渋柿とは?
人々になじみの深い、秋の味覚の果物といえば柿ではないでしょうか?柿は、食物繊維やビタミンC・カリウムを含んだ果物ですが、特にビタミンCが豊富な果物です。ビタミンCには風邪やストレスなどの病気に対して抵抗力を発揮し、抗酸化作用により動脈硬化やがん・アンチエイジングにも有効であると言われています。
人の体にもうれしい効果の多い柿ですが、実際に柿を食べた時にとても苦さを感じ、「あ、これは渋柿だった…」と思わず顔をしかめてしまった経験はありませんか?
柿には大きく分類して「渋柿」と「甘柿」があり、渋を感じるのは「タンニン」という成分が含まれているからです。タンニンは水溶性の物質なのですが、私たちの唾液にも溶けるため、タンニンが残っている柿を食べると渋を感じます。
「渋柿」「甘柿」の種類には、種の部分が十分に実ると甘くなる「不完全甘柿」・種があろうがなかろうが渋がない「完全甘柿」・十分に実ると種のまわりの部分が甘くなる「不完全渋柿」・いつになっても渋がある「完全渋柿」があるのです。
渋柿には実が十分に実っても果肉が固いときは渋が残る柿のことをいい、代表的な品種には平核無柿(ひらたねなしがき)や刀根早生柿(とねわせかき)などがあります。甘柿は渋柿の突然変異種にあたり、実が熟すまでは渋があるものの、実が熟すにつれ渋が抜けて甘みがでた柿です。
「渋のある渋柿は食べられない」と勘違いしている人も多いのですが、渋柿はあらかじめきちんと渋抜きをすることで、おいしく食べられます。渋抜きとは、柿のにがみを感じるタンニンを変質させて、口の中で溶けないように不溶化させることです。
渋柿はどうやったら見分けられるの?
柿に限らずどの果物も見た目で「これは甘い」「これは甘くない」と見極めることはなかなかできませんが、柿を「渋柿」「甘柿」と見分ける目安がいくつかあります。
渋柿かどうか見分ける一つ目のポイントは、形。四角に近い形をしたもの・重みがずっしりと感じられるものは甘柿であることが多く、あまり丸みがなく細長い形をした先のとがったものは渋柿であることが多いようです。
二つ目のポイントは、柿を切ったときの実の様子。柿を切った時に実の部分にいくつもの黒い斑点を目にしたことがあると思いますが、実はこの黒い斑点はにがみが果肉に溶けずに固まったもの、いわゆる不溶性タンニンの固まりなのです。不溶性のタンニンのため、柿が口に入ってもにがみが溶けだすことがありません。
甘柿には黒い斑点があり、渋柿には黒い斑点がないため、柿を切ったときは必ず黒い斑点の有無を確認するとよいでしょう。
三つ目のポイントは、少しだけ柿の実をかじってみることです。目でみて確認できる形や黒い斑点の有無の場合は、渋柿を100%見分けることは不可能ですが、自分の味覚であれば確実に渋柿を見分けられますね。
渋柿の渋をとって甘くする方法(アルコールorりんご編)
手軽に早く渋を抜きたい人におすすめなのがアルコールを使う方法、もしくは、りんごを使う方法です。
アルコールで渋抜きを行う際には、ホワイトリカー・焼酎・ブランデー・ウイスキーなどアルコール分が35%以上あるものであればどのアルコールを使用してもOKなので、わざわざ用意しなくても自宅にあるもので大丈夫です。
まずは焼酎での渋抜きの方法をご紹介します。(用意するのは、ペンチ・焼酎・ビニール袋のみです。)
1.柿のヘタ部分をペンチなどで引っこ抜く。
2.ヘタをとった部分に焼酎をつける。(実の部分に焼酎がついた時には、キッチンペーパーなどでやさしくふき取ること)
3.ビニール袋に入れて封をして保存する。
4.ヘタの部分が緑色から茶色に変わったら、渋抜きの完成。
たったこれだけの簡単な作業で、渋柿の渋を抜けます。
