日本人が部屋のインテリアを考える場合、ベッドや布団の向きが北枕にならないようにと気にすることがあります。
昔からの言い伝えで、なんとなく北枕にならないように意識している人や、北枕は良くないと信じている人が多いと思いますが、そもそも、なぜ北枕は縁起が悪いと言われるのでしょうか?
ここでは、そんな北枕についてを詳しくご紹介します。
北枕とはどういう状態をいうの?
北枕とは、その名の通り北側に頭を向けて、足を南側に向けて寝ることを指します。
北側に枕を置いて寝るからキタマクラと呼ばれているのでしょう。
日本では、遺体を安置する際に北側に頭を向けることから、「北枕は死人の寝かた」とされ、縁起の悪いイメージが持たれています。
なんとなく親や祖父母などの先人から「北枕で寝るのは良くない」「北枕は死人の寝かた」という様なことを日常的に聞かされて育っている人が多く、あまり深く意味を考えずに北枕は良くないものと感じている人も多いのです。
世界各国でその国独自のタブーが存在しますが、日本ではこの北枕もその一種といえるでしょう。
北枕がダメと言われる由来は?
北枕と聞くと、縁起が良くない、死人の寝かたという悪いイメージがありますが、なぜそのようなことが言われるようになったのでしょうか?
北枕は、仏教の祖である、お釈迦様(ブッダ)が入滅した際に、北へ頭を向けて安置された「頭北面西(ずほくめんさい)」という姿が由来となっていると解釈されています。
お釈迦様が北枕の状態で亡くなったため、その信者達もその姿にあやかり、故人を北枕で安置し、死者が迷うことなく極楽浄土へ行けるよう願いました。
仏教を主に信仰する日本でも、お釈迦様の入滅による由来から故人を北枕で寝かせるようになりました。
しかし、日本では、死ぬことは忌まわしいことであり、北に頭を向けて横になることは死を連想させる縁起が悪いこととされてしまいました。
一方、インドでは、北の方向に極楽があると解釈されているため、北枕はむしろ良い寝かたとされています。
ところ変われば迷信も言い伝えも変わるのです。
実は、このように「北側に頭を向けて寝る=縁起が悪い姿」とされているのは日本だけなのです。
国が変われば、枕の方角など気にしないで寝ているため、人間が絶対に避けなければいけないことではないと言えます。
また、昔は中国でも北枕の習慣がありました。
しかし、それは仏教の由来からではなく、食中毒などで急死をした場合、北枕で寝かせておくと不思議と生き返ることがあったためとされています。
北風に当たると良くないから
北枕の縁起が良くないとされる理由の一つに、北風があります。
昔の家は気密性が低く、隙間風が常に入ってきました。
特に冬には冷たい北風が吹き、家の北方面から入り込んでくることがありました。
その北から来る隙間風に当たり、肩口を冷やし身体を壊さないように、北側を避けた方が良い。 という言い伝えがあったのでしょう。
現在の住宅では、寒い冬でも冷たい北風が吹き込むということも減り、暖房器具も進化しているため、特に気にする必要は無くなりました。
また、遺体を北枕で寝かせていたのには、冷たい北風に当てておけば、腐敗が進みづらいと考えられていたという説もあります。
その他にも、北枕で寝ていた貴族や武士が、その習慣を庶民に真似されないように良くないという噂を流したという説や、位の高い人の真似をするのは恐れ多いという理由から庶民達が自ら北枕を避けたという説もあります。
このように、北枕を避けるにはもっともらしい話が諸説あるのです。
風水的には縁起の良い方位
人間は頭寒足熱であることが健康に良いとされていますが、風水では北枕が運気の上がる寝かたで、頭寒足熱のためにも良いと言われています。
北枕の運気アップ効果は健康だけではなく、金運や恋愛運のアップにも繋がると言われています。
身体の疲れを取りたい場合や、全ての運気を上げたい時には、積極的に北枕にすると良いでしょう。
風水的には、北が最も運気が良く、反対の南が最も運気が悪いとされています。
尚、東は太陽が昇る方向にあたるため、エネルギーをもらえて活力が湧いてきます。
やる気や元気がないと感じるときに東枕にしてみると力が漲るため良いでしょう。
西は、日が沈む方角にあたるため、心の落ち着きを取り戻せます。
何だかそわそわして落ち着かない日々が続く場合は、西枕にしてみると、ゆったりとした気持ちになれるでしょう。
しかし、あまり長期間、西枕を続けると、やる気が出てこなくなるとも言われていますので、ほどほどで様子を見るようにすると安心です。
北枕は実は健康に良い?
