暑い夏を過ぎて気候が落ち着いてくる秋になると、食欲も出て外出もしやすくなりますよね。「◯◯の秋」と例えられる楽しみがたくさんありますが、その中でも落ち着いた雰囲気で楽しめるのが芸術の秋です。
芸術と聞くとちょっと構えてしまいがちですが、視覚や聴覚で楽しむ芸術の秋には、さまざまな楽しみ方があります。美術館やコンサートなどの鑑賞は勿論のこと、親子で芸術の秋に作品製作を楽しむという人も少なくありません。
今回は、芸術の秋と言われるようになった由来や歴史を紐解きながら、芸術の秋を楽しむ方法をご紹介していきます。
芸術の秋の由来とは?
秋になると、芸術の秋と銘打ったさまざまなイベントが企画されます。展覧会やコンサートなど興味深い企画がたくさんありますが、ではなぜ芸術の秋と呼ばれるようになったのでしょうか?芸術の秋の由来を調べていくと、日本における美術の歴史に辿り着きます。
遡ること100年以上昔の1907年、日本の美術振興策として政府が文部省美術展覧会(以下文展)を開いたことをきっかけに、多くの人が美術作品を目にする機会が生まれました。文展では日本画・西洋画・彫刻など多くの美術作品が出品され、芸術家の登竜門として広く知られるようになっていきます。
政府主催による文展は、のちにさまざまな問題から変革を繰り返しましたが、美術作品を間近で鑑賞できる展覧会は姿形を変えて引き継がれていきました。美術作品を公募して秋に展覧会を行い、多くの人が美術作品を楽しむという流れが生まれたのです。
秋に行われる展覧会に合わせ、作品解説の本も出版されるようになりました。「美術の秋」というタイトルがつけられた本は、秋といえば美術作品という認識をさらに高め、やがて俳句の季語(季節を表す言葉)としても取り入れられました。美術作品に興味がなかった人も、俳句を通じて「美術は秋」と認識していったのです。
言葉としては「美術の秋」が由来と考えられる芸術の秋ですが、気候的にも過ごしやすく恵まれている日本の秋は、芸術的活動や鑑賞に相応しい季節です。歴史的な背景と広がりを見せた言葉、そして過ごしやすい秋という要素全部が合わさって、芸術の秋の由来になったのかも知れません。
芸術の秋は海外にもある?英語では何と言うの?
芸術の秋は、日本人にとってとても馴染みのある言葉ですよね。しかし、実は海外には芸術の秋を示す言葉はありません。もう少し正確に言うと、日本のように秋を意識して芸術を楽しむことが無いのです。芸術の秋という言葉は、秋の印象を一言で表すキャッチコピーのようなものです。したがって、秋だから芸術を楽しむという習慣がない海外では、芸術の秋というキャッチコピーは使えません。
それでももし英語で伝えたいと思う時には、「秋には芸術を楽しむ」という文体を英語で表すようにします。秋が一番芸術を楽しむのに良い季節だ、という点を強調したい時には、「Fall is the best season for art」という表現が良いでしょう。
ちなみに、秋にはAutumnとFallの二つの単語がありますが、厳密に言うとAutumnはイギリス、Fallはアメリカ寄りの表現です。どちらを使っても通じますが、より公的な場になるほどAutumnが優先されていきますので、会話する相手や場所によって使い分けてみましょう。
芸術の秋は楽しいイベントが目白押し
夏の終わり頃になると、芸術の秋を意識してさまざまなイベントが催されます。普段はあまり興味がなくても、芸術の秋と言われると少し覗いてみたくなりますよね。具体的にはどのようなイベントがあるのが、詳しくご紹介していきます。
まずは美術館です。美術館は、鑑賞して楽しむ芸術作品が展示されているもので、その内容は絵本から絵画、焼物のような工芸品までさまざまです。美術館には常設展と企画展の二種類があり、常設展はいつでも鑑賞できるもの、企画展は期間限定で展示されるものです。多くの美術館はホームページで詳細を紹介していますので、まずは日程と展示内容を調べてみましょう。
最近では、美術館にカフェが併設されていることも多く、1日かけて美術館を楽しむという人も少なくありません。美術鑑賞にはあまり興味がない人でも、特別な空間でしか味わえないカフェのメニューに興味を持つのではないでしょうか。併設されているカフェでは、企画展とコラボした限定メニューを出すこともありますので、芸術と一緒に食欲の秋を楽しむのもいいですね。
