節分の時期になると、節分用のいわしが売られているのを目にします。節分の飾りでは本物のいわし以外にも、イラストなどが掲げられているのも目にしたことがある人は多いのではないでしょうか?では、一体何のためにいわしを掲げるのでしょうか?ここでは、節分といわしの関係を中心にご紹介します。
節分とはどんな行事なの?
節分とは、日本の雑節の一つです。各季節の始まり(立春・立夏・立秋・立冬)の前の日をいい、今では主に春の始まり(立春)の前日のことをいいます。
節分は、季節を分けるという意味があり、旧暦ではこの日から新年が始まると考えられていました。現在でも12月31日の大晦日、2月の節分を年越しと捉えている地域もあります。厄払いなどは、この日までに済ませると良いともいわれ、一年がここから始まるとされているのです。
節分の過ごし方は、「鬼は外」「福は内」と掛け声をかけながら、炒り大豆を撒き、年齢分の豆を食べて厄除けをします。豆などを撒くのは全国的に行われています。その他にも、その年の吉方位を向き、太巻き寿司(恵方巻)を食べる習慣も全国的に一般化してきました。柊鰯(ひいらぎいわし)というものを厄除けに飾るところもあります。
節分にいわしを使用する意味は?由来は何?
では、節分にいわしを使用するのは何故なのでしょうか?
その意味や由来を調べてみると、鬼を祓うためということが分かりました。
昔から「季節の変わり目には邪気=鬼が生じる」と考えられていて、それを祓うのに様々な手法を行っていたのです。
今でも全国的に柊鰯ややいかがしが飾られています。
やいがかしの由来は、「焼き嗅がし」という言葉だといわれています。焼いたいわしの匂いが嫌いな鬼は、「臭い臭い」と逃げていきます。また、鬼は目が急所なので、柊のようなギザギザの葉が目に刺さり、「痛い痛い」と逃げていくのです。
いわしを使う理由は、青魚の匂いが強いという点と、魚へんに弱いと書くほど足が速く腐りやすい=臭い匂いが出やすいためです。鰯は生魚のまま置いておくとすぐに匂いが出ます。昔は生のまま使っていたとも言われていますが、焼くことで煙が出て周囲に匂いを付けることができるため、焼くのが一般的になりました。
柊を使うのは、葉がギザギザしていて丈夫なためです。柊のほかにも、海桐(とべら)やモミ、かや等が使用されています。
奈良県の吉野町では、鬼ではなく、一本足という妖怪が出るといわれており、それを祓うためにやいかがしを玄関に掲げます。
いわしの頭と柊はどうやって飾るの?
柊の小枝を割り箸など棒状のものに括り、先端に焼いた鰯の頭を刺して玄関や柱などに取り付けます。
名称は柊鰯(ひいらぎいわし)、やいかがし、やきさし、やきくさしなどと呼びます。
この飾りは地域により作り方や呼び名が変わります。
愛媛県では「鬼ぐい」と呼ばれ、タラの木に柊の葉や煮干しを括り、戸口に吊るしています。
山口県では「鬼バラ」と呼ばれ、タラの木や山椒の枝にすすきやトベラを括ります。
柊やいわし以外にも、目籠や護符を一緒に飾るところもあります。
いわしに、唾を掛けたり、害虫駆除の呪文を唱えながら焼く「虫の口焼き」など地域により様々な方法で作られています。
いわしや柊を飾る期間も地域などで差が有ります。節分の前日から飾るところもあれば、当日午前中に飾るところもあります。鬼を祓うにはあまり遅くなると意味がないかと思われますので、当日の昼までには飾っておきたいところです。
また、取り外す時期も様々です。2月一杯は飾るとしているところもあれば、翌朝(立春の朝)に取り外すというところもあります。長く飾ると野良猫や野生動物をおびき寄せてしまうと考えて早めに外す家庭も多いようです。近隣民家と距離がある家であれば、少しゆっくりでも良いでしょう。
いわしの臭いで鬼が逃げていく!?他に鬼を祓う方法は?
