子どもの頃には誰でも1度は、作って飾ったことがあるはずなのに、自分が大人になったとき、てるてる坊主については何も知らないことに気が付きます。
子どもと一緒に作ろうとしたとき、意外にどうしたらよいのか迷ってしまったという人も多いのではないでしょうか。
作り方、飾り方はもちろん、役目を終えた後のてるてる坊主はどうしたらよいかわかっている人はほとんどいないでしょう。
今回はそんなてるてる坊主について解説します。
てるてる坊主の由来や、いつから飾られていたのかを詳しく説明しますから、てるてる坊主について知識を深めることができますよ。
あまり知られていない、てるてる坊主の処分の仕方も説明します。
ここまで知っていれば、子どもと一緒にてるてる坊主を作るときにも自信が持てるはずです。
てるてる坊主はいつから飾られていた?今とは違う昔のてるてる坊主とは
てるてる坊主は雨が降っているときに、翌日の天気が晴れになることを願って飾る白い布や紙で作った人形のことです。
これを室内ではなく、ベランダや軒先など太陽が見える方向に吊るします。
晴れてお日様が照るようにという願いがこもっているため、漢字で書くと「照る照る坊主」となります。
照る照る法師、照れ照れ坊主、日和坊主など、地域によって色々な呼び方があります。
てるてる坊主の歴史は意外に古く、江戸時代の中頃にはすでに飾られていました。
その頃は折り紙のような紙の人形で、今飾られているものよりも人間に近い形だったようです。
江戸時代後期の書物には、この紙人形を半分に切ったり、逆さまに吊るして晴れを願い、晴れた後は瞳を書き入れてお神酒を供えて川に流すと書かれています。
現在は子どもと一緒に作ることが多く、遊びの一つのように考えられていることも多いてるてる坊主ですが、昔はかなり真面目な風習だったことがわかりますね。
てるてる坊主の由来は中国の掃晴娘?娘が坊主になった理由!
てるてる坊主の由来はいくつかあります。その中の1つが中国の掃晴娘です。
これは切り紙で作られた女の子の人形で、箒(ほうき)を手に持っています。
掃晴娘は雨を降らす雲を払ってくれると信じられていました。
20世紀はじめまでは中国でよく見られた掃晴娘ですが、今はすっかり廃れてしまいました。
かえって日本のてるてる坊主の方が有名になっているそうです。
なぜ中国の娘が日本に入ってきたら坊主になったのかという疑問を感じる人もいるでしょう。
お坊さんの方が願い事を叶える力が強そうだからという説もありますが、実はこんな物語もあります。
雨による水害で困っていた人々のために、お経を唱えて雨を止めようとしたお坊さんがいましたが、失敗して首をはねられてしまいました。その首を布に包んでつるしたところ、雨が止み、天気は晴れになったそうです。
ずいぶんと物騒な物語ですね。でも、てるてる坊主に「あした天気にしておくれ」と呼びかけている童謡、「てるてる坊主(1921年発表・浅原六朗作詞・中山晋平作曲)」には、この物語を連想させる部分があります。
もしも晴れなければ、「そなたの首をチョンと切るぞ」という歌詞があるのですが、由来を知ってみると怖いだけでなく、物悲しくなってきますね。
てるてる坊主アート展!可愛いてるてる坊主に会いに行こう!
かつて人々にとって、雨を降らせる「雨乞い」や多すぎる雨を止める「日乞い」は大切なことでした。
雨は降り過ぎでも、まったく降らなくても農作物をダメにしてしまいます。大雨が降った場合は、今のように事前に警報が出てみなが安全な場所に避難することも難しかったでしょう。本当に雨を止めるために首をはねられた人がいたのかも知れません。
だからてるてる坊主には、雨を止めるための生贄の意味があったと考えられています。
子どもに聞かせるのには、怖いと思われがちな童謡「てるてる坊主」ですが、そんな昔の人たちの苦労を教えてくれると考えると、また違った味わい方ができるのではないでしょうか。
「てるてる坊主」の作詞者・浅原六朗の出身地は長野県北安曇郡池田町ですが、ここでは2007年から毎年8月に「てるてる坊主アート展」が行われています。
清々しい信州の夏の空の下、たくさんのてるてる坊主が吊るされている様子はまさに圧巻です。
このてるてる坊主たちはアート作品として扱われ、審査を受けます。
優秀な作品には賞金がでるため、様々なてるてる坊主が池田町に集まってきます。
カラフルなてるてる坊主も多く、中にはアニメのキャラクターを模したものもあるので、見ていると楽しくなってきます。
暑い時期ですがちゃんと休憩スペースもあるし、売店も出るので夏のひとときを過ごしに出かけてみてください。
小さな子どもも一緒に楽しめること間違いなしです。
晴れた空の下で見るてるてる坊主は、雨を止めるという役目から開放されて、心なしかのびのびしているように見えますよ。
知らなかった!てるてる坊主の作り方と飾り方には注意点がある!
