阪神地方で、家庭料理として食べられているくぎ煮。
このくぎ煮の材料となっているのが、新鮮な玉筋魚です。
いかなごと読む玉筋魚は付けられた名前の由来にも魅力があり、また玉筋魚と書かれた漢字にもしっかり意味があります。
あまり関東地方では目にしない玉筋魚という魚ですが、くぎ煮のレシピなどを知りぜひ自宅でその味わいを楽しんでみませんか?
また玉筋魚の生態などを知り、どこかで見つけたらぜひ注目してみましょう。
いつもとは違う魚の魅力に、気が付くかもしれません。
いかなごの生態を知ろう!
いかなごという魚を知っているでしょうか?
あまり耳なじみのない魚である、という方もいることでしょう。
いかなごとは海水に生息する魚であり、日本全国の海で見ることが出来ます。
ただ、そうはいっても冷たい水の海を好む傾向があるようで、関東地方などの比較的水が温かい地域や沖縄では見ないのも特徴です。
いかなごは12月の冬から、5月の春先までが産卵時期とされています。
この時期の開きは場所によるもので、寒い地域であればあるほど産卵が遅くなると言われているのです。
いかなご漁は解禁になる時期も決まっており、早い場所では産卵が終わった成魚の漁は1月前後に開始されています。
きちんと成魚が産卵をしたかどうかというところに着目し、翌年も漁が出来るようにとの配慮なのでしょう。
いかなごは成長が早いということもポイントで、産み落とされた時から1年で
13cmほどの大きさになることで知られています。
これは魚の成長として早い方であり、3年もすると20cmを超えるというから驚きですね。
全国の海に生息するとはいっても、主な産地は茨城県や兵庫県、三重県や愛知県。
もともといかなごは関西で名付けられたと言われている魚なので、関西側に多く生息していることがわかります。
関東では今も昔もいかなご自体が出回ることが少ないので、ピンと来ない方も多いはず。
もし、見かけても呼び方が違う場所も多く、宮城県などでは「メロウド」と呼ばれています。
北海道ではオオナゴと呼び、いかなごという呼び方が関西のものであるということがわかります。
いかなごの漢字の書き方と名付けられた意味
いかなごの呼び方に対する漢字とは、どのようなものなのでしょうか。
まずどうして、いかなごという名前が付いたのかということについてご説明しましょう。
瀬戸内海地方の方などは、いかなごを日常的に目にする方も多いはず。
ですが、なぜこのいかなごが、そもそも売られ始めたのでしょうか。
これは最初に見つけられた時、何の魚の稚魚であるかわからなかったという話が由来として残っています。
つまり、いかなごという魚を見つけた人は、今まで見たことのない魚の稚魚だったということになるのです。
その稚魚を見て「この魚はどの魚の稚魚なのか?」と聞いたところ、相手が「如何なる魚の子供、(つまり稚魚)なのでしょうか」と返答したことが始まりだとされているのです。
そのことから「いかなご」と略され、通称となったといいます。
これは読み方の由来ということになりますが、では漢字ではどう書くのでしょうか?
漢字では玉筋魚(いかなご)と書くのですが、これもまた不思議な漢字が当てられていますね。
この漢字を、そのままの意味で考えてみましょう。
これは玉筋魚が群れると玉のように見え、個体で見ると魚が筋の様に見える、そういう意味なのです。
いかなごは、確かにスタイルの良いシュっとした魚。
筋の様に見えたという感想からこの漢字が付けられたとしても、不思議はないのです。
いかなごとシラスは同じもの?違うもの?
玉筋魚(いかなご)の名前の由来は諸説ありますが、稚魚を見てどの魚の子であるかわからないという発言から玉筋魚とついたという話が有力でした。
その稚魚ですが、しらすとの違いはどのようなものなのでしょうか?
