あまり聞いたことがない方も多いかもしれませんが、「マナガツオ」は夏が旬の西日本では有名な高級魚です。
とくに瀬戸内海周辺の地域ではとても珍重されている魚で、新鮮なものは刺身にして食べると絶品。
しかし、東日本ではほとんど獲れないため、関東ではあまり流通することがありません。
今回は、国産の高級魚「マナガツオ」とは一体どんな魚なのか、値段や名前の由来、美味しい食べ方・レシピなどについてご紹介していきます。
マナガツオは夏が旬のとても美味しい魚
マナガツオは長さ20cm~40cmほどの魚で、横から見ると菱形のような平べったい形をしています。腹びれがないのが特徴的で、色は銀灰白色。
白っぽいウロコは死ぬと剥がれやすく、ウロコがきれいに付いているものは非常に高級です。
マンボウにも似ている愛嬌のある見た目ですが、味は折り紙つき。
白味の肉はほどよい柔らかさと上品な甘みが絶品で、料理の仕方によってさまざまな表情を魅せてくれます。
旬は初夏から夏にかけて。梅雨の時期である6月~7月が産卵のピークです。
普段は温帯域の沖合を群で海遊していますが、この時期になると内湾の浅瀬に移動して産卵します。
そこを底引網や定置網、刺網で捕獲するというわけです。
一般的に釣りで獲れることはめったにありません。
マナガツオは西日本の魚!関東にはあまり流通していない
マナガツオは中部以南の海洋に生息しており、中国・四国地方、とくに瀬戸内海で多く獲れる魚です。
岡山、広島など瀬戸内海周辺の地域では好んで食されており、フグに並ぶ高級魚として珍重されています。
「西海にサケなく東海にマナガツオなし」ということわざがあるほど、東日本ではほとんど獲れない魚です。
そのため関東で流通することはあまりないのですが、前述のことわざからもわかる通り西日本では代表的な国産の超高級魚なんですね。
マナガツオの値段相場は時期によって異なる
豊洲市場での平均卸価格を見てみると、最も値段が高くなるのは12月。
2018年の12月には1キロあたり4,300円ほどで取引されています。
対して最も安価なのは7月で、2018年7月の平均卸価格は1キロあたり2,700円ほど。
マナガツオはとても大きく成長する魚で、大きいものでは3キロ以上にまでなることもあります。
あまり大き過ぎてもよくなく、最も美味しいのは2~3キロだとされていますが、2キロを超えると価格もかなり高級に。
もし豊洲市場で2キロのマナガツオを最も安価な7月に仕入れた場合、卸価格でも5,400円くらいする計算ですね。
また、大手通販ショップ「楽天」でも天然のマナガツオを購入可能です。
2019年4月時点で、約1キロサイズのマナガツオが6千円ほどで販売されています。
約500g~600gの小ぶりなものでは2,500円ほどで手に入るショップも。
関東ではスーパーや飲食店などに出回ることは少ないですから、こうしたネット通販で購入するのもいいですね。
マナガツオの名前はカツオに見立てられたことが由来
マナガツオはスズキ目マナガツオ科の魚で、名前に「カツオ」が入っているものの実は何の関係もありません。
では、なぜ「マナガツオ」と言われるようになったのでしょうか。
マナガツオを漢字にすると、「鯧」「真魚鰹」「真名鰹」「真菜鰹」といったいくつかの表記があり、語源にも諸説があります。