次にりんごを使って渋を抜く方法です。りんごには、果物が熟すのを助ける効果を発揮するエチレンガスを発生させるのですが、エチレンガスの作用をうまく利用して渋を抜きます。用意するのは、柿5個に対してりんごを1個・ポリ袋・つまようじです。
1.柿とリンゴを5:1の割合で、同じポリ袋に入れる。
2.つまようじなどでポロ袋に適度に穴を開け、1週間ほどたてば渋抜きの完成。
りんごを使った渋抜きもアルコールを使った渋抜きも、とても手軽にかつ1週間程度ととても早く渋を抜くことが可能といえます。
渋柿の渋をとって甘くする方法(干し柿編)
「たくさんの柿をもらって一度に食べきれない」なんて人もいるでしょう。たくさんの柿を食べきれずにそのまま腐ってしまってはもったいないですよね。そんな人におすすめなのは、たくさんの柿を保存できるように天日に干す方法、いわゆる干し柿です。
干し柿で用意するものは、渋柿と縄・包丁・ピラー。干し柿にする方法はこちらです。
1.柿のへたを包丁で切り落としながら、へたの周りをぐるりと一周分をむく。
2.ピラーを使って柿の皮をむく。(柿のお尻の皮を5ミリ四方分はむかずに残しておく)
3.縄を1メートルくらいに切って、縄をひねり柿の枝ごとひっかけてつるす。
4.柿がお互いに重ならないように、5個くらいずつつける。
5.大きめの鍋にお湯を沸騰させたら、柿を縄ごと10秒ほどお湯につけて表面を殺菌する。(お湯で殺菌した柿を手でさわらないこと)
6.雨や日があたらない、風通しのよい場所に干す。
7.1週間位で表面が固くなってきたら、柿を少しもむ。(A)
8.3日に一度の割合で(A)の作業を繰り返して、2~3週間たてば干し柿の完成。
干し柿をつくるタイミングは、できるだけ晴れが続いているときに作業するのがベストといえます。また、枝が短くて縄に結べそうにない柿は割りばしなどを刺してつるすとOK。干し柿は、柿そのものではなくあえて干し柿の方を食べる人もいるほどです。
渋柿の渋をとって甘くする方法(ドライアイスor冷凍編)
最後にご紹介するのは、ドライアイスで渋を抜く方法。ドライアイスを使って甘くする場合、できあがりのシャリシャリ感があるので、柿の歯応えを残して味わいたい人向けのやり方です。
なぜドライアイスで渋が抜けるのか?それはドライアイスから発生する二酸化炭素の作用により、柿は呼吸ができなくなるのです。呼吸のできなくなった柿は、柿の内部でアセトアルデヒドができ、タンニンと結合します。アセトアルデヒドとタンニンが結合したことによりタンニンは不溶化し、渋を封じ込められるのです。
用意するものはドライアイスと渋柿・ポリ袋で、やり方は次のとおりです。
1.ドライアイスを新聞紙などで包んだら、渋柿と一緒にポリ袋に入れる。
2.ポリ袋の中の空気をしっかりと抜いて袋の口をしばる。
3.日陰に4~5日ほど寝かせたらできあがり。
ドライアイスと似た渋抜きのやり方として、渋柿を冷凍させる方法もあります。用意するものは、渋柿・ラップ・ピラーでやり方もとても簡単です。
1.渋柿のへたをとり、きれいに皮をむいたらラップでつつむ。
2.3~4日程度冷凍庫に入れれば、シャリシャリのおいしい柿のできあがり。
柿がシャーベットのような食感になっておいしい!とあえて、ドライアイスや冷凍にて渋を抜く人もいるようです。また、熟しすぎた柿はやわらかくなりすぎて捨ててしまう人もいますが、冷凍することによりシャーベット状の柿としておいしく食べることができます。まだ柿の冷凍を試したことのない人は、一度試してみるのもよいかもしれませんね。
まとめ
しぶみを感じた柿はそのまま処分してしまっていた人も多いのではないでしょうか?渋柿は、比較的簡単に渋を抜けることが分かりました。渋をぬいたら、甘くておいしい柿のできあがりです。これからの季節、干し柿・シャーベット柿・柿と自分の好きな食感を味わえる方法で渋抜きをして、秋の味覚をたっぷりと堪能してみてはいかがでしょう。