風水でも北枕が良いと言われていますが、北枕で寝ると心臓の負担を和らげる効果があるとも言われています。
お釈迦様が入滅の際、北枕で寝かされていたのも、心臓への負担を減らそうとしていたとされています。
また、地球の磁場に沿って寝ると、疲労が回復する効果があり、血行が良くなり目覚めも良くなるという健康効果があります。
北枕が必ずしも磁場に沿うという訳ではないようですが、場所によっては磁場に沿う形で寝られることもありますので、北方面を極端に避けなくても良いのかもしれません。
縁起が悪いと考えすぎると良くない
「北枕は縁起が悪い」と考えすぎると、その暗示に自らが掛かってしまいます。
そして、北枕を異常に気にして避けるようになったり、北枕で寝ると悪い夢を見るようになるのです。
そうなると、少なからず心にストレスが溜まります。
眠りの時間はリラックスをして疲れを取るためのものなのですが、気になることがあるとどこか緊張状態が続き疲れてしまいます。
旅先の異国で北枕を気にして眠れないのでは、純粋に旅行が楽しめません。
また、北枕を避けるあまり、何故か無意識に北枕で寝てしまうなどという不思議な現象も起こってきてしまいます。
こういったことが起こると「やっぱり縁起が悪い」「怖い」と更に避けるようになってしまいます。
こういったマイナスイメージの話を周囲の人間が聞き、まことしやかに縁起が悪いことという話が更に言い伝えられていくのです。
しかし、良く考えてみましょう。
例えば、小さい子供達は、寝相が悪いことが多く、布団の上をぐるぐる回ったりします。
当然、北枕の状態で寝てしまうこともあるわけですが、それが悪い影響をもたらしているとは考えづらいと言えます。
また、日本以外の国では、北枕を気にしないどころか好んで北枕で寝ている人も大勢います。
その人々が全て不幸になっているともおもえません。
あまり深く考えず、好きな方向でプラスのイメージを持ちながら寝ると、安眠でき自分のためにもなるのではないでしょうか。
西?北?沖縄ではどっちが正しい?
沖縄では北枕の事を「ニシマックワ」と呼びます。
本州の人間がその言葉を聞くと「西枕」と勘違いしそうになりますが、ニシは沖縄地方の方言で北を指します。
そのため、北=ニシとなりますので、注意が必要です。
沖縄でも基本的には、故人を北枕(ニシマックワ)で安置します。
しかし、沖縄では地域によってイリマックワ(西枕)で故人を寝かすこともあるようです。
やはり、北なのか?西なのか?と迷ってしまいます。
沖縄では、本州とは異なる独自の文化が根付いていますので、お葬式などに参列する場合には地元の人に確認すると安心です。
キタマクラという名前の魚には要注意!
人間が眠る北枕とは少々異なりますが、キタマクラという名前を持つ魚がいます。
日本近郊の海に生息していて、割と簡単に見ることのできる魚です。
この魚はフグ科なのですが、非常に強い猛毒「テトロドロキシン」を持っていて、他の魚と同じクーラーボックスに入れるのも避けなければならないほど危険なものです。
この魚のキタマクラと北枕の関係は、「食べると死が待っている」という意味を持たせるために、あえて死のイメージがある名前にしたのではないか?と言われています。
間違っても食べないように、と先人が願いを込めてこの名前を付けたのでしょう。
近年では、その毒性を理解した上で鑑賞用としたり、極一部で毒を取り除き食する人も居るようですが、専門知識を持たない人が触れる魚ではありませんので注意が必要です。
まとめ
北枕は縁起が悪いと言われているのは日本だけです。
お釈迦様の入滅した際の頭北面西が由来となっていて、死のイメージが付き縁起が悪いと思われているのです。
しかし、お釈迦様は普段から北方面に頭を向けて寝ていたとされていて、北枕が直接の原因で死亡した訳ではありません。
北枕が悪いというのは、日本が代々作り出した迷信で、死を怖がり過ぎて言い伝えられてきたものであるとも考えられます。
しかも、風水的に北枕は非常に運気が良く、熟睡でき、血行が良くなりむくみや肩こり、疲れが減るという健康効果が期待できると言われています。
グローバル化が進む現代では、さまざまな国の文化に触れる機会もあります。
全ての迷信を信じることはできません。
迷信はあくまで迷信と捉え、あまり気にせず、自分の好きな方位で寝るのが実は一番健康に良い事なのかもしれません。