2019年5月1日に元号が変わり、30年以上も続いた平成の時代が終わりました。
元号の変わる前の4月30日の夜に、何だか大晦日のようだと、多くの人が感じました。
これはなぜだったのでしょうか。
大晦日にはどんな意味があるのかを知っておくと、その理由がわかります。
今回は大晦日について解説します。令和初の大晦日の過ごし方についてもお知らせします。
晦日は月が隠れる日!では大晦日は?
日本では明治時代までは、今のような太陽暦ではなく、太陰暦を使っていました。
太陰暦は月の満ち欠けで暦が決まっていたので、1カ月が始まる最初の日は、必ず新月の日で、終わるのは月が見えなくなる日でした。
晦という字には、暗い、見えなくするなどの意味があるため、1カ月の終わりの日を晦日(みそか)と呼ぶようになりました。晦日を「つごもり」と読む場合もありますが、これは月が隠れて、見えなくなることを「月隠り(つきごもり)」といったことが理由です。今でも大晦日のことを「おおつごもり」といいますね。
太陰暦では1カ月がおよそ30日だったので、晦日は30日(1カ月の最後の日)の別名になりました。太陽暦を使うようになると、1カ月が30日ではない月ができましたが、晦日は月の最後の日の呼び方として、そのまま使われてきました。
晦日は毎月あるわけですが、中でも12月の31日は、1年の締めくくりの日であるため、特別に大晦日と呼ばれるようになりました。
大晦日は神様を迎える準備をする日!現代の神様は?
昔、お正月は歳神様をお迎えするのが、大切な目的でした。
先祖の霊が神様になったのが歳神様ともいわれ、家を守り、豊作を約束してくれる大切な存在でした。
歳神様はそれぞれの家にやって来るため、大晦日はどの家でも、お迎えををするための大切な日でした。
現在私たちが行っている、大掃除やお正月の飾り付け、おせち料理を食べる習慣はもともと歳神様をお迎えするために行っていたことでした。
昔は夕暮れで1日が終わると考えられていたため、新年の始まりは大晦日の夕方からでした。おせち料理を大晦日の夕方から食べる習慣があるのは、そのためです。また、歳神様をお迎えするために、大晦日の夜は一晩中、眠らずに起きている習慣も見られます。今でも大晦日の晩は夜ふかしをする人が多いですが、これは日本の伝統に基づいたことだったのです。
現在は神様のことなど、忘れられているように思えますが、そうではありません。
日本の皇室は先祖をたどると、天照大御神であるといわれています。
今でも皇室と神道は深いつながりをもっているため、天皇陛下は神道の宮中祭祀で、国民が安らかな暮らしをできるように祈り続けています。
もちろん、天皇陛下は人間ですが、私たちには神様にもっとも近い存在だと感じられます。
私たちは天皇陛下を通じて、神様と深いつながりを持ち続けているのかもしれません。
だから時代は変わっても、私たちはお正月の風習を守っているし、大晦日には特別な思いを抱いているのでしょう。
大晦日のような理由!時代が終わる締めくくりだから!
2019年の4月30日が大晦日のように感じられたのは、平成という1つの時代の締めくくりの日だったためです。今回は、天皇陛下(現在の上皇陛下)が生前退位をしたことも、国民の気持ちを浮き立たせた原因だと思われます。
そもそも元号が変わるときは、天皇陛下の崩御(死亡を表す最高の敬語)があることが前提です。国の象徴である天皇陛下の崩御は、国民に暗い影を落とします。昭和から平成に時代が変わるときは、日本全国に自粛ムードが広がり、何事も素直に楽しめないように感じられました。
今回は崩御がなかったことで、純粋に新しい時代の到来と新しい天皇陛下の即位を喜ぶムードが広がりました。
5月1日に新たな天皇陛下をお迎えすることは(神様にもっとも近い存在で、私たちの幸せを祈ってくれますから)、お正月に歳神様をお迎えすることと同じような気持ちを呼び起こしたのでしょう。お正月を控えた大晦日そのものの、ワクワク感を感じたとしても無理はありません。しかも大晦日は毎年経験できますが、元号が変わる経験はそう何度もできるものではありません。
テレビ番組でも、気分が盛り上がった!
