冬になると天気予報などで「冬将軍がやってきました」「週末には冬将軍の影響を受けそうです」など冬将軍という言葉を聞く機会が多くなります。そんな時、冬将軍って一体誰?と不思議に思う人も居るのではないでしょうか?ここでは、冬将軍についてを詳しくご紹介します。
冬将軍とは一体何?どんな意味・由来があるの?
冬将軍(ふゆしょうぐん)という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか?何だか強そうで怖そうなイメージの言葉ですが、一体何のことを指し、どんな意味を持つのでしょうか。
冬将軍は、寒い冬を擬人化している言葉です。日本では、冬の季節になると、周期的に寒気団が南下してきます。これは、「シベリア寒気団」と呼ばれ、秋から冬にかけてシベリア上空に留まっている寒気団です。乾燥している寒い空気で、寒帯大陸性気団のひとつです。ロシアや中国大陸での放射冷却が蓄積した冷たい空気で、日本に南下してくると、西高東低の気圧配置に入り、強い寒気をもたらし、日本海側には大雪、太平洋側に乾いた冷たい空気をもたらします。
冬将軍の由来は、19世紀初頭にロシアに攻め入ろうとしたナポレオン軍が敗戦した原因の一つと考えられたからです。イギリスの新聞に、「ナポレオン軍は極寒将軍(generalfrost)に敗れる」と記載され、そこから冬将軍と呼ばれるようになりました。ロシアでは、攻め入ってくる諸外国の軍をこの冬将軍が蹴散らしてきたのです。ロシアは国土が広いため、諸外国軍が全領土を支配するには、とてつもない時間がかかりました。温かい時期に攻め入っても、寒い季節が訪れ、その寒さに太刀打ちできずに敗れて行ってしまうのです。当時、非常に強い勢力を誇っていたナポレオン軍でさえ、その寒さには敵わなかったのです。寒さは非常に強い武器で、北欧の地域でも多くの侵略を寒さが防いだというエピソードが残されています。
ナポレオンなどを倒した冬将軍の正体はズバリこれ!!
前述の通り、冬将軍の正体は冬の厳しい寒さです。
ナポレオンは大陸封鎖令を破ったロシアに対し、50万もの大軍で押し寄せることにしました。4月に遠征を始め、同年の9月にはモスクワの占領に成功します。ところが、そこから思わぬ足止めを食ってしまったナポレオン軍は、10月に退くことを決意します。この年は、シベリア寒気団が例年よりも早く押し寄せ、飢えや寒さで死者が続出してしまい、完全撤退まで2ヶ月ほどの期間を要してしまいました。約24万の犠牲者を出し、無事に帰還できたのは2万ほどであったといわれています。
このように、突然訪れる寒気を冬将軍といい、攻められるような寒さを表わしているのです。冬将軍の怖いところは、やはり目に見えない、予測ができないという点にあります。現代のように気象予報が詳しくできない時代には体験したことのない気候は脅威そのものだったのです。正体不明の急な寒さに大人数で対応するのは不可能に近い事なのです。実は、冬将軍が到来する前から、ナポレオン軍の敗退が決まっていたともされていますが、寒くて太刀打ちできなかったということにしておきたかったのでしょう。
ロシアは秋も雨が降り続く時期があり、舗装がされていなかった昔は泥の中を進まなくてはならず「泥将軍」と呼ばれていました。その後、徐々に道路の舗装技術が進み泥将軍の名は聞かれなくなりました。これらの言葉からロシア侵略するにはどの季節も大変だという事が分かります。
尚、冬将軍はヒトラー率いるナチスドイツ軍、カール12世のスウェーデン軍にも打ち勝ちました。但し、この冬将軍は、ロシアの自軍に牙をむくこともあったのです。特に、何年かに一度訪れる大寒波には、現代でも人々は恐怖を感じています。
ロシアには一番寒い村がある!?