もうよく知っている人が多いでしょうが、ここで簡単にてるてる坊主の作り方と飾り方を説明します。
まず白い布か紙を用意します。紙の場合はティッシュペーパーが柔らかくて使いやすいでしょう。
ティッシュペーパーを4、5枚丸め、頭になる芯を作ります。好きな大きさになるように枚数は加減してください。
出来上がった芯をほかのティッシュペーパーか布で包んで、首の部分を輪ゴムや糸で縛ります。
てるてる坊主が吊るせるように、首を縛った部分に別のひもを括り付けて完成です。
完成すると顔を書きたくなりますが、吊るすときには顔は書きません。
書いたとしても、左目だけは書かずに残しておきましょう。
江戸時代の書物にも書いてある通りに、願いが叶って天気が晴れたら、顔を書く(または左目を書く)ようにしてください。
先に顔を書いてしまうと、効果がなくなり、雨が降ると伝えられています(諸説あります)。
また、てるてる坊主を逆さまに吊るしても雨が降ると伝えられています。
頭が大きすぎるとどうしてもてるてる坊主が逆さまになってしまいますから、十分に注意してください。
どうしても上手く吊るせないときは、吊るすためのひもを首ではなく、頭の上に付けるようにしてください。
重心が変わるために、ちゃんと吊るせるようになるはずです。
窓の中に吊るしている人も多いかも知れませんが、それではてるてる坊主は力が発揮できません。
繰り返しになりますが、ベランダや軒下などの屋外で、お日様が見える場所に吊るすようにしてください。
特に南に向けて吊るすのがおすすめです。
いくら屋外に吊るすとしても、雨が直接かかる場所は避けましょう。
雨に濡れているてるてる坊主は、見ているとかわいそうになりますし、紙で作っている場合は破れる怖れがあります。
てるてる坊主に辛い思いをさせては、願いも叶いにくくなってしまうかも知れません。
てるてる坊主は処分でなく供養する!感謝の気持ちを忘れないで!
てるてる坊主の作り方と飾り方について説明しましたが、てるてる坊主を飾った後の始末を忘れてはいけません。
願いが無事に叶って天気が晴れたら、顔を書き入れ、お酒をかけてからゴミとして処分しましょう。
かつては川に流したそうですが、今それをすると不法投棄になってしまいかねません。
ゴミとして出すのは気がひけるなら、燃やすのがよいのですが、安全には十分に注意してください。
残念ながら雨が降ってしまったら、顔を書かずに燃やすか箱などに入れて、外から見えないようにしてからゴミとして処分しましょう。
結果としてはゴミとして処分されてしまいますが、私たちの願いを込めて作ったてるてる坊主は、ただのゴミではありません。用が済んだからといって、考えなしに捨ててしまうのは、自分の気持ちをゴミとして捨ててしまうのと同じことです。
お酒をかけたり、箱に入れたりすることはてるてる坊主に対する礼儀です。
てるてる坊主に対して、晴れた場合は感謝の気持ち、雨が降ったときでも次は晴れますように、とお願いする気持ちを忘れないようにしてください。処分でなく供養する、と考えるとちょうどよいかも知れません。
まとめ
今回はてるてる坊主について解説しました。
てるてる坊主の由来、いつから飾られていたのかなどを詳しく説明しました。
てるてる坊主の作り方や飾り方なども説明しましたから、これから晴れをお願いしたいときはきっと役に立ちますよ。
考えてみると、科学技術の発展した現在もお天気を人間の自由にできないことには変わりありません。
人間はともすると自分たちが自然をコントロールしているような錯覚を起こしがちですが、そうではないことを子どものときから学ぶためにてるてる坊主はピッタリです。
家族に小さなお子さんがいる場合は、ぜひ運動会や遠足の前にてるてる坊主を作って、晴れるようにお願いしてみてください。たとえ当日雨が降ったとしても、前の日から家族と一緒にてるてる坊主を作ったという思い出は残ります。
そしてその子が成長したときに、また自分の子どもとてるてる坊主を作るようになったら、とても素敵なことですね。
昔の怖いイメージは徐々になくなりつつあるてるてる坊主ですが、昔のイメージを忘れないようにしながら(由来や歴史を忘れないようにするためです)、仲良く付き合っていけるとよいですね。