『杏子』って何て読むか知っていますか?『杏子』の特徴や効能をご紹介するとともに、『あんず』と『杏仁豆腐』とは同じ『杏』がつくけれど、どんな関係があるのか、あんずの特徴や効能についてご紹介します。また、『あんず油』って一体何?という疑問も一緒に解消していきましょう。
『杏子』は何と読む?どんな植物?
『杏子』を何と読むか知っていますか?名前でも使われることの多い漢字ですが、『あんず』と読みます。『杏』でも『あんず』とよみます。『あんず』とは、バラ科サクラ属の落葉樹で、梅やすもも、アーモンドと近い種類です。また、比較的寒さに強いため、涼しい地域でも栽培しています。原産地は中国で、いつ中国から日本に伝わったのかその時期は不明ですが、万葉集や古今集にカラモモ、カラヒト、『加良毛毛』(からもも)として登場しています。アプリコットともよばれています。
日本では、青森県と長野県が産地でこの2つの県で日本の生産量の90%以上を占めていて、長野県千曲市にはあんずの里という花見や収穫体験、あんずの加工品を楽しめる観光地もあります。熊本県にはあんずの丘という体験型施設があります。
あんずの花は、桜よりも少し前の3月下旬から4月にかけてうすいピンクの小さなかわいらしい花が咲きます。そして6月字下旬から7月上旬に梅に似た実がつきます。実は、そのまま食べるほかは、ジャムやドライフルーツにして食べられることが多いですね。
あんずの実は、伝来したルートにより品種が異なり、ヨーロッパに伝来した品種は甘いものが多く、日本などのアジアに伝わっている品種は酸味が強いものが多いです。私たちが普段食べているあんずは酸味が強いタイプです。実には、カロテンがずば抜けて多く含まれています。また、あんずの酸味の主な成分がクエン酸やリンゴ酸のなので疲労回復や貧血予防に効果があるといわれています。
あんずの種も利用されていて、種に含まれる『杏仁(きょうにん)』には、アミグダリンが含まれていて咳止めなどの効能もあり古くから漢方でも使われています。しかし、青酸配糖体なので生の種を摂取するのは危険です。また、漢方に使われる『 苦杏仁(くきょうにん)』と中華料理に使われる『甜杏仁(てんきょうにん)』があります。同じ種から苦いものと甘みのある(甜)ものがとれるなんてなんだか不思議ですね。
あんずの果実の頂き方と効能
あんずの果実には、どのような頂き方があるのか、種類や効能についてご紹介します。
あんずには、原産国の中国からヨーロッパに伝わり甘みが強い西洋系とアジアに伝わり酸味が強い東洋系に大きく分けられ、それぞれの系統にいろいろな品種があり酸味も違うことから、品種によって適した食べ方があります。
生食に適しているのは、甘みの強い西洋系ですね。品種は、ハーコット、おひさまコット、ニコニコット、ゴールドコット、幸福丸などです。
熟したあんずは、傷みやすくて日持ちがしないので、保存期間は冷蔵庫で2~3日を目安にしてください。購入するときは、全体がオレンジ色で、張りのあるものを選ぶようにしましょう。香りがするものは熟している証拠です。
次に、ジャムやドライフルーツに適しているのは、第1次世界大戦の終結を記念して名付けられた『平和』、山形3号、さつき、信陽です。酸味があるので煮たり干したりすることで出る甘みと酸味のバランスが良くなりますね。
シロップ漬けに適しているのは、果肉がしっかりとしているさつき、昭和(しょうわ)新潟大実、信月です。
その他に、あんずの実を発酵させてワインにしたり、アルコールに漬けてあんずのエキスを楽しむ杏露酒にする方法もあります。
果実の効能
いろいろな頂き方のあるあんずですが、実はうれしい効用がたくさんあります。
あんずにはβカロテンがたくさん含まれていて、このβカロテンは体の中ではビタミンA となって働きます。ビタミンAは抗酸化作用があるので、がんや老化の予防に効果ありです。また、あんずの酸味の主成分は、リンゴ酸やクエン酸などの有機酸で、これらの成分は疲労回復や鉄分の吸収をよくする働きがあり貧血予防や食欲増進にも効果があります。ドライフルーツのあんずには、干すことで生のあんずに比べて甘みが増えて果糖が多く含まれるので、吸収が早くすぐにエネルギーに変わり、疲れていているときの疲労回復剤としても効果があります。そのうえ、ビタミンAやミネラル、食物繊維も多く含まれていることから、便秘にも効果ありです。便秘気味のときに食べると便秘が解消したり、便秘予防にも使えます。漢方では、あんずの種を下剤として使用しています。