ロシアのシベリアには、世界で一番寒いと言われる村が存在します。その村は「オイミャコン」と呼ばれ、マイナス71.2度という世界最低気温のギネス記録を持っています。現在では約500人の人口が生活しています。
オイミャコンは非常に寒い永久凍土の地なのですが、温泉が涌き出しており、川が凍ることはありません。凍らない川で魚が釣れるのですが、釣れた途端に凍り付くこともあります。洗濯物などの濡れた衣類も外気に触れた途端に凍ります。冬の時期に太陽が顔を出すのは、一日3時間程度で殆どの時間が暗闇に包まれています。
マイナス50度程になると、様々な細菌やウイルスが動かなくなるため、感染症にかかるリスクが少なくなります。そのため、村の住民は長寿であるとも言われています。家の中は20度近く有り、とても快適に過ごせる環境で生活をしているのですが、ひとたび外に出るとマイナス40度の世界が広がり、寒暖差が非常に大きいのが特徴です。屋外に出るとすぐ凍傷になってしまうレベルの寒さですので、長時間の外出はできません。
雪解けは5月頃で、夏もあります。7月の夏場には30度を超え、35度近くの気温になる年もあります。冬との気温差は約100度で、気軽に住むには厳しい環境といえます。因みに観光客を受け入れるホテルなどは一切ありません。初雪が降るのは9月頃ですから、温かい時期は非常に短いのです。シベリア寒気団の影響を一番受けているのは、紛れもなくこの地なのでしょう。
冬将軍を英語でいうと?日本だけで使われている言葉なの?
冬将軍は、極寒将軍、厳寒将軍、雪将軍、霜将軍など様々な名を持っています。
冬将軍の由来がフランスのナポレオン軍であるように、諸外国でもこの名が使用されています。英語では「Winter Jeneral(ウィンタージェネラル)」と表現されています。
「Jack Frost」=厳寒、「Hard Winter」=厳冬、「Rigorous Winter」=厳しい冬などが対訳として使われることもあります。
アメリカなどでは、あまり冬将軍という言い方はしないようです。冬将軍自体はやはり寒さの厳しいロシアの冬を指すことが多いようです。アメリカでは、「Winter Advisory」といい、これは寒さが非常に厳しくなる注意報を表わし、主に天気予報で使用されています。日本語を外国語に訳そうとした場合、Fuyu-syogunなどそのままのニュアンス、日本の言葉として使う事もあります。
日本に冬将軍が訪れる時期は?気象用語なの?
日本上空にシベリア寒気団が流れ込んでくるのは11月の後半から2月一杯くらいです。
日本の冬は西高東低ですが、西高はシベリア寒気団が構成しています。日本の近くで北西の季節風になり、寒い乾燥した風を流し込みます。
冬将軍が来ると聞いたら、「冬型の気圧配置が高まってくる」ということなのです。
気象予報でよく耳にする言葉ですが、実は気象用語ではありません。気象に詳しくない人が、冬型の気圧配置や西高東低の気圧配置と言われてもピンと来ないのですが、冬将軍と言えば何となく厳しい寒さがやって来るということが分かるので、分かりやすく説明したい場で活用されているのです。
天気予報以外でも、時候の挨拶などでこの言葉を使用することがあります。
まとめ
冬将軍は、寒い冬、厳しい寒さを擬人化した言葉です。かの有名なナポレオン・ボナパルトがロシアに大軍を率いて攻め入った際に、シベリア寒気団の影響による寒さであっけなく敗北してしまったということから、ロシアの友軍として冬将軍という言葉が産まれました。現代では気象用語のように使用されることもありますが、気象用語では無く、ナポレオン軍を揶揄したマスメディアから広まった言葉だったのです。
このシベリア寒気団は、日本の冬にも大きな影響を及ぼし、厳寒をもたらします。冬将軍の訪れは西高東低の気圧配置に入ることを示します。耳にする機会があれば、冬支度をして寒さに備えるようにしましょう。