鮟鱇鍋と聞くと食べたことがない方でも、「美味しいもの」というイメージが湧くのではないでしょうか?
見た目がグロテスクであることで、その味わいに挑戦できないという人もいる鮟鱇。
鮟鱇はその生態の特徴から、どうしても吊るしてからさばかないとなりません。
鮟鱇解体ショーはただの観光客用のショーだと思っている人も多いかもしれませんが、実は理由があったのです。
こちらでは生態に迫りつつ、旬の時期に美味しくなる鮟鱇についての調理法なども交えながら、高級な魚である鮟鱇をご紹介していきます。
鮟鱇の名前の由来と食用の種類
鮟鱇と聞いて、その姿を瞬時に思い浮かべることができますか?
鮟鱇は海水魚で全長は1,5mにもなることで知られており、その形はしゃもじの様だとも言われています。
鮟鱇の名前の由来には諸説あるのですが、有名なのは暗愚魚(あんぐうお)という名前から来たという説。
暗愚とは愚かで動作がのろいという意味です。
見た目が大きく動きが鈍いことで、その様に呼ばれたことが、段々とあんこうという呼び名に変化したのだといいます。
次の説は安居(あんい)という名前が変化したという説。
この説は、じっとして動かない魚であることで付けられたということからだといいます。
鮟鱇は深海500mのところに生息している魚ですので、海中でじっとしていることが多いのでしょう。
たまに海面に上がってきては、餌を探す獰猛なところも。
魚にしては鋭い歯と、大きな口が特徴で、その凶暴さは鳥類を食べてしまうほどだとも言われているのです。
ただ江戸時代から鮟鱇の名前の由来ははっきりしていませんので、由来については全て推測ということになってしまいます。
鮟鱇はもともと関東、特に茨城県で捕れる魚でした。
現在でも茨城県近辺では、鮟鱇の解体ショーなどを行っているホテルもあるほど。
ですが最近は鮟鱇も様々な場所で捕れることで、鮟鱇料理は全国で食べられるようになりました。
生息エリアが広い鮟鱇ですが、細かくわけると12科67種類もの鮟鱇が日本海近郊にいると言われています。
ただしこれだけの種類がいても食用となる鮟鱇は少なく、アンコウとキアンコウ、ミドリフサンコウの3種類のみ。
しかも食べる事ができるのが、メスの鮟鱇だけであるということを覚えておきましょう。
日本では主に旬の時期に食用として食べる事ができる鮟鱇は、キアンコウ・アメリカアンコウ・ニシアンコウ・アンコウなどの名前のものです。
鮟鱇の解体ショーのきっかけと、七つ道具
鮟鱇の解体ショーと名のついた、観光名物が有名ですよね。
最近は「鮟鱇の吊るし切り」とも言い、名物にもなっていますが、実は見世物にしようとして始めたわけではなかったのです。
鮟鱇の体は85%が水分で作られているのが特徴で、触ると水っぽくぶよぶよとしています。
しかもぬめりが酷く、触るとツルツルと滑ってしまい上手く固定してさばくことができないというほど。
そのため鮟鱇を吊るして、中に水を入れるということを思いついたのです。
水を入れた鮟鱇はその重さで安定感が生まれ、さばきやすくなります。
それを吊るし切りをすることで、鮟鱇の体をまな板に押さえつけて切る必要がなくなりました。
観光客を呼び寄せるために解体ショーとして公開したのは、どうやら後で始めたイベントでありそうですね。
鮟鱇自体は吊るし切りをしないと、調理することすら難しいのです。
また鮟鱇が民衆に親しまれる理由としては、余すことなく食すことができるということにもあるでしょう。
もともと日本人は「勿体ない精神」が強い民族であるため、歯や骨などを除いた部分を全て食べる事ができる鮟鱇が注目されたともいえます。
まずは身とほほ肉を含んだ柳肉、胃の部分の水袋、肝臓であるキモ、卵巣であるヌノ、ヒレであるトモ、そして皮やヒレ。
これらの部位を合わせて、鮟鱇の七つ道具と呼ばれ、全て食すことができます。
また鮟鱇を選ぶ際に大事なことが、いかに日本北側で捕れたものであるかどうかということ。
鮟鱇は北に生息しているものの方が、より身が引き締まり美味しいと言われているのです。
産卵がはじまるのが春以降から初夏まで、終わった直後は鮟鱇を捕ることは禁止されてしまいます。
そして漁が開始されるの秋頃からではあるのですが、実際に鮟鱇が大量に獲れるのが年明けから。だからこそ、冬場の鮟鱇が旬だと言われているのですね。
実際の鮟鱇の相場よりも、茨城県の中でもより北側で捕れた鮟鱇は価格が高め。大きさや質にもよりますが、もしも初心者で鮟鱇を頂きたいと考えているのであれば茨城県の北側へ向かうのが正解かもしれません。
鮟鱇料理には栄養素がいっぱい!どんなレシピがあるの?