ところが、あんずのすごいところに、下剤として使用する反面、生のあんずを油で揚げて食べると下痢に効くといわれていて、反対の効果があるのに驚いてしまいますが、これはあんずが持っている整腸作用によるのです。
さらに、あんずの実には、体を温める作用があるので干したあんずを毎日2~3個食べると冷え性が改善するのです。食品なので、食べたとたんに冷え性が劇的に改善するというものではありませんが、続けて食べることで改善の効果はあります。
あんずの種と杏仁
あんずの種の中には仁といわれる白いものが1つあり、あんずの仁を『杏仁(きょうにん)』といいます。『杏仁』には、古くから漢方に使われていて苦みのある『苦杏仁』と甘く食品として摂取しやすい『甜杏仁(てんあんにん)』があります。漢方として使用する場合は『苦杏仁』で、食品として食べるのは『甜杏仁』です。
杏仁は乾燥させて使用することがほとんどですが、乾燥させた杏仁を粉にしたものを『杏仁霜』といい、漢方の他に薬膳料理に使われます。杏仁には若さの源といわれるステアリン酸、パルチミン酸、オレイン酸、リノール酸理、パルミトレイン酸などの不飽和脂肪酸を含んでいます。咳を沈める効果、痰を出す効果、利尿効果、喘息などの咳を抑える効果、呼吸困難、便秘治療に効果があります。ただ、杏仁には、青酸配糖体のアミグダリンが含まれているため、素人の安易な摂取は控えた方が良いです。
杏仁の薬効はとてもすごいのですが、大きな問題がありました。それは、なんといっても苦いのです。そこで、粉にしたり、ミルクで溶いたりシロップを使ったりしていたところから、杏仁豆腐が生まれました。
杏仁豆腐は、杏仁を刻んでも、杏仁を干して乾燥させたものを粉末にした杏仁霜を使っても作れます。杏仁霜を使うととても手軽に作れるのが良いところです。杏仁豆腐はもともと薬膳デザートだったのですが、そのおいしさから広まり、宮中料理にも採用されるほどの人気になりました。
杏仁豆腐は、薬膳デザートなので、使われる杏仁は『甜杏仁』で、これを牛乳と寒天で固めて冷やしたものをひし形にてシロップをかけていただくのが本来の中国式です。そうなんです、私たちが普段食べている日本の杏仁豆腐は少し違っていますね。杏仁豆腐にフルーツを盛り、そこにシロップをかけてフルーツポンチのようにしていただきますがこれは香港式の杏仁豆腐です。
いずれにしても、杏仁豆腐はあんずの種を利用したデザートで、咳やのどの渇きを沈めたりする薬膳としての効果があります。
あんず油とは
あんず油は何からできているのかというと、あんずの種の仁(杏仁)の油分をしぼったものです。漢方薬や薬膳が、杏仁を飲んだり食べたりするのに対して、あんず油は杏仁の油脂を使います。あんずの種の、40~50%が油脂で皮膚を柔らかくする効能があります。
日常での使用法としては、髪の毛に使うことが一般的です。使い方は、ヘアパック、オイルマッサージ、ヘアトリートメント、スタイリング、ドライヤー対策、日焼け対策です。
洗い流す使い方としては、シャンプー前にお湯で湿らせた髪になじませ、時間を置いた後にシャンプーでしっかり流すヘアパックとシャンプー前の乾いた頭皮に直接なじませて頭皮をマッサージするオイルマッサージがあります。
洗い流さない使い方としては、お風呂の後に髪全体になじませるトリートメントとしての使い方、スタイリングをする前にスタイリング剤の代わりに使ったり、ドライヤーの熱対策や紫外線対策に髪全体になじませる使い方もあります。
あんず油の効果で、髪がきしんだり熱で傷んだりするのを防いでくれます。髪というと椿油を思い出す方も多いかと思いますが、実はあんず油は、オイルなのに使用後さっぱりしていることとあんずのほのかな香りがすることで人気があります。ぜひ一度試してみてください。
まとめ
- 『杏子』とは、あんずとよみバラ科の落葉樹でした。
- あんずの実は、酸味があるため品種により生で食べるもの、ドライフルーツにするもの、シロップ漬けやジャムに適したものがあります。
- あんずの種は、苦杏仁と甜杏仁があり、漢方や薬膳料理に使われています。
- あんずの実も種も、咳を抑えたり、疲労回復、便秘予防、呼吸器系の不調を緩和など様々な効用がありました。
- 杏仁豆腐にはあんずの種に含まれる杏仁が、あんず油には同じくあんずの種に含まれる杏仁から作られています。
古くから効用を利用してきたあんずを日常生活の中で取り入れてみてはいかがでしょうか。