縁起のいい祝い魚の1つに「金目鯛」という魚がありますよね。
現在でも高級魚として取り扱われ、おめでたい日に金目鯛を食べるという人は多く居ます。
「金色の目をしている鯛」という名前であることから鯛の1種であると思われがちな金目鯛ですが、実は金目鯛は鯛とは違う種類の魚なんです。
それでは、どうして金目鯛は「鯛」と呼ばれているのでしょうか?
今回は高級魚「金目鯛」について徹底的に調査してきたので、その詳細をご紹介します。
金目鯛はどんな魚?名前の由来は?
金目鯛はキンメダイ目キンメダイ科の魚です。
金目鯛の名前の由来は見たとおり、「金色の目をした鯛」だから金目鯛と名付けられました。
ただ、「鯛」と名前にはついているものの、キンメダイ科、とあるように、実は金目鯛は「鯛」では
ありません。
鯛としては有名な「真鯛」や「甘鯛」はタイ科の魚なので、生物学上全く違う魚なんです。
鯛が海の水深150mから500mで生活しているのに対し、金目鯛は水深800m付近というかなり深い場所で生息している深海魚です。
金目鯛とよく間違える真鯛と比較してみましょう。
実は真鯛と金目鯛の見た目はかなり異なります。
真鯛が桜色に色づいた魚であるのに対し、金目鯛は朱色がかったかなり強い赤色の魚です。
また、金目鯛の特徴的な金色の大きな目は、真鯛とは全く異なります。真鯛は目は小さめで、黒目になっています。
それではなぜ金目鯛が「鯛」と呼ばれるようになったかと言えば、金目鯛は間違われる通り真鯛と同じく身体の色が赤色なので、鯛の代用品として食べられてきたことから、こう呼ばれています。
金目鯛は今は高級魚ですが、以前は関西ではあまり好まれなかったこともあり、むしろ安値で取引されていました。
それが、流通するにつれて美味しいと広まることになり、今の高級魚としての金目鯛があります。
金目鯛は様々な漁港で獲られていますが、金目鯛が高級魚となった立役者である、伊豆下田港が日本では漁獲量1位を誇っています。
その他には千葉県銚子市の金目鯛もよく流通しています。
伊豆下田港ではキンメ祭りなども行われているほど金目鯛が有名な港ですが、伊豆下田で穫れる金目鯛はサイズや質によって2000円から4000円で取引されます。
金目鯛は世界的に生息しているため、アメリカやチリからの輸入もあります。輸入ものの金目鯛でも1500円から4000円程度で取引されており、あまり値崩れしないことが金目鯛の特徴の1つです。
鯛と同じくらい今は高級魚なんですね。
昔から鯛はめでたい日に食べる縁起物の魚と言われてきた高級魚です。
「海老で鯛を釣る」なんてことわざがあるように、上等なものとして扱われるのが一般的ですよね。
それでは、なぜ鯛は縁起物と言われるようになったのでしょうか?
それは、鯛の身体が赤いことから、めでたい色で縁起が良いと言われていたからです。
なぜ赤はめでたい色なのかというと、古くから赤は「魔除けの色」として重宝されてきました。
例えば稲荷神社の赤い鳥居は、防腐剤としての効果のみならず、厄を遠ざけるために朱塗りにされていると言われています。
もちろん鯛の縁起の良さは色だけではありません。
鯛はとても寿命が長いんです。
20年ほど生きるのは普通で、長寿のものだと40年以上も生きる個体もいるくらいです。
魚にしては桁外れなくらい長生きですよね。
このことから、鯛は長寿を祈って食されることの多い食材でした。
ただ、金目鯛も負けてはいません。
身体も赤い上、金目鯛も寿命は14年と比較的長命です。
そして、なんと言っても金目鯛は古代魚。
実は金目鯛は1億年以上前から海に生息していたと言われる魚なんですよ。
金目鯛はどうして赤いの?
金目鯛の身体って結構派手な赤色ですよね。
はっきりとした朱色の身体は、どことなく金魚や鯉を彷彿とさせます。
それでは、なぜ金目鯛はあんなに鮮やかな赤色なのでしょうか?
金目鯛は深海魚なので、普段は水深800mのところに住んでいます。
海って青くて、深海に行けば行くほど深い青色になっていきますよね。
これは、海が太陽光を吸収していくから、海に通る光の色が変わっていくからなんです。
太陽光は白いイメージですが、その光の正体は、赤から紫までのさまざまな色の光が混ざったものです。
海水に通すと、波長の長い赤や黄色のような色は水の分子に吸収されていき、最終的に深海では青色や紫といった波長の短い光のみが残ります。
太陽光が白い場所での金目鯛は、赤色でとても目立つ色をしていますが、朱の色が入ってこない深海では、あの派手な色は青の光に照らされて黒色に変化します。
つまり、あの赤色は金目鯛が敵から身を守るための色なんです。
あんなに派手なのに、深海では一番目立たない色だなんて、面白いですね。
金目鯛の旬はいつ?