鮟鱇料理というと、やはり冬場の鍋ではないでしょうか。
鮟鱇はまさに捨てる所がない魚。
鍋にするとどこもここも美味しく頂け、体も温まるのです。
そんな鮟鱇には栄養素がたくさん詰まっていることでも知られています。
あれだけの量なのに身はたんぱく質も脂肪も少なく、食べ過ぎてもそこまで脂肪分を気にする必要はありません。
ビタミンに関してはビタミンB12やB1、E、水溶性であるビタミンAやDも多量に含んでいるのが特徴。
鮟鱇の七つ道具である肝には、鉄分や亜鉛も豊富に含んでいます。
鮟鱇の肝を食べると貧血に良いとされており、昔から女性が食べると良いと言われているといいます。
このようなことはすでに江戸時代には知られていた様で、五大珍味として有名だったのです。
五大珍味のあとの4つは、鯛・鶴・ヒバリ・バン。
これらをまとめて「三鳥二魚」と呼んでいました。
栄養素を豊富に含み、なにより全ての部分を食べる事ができる鮟鱇のレシピとはどの様なものがあるのでしょうか?
まずは有名な鮟鱇鍋、これは野菜や鮟鱇の身を醤油ベースや味噌ベースの汁で煮るというもの。
ただ鍋に入れ、火にかければ良いので比較的食べやすい料理の1つです。
この鮟鱇鍋よりも鮟鱇の味を堪能したいという方は、伝統的な料理の料理「どぶ汁」をおすすめします。
どぶ汁は鮟鱇の肝と味噌だけで味付けをし、水は入れません。
一緒に入れた野菜の水分だけで料理をするというもののため、濃厚な味わいを楽しむことができるのです。
身がたんぱくな味わいであるために、このような味付けも美味しいく頂けるのですね。
他には鮟鱇の唐揚げや、鮟鱇の肝ポン酢なども有名。
唐揚げは鮟鱇独特の風味が消え、お子様でも食べやすいかもしれません。
肝の部分には特に癖があるので、そのまま頂くよりはポン酢などで味を混ぜると良いでしょう。
鮟鱇は季語としても使われる食材!
鮟鱇は鍋料理の代表格でもありますし、冬のイメージが強い方も多いでしょう。
まさに俳句や詩などを作る時にも、鮟鱇は冬の季語として使われることが多いのです。
冬の時期に鍋をすることは全国共通でありましたが、具の材料は東西により違いました。
西の方では河豚が鍋のイメージとして定着していたのに対し、江戸では鮟鱇だったのです。
これはもちろん鮟鱇が茨城県で捕れる魚だったということも影響していますが、その他に江戸には幕府があったことも関係していると言われています。
江戸に幕府があるということは、当然関係者のお偉いひとたちも江戸に集まっていますよね。
そこでもしも河豚の毒に当たったらという不安を抱えるよりも、鮟鱇を食べるということを良しとしていたのだといいます。
ただこの説には諸説あり、西でたくさんとれる河豚を物理的に江戸に運ぶことができなかったのではという話もあります。
確かに保冷剤などがない時代では、毒のある河豚を鍋にするためにそのまま運ぶという事自体難しいのは容易に想像ができますね。
松尾芭蕉が鮟鱇を俳句では読めないほど高級魚?
季語として鮟鱇が使わられるようになったのは、江戸時代以降でしょうか。
実はかの有名な松尾芭蕉は旅先での俳句の中で、河豚という言葉を何度か使い俳句を詠んでいます。
このことが指す事実、それは河豚がこの当時、高級魚ではなかったということになります。
河豚には毒があったからか、江戸時代では要らない魚であったといいます。
漁師がかけた網の中に河豚がいると、その場で捨てられていたというほど。
その魚を庶民が食べるという構図が作られていたのです。
西の河豚と称されていたのは、もしかしたら最近の話であるか、または西の一般人が口にしていた魚ということなのかもしれません。
それに対し、松尾芭蕉は鮟鱇の俳句はつくっていないのです。
つまりいくら旬でも鮟鱇は、そう簡単に俳句が読めるほど出回っていなかったということになります。
だからこそ高級魚として、幕府や皇室に献上され愛されることになったのかもしれませんね。
まとめ
こちらでは冬が旬の鮟鱇について、生態や栄養、料理の仕方などについてまとめてきました。
鮟鱇がいかに無駄なく食べる事ができる魚であり、高級魚であることもわかりました。
寒い冬の時期には鮟鱇鍋はとても体が温まり、昔から人気があります。
まだ食べたことがないという方は、是非1度鮟鱇鍋を食べてみるのをおすすめします。