夏蜜柑(なつみかん)という果物をご存じでしょうか?店頭で見掛けることが多いと思いますが、味が想像できずに手に取らないという人もいるかも知れません。
酸味が強いから苦手意識を感じている人もいるでしょう。そんな夏みかんですが、レシピや保存方法でより美味しく食べることができるのです。
ここでは、夏みかんとはどんな果物なのか?美味しく食べる方法は?などを詳しくご紹介します。
夏みかんってどんな果物?
夏蜜柑とは、ミカン科のミカン属に属する柑橘系の果物です。夏柑(なつかん)や夏橙(なつだいだい)とも呼ばれています。
江戸時代に黒潮に乗り漂着した文旦系の実から採れた種を、栽培したのが日本での夏みかんの起源です。
当時は、山口県の萩市で多く栽培されていて、現在でもそれらの夏みかんの木が残っています。
本来の名は「夏代々(なつだいだい)」でしたが、明治時代に大阪の商人により「夏蜜柑」へと改められました。
夏みかんの季節は?いつ収穫するもの?
夏みかんは、5月頃から花が咲きます。白くて小さい花です。この花が咲くと一ヶ月ほどで実となります。6月頃には緑色の小さな実となってきます。最初は、葉に隠れて見えないほど小さなものですが、徐々に大きく成長していきます。実が小さいうちに「摘果」と呼ばれる、いわゆる「間引き」をすると、形の揃った美味しい果実ができると言われていますが、個人家庭で育てている人は摘果をしない場合も多いものです。たくさん水やりをすると、酸味の少ない瑞々しい美味しい果実となりますが、手間を掛けたくない人は雨任せでも問題ありません。
夏みかんの実は、晩秋に色付き始めますが、色付いたばかりの頃は非常に酸味が強く食べ辛いものです。越冬をし、初夏になると酸味が減って来ますが、あまり長いこと放置をして置くと果実の瑞々しさは失われていきます。夏みかんは他の果実とは異なり、すぐに熟れて実が落ちるという事が少ないものです。長期間実を付けていても熟れ過ぎたり、腐ることが無いのです。それが故に、なかなか収穫のタイミングが掴めず、放置しがちになりますが、春を過ぎてしまうと酸味は減るものの、おいしく食べられなくなってしまいます。
一番程良く食べられる季節は、年明け~春先頃です。まだまだ酸味は強めですが、遅くとも花が咲く5月前までには全ての収穫を終えると次の果実がスムーズに実ります。寒い時期に実を付けたままだと樹に負担が掛かるとも言われていますので、年明け~2月頃には収穫し、追熟をさせて食べると良いでしょう。
蜜柑は一般的に寒い時期に食べられていますが、夏みかんは追熟させ春~初夏の季節にかけて食べることができる貴重な柑橘類です。
夏みかんのオススメレシピ
夏みかんは酸味の多い果実です。そのまま食べることもありますし、グレープフルーツのようにサラダに入れたり、ジャムやジュースなどのように加工して使われることも有ります。皮が厚いのも特徴で、丸ごと使える捨てる所のない果実です。
夏みかんのレシピは多く存在し、単純に果実を取り出し砂糖をまぶしたりハチミツを掛けてそのまま食べるものから、皮を使ったマーマレードまで多様です。マーマレードにしておけば、そのまま食べることも、料理に使う事もできます。
ここでは、夏みかんマーマレードと、サラダに使える夏みかんの果汁ドレッシング、夏蜜柑酒のレシピをご紹介します。
【夏みかんドレッシングのレシピ】
<材料>
- 夏みかん…2個~
- 醤油…大さじ1
- 塩…少々
- オリーブオイル…大さじ2
- 黒コショウをお好みで(無くてもOK)
<作り方>
- 夏みかんを切り、果汁を絞ります。種が入った場合は取り除いておきます。
- 厚手のキッチンペーパーなどで果汁を漉しておくとさらに美味しくなります。
- 材料を全て混ぜて完成です。塩気が足りない場合は、お好みで塩を追加しましょう。
【夏みかんマーマレード】
<材料>
- 夏みかん…好きなだけ
- 砂糖…夏みかんの重さの60%
<作り方>
- 夏みかんは良く洗い四等分に切り、皮を剥きます。
- 皮を鍋に入れひたひたに水を入れ火に掛けます。沸騰したら火を中火にし、約15分×2回茹でこぼします。茹でている間に夏みかんの果実を剥きます。
- 薄皮を剥き、薄皮、果実、種で分けておきます。種と薄皮はお茶パックに入れ取っておきます。各一袋分だけ取って置き、あとは破棄して構いません。
