年末年始は、たくさんの行事がありますが、意外とその意味や由来を知らないこともありますよね。年末年始の慣習として行っていることが実は、行事だったなんてこともあります。そもそもお正月は、歳神様を迎える行事の一つです。歳神様を迎える前の準備と迎えた後の一連の年末年始の行事やしきたりを紹介します。
年末の行事
年末には、五穀豊穣の神である歳神様を迎えるための準備を行います。年末に行う一連の行事の流れを見ていきましょう。
事始め
お正月を迎える準備を開始する行事で12月8日に行うものです。
すす払い
いわゆる大掃除のことで、年末の行事としては12月13日に行います。すす払いは、歳神様を迎えるために1年でたまってしまった汚れを隅々まできれいに取り除き、清めるために行い、これにより来る新年に歳神様がもたらす多くの『ご利益』を頂けるといわれています。京都の西本願寺、東本願寺、千葉の成田山新勝寺のすす払いなどが有名です。
歳の市
としのいちと読み、年の暮れに神社などの前でお正月用品や縁起物をメインに販売する市のこと。江戸時代初期の浅草が始まりといわれています。女の子の健やかな成長を願う羽子板も歳の市で販売されていました。羽子板をメインに扱う羽子板市もあります。
大晦日
おおみそかと読み、一年の最後の日という意味です。各月の最後の日を晦日(みそか)といい、12月31日は12月の最後の日と1年の最後の日という意味で大晦日といいます。この日には、旧年の汚れを祓い新年を迎えるための行事が行われます。
年始の行事
年始には歳神様を迎えして、お正月のお祝いをします。
初詣
一年の初めに神社やお寺に旧年の感謝と新年が良い年になるようにお願いするために氏神様にお参りすること。もともとは地域の神社やお寺にお参りしていましたが、最近は有名な神社やお寺にお参りすることが増えてきました。お参りする期間は元旦に限りませんが、松の内(関東1月7日、関西1月15日)に行くのが良いですね。
かるた始め
1月3日に八坂神社で行われる小倉百人一首の競技かるた大会のこと
松の内
門松やしめ縄などのお正月飾りを飾っておく期間。この期間の終わりを『幕の内が明ける』と言い、関東は1月7日、関西は1月15日頃です。
七草粥
古代中国で人を殺さない人日(じんじつ)の節句である1月7日に七草の入ったおかゆを食べます。七草粥は若菜を摘んで使いますが、新春に若菜を食べることでその生命力を取り入れ、邪気を払い病気が退散する効果があると考えられていました。つまり中国の人日の節句と日本の若菜摘みが合わさってできたものです。
鏡開き
歳神様にお供えしていた鏡餅を下して、木槌で割って食べること。1月11日が多いですが、関西では1月15日の小正月に行います。
江戸時代に、商家では蔵開きの行事をし、武家では鎧や具足にお供えした具足餅を下げて食べる風習が広がったのが鏡開きです。鏡開きの作法は武家から始まった行事であることから切腹を連想させる刃物は使わないのがしきたりです。いただき方は、お雑煮、お汁粉、あられなどがありますが、1年間の無病息災を祈念するといわれています。
年末のしきたり お正月飾りの由来
お正月飾りには、門松、しめ縄や鏡餅がありそれぞれ意味があります。
門松
お正月とは、歳神様を家にお招きする行事ですが、その歳神様が迷わず家に入ってこられるように目印のために門に用意するのが門松です。さらに、『松』に『待つ』をかけて、歳神様をお待ちしていますというメッセージにもなっています。通常は門の前に飾りますが、マンションなどの場合は、ドアの横でもOKです。
しめ縄
しめ縄は、飾ることによりそこが神聖な場所であることを表したり、結界・魔除けにもなるため玄関や神棚などに飾って、歳神様をお迎えします。
鏡餅
鏡餅は、歳神様へのお供え物です。その為飾る場所は、床の間がベストですが、ない場合は、玄関から遠い奥まった位置に三方に奉書紙を敷いた上に飾るのでOK.。丸い形は三種の神器の一つの鏡をかたどったと言われています。この他鏡餅は歳神様の依代とか休む場所ともいわれ、鏡開きでこれを頂くことで歳神様のお恩恵を体に取り入れるのです。
飾る時期
正月飾りは、家の中をすす払い等で清めた後、つまり大掃除が終わった後に飾ります。すす払いを行う12月13日以降であれば問題ありませんが、飾ってはいけない日もあるので注意が必要です。12月29日は二重苦や苦い餅(持ち)、31日は、葬儀と同じ一夜飾りとなるので縁起が悪いため避け、28日までに飾るか、30日に飾りましょう。
年末のしきたり 大晦日
大晦日に行うことといえば、除夜の鐘。そして年越しそばを食べるのを忘れてはいけませんね。それぞれの意味についてみていきます。
除夜の鐘
除夜の鐘は、煩悩を取り除き悟りを開くために大晦日から新年にかけて108回つき、日本三大鐘楼の京都の方広寺、知恩院、奈良の東大寺は除夜の鐘が有名です。