クラシックのコンサートを楽しむのも、芸術の秋ならではのイベントです。バイオリンなどの弦楽器や木製の楽器は湿気に影響されやすく、湿度の高い日本の夏ではあまり良い音は楽しめません。もちろん、空調管理の整ったコンサートホールもありますが、出来れば一番良いコンディションで音楽を楽しみたいですよね。年間のスケジュールから、世界的に有名なアーティストが来日するのも秋が多いです。もしこれはと思うアーティストがいるのなら、秋のスケジュールを調べてみるのも良いでしょう。
お子様連れや長時間鑑賞するのが苦手な人には、体感型の美術館がおすすめです。クラフトワークや遊べる彫刻など、全身で楽しむ芸術作品には一体感があり、大人も子どもも夢中になって楽しめる面白さがあります。美術館ではないですが、特定の街に設置されたオブジェを探して散策するのも立派な芸術鑑賞です。ゆっくり散歩しながらの散策は、秋の気候ならではの楽しみ方です。
ご紹介した内容以外にも、夜神楽の奉納や薪能といった伝統芸能など、秋には素晴らしい芸術作品が目白押しです。好みや気分に合わせて、ぜひ興味のある芸術作品に足を運んでみましょう。
美術館やコンサートに行く時の注意点
芸術の秋を楽しむ場所として人気の美術館やコンサートですが、行く前にはいくつか注意や確認をしなければならないことがあります。せっかくのお出掛けが悲しい結果とならないよう、次の項目を十分確認してから出掛けるようにしましょう。
- 入場するにあたり年齢制限があるかどうか
- 会場の開催時間
- 事前予約が必要かどうか
- 交通機関の確認
- 周辺施設の状況
- バリアフリーや身障者への対応があるかどうか
- 観たい企画展の開催期間
- 万が一コンサートが中止になった場合の払い戻しについて
- クラフトワークの申し込み方法や開催時間
- 授乳室やオムツ変えなどの設備について
最新の美術館や施設ではいろいろな状況に備えた設備が整っていることもありますが、実際に出向いてみると不便な点が出てくることも少なくありません。出かけた時に不便だと感じることは何かよく考え、不安な時には直接美術館やコンサートホールに尋ねるようにしましょう。
芸術の秋に親子で楽しい作品製作
芸術作品を鑑賞することも素敵ですが、自分で秋ならではの作品を作ってみるのも楽しいですよね。とくに小さなお子さんと一緒に作った作品は、一生大切にしたい思い出にもなります。実際に作品製作をした人の例と、作り方を詳しくご紹介します。
例1 落ち葉とお花のスクラップブック
用意するもの
- 落書き帳やスクラップブッックなど
- セロテープ
- クレヨンやマジック
散歩の途中で気に入った色の落ち葉を見つけたら、その場でスクラップブックにセロテープで貼り付けたり、落ちていた場所の名前を書いておく。お花はもそのまま貼り付けておき、あとで子どもと一緒に名前を調べて書き込む。お花はそのまましっかり挟んでおくと押し花になるので、切り取って栞にすることもできる。気に入った枯葉を動物に見立てて落書きしたり、お花を観察しながらスケッチするのも楽しい。
例2 松ぼっくりでクリスマスツリー
用意するもの
- 松ぼっくり
- ペイントできるもの(マニキュア、油性ペン、スプレーペンキなど)
- 飾り付けのビーズ
- 木工用ボンド(乾くと透明になるもの)
拾ってきた松ぼっくりはよく洗ってから熱湯につけて、半日ほと放置したあと完全に乾かす(虫を完全に排除するため)。一度閉じた笠が開ききったら完了。松ぼっくりに着色していく。金色や銀色のスプレーや、ラメ入りのマニキュアだとクリスマスらしいカラーリングになる。乾いたら飾り付けのビーズをボンドでくっつけていく。一つでもツリーのようになるが、積み重ねると大きいツリーもできる。
秋ならではの材料で製作した作品は、作る楽しさと秋の面白さを満喫できる最高の芸術です。お子さんとの散歩で見つけた秋を一つの作品にして、世界に一つだけの美術館を作ってみてはいかがでしょうか。
まとめ
芸術の秋の由来や楽しむ方法について、詳しくご紹介してきましたがいかがでしたか?芸術と聞くとちょっと難しいような気持ちにもなりますが、楽しみ方を知るといろんな興味がわいて楽しいですよね。過ごしやすくなった秋だからこそ、心の余裕が生まれて芸術を楽しむことができます。今回の記事でピンときたものがありましたら、ぜひ参考にしてみて下さい。