瀬戸内海ではカツオが獲れないので、初夏に獲れる(カツオの漁期と重なる)この魚をカツオに見立てたそうです。
ここから「真似鰹(マネガツオ)」と呼ばれるようになり、これが転じて「マナガツオ」になったと考えられています。
もう一つの由来が、とても身がしまっており美味しいため「こちらが真に美味いカツオだ」という意味で「真名鰹」「真魚鰹」と名付けられた説。
カツオが獲れなくてもこんなに美味しい魚があるんだ、という瀬戸内海の漁師さん達の心意気が伝わってくるような由来ですね。
また、「真に菜(副食)として美味しい魚」ということで「真菜鰹」と書く説も存在します。
マナガツオの美味しい食べ方1位は刺身!西京焼きも定番
マナガツオはとても美味しい魚ですが、とくにおすすめの食べ方は生のまま食べる「刺身」です。
ほどよい柔らかさと上品な甘みがあるため、何も味付けしなくても、むしろそのまま食べるのが一番美味しいのです。
しかし、マナガツオは傷むのが早いため、刺身で食べられるのは生産地の特権と言えるでしょう。
もし新鮮なマナガツオが手に入るチャンスがあれば、希少な機会ですのでぜひ刺身で食べてみることをおすすめします。
次に定番の食べ方が「西京焼き」です。マナガツオは味噌との相性が抜群。
京都の有名店などでも多く提供されています。
シンプルに塩焼きにしても、皮がパリッとして、中からはジュワッと甘い汁が溢れてとても美味しくいただけます。
また、「煮付け」や「味噌漬け」にしてもいいでしょう。
マナガツオは鮮度が落ちやすいのですが、味噌漬けにすると少し日保ちがするためおすすめです。
揚げても美味なので、唐揚げにしたり、甘酢のあんかけをかけて中華風に味付けしてもいいですよ。
マナガツオは骨まで美味しく食べられる
マナガツオの骨は柔らかく、身だけでなく骨まで美味しく食べることができます。
- 中骨を乾かしてから油で揚げ、塩をまぶす
- 中骨を乾燥させたものを油で揚げ、酢に漬けて「骨酢」にする
といった方法で、お酒の肴としていただくのがおすすめです。
希少な高級魚ですから、すべて無駄にせず存分に堪能したいですね。
マナガツオのさばき方!3枚おろしにする方法
マナガツオはとにかく鮮度が命。
購入後まずは流水で表面を流し、時間が空く場合は冷蔵庫で保存しましょう。
常温での放置は厳禁です。
マナガツオはとてもウロコが取れやすいので、流通時点でほとんど剥がれていることが多いでしょう。
さばく前に包丁で残ったウロコを擦ると簡単に落ちます。
下準備が済んだら、3枚おろしにしていきましょう。
骨は柔らかいので、さばく際は慎重に。
■頭とワタを取り除く
胸びれが頭側に着くように持ち上げ、V字型に包丁を入れて頭を切り離します。
腹にも少し刃を入れて、ワタと頭を一緒に取ってください。
中骨の血合いの部分にも包丁を入れて取り除き、流水で流してきれいにしましょう。
■3枚おろしにする
布巾などでよく水気をとったら、尾を切り落とします。
腹から中骨に沿って包丁を入れた後、半回転させて背からも同様に中骨に沿って刃を入れ、片身を剥がしてください。
※マナガツオの骨は本当に柔らかいので、3枚おろしにするときは中骨を突いてしまわないよう注意!
