春から秋にかけて野原などで見かけることの多い天道虫(てんとう虫)。わたしたちにとってもポピュラーな虫ですが、名前の由来や英語名についてまで考えたことはありますか?そこで今回はてんとう虫について、名前の由来や英語名、幼虫から成虫までの過程や越冬の仕方、幸運の象徴と呼ばれる理由について詳しくまとめました。
天道虫(てんとうむし)とは?漢字の由来や英語名解説
みなさんも一度は実際に目にしたこともあるのではないでしょうか?赤い地に黒い斑点のある虫、てんとう虫です。てんとう虫は、漢字では「天道虫」と書きます。この漢字の由来はどこからきたのでしょうか。
天道虫の「天道」はお天道様、すなわち太陽のことです。てんとう虫は太陽にむかって飛んでいくことからつけられた名前のようですね。とはいえ、実際てんとう虫は太陽に向かって飛ぶ習性があるわけではなく、てんとう虫は枝や指など、一番端に行ったときに上に飛び立つ習性をもつ虫のようです。その様子を、「太陽に向かって飛び立っているように見える」とし、この名前がついたとされています。素敵な名前ですよね。
また、てんとう虫は英語では「ladybug」、「ladybird」、「ladybeetle」などと呼びます。よく目にするものは前半の2つかと思います。ところでなぜ「lady」という、「女性」を表す単語が使われているのでしょうか。
実はこの「lady」は聖母マリアのことを指すのだそうです。聖母マリアは赤いマントを着用していました。実際絵画でも聖母マリアは赤いマントをつけているものが多いです。てんとう虫の英語名はその色にちなんだとされています。そういった意味からか、海外、特にキリスト教圏においてはてんとう虫は大切にされています。
てんとう虫がよく見られる場所や季節はいつ?越冬は?
てんとう虫が見られる季節は大体春から秋にかけて、3月ころから11月くらいまで、活動します。夏の暑い時期は個体数が減りますが、1年中何度も世代を繰り返します。てんとう虫は日本国内ではほぼ全国的に分布しており、どこでも見かけることができます。
てんとう虫はアブラムシを主食としているのでアブラムシがついている植物にいることが多いです。とはいえ、土手や野原など草木があるところに行くと大抵見つけることができますね。小さい虫ですが赤い色がかなりインパクトがあると思われます。
てんとう虫は冬の間はどうしているのでしょうか。実はてんとう虫は実はこの形状のまま、越冬するのです。冬の間は集団で落ち葉の下や岩の隙間など、日当たりのよいところに固まって冬眠します。集団でいるのは集団のほうが個別で越冬するよりも生存率が高くなるからと言われています。
冬の間たまにてんとう虫が固まっているのを見かけますが、冬眠しているところなのですね。ただ、集団でぎっちり固まっているのはややぎょっとする光景ではあります。
てんとう虫の幼虫は?生態を知ろう
てんとう虫は他の昆虫同様、卵から幼虫、さなぎ、成虫、という過程をたどります。てんとう虫の幼虫は羽もなく、細長い虫のような形をしており、色も黒くてとてもここからあの赤い虫が誕生するとは思えない感じがします。幼虫は主にアブラムシを食べています。ですからてんとう虫は幼虫から成虫までずっとアブラムシを主食としているわけですね。
成長した幼虫は葉の裏などでさなぎになります。幼虫のときは黒っぽい色をしていますがさなぎになると黄色っぽい色になり、さらに形も丸くなります。脱皮が近づくと黒い斑点の模様が浮かび上がり、形もだんだんてんとう虫のような形に近づいてきます。羽化したばかりのときは羽は黄色い色をしていますが、時間がたつにつれ、あの特徴的な赤い地に黒の斑点がでてきます。羽化して約1日たつと、成虫として活動を始めるようになります。
成虫のあの丸いかわいらしい形態と、幼虫との形態の差には少し驚かされます。この変化もまた、てんとう虫の魅力なのでしょうね。
てんとう虫の種類は?