玉筋魚としらすが同じものだと思っていた、そんな方もいるかもしれません。
基本的にしらすは、鰯の稚魚のことを言います。
鰯と言っても細かく種類が分かれており、マイワシ、ウルメイワシなど一種類ではないのが特徴。
ただそれら全てをしらすと呼ぶのではなく、主にマイワシとカタクチイワシのことを指して、シラスと呼ぶのです。
ただ場所によっては小さいめの稚魚のことを、総称してシラスと呼ぶこともあります。
3cmをめどにして、それより小さい小魚をシラスと呼ぶとしているところでは、玉筋魚(いかなご)のことをシラスとして食べていることもあるのです。
ただそれは稀な例であり、実際には鰯の稚魚をシラスだとしていることを認識しておきましょう。
またちりめんじゃことは何なのかということですが、ちりめんじゃこもシラスです。
ただシラスを塩水で煮て、天日干ししたもののことを言います。
こちらでご説明したようにシラスとは玉筋魚(いかなご)を含んだ稚魚全般のことを呼ぶというわけではなく、基本的にはシラスの稚魚を呼ぶということが通常であるということを覚えておきましょう。
玉筋魚のくぎ煮とはどんな料理?
玉筋魚(いかなご)を使った定番の料理が、くぎ煮と呼ばれているものになります。
玉筋魚の稚魚のことを新子と呼ぶのですが、この新子を使った料理がくぎ煮なのです。
くぎ煮とは新鮮な玉筋魚の新子を、そのまま鍋で生姜や醤油、砂糖で煮詰めて出来たもののことを言います。
なぜくぎ煮という名前が付いたのかということですが、これは出来上がった煮詰まった新子の姿が釘に似ていることで付けられました。
確かに煮詰まったことで茶色く、小さくかたまるのです。
そんなくぎ煮ですが、実はとても鮮度を重視しないといけません。
だからこそ、漁を終えたら港にできるだけ急いで戻るということを、気を付けているのです。
そもそも玉筋魚のくぎ煮は、阪神などの地域を中心とした家庭料理だったのです。
自宅から醤油で煮詰める香りがすると人々がそろそろ春だと感じるほどだったというので、春の風物詩とも言えますね。
またくぎ煮の発祥の地として、長田という場所もあげられています。
この長田では何と昭和10年頃から食べられているもので、その歴史は古く長い間に味が洗練されて愛され続けてきたのでしょう。
玉筋魚のくぎ煮のレシピとは?
玉筋魚のくぎ煮は阪神地方などでは家庭料理として食べられていますが、それでは実際に作るとしたらどのようなレシピなのでしょうか?
玉筋魚のくぎ煮ですが、まずはできるだけ新鮮な玉筋魚を探します。
スーパーなどで、見つけることができることもあるでしょう。
そこで玉筋魚を、1kgのくぎ煮にすることを想定したレシピをご紹介します。
*くぎ煮に必要な調味料
・たまり醤油を50g
・醤油を150g
・みりん150g
・ざらめ250g
・酒50g
・生姜50g
・みりん150g
*くぎ煮のレシピ
①まずは玉筋魚を水でささっと洗ったら、ザルに上げておきます。
②生姜を皮ごと千切りにしてしまいます。
③鍋に生姜以外の調味料を全て入れ、火にかけて煮込みます。
④煮立ち始めたらその中に、玉筋魚をまんべんなくゆっくり回し入れてきます。
この時に玉筋魚がかたまってしまうのを防ぐため、ゆっくり入れるのがカギとなります。
⑤入れ終わったら鍋の中にある玉筋魚を避けながら、中心に火が通るように真ん中を開けていきます。その後生姜をまんべんなく入れましょう。
⑥アルミホイルに空気穴として、指1つ分くらいの穴を5個前後作っておきます。
それを落とし蓋として使い、煮たたせます。
➆一度拭きあがったら灰汁をとり、20分間強火で煮詰めます。煮汁が段々と減ってくるので、完全になくなるまで煮詰めましょう。
⑧出来上がり具合を見て良さそうだったら、火をとめ冷やします。
このレシピで重要なことは、玉筋魚をいじらないことです。
完成するまは玉筋魚を箸などで触らずにそのままにしましょう。
また、焦がしてしまうといけないので、鍋から離れないということも覚えておいてください。
まとめ
こちらでは玉筋魚の生態から、シラスとの違い、またくぎ煮のレシピまでをご紹介してきました。
玉筋魚は関西地方での家庭料理として知られているため、関東地方では馴染みがないということもわかりました。
ですが、そのくぎ煮の美味しさはとてもおいしく、お酒のおつまみなどでも人気があります。
もしもスーパーや港などで玉筋魚を見つけたら、できるだけ新鮮なうちに持ち帰りくぎ煮を作ってみてください。
今まで食べたことがない小魚の味わいを、楽しむことができるかもしれませんね。