まで参拝が可能ですが、住吉大社は大晦日の午前6時30分に開門してから、17時にいったん閉門するので、注意が必要です。その後22時に再び開門すると元日の22時まで参拝が可能です。このように場所によって、お参りできる時間帯が違いますから、出かけるなら事前に下調べてをしておくことが大切です。
地域によっては(大阪の人など)、二年参りなどは聞いたことがないという人もいますが、実際には東京でも大阪でも、大晦日から元旦の神社や寺院の混雑は半端ではありません。
わざわざ混雑が激しいとわかっている場所に出かけるよりは、自宅の近所で二年参りを行うように考えを変えるのも1つの方法です。今まで気が付かなかった地元のよいところが見つかるかもしれません。
現在、大晦日の深夜0時をはさんで元旦祭(元日は1月1日、元旦は1月1日の朝という意味があります)を行っている神社はとても多いので、自宅の近くの神社にお参りに行ってみると、昼間とは違った雰囲気が味わえます。
地元の人たちの協力により、大きなたき火で暖を取れたり、甘酒などを配ったりしている神社もあって、十分に楽しめます。日野市観光協会では、ホームページで地元の神社の元旦祭の様子を紹介しています。地元の神社で二年参りができるかどうかを調べてみてください。
神社と寺院はどちらに行く?いくつ行ってもよいの?
ところで、初詣には神社と寺院、どちらに行くべきかと迷う人もいることでしょう。
これはどちらに行ってもよいそうです。神社なら氏神様にまずお参りしてください。氏神様はその土地を守ってくれる神様のことです。地域の神社の氏子になっていることがわかっているなら、その神社が自分にとっての氏神様ですから、最初に初詣に出かけてください。地元で二年参りをするのは、理にかなっていますね。
寺院なら菩提寺に出かけましょう。菩提寺は、先祖代々の墓がある寺院のこと、または葬式や法事をお願いする寺院のことです。その寺院の檀家になっているなら、それが菩提寺です。
氏神様や菩提寺に初詣を済ませたら、後は自分の好きな神社や寺院に行っても大丈夫です。
初詣は1つの場所と決まっているわけではありません。
現在でも福岡市では三社参りという習慣が根付いています。
これは初詣に、3つの神社に出かけるというものです。会社などで親睦会のように三社参りが行われたり、自分で好きな神社をえらんでお参りしたりと、楽しい行事になっているようです。1年の始まりの初詣を、昔の人の恵方参りのように、自由な気持ちで楽しみましょう。
先ほど紹介した明治神宮には、清正井というパワースポットがあることで知られていますし、住吉大社ではたくさんの露店が出ていて活気を感じられます。神社や寺院には、それぞれ違った魅力があり、人を引きつける気が漂っているものですから、いろいろと出かけてみてください。
大晦日のお参り!年越しの大祓!
大晦日にお参りに行くなら、ぜひ参加して欲しい儀式があります。
人間の心に知らない間につく罪や過ちなどの汚れを落として、本来の姿に戻すための儀式で、大祓といいます。
多くの神社では夏と冬の年2回行われます。冬に行われるのが年越しの大祓で大晦日の夕方頃から行われることが多いです(夏は夏越の祓といいます)。
年越しの大祓では、形代と呼ばれる紙の人形に、罪や過ちを移して神社でお祓いを受けるのが一般的です。自分の名前や年齢を書いた紙の人形に息を吹きかけ、体をなでることで罪や過ちを移せると考えられています。
先ほど紹介した明治神宮や住吉大社でも、年越しの大祓を行っています。初詣とは趣旨が違いますが、心身がすっきりとリセットされていれば、よい状態で初詣ができそうですね。
お参りで気を付けたいこととは?
大晦日からお正月にかけて、神社や寺院に出かける人には気を付けて欲しいことがあります。
まずは、服装です。冬が寒いことは誰でも知っていますが、深夜になるにつれて、思ったよりも寒さが厳しくなるので、防寒対策を万全にしてください。暖かなコートを着るだけでなく、マフラーに手袋、帽子なども忘れないようにしましょう。カイロを肌着に貼っておくのもよいですね。
そして防寒対策とは相反するようですが、神様や仏様にごあいさつをするわけですから、恥ずかしくない服装を心がけることも大切です。
混雑する神社や寺院でお参りをする場合、お参りをしたい人が行列になっていることがありますが、列の脇からお参りをしても大丈夫だそうです。参拝整理をしている場合は、その指示に従ったほうがよいですが、そうでない場合は列の脇からお参りをした方が、時間短縮ができて、疲れないで済みますね。
この脇からお参りは、神社庁でも推奨されていますし、神社でも立て札などで案内している場合がありますから、安心して行ってください。
また、願い事は1つにした方がよいそうです。何事も欲張り過ぎはいけません。願い事をするだけでなく、新年を迎えることができた感謝の気持ちを神様や仏様に伝えるのを忘れないでください。
まとめ
今回は大晦日のお参りについて解説しました。
大晦日の夕方からは、昔の感覚では新年になっていたため、今でも大晦日の夜にお参りをするのは決しておかしなことではありません。
また年越しの大祓についても紹介しました。大晦日に心をリセットしてから、初詣に出かけるのもよいですね。
こんなに長い間、私たちは年があらたまるときには、神社や寺院にお参りをしてきました。
これはやはり意味のあることだから、続いているのでしょう。大祓で心をリセットするのは、ストレスがたまりやすい現代でも合理的なことですから、ぜひやってみたいですね。
新たな気持で1年を過ごすためにも、大晦日からお参りすることを考えてみましょう。
そのときには、最後に紹介した注意点を参考にしてください。せっかく行ったお参りでカゼをひいて帰ってくることがないように、注意してくださいね。