前述の様に、鬼はいわしなどの臭いが嫌いなので、やいかがし等が飾られた家には近寄らないと言われています。
でも、日本国内では、その他にも様々な方法で鬼が祓われています。
静岡県では、竹竿に目籠とハナノキ(仏事に用いられるシキミのこと)とビンカ(モチノキ科の植物)を括り、軒先の高い位置に吊るしておく「鬼おどし」という習慣があります。
山梨県では、長い竹竿に目籠とネズの小枝を括り庭先に立て、「鬼の眼をぶっつぶせ!!」と掛け声をかけながら福豆を投げつけます。
長野県では、5センチ四方の紙に「かに・かや」と二行で書き、玄関や勝手口、トイレや蔵、納屋などの入口に貼ります。鬼が来てもこの文字の意味を考えて悩んでいる内に夜が明けてしまうのです。
岐阜県では、短冊に鬼の顔、13個の点、五芒星が書かれた鬼札というものをツゲの小枝などと共に玄関に刺す風習があります。鬼は点の数や五芒星の書き始めを探すうちに夜が明けてしまうのです。短冊に「13月」と書き鬼を祓う地域もあります。
節分に食べたいいわし料理はコレ!!
柊鰯ややいかがしには、いわしの頭を使用します。それ以外の身は美味しく食べて、身体の中に宿った鬼を退治しましょう。
シンプルに塩焼きでも美味しいのですが、子供などには食べ辛いかも知れません。いわしのフライや梅煮、レモン煮なども小骨が気になるという人も居ます。
そんな人におすすめなのが、冬の寒い時期には子供でも食べやすい「つみれ汁」です。手軽にできるいわしのつみれ汁をご紹介します。
<材料>
- いわし 4~5匹
- ニンジン 半分
- ゴボウ 半分
- 大根 4分の1本程度
- お好みでネギ
- 小麦粉 大さじ2杯程度
- しょうゆ 大さじ1杯
- 酒 大さじ1杯
- みそ 大さじ1杯
<作り方>
- いわしは内臓と太い骨を取り除き、小麦粉、しょうゆ、酒、みそと共にブレンダーやミキサーで撹拌します。
- イチョウ切りにした大根やニンジン、ササガキにしたゴボウ、水を鍋に入れて煮ます。
- お湯が沸いたら、1をスプーンですくいながら鍋に入れます。
- 食材に良く火が通ったら、みそやしょうゆ(分量外)などでお好みの味に調えて出来上がりです。最後にお好みで刻んだネギをトッピングしても美味しくいただけます。
また、オシャレにしたいなら、オイルサーディンを使用したパスタやオープンサンドなども良いでしょう。オイルサーディンはそれだけで味が整っていますので、トマトなどお好みの食材と合わせるだけで美味しくオシャレな食卓が完成します。
柊鰯の処分方法は?
節分に飾った柊鰯、やいかがしの処分はどのようにすれば良いのでしょうか?
処分方法も特に決まっていませんが、様々な方法で処分されています。
綺麗な紙に包んで庭先に埋めるという家庭もあれば、お清めの塩をして自宅で燃やす、可燃ゴミに出すなどの方法があります。敷地が広く、埋める場所や燃やせる場所があるのであれば、それらの方法を取ることもできますが、マンションや賃貸ではそうはいきません。ゴミに出す方法が手軽でしょう。
まとめ
節分には全国的に広く柊鰯(ひいらぎいわし)を飾る文化が根付いています。これは、季節の変わり目に生じると考えられている邪気=鬼を祓うためと言われています。ひいらぎの葉のチクチクで鬼の弱点である目を刺し、鰯の臭いで近付けなくする目的があります。柊の葉と、焼いたいわしの頭を割り箸などに括り、戸口に飾るのです。この他にも、様々な地域で独自の鬼除けをしています。節分では豆を撒き、恵方巻を食べる以外にも、いわしを食べ自分自身の内側に生じる邪気を祓うことも大切なのです。いわしは小骨が食べ辛いという人も多いため、つみれ汁など食べやすい方法で楽しんでください。