てんとう虫は赤地に黒の斑点がある、というイメージがありますが、その斑点の数も様々だったり、色が逆転していたりと、いろんな種類のてんとう虫を見かけますよね。こちらでその種類について整理してみましょう。
・ナナホシテントウ
こちらはおそらくてんとう虫の中でももっともポピュラーで、よく見かけることの多いてんとう虫だと思われます。名前の通り、赤字に黒い斑点が7つあるものです。
・トホシテントウ
このてんとう虫は、こちらも名前の通り、黒い斑点が10個あるものです。幼虫の姿がかなり衝撃的で(棘がたくさん生えている)、一度見たらおそらく忘れない形状をしています。
・ナミテントウ
こちらは黒地にオレンジの斑点がついています。ナナホシテントウなどとは色が逆転している、という説明がわかりやすいかと思います。とはいえ、「ナミ」というのは「普通の」「一般の」という「並」という意味のようなので、本来はこちらが一般的な種、とされています。
・キイロテントウ
名前の通り、黄色いてんとう虫です。羽の部分に斑点はありませんが、胸部に2つ、黒い斑点があり、まるで目のようでかわいらしいです。上に紹介してきたてんとう虫よりは若干サイズが小さく、こちらは主に植物に寄生する菌類を主食としています。
てんとう虫とよく間違えられるテントウムシダマシとは
てんとう虫と検索すると「テントウムシダマシ」という単語がでてくることがあります。テントウムシダマシとはどんなものを言うのでしょうか。
テントウムシダマシはてんとう虫の中でも「害虫」とされているものを総称してこう呼んでいるものです。分類としては「テントウムシ科」に属するもので、見た目もてんとう虫と似ているのですが、てんとう虫がアブラムシなどを食べて「益虫」と呼ばれているのに対し、これらは植物の葉を食べたりするので農作物に影響を与えてしまい、害虫とみなされているのです。それではどんな虫がテントウムシダマシと呼ばれているのでしょうか。
・ニジュウヤホシテントウ
ニジュウヤホシテントウ、名前は聞いたことがあるのではないでしょうか。赤い地に黒い斑点が28個あるてんとう虫です。
・オオニジュウヤホシテントウ
こちらも斑点の数が大変多くなっています。他のてんとう虫よりも大きさも大きくなっています。
・ルイヨウマダラテントウ
関東地方によく生息する虫で、ニジュウヤホシテントウと類似していますが、色が若干オレンジ色が濃くなっています。
・トホシテントウ
名前の通り、10個の斑点があります。ウリ科の植物を好むといわれています。
さて、これらのてんとう虫は通常の、害のないてんとう虫とどう見分けたら良いのでしょうか。もちろん、斑点の数を数えたりしてもいいのですが、すぐに判別はつきません。一番わかりやすいのは、普通のてんとう虫の体の表面はつるつるしているのに対し、テントウムシダマシは体毛が生えている、という違いです。
人間そのものに害を与えるわけではありませんから、野原などで見かけても問題ではありませんが、ご家庭の庭の草木などに害を及ぼす場合があります。もし見かけたら専用の駆除剤などで駆除すると良いでしょう。
てんとう虫は幸運を呼ぶ?
ところで、てんとう虫は「幸せを運んでくれる虫」「幸運の象徴」などと言われています。なぜそのように言われるのでしょうか。理由を調べてみますと、やはり上記しましたように聖母マリアと関係づけられていることが幸運の象徴と言われるゆえんのようです。また、実際、害虫の被害に苦しんでいた農民たちがマリアさまにお祈りをささげたところ、てんとう虫がたくさん集まってきて害虫を駆除してくれた、という言い伝えもあるようです。昔は駆除する薬などもなかったでしょうから、てんとう虫のような虫は貴重だったのでしょう。そういったところから、てんとう虫は幸運の象徴、と呼ばれるようになったのですね。
そこから、「てんとう虫が体にとまると幸運が訪れる」などのジンクスが生まれることとなりました。特に結婚や恋愛に関する幸運について言われることが多いようです。そういえば結婚式の余興などの定番、「てんとう虫のサンバ」にもてんとう虫が出てきますが、この言い伝えから作られたのかもしれませんね。
また、てんとう虫をモチーフにしたアクセサリーをつけると幸せになれる、といういわれもあります。てんとう虫はよく見かける虫ではありますが、今後原っぱなどで見かけたらもしかしたらラッキーなことが訪れるのかもと嬉しくなってしまいますね。
まとめ
今回はてんとう虫について、その名前の由来や英語名、よく見られる季節や幼虫、種類、また、「幸運を呼ぶ」と言われているゆえんについてなど、詳しく掘り下げてきました。てんとう虫というと原っぱによくいる、というイメージはあるものの、実際は意識して見ないとなかなか見つからなかったり、昔に比べて個体数は減っているのかもしれないと感じることもあります。この春、ふとてんとう虫を探してもし見つけたら、もしかしたら幸せなことが起こるかもしれません。