除夜の鐘の『除夜』とは、大晦日の夜という意味で、大晦日は旧年を取り除く日で『除日』ともいいます。除夜の鐘には修業を積んでいない普通の人にも心の乱れや汚れを祓う力があるといわれ、大晦日に鐘をつくわけです。
何故108回かというと、人には六根といわれる6つの感覚器とそれを表す六境があって、さらに良い、悪い、どちらでもないという3つの状態と過去、現在、未来という3つの時制を合わせると(6×3+6×3)×3で108個となり、煩悩を表すと考えられています。鐘をつく時間は、大晦日のうちに107回、最後の1回を新年につくという決まりがあります。
多くのお寺では、無料で除夜の鐘をつくことができますが、お寺により希望者が多かった場合余分につくのか108回で終わりにするのか違いますので、事前に確認が必要です。
年越しそば
大晦日の夜に食べるものといえば年越し蕎麦ですが、年越しそばを食べる風習は江戸時代に広まりました。蕎麦は細長いので長寿を祈願しているのですが、年越しに他の麺ではなく蕎麦が選ばれているのは、切れやすいという特徴です。これは苦労と縁が切れると縁起の良いいわれがあるためです。
年越しそばは、日をまたいで食べなければその他には特に決まりはありません。
年始のしきたり
お正月には、なんとなくやっているしきたりが多いですよね。お正月の時期にしか行わないこともたくさんありますが、お正月の行事はいろいろな願いが込められているものが多いものです。
お屠蘇
お屠蘇はお正月にいただく縁起物のお酒ですが、邪気を払って身体を蘇らせ長寿を願うという意味があります。実際にお屠蘇は健康のための妙薬で、10種類程度の薬草エキスの入ったお酒とみりんをベースにした飲み物です。
使用する薬草は、血行を良くする紅花、風などの邪気を払う防風、余分な水分を排出する蒼朮、消化不良を改善する陳皮、咳止め効果のある桔梗、体を温める効果のある丁字、腸の動きを良くする山椒、解毒・鎮痛に効果のある甘草、新陳代謝をよくする桂枝、胃腸の働きをよくする茴香などです。
飲み方は、三つ重ねの盃を使い、すべての盃で飲むのが正式ですが、略式では、2番目の盃に3回に分けて次いで飲みます。飲む順番は、年少者の活気にあやかるために若い人から先に飲むのが一般的です。
お年玉
鏡餅は、歳神様へのお供え物で、お下がりのお餅には、歳神の魂が宿るといわれています。このお餅を家族に配り食べることで、その恩恵を受けていました。歳神様の魂の宿ったお餅を配ることからお歳魂となったという説や、お供えするお餅が玉のように丸いお餅でお歳玉となったなど諸説があります。現在のようにお金を渡すのがメインになったのは、高度経済成長期ごろを言われています。
おせちの役割
おせちとは、季節の変わり目ごとに豊作に感謝して神様にお供え物をする「御節料理」に由来し、その後おせち料理に変化したと考えられているのです。弥生時代から始まり、平安時代には宮中行事にもとりいれられ、江戸時代になって本格的に広がっていきました。
また、歳神様を迎えるお正月の三箇日は、台所を騒がせてはいけないともいわれ、煮炊きをしない風習がありました。そのためおせち料理は、この期間においしくいただけるように日持ちのするように工夫されています。また、用意される料理にも五穀豊穣と無病息災の願いが込められています。
おせち料理の種類は、祝い肴、口取り、焼き物、酢の物、煮物の5種類で、重箱の詰め方にも決まりがあります。
一の重には、祝い肴と口取り、二の重には焼き物、三の重には酢の物、与の重には煮物で、一番上が一の重です。3段にする場合は、二と三の重を一緒に詰めます。
料理に込められた願い
おせちの種類は20~30種類ありそれぞれに意味があるので主なものをご紹介します。
- 黒豆:邪気を払う
- 数の子:卵の数が多いことから子孫繁栄
- 田づくり:カタクチイワシを肥料にしたところ豊作となったことから五穀豊穣
- たたきごぼう:地中に深く根を張るため家の基礎がしっかりしている
- かまぼこ:赤は魔除け、白は清浄
- 伊達巻:巻物に似ている形状から、知識が増える
- 栗きんとん:黄金色であることで金運アップ
- 紅白なます:水引のイメージで縁起物
- 鯛の姿焼き:恵比寿様の持つ魚でめでたい
まとめ
年末年始は、歳神様を迎える一連の行事が行われます。その為に、年末にはお掃除をして家を清めたり、除夜の鐘で一年の汚れを落としたりします。
おせちには、歳神様へのお供え物としての意味と台所を騒がせないために三箇日に火を使わないしきたりがあります。また、それぞれの料理には意味があり、お重への詰め方にも決まりがあります。
今年の年末年始は、それぞれの行事の由来を知ることで今までとは違う見方ができるかもしれませんね。