- 皮を茹でたら、一旦湯を切り、一枚ずつ白いワタ部分をスプーンでこそげ落とします。ワタの部分は苦いため、なるべく綺麗に取り除きます。この時、取り除いたワタも、お茶パックに入れ、一袋分だけ取っておきましょう。
- ワタを取り除いた皮は、包丁で薄切りにし、再度15分×3回茹でこぼします。茹でこぼした皮は、その後3時間水にさらします。(この時、1時間に一度水を変えます)
- 3時間水にさらした後、皮の水気を絞り、剥いてある果実と合わせ重さを測ります。この時の重さの60%の砂糖を用意し鍋の中で皮と果実にまぶします。それをそのまま中火に掛け、砂糖が溶けたらお茶パックの種、薄皮、ワタを入れます。20分程煮たら、お茶パックの種、薄皮、ワタは取り除きます。更に30分程焦げ付かないように煮詰めて出来上がりです。
瓶で保存する場合は、密閉できる瓶を煮沸消毒しておきましょう。
【夏蜜柑酒】
<材料:大瓶用>
- 夏みかん…10個
- 氷砂糖…500g~1㎏
- ホワイトリカー…1.8ℓ
<作り方>
- 夏みかんは良く洗い、皮を剥きます。
- 3個分の皮は茹で、水に3時間ほど浸して渋味を抜きます。その後、スプーンでワタを取っておきます。
- 果肉は3~4枚に輪切りスライスをして種を取り除いておきます。
- 瓶に夏みかん、氷砂糖、皮、ホワイトリカーを入れ密閉保存します。
- 一週間後に皮を取り除きます。
- 一か月後に実を取り出します。取り出した果肉は鍋に入れ、クエン酸を入れて沸騰する直前まで煮て一日寝かせます。薄皮が柔らかくなったら砂糖を追加すると美味しく食べられます。
皮や果肉を取り出す際は、消毒済の箸やトングを使用します。苦みが苦手な人は、皮を入れなくても良いですし、皮の量を減らす等調整しても美味しくいただけます。
保存瓶も消毒が必要です。鍋に入らない大きな瓶の場合、ホワイトリカーを含ませたキッチンペーパーで内側をまんべんなく拭いて消毒をしておきます。
酸っぱい夏みかんの美味しい食べ方は?
夏みかんは基本的に酸味が強めです。特に個人宅で収穫したものは、非常に酸味が強いため、食べ方に困った挙句、破棄してしまう事もあるでしょう。そんな勿体無いことを避けるため、酸っぱい夏蜜柑の美味しい食べ方をご紹介します。
夏みかんは、収穫してから追熟をさせると酸味が抜け食べやすくなります。夏みかんを収穫してから一ヶ月ほど追熟をすると食べやすくなり良いでしょう。ビニール袋や段ボールに入れて冷暗所に置いておきます。この時、果実同士が重なってしまうと、上の重みで下のものが傷んでしまいます。なるべく重ならないようにしましょう。どうしても重なってしまう場合には、毎日天地返しを行います。
追熟をしても酸味が強い場合には、剥いた果肉を皿に置きグラニュー糖をまぶして冷やします。そのまま食べても、ヨーグルトなどに入れる食べ方をしても美味しくいただけます。
夏みかんの選び方や保存方法は?
スーパーマーケットや八百屋に並んでいる夏みかんの中で、より美味しいものを選ぼうとする場合、どんなポイントに気を付けて見れば良いのでしょうか?
美味しい夏みかんの選び方は難しいものですが、色が濃くムラがない、表面が凸凹せずなめらか、ヘタはなるべく青いものを選ぶと比較的美味しいものに巡り合えます。持った時により重いものの方が、水分が多く瑞々しいものになります。
夏みかんを保存する場合は、直射日光が当たらない冷暗所に置きます。冷蔵庫で保存する家庭も多いかも知れませんが、冷蔵庫に長期間入れておくと水分が乾燥してしまい、パサパサして苦みも出てきてしまいます。部屋が暑くなる場合には、夏みかん全体をラップで包み野菜室に入れておきましょう。箱などに入れて保存する場合は、外気に触れないように隙間は塞ぎます。
まとめ
夏みかんは酸味の強い果物です。冬から春にかけて収穫でき、追熟をすることで酸味が減り美味しく食べられるようになります。自宅の庭に地植えをして育てているところも多く、収穫して自分好みの料理法などを楽しんでいる人もいます。マーマレードやジャム、夏蜜柑酒などにすれば、比較的長期間保存できるため、楽しむ期間も長くなりますし、知人や友人にお裾分けをしても喜ばれます。味の良くない夏みかんでも、皮まで使うことができます。夏蜜柑の皮を干してお風呂に入れたりすることもあり、数々の楽しみ方があります。
もし、夏みかんを見掛けたら、手に取ってみても良いかも知れませんね。