テレビ番組も、より一層国民の気持ちを盛り上げたようです。
「FNN報道スペシャル 平成の大晦日 令和につなぐテレビ」では、現在の上皇后・美智子様が初の民間からのお妃として皇室に入った事実をドラマ化しました。世紀のロマンスだと世間ではミッチーブームが巻き起こりましたが、皇室に入ったことで、美智子様はさまざまな批判にさらされました。
実は美智子様は自らの苦悩をノートに記しており、このノートをもとにして、ドラマが作られました。
美智子様が初めての出産をしたときに、乳母制度が廃止されたことや、住まいである東宮御所にキッチンを作り、家族のために料理をしたことが、当時の皇室では批判の対象になることでした。
でも、美智子様の行動が現在の天皇陛下を育て、令和の時代へと結びついたわけです。ドラマを見た人たちは、こうして1歩ずつ歩みを進めてきた皇室の姿を見て、令和への新しい希望を感じたかもしれませんね。
テレビ番組で過ぎ去った過去を振り返り、未来を迎える準備をするところは、まさに大晦日の過ごし方と同じでしたね。
令和初の大晦日までに、大掃除は済ませておこう!
すっかり4月30日に大晦日の気分を味わった私たちですが、2019年12月31日には本当の大晦日がやって来ます。
平成になってからの大晦日は、カウントダウンイベントなどを楽しむ人たちが増えました。大晦日からお正月にかけては、外で楽しく過ごすものになりました。でも、本当の大晦日は歳神様を迎えるための準備の日でした。令和になって最初の大晦日は、そのことを思い出して歳神様のために自宅で過ごしましょう。
忙しい年末ですが、大晦日の当日まで予定を詰め込まないように注意してください。
大晦日の朝には歳神様は、家に到着するといわれているので、大掃除はもっと前に済ませるようにしましょう。
大晦日のほか、29日も大掃除をしないでください。29という数字は二重苦に通じて縁起が悪いのが理由だといわれています。餅つきやお正月飾りも同じ理由で、29日や大晦日は避けた方がよいといわれています。覚えておいてくださいね。
また、せっかくいらした歳神様を掃き出すことになってしまうため、元旦も掃除をしてはいけないといわれています。普段から掃除を欠かさない、几帳面な人ほど注意してくださいね。
大晦日当日の過ごし方!おすすめは二年参り
大晦日はバタバタせずに、心静かに過ごして、夕方早めにお風呂に入ってさっぱりしましょう。大晦日に入るお風呂を年の湯といいます。昔はお風呂に入ること自体がぜいたくで手間のかかることだったため、1年の終わりのお風呂には特別な思いがあったことでしょう。
お風呂に入ったら、年越しそばを食べたいですね。
年越しそばは江戸時代から始まった風習です。そばは細く長いことから、健康と長寿を願って食べられています。地域によってはうどんを食べることもあるそうですが、どちらを食べるとしても家族がそろって、来年の健康を願いながら食べれば、きっとおいしく感じるはずです。
その後は家族で二年参りに出かけるのがおすすめです。
大晦日の深夜0時をまたいで行う初詣を、二年参りと呼びます。これは除夜の鐘が鳴らされる時間帯と同じです。
除夜の鐘は日本の仏教の習慣で、多くの寺院で鐘を108回つきます。
この回数は人間の煩悩の数と同じだからだそうです。煩悩は、人の心の乱れや汚れで、除夜の鐘でそれが祓われるということです。最近は騒音問題になるとして、鐘をつかない寺院も増えてきました。もし、近所で除夜の鐘が聞けたら、それは幸運なことですから、ぜひじっくりと耳を傾けてくださいね。
二年参りをしていると、かなり夜ふかしをしてしまいます。小さな子どもがいる人は心配になるかもしれませんが、歳神様をお迎えするために昔の人たちも一晩中起きていましたから、大晦日は大目に見てあげましょう。
まとめ
今回は大晦日について解説しました。
本当の意味がわかると、元号がかわる前日の夜に、大晦日のように感じられた理由もわかりましたね。2019年の4月30日と大晦日には、神様(または神様のような人)をお迎えするという共通点がありました。
平成の大晦日は外で過ごす人も多くいましたが、令和初の大晦日は、本来の意味を思い出して過ごしてみましょう。家で家族とともに過ごす大晦日とお正月は、思っていたよりも新鮮に感じられるかもしれません。
家にやって来る歳神様をお迎えできれば、きっとよい年が迎えられるはずですよ。