ハチミツは好きですか?
パンに塗ったり、ヨーグルトに入れたり、料理にも使えます。
1歳以下の赤ちゃんに使えないことを除くと(乳児ボツリヌス症の原因になるため)、ハチミツは誰からも愛される便利な食品です。
そんなハチミツを人間は蜜蜂から手に入れているわけですが、蜜蜂のことを私たちは普段あまり気にしていません。
ですが、2006年頃からアメリカやヨーロッパで、一夜にして大量の蜜蜂がいなくなるというミステリーのような事件が起こっており、蜜蜂の数は減り続けています。
このままではハチミツが食べられなくなる、という単純な問題ではなく、蜜蜂が地球上から姿を消すと、植物も動物(もちろん人間も)も存在できなくなるとまでいわれています。
今回は蜜蜂について解説します。
蜜蜂が作るハチミツとは一体何なのか、一緒に考えてみましょう。
蜜蜂の重要な任務とは?蜜蜂がいなくなると、本当に人間も危ない?
蜜蜂は生きるための食料をすべて花から得ています。
花の蜜は蜜蜂にとっての食料であると同時に、巣を暖房するための燃料であり、巣を作るための材料になります。
蜜蜂の脚に、黄色い粉がたくさん付いているのを見たことがありませんか?
その正体は花粉です。
蜜を吸っている間に体の毛に付いた花粉が、自然と後ろ脚に集まり、ダンゴ状に丸まり、便利に持ち運びをされます。
巣に持ち帰られた花粉ダンゴもハチミツ同様、蜜蜂の食料になります。
こうやって花粉が運ばれることが、植物の受粉につながります。
花は蜜蜂に食料を提供する代わりに、子孫を残します。
花の蜜を吸って受粉の手伝いをするのは蜜蜂だけではないのですが、今では蜜蜂以外の蝶やハエ、アブなどの受粉をしてくれる昆虫が減っています。
また農地が広くなるに連れて、自然の受粉だけでは済まなくなり、どうしても蜜蜂に頼らざるを得えません。
今や農業での受粉はほとんど蜜蜂に頼っている状態です。
このことを考えると、蜜蜂がいなくなると農業ができなくなるわけですから、私たち人間にも危機が及ぶというのは、大げさではありません。
蜜蜂はどうやってハチミツを巣に持ち帰るのか?その意外な方法とは
花粉は花粉ダンゴとして運ばれますが、蜜はどうやって巣に持って帰るのでしょうか?
蜜蜂のストロー状の口で吸われた蜜は、蜜蜂の体内にある蜜胃という器官に貯められて、巣に持ち帰られます。
そこでほかの蜜蜂に口移しで蜜を与えたり、貯蔵したりします。
花の蜜は蜜蜂の体の中で分解され、更に巣に貯蔵されて水分が蒸発し、成分が凝縮することでハチミツになります。
巣で貯蔵されている間は、蜜蝋(みつろう)で蓋をして微生物の混入を防ぐという徹底した品質管理が蜜蜂により行われています。
ちなみに蜜蝋も、蜜蜂の体内で作られ、巣の材料として使われます。
現在でもクリームや口紅、ロウソクの原料として利用されています。
こうして蜜蜂が手間ひまかけて作り出したハチミツは、その栄養分のほとんどが糖質で、蜜蜂の(人間にとっても)貴重なエネルギー源になります。
何しろ蜜蜂は蜜と花粉を巣まで運ぶときには大変な重労働をしなくてはなりません。
自分の体重の半分程度の重さを、長い距離運ぶことができるのは、ハチミツのおかげだといってもよいでしょう。
蜜蜂が生きていくためには、糖質以外の栄養素も必要です。
タンパク質、アミノ酸、脂質、ビタミン、ミネラル類はすべて花粉から得ています。
女王蜂や幼虫に与えられるローヤルゼリーは、若い働き蜂が花粉を原料にして乳腺から分泌するものです。
ローヤルゼリーは栄養的にも魅力がありますが、この特別感が人間にとっては魅力なのかも知れません。
蜜蜂が作り出すものは、人間にとっても魅力的なことがわかりますね。
花の種類で味が違う?なぜ1種類の花からハチミツができるのか
店頭でハチミツを選ぶとき、瓶のラベルに花の名前が印刷されているものがあります。
種類は様々でどれを買おうかと、悩みのタネになりますが、どうして蜜蜂が1種類の花の蜜を集めて来られるのか、不思議ですよね。
実は蜜蜂は蜜が採れそうな花を見付けると、ちゃんと仲間に知らせることができます。
蜜蜂の8の字ダンスが、連絡方法になります。
蜜を採った蜜蜂は巣に戻ると、8の字ダンスをして仲間に蜜が採れる花のありかを知らせます。
そのダンスは蜜の量により激しくなるため、蜜蜂は優先的に蜜が多い花に向かうことができるのです。
同時に蜜蜂には、見付けた花の蜜を摂り尽くすまで同じ花に通う習性があるため、1種類の花の蜜でハチミツが作られることができます。
