今回はカブトムシの名前の由来からクワガタムシとの違い、捕まえ方(場所・時間・持ち物・コツ)、飼育方法(飼育グッズ・環境の作り方)などについて簡単にご紹介します。
特に幼虫を大きな成虫に育てたいという方は必見です!
カブトムシの概要1
世界中には、1,000種類以上ものカブトムシがいると言われています。
日本にも3種類(カブトムシ・コカブトムシ・サイカブトムシ)のカブトムシが生息しており、夏になると子どもたちが採集に出かける姿を見ることができます。
カブトムシは、夏の季語にもなっているほどです。
カブトムシの基本データ
カブトムシ(学名Trypoxylus dichotomus)はコガネムシ科に属する昆虫です。
成虫の体は黒褐色や赤褐色をした、硬い殻に覆われています。体には厚みがあり、脚もがっしりとしています。
個体(成虫)の大きさは約3cm~8cmで、メスよりもオスのほうが大きい傾向にあります。
夜行性なので、夕方頃になるとエサの樹液を求めて活動を始めます。およそ1年の寿命ですが、成虫として過ごすのは1~2カ月間ほどです。
名前の由来
カブトムシを漢字で書くと「兜虫」、英語ではbeetle(Horned beetle)といいます。カブトムシの名前は、大きな角(つの)が武具の兜(かぶと)のように見えたことに由来します。
角を持っているのは成虫のオスだけで、メスにはありません(小さな突起はあります)。
頭部と胸部から生えた2本の角(頭角と胸角)は、皮膚の一部が発達したものです。戦いで武器として使われる大きな角は、カブトムシのトレードマークです。
カブトムシの概要2
と言いたいところですが、実は“大きな角”を持つカブトムシは多くありません。角が小さかったり、オスでも角を持たなかったりする種類もいます。
例外的な日本のカブトムシ
大きな角を持つカブトムシの多くは、熱帯から亜熱帯の地域に生息しているものです。日本は温帯にもかかわらず、大きな角を持ったカブトムシが見られます。
カブトムシのオスは大きな角を持っていて当たり前と思いがちですが、日本のカブトムシは、世界的にみると珍しい存在だったのです。
クワガタと何が違うの?
夏の風物詩としてカブトムシと人気を二分する昆虫といえば、クワガタ(クワガタムシ)がいますよね。似たイメージもあるカブトムシとクワガタ、いったい何が違うのでしょうか。
カブトムシのトレードマークが大きな角なら、クワガタのトレードマークは頭部から生えた大きなあごです。
カブトムシの角と同様、戦いのときに使います。あごというからには、口の一部が発達したものです。
カブトムシのメスは角を持ちませんが、クワガタのメスは大きなあごを持っています(オスよりは小さい)。
他にもクワガタは体が平べったく、脚も細いという点がカブトムシとは異なります。
カブトムシ | クワガタ | |
分類 | コガネムシ科 | クワガタムシ科 |
トレードマーク | 大きな角(頭と胸の皮膚の一部が発達) | 大きなあご(口の一部が発達) |
メスにもトレードマークは? | ない | ある |
体の厚み | 厚い | 平べったい |
脚 | がっしりしている | 細い |
頭部の横幅 | 狭い | 広い |
カブトムシの体と成長
以下では、日本のカブトムシの体の仕組み・成長の仕方(ペース)を簡単に紹介します。
成虫の体の仕組み
昆虫であるカブトムシの体は、大きく頭部・胸部・腹部に分けることができます。
オスは頭部と胸部から、1本ずつ角が生えています。メスに角はありませんが、前脚はオスよりもがっしりしています。メスは土の中に産卵するため、土が掘りやすくなっているのです。
頭部の角の根本にある触角で、樹液やメスの匂いを感じます。
呼吸は、腹部にある気門という穴で行います。翅(はね)は4枚あり、硬い前翅(ぜんし)は体を守るため、後翅(こうし)は飛ぶためにあります。
体には細かいうぶ毛が生えており、爪は木にしがみつきやすいように先がとがっています。口は樹液をなめやすいよう、ブラシのような形をしています。
カブトムシの一生
カブトムシは、卵→幼虫→さなぎ→成虫という段階を経て成長します。
メスは交尾が終わると、1~2週間後に腐葉土や朽ち木(→幼虫のエサになる)の下に産卵します。
時期は夏の終わりから、秋の初めにかけてです。卵は2~3週間経つと、ふ化します。幼虫は多くのエサを食べ、脱皮を繰り返すことで成長していきます。
翌年5~6月頃になると、幼虫は土の中に部屋(蛹室/ようしつ)を作ります。
その中で脱皮をし、さなぎになります。オスに角ができるのも、さなぎのときです(わずか2時間で出現)。約3週間後、さなぎは羽化して成虫になります。
成虫になっても、すぐには地上に出ません。約1週間は土の中で過ごし、体が出来上がってから外に出ます。そしてオスとメスが出会うことにより、命のリレーがつながっていくのです。
カブトムシを捕まえるには?