片身を裏返して皮のほうが上になるようにしたら、背から中骨に沿って包丁を入れます。半回転させて腹からも同様にし、また片身を剥がしてください。
■腹骨を取り除く
身に沿って包丁を入れ腹骨をすきましょう。皮だけになった部分は包丁を立てて切ります。
これで3枚おろしは完了です。
マナガツオは平べったい形で身の柔軟性もあまりないので、身が崩れないよう優しく取り扱いましょう。
マナガツオの刺身の作り方
最もおすすめの食べ方、マナガツオの刺身の作り方をご紹介します。
■血合い骨を取り除く
上記の手順で3枚おろしにしたら、まずは血合い骨を取り除きます。
血合い骨のギリギリ右側に包丁を入れて切り離したら、腹側に残った血合い骨を切り取ります。
■皮を引く
尾ひれが付いていたほうを左、皮を下向きにしてまな板に身を乗せます。
左端に皮を切らないよう切れ込みを入れ、包丁をまな板に密着させるようにして右側へ引いてください。
炙りにする場合は、この工程は省いて大丈夫です。
■炙りにする
マナガツオは皮も柔らかく引くのが難しいため、皮をつけたまま炙り刺身にするのもおすすめです。
腹側を下にして氷に乗せ、バーナーで焼き目が付くまで皮を炙りましょう。
こうすることで皮下脂肪にある旨味を閉じ込めることができます。
魚を濡らしたくない場合は、氷水を入れたバットの上に、さらにもう1つバットを乗せ、その上でマナガツオを炙りましょう。
■刺身用にカットする
マグロの赤身のように、まっすぐ切って平造りにするのが一般的です。
皮が付いていたほうを上、身が厚いほうを向こう側にして、包丁の刃元から刃先までを使い引くようにして切りましょう。
お好みで薬味などと一緒に盛り付けて完成です。
マナガツオの西京焼きの作り方!レシピを紹介
マナガツオを焼いて食べるなら最もおすすめなのが西京焼きです。
ここでは2人分のレシピをご紹介します。
こちらのレシピは本格的に味噌床を作って漬け込むのではなく、味噌を節約して魚に塗り込む程度のものです。
ご家庭でもチャレンジしやすいのでぜひお試しください。
【材料】
・マナガツオ…2切れ(小さめのものだと約250g)
・塩…適宜
・酒…適宜
<味噌床>
・白味噌…50g(大さじ2杯半強)
・みりん…大さじ1
・酒…大さじ1
※味噌の分量は切り身の20%くらいになるようにしてください。
酒は味噌が柔らかくなって魚に塗りやすくなる程度に。
【作り方】
マナガツオに塩を振り、しばらく置いておきます。
白味噌(西京味噌)にみりんと酒を入れ、よく練り混ぜましょう。
マナガツオに塩がまわったら酒にくぐらせて塩を洗い流し、キッチンペーパーなどで水気を拭き取ります。
混ぜておいた味噌を切り身にまんべんなく塗り込み、タッパなど蓋つきの容器に入れて冷蔵庫で1日~2日ほど保存します(最も食べ頃なのは2~3日目)。
食べる際は容器から取り出したらキッチンペーパーの上に並べてしっかり味噌を拭き取り、皮目全体に2ミリ幅の切り込みを入れましょう。
盛り付けるときに表になる側(皮目)を下にして、弱火でじっくり焼きます。
焦げやすいので焼いている間は目を離さず、半分ほど火が入ったらひっくり返して裏面も焼いてください。
ガスグリルを使う場合は、くしゃくしゃにしたアルミホイルを敷き、キラキラした面の上に魚を置くと焦げ付きにくいです。
フライパンなら少し油をひいた上にクッキングシートを貼り付け、その上で魚を焼くと火加減が調節しやすくおすすめです。
貴重な高級魚・マナガツオの美味しさを堪能しよう
今回は、国産の高級魚「マナガツオ」について、旬や値段、名前の由来、美味しい食べ方、レシピなどをご紹介してきました。
瀬戸内海周辺の地域を中心に、西日本ではフグに並ぶ高級魚として珍重されているマナガツオですが、東日本では驚くほど馴染みが薄い魚です。
関東ではあまりお目にかかる機会がありませんが、最近はネット通販などでも購入できるようになっています。
新鮮なマナガツオは刺身にするのが一番ですが、西京焼き、塩焼き、煮付け、唐揚げなど、どんな食べ方でも美味しく食べることができますよ。
骨まで柔らかく酢漬けなどにして美味しく食べられますし、頭や内臓も小さく捨てるところが少ない魚です。
もしマナガツオが手に入る機会があれば、ぜひ今回ご紹介した食べ方も参考にしてその美味しさをあますことなく存分に楽しんでくださいね。