もちろん花によって、ハチミツの色や風味は違います。
その人の好みによってよいハチミツは違ってきますから、色々と探してみてください。
日本人の好みにあっているといわれているのは、レンゲやアカシアの花から採れたハチミツです。
どちらも色は薄めで、癖のない味をしています。
レンゲやアカシアのハチミツを基本にして、別のものを試してみると、味の違いがはっきりとわかって面白いですよ。
時期によって活動が違う!蜜蜂の1年とは
蜜蜂は巣の中に、女王蜂、雄蜂、働き蜂で構成される社会を作っています。
女王蜂は卵を生み、蜂を増やすのが仕事で、雄蜂は女王蜂と交尾をするためだけに存在します。
働き蜂は生殖以外の仕事をすべて受け持ちます。
毎年、冬は産卵と育児がストップしますが、蜜蜂は冬眠しませんから、秋のうちに蜜を貯蔵することが必要になります。
産卵と育児が再開する春は、蜜蜂の数が増え、活動が活発な時期です。
夏には花が減るために、蜜蜂にとっては夏枯れともいえる厳しい時期になります。
秋の花で何とか持ち直して、蜜を貯蔵し、また冬に突入するというサイクルを蜜蜂は繰り返しているのです。
同じサイクルを繰り返している蜜蜂の世界にも新しい動きが生まれることがあります。
繁殖により蜜蜂の数が増えすぎると、新しい女王蜂が誕生して、蜜蜂の群れが分かれますが、これを分蜂といいます。
古い女王が蜜蜂の群れを引き連れて、新たな居場所を探している様子はまさに大群を引き連れている女王そのもので、迫力満点です。
民家の壁などに止まって休んでいるところを見ると、大抵の人が驚いてしまいますが、蜜蜂は何かされない限りは攻撃してこないようです。
刺激せずにしばらく様子を見るとよいでしょう。
蜜蜂にも種類がある!日本と西洋の違いとは
今ハチミツを採るために養蜂家に飼われているのは、ほとんどがセイヨウミツバチです。
これは明治になってから養蜂技術と一緒に日本に輸入された種類です。
日本の在来種であったニホンミツバチがすぐに巣を放棄して逃げ出してしまうことや、セイヨウミツバチを使うとハチミツの収穫量が5倍以上になることなどから、ハチミツ作りではセイヨウミツバチが主役になりました。
何もかもセイヨウミツバチが優れているのかというと、そうではありません。
天敵のオオスズメバチが巣に侵入してくると、ニホンミツバチは集団でオオスズメバチを取り囲み、体から熱を発して蒸し殺してしまいます。
これは熱殺蜂球というニホンミツバチに特有の技です。
同じ状況でもセイヨウミツバチは、1対1で立ち向かうため、数時間で全滅してしまうことがあるそうです。
セイヨウミツバチはその習性から1種類の花の蜜を採ることが多いですが、ニホンミツバチは色々な花の蜜を採ります。
その結果できたハチミツは「百花蜜」と呼ばれます。
1種類の花から採れるハチミツ・単花蜜と比べて百花蜜の味わいは複雑で独特です。
今ニホンミツバチは養蜂の現場ではほとんど見なくなりましたし、先程紹介した通り、セイヨウミツバチも減り続けています。
1万年前には、すでに人間によりハチミツが採取されていましたし、5000年前のエジプトでは養蜂が行われていて、蜜蜂と人間はともに歩んできたことがわかります。
蜜蜂についてきちんと知っていると、蜜蜂だけが消えて人間が無事でいられるわけはないと実感できます。
私たちは蜜蜂が安心して蜜を採れる世界を作るために、もっとできることがあるのではないでしょうか。
まとめ
今回は蜜蜂について解説しました。
どうやってハチミツが作られるのかについても説明しましたから、ハチミツを選ぶときの参考にしてください。
これ以上蜜蜂の数を減らさないために、環境破壊をしないように生活することも大切ですが、養蜂家の人たちを活気付けるために、ハチミツを積極的に使うことも大切です。
ハチミツはパンやヨーグルトにそのまま使うほか、料理にも使うことができます。
甘味が付くのはもちろんですが、魚の臭みを取り除いたり、肉を柔らかく仕上げたりすることができるので、砂糖の代わりに使ってください。
また浸透性も高いので、生姜やゆずをただ細かく切って漬け込むだけで、美味しいハチミツ漬けを作ることができます。
人間は植物や動物から様々な恩恵を受けていますが、殺菌もせずにそのまま使うことができるのですから、ハチミツは素晴らしい作品です。
花からの恵みだけで何もかもまかない、素晴らしいハチミツを作り出す蜜蜂の生き方をもっと知りたくなりますね。