金目鯛は秋の味覚と言われていますが、旬は12月から2月です。
実は金目鯛自体は寿命も長く、一年中日本近辺に生息しているので、いつでも漁獲可能なので、旬という旬はありません。
強いて言えば産卵直後は金目鯛も体力を使い果たして栄養が枯渇しているので、この時期は避けたほうが良い程度です。
ただし、金目鯛には禁漁期間があるので、禁漁期間は金目鯛を食べることができません。
禁漁期間は6月から10月までです。
金目鯛の産卵時期は7月から10月なので、繁殖の妨げにならないための配慮でしょう。
どうして天然の金目鯛の繁殖に気を遣うかというと現在流通している金目鯛は基本的にどれも天然ものだからです。
既にその生態について研究が進み、養殖方法が確立されている鯛に対して、深海で生活している金目鯛はまだ生態の解明できていない部分が多く、現在は養殖方法がありません。
そのため、金目鯛は天然の恵みに頼らざるを得ないんです。
禁漁明けの解禁は10月ですが、10月の金目鯛は産卵を終えてすぐの状態である可能性が高いので、旬とは言えません。どうしても10月に食べたい!という場合は流通しているのでいち早く食べることはできます。
ですが、最も金目鯛が美味しいのは脂が乗り始めて、栄養をたくさん抱え込んでいる12月から2月なんです。
もし一番美味しい金目鯛を味わいたいと思われるのであれば、12月から2月に水揚げされる金目鯛を待ちましょう。
金目鯛を美味しく食べられる料理は?
金目鯛の最もメジャーな食べ方は煮付けです。
鯛があっさりとした薄く上品な味わいであることに対して、金目鯛は脂が多く乗っていて濃いコクのある味わいです。
しっかりとした味なので、煮付けによく合うんです。
最もよく食べられているのは甘辛く味付けをする煮付けですが、金目鯛は「くず煮」にしてもよく合います。
くず煮は植物の「葛」の粉を用いた煮付けで、上品な味付けと、とろみのある煮汁がポイントです。
元々金目鯛はしっかりとした濃い味なので、上品なくず煮にすると味が引き立ちます。
もちろん刺し身もとても美味しく、金目鯛は白身魚なのですが、新鮮なものを捌いてすぐは桜色に色づいていて、それが段々と白に変化していきます。
目でも楽しめるのは金目鯛ならではですね。
金目鯛は白身魚なので、こってりとした煮付けに使われることが多いですが、あっさりとした料理にも良く合います。
あっさりとした料理だと、酒蒸しが人気の料理になっています。
切り身を酒蒸しにして醤油をかけて食べると、金目鯛本来の美味しさとふっくらとした舌触りが癖になりますよ。
妊婦さんは金目鯛を食べてはいけないの?
縁起もよく、どんな料理にしても合うことで多くの人に愛されている金目鯛ですが、実は厚生労働省から「妊娠中に食べることが非推奨な魚」に指定されています。
それはなぜでしょうか。
金目鯛には多くの栄養素が含まれていますが、金目鯛に含まれる有害な物質として「水銀」があります。
水銀を身体に抱えているのは金目鯛だけではありません。マグロも水銀を含んでいるため、妊婦さんは一週間に80g以上摂取することは避けるべきとされています。
なぜ水銀なのでしょうか?
以前「水俣病」という神経症が、水俣市を中心に集団発症しました。
これは日本でも有名な公害病ですが、この原因は化学工場で発生したメチル水銀化合物を付近に生息しているエビや貝、魚が直接摂取したり、水銀を多く含んだ生き物を食べるなどして、身体に高濃度の水銀を溜め込み、それを人間が食べたことで神経器官に変調をきたした恐ろしい病気です。
重症化すると言語障害や聴力障害を引き起こしてしまう水銀による健康被害はこの集団発症で一躍有名になったのですが、金目鯛やマグロに含まれる水銀は、普通の大人が食べる分には健康被害が起こるような量ではありません。
しかし、妊婦さんは別です。
妊婦さんが摂取した場合、水銀は胎盤を通じて赤ちゃんにの身体に蓄積していきます。
ちいさな子どもと、大人の摂取可能な量は大きく違いますから、最悪の場合、生まれてくる子供に言語障害や運動障害などなんらかの先天的な障害を与える原因になる可能性があるんです。
ですので、妊娠はとてもめでたいことなのですが、妊婦さんは金目鯛を食べることは控えましょう。
まとめ
金目鯛は高級魚にふさわしくとても美味しい魚です。
ただ、名前とは異なり、金目鯛は鯛の仲間ではありません。
金目鯛は深海魚で生態もまだ多くは明らかにされていない神秘の魚でもあります。
また、その歴史は長く、一億年以上生きている古代魚の一種でもあります。
金目鯛を楽しむには煮付けや酒蒸し、刺し身など様々な楽しみ方があります。
縁起が良いおめでたい魚ではありますが、妊婦さんが食べると生まれてくる子供に悪影響を及ぼす可能性があるので、妊婦さんは食べるのを控えましょう。
とっても美味しく縁起の良い金目鯛、晴れの日にはぜひ食べてみてくださいね。