カブトムシを捕まえるなら季節は夏、コナラやクヌギといった広葉樹が生い茂る雑木林へ行きましょう。
時期・時間帯・持ち物
探しに行く時間帯は朝4~7時、夜は17~22時くらいがおすすめです。夜に子どもだけで探すのは危険ですので、必ず大人が付き添います。
さらに暑くても、帽子・長袖・長ズボン・歩きやすい靴を着用しましょう。虫刺されやけがなどを防ぐことができます。
▽おすすめの持ち物
- 虫かご・プラスチックケース(仕切りのあるもの)
- 虫とり網・スコップ・マイナスドライバー
- 軍手
- 懐中電灯
- 虫よけグッズ・ばんそうこう・水筒 など
探す場所とバナナトラップ
カブトムシが集まるのは、樹液の出ている木です。昼間に見つけておくとよいでしょう。
木の幹だけでなく、根の周りや枝先などにもいる場合があるので、注意深く探します。
幼虫を捕まえるなら、落ち葉の下や腐葉土の中、ホダ木(シイタケを育てるのに使う木)の下なども探しましょう。
樹液に似せた、バナナトラップを仕掛けて捕まえるのもおすすめです。昼間のうちに仕掛けておき、夜もしくは翌朝に見に行きます。
▽バナナトラップの仕掛け方
- 果物(バナナ・パイナップルなど)を細かく切り、袋(口が閉じるもの)に入れる。
- 袋に焼酎2カップ・砂糖1カップ・ドライイースト大さじ1を加え、もむ。
- 袋を1日太陽光に当て、中身を発酵させる(パンパンになるので、一度開けてガスを抜く。
- 【方法1】ハケで木の幹に塗っておく。【方法2】ストッキングに果物ごと入れて口を結び、木につるしておく。
カブトムシの飼育方法
カブトムシの飼育方法を成虫と幼虫の場合に分け、簡単に紹介します。
成虫の飼い方
まずは飼育環境を整えましょう。飼育ケースに発酵マット・エサ・木などを入れ、カブトムシを迎えます。
▽おすすめの飼育グッズ
- 飼育かご
- エサゼリー・エサ台
- 軍手・霧吹き・温度計・計量カップ
- 止まり木・樹皮や葉・発酵マット
- マイナスドライバー(木の皮を削る) など
発酵マットは一度、深さ5cm程度になるよう入れ、コップの底などを使って固めます(=A)。
Aの上に、マットを10~15cmほど入れます(=B)。Bは固めません。温度は22~26℃くらいに設定し、ケースは暗めの風通しのいい場所に置きます。
一つの飼育ケースの中に、多くのカブトムシを入れないようにも注意しましょう。
特に複数のオスを一緒に飼うと、ケンカしてしまいます。産卵させたい場合でも、1つのケースにオス1匹、メス2匹程度がよいでしょう。エサは切らさないように、時々掃除もします。
幼虫の飼い方
幼虫の場合、飼育環境の整え方は上記と少し異なります。
ビンなどに発酵マットを入れるのは同じですが、成虫の場合とは違い、固める必要はありません。マットに穴を開け、スプーンなどで幼虫を入れます。
上からマットをかけ、フタを閉めておきましょう。フンが目立つようになったら、マットの一部を残し、交換します。
また幼虫であれば、複数を一つのケースに入れて飼っても問題ありません。
大きな成虫に育てるコツ
幼虫を飼育するなら、できれば大きく育ってほしいですよね。大きな成虫に育てるためには、幼虫の頃にどれだけ栄養をとったか、適切な温度管理が行われていたかが重要です。
特に注意したいのが、温度管理です。ふ化してさなぎになるまでの日数は、日々の最高地温の合計(=積算温度)によって決まります。
積算温度が1,900℃ほどに達すると、さなぎになるのです。
暖かすぎる温度で育てると、積算温度に達するのも早くなります。サイズが大きくならないうちにさなぎになってしまうので、必要以上に暖かい場所に置かないのがポイントです。
まとめ
子どもの頃、カブトムシを捕まえに行ったという方も多いのではないでしょうか。大きな角を持つ日本のカブトムシは、世界レベルでみると珍しい存在でした。
あらためてカブトムシについて学び、今度の夏はお子さんと一緒に採集に出かけてみてはいかがでしょう。
ただし捕まえたカブトムシは大切に育てましょう。カブトムシを迎える前に、実際に飼うことができるかしっかりと見極めてくださいね。