「雲雀」、これでなんと読むか、わかるでしょうか。
いわれてみると誰もが知っている鳥の名前です。
その鳥は春、暖かくなってくると、よく晴れた日に空高くでさえずっています。
よく通るその声は春を喜んでいるようにも感じられ、思わず空を探して、上を見上げますが、さえずっている場所はあまりにも高く、まるで小さな点のようにしか見えません。
だから雲雀、これは上手い名前を付けたものです。
今回は雲雀の読み方と意味について解説します。
雲雀は春の鳥?読み方と意味は?
雲雀はスズメ目ヒバリ科ヒバリ属に分類される鳥です。
雲雀と書いて、読み方は「ヒバリ」です。
雀の仲間ということで、雀の字が入っているのも納得できます。
雲雀は大きさが17cm程、全体的に茶色い羽をしていますが、羽の中央の軸が黒いので、茶色の中に黒い模様が散らばって見えます。
頭にはとさかのように見える冠羽があります。
草原や河原、農地など日本中どこにでも生息する鳥で、春によくさえずることで知られています。
このため、春を告げる鳥として親しまれており、様々な別名を持っています。
告天子(こくてんし)、叫天子(きょうてんし)、噪天(そうてん)、日晴鳥(ひばり)などですが、晴れた日に空高くで精一杯さえずる雲雀の様子をよく表した名前ばかりですね。
気象庁では生物季節観測の一環として、日本全国の雲雀の初鳴き日を毎年観測しています。
これは動物や植物の状態から、季節の進みや遅れ具合を把握するために行っています。
雲雀の初鳴きは、関東地方では毎年2月下旬から3月下旬にかけて観測されているようです。
北海道でも4月には鳴いていますから、現在でも雲雀は春を告げる鳥としての役目を果たしているといえます。
雲雀の生息地はどこ?抱えている問題とは
雲雀は地表に巣を作り、子育てをするため、丈の低い草地を好んで生息します。
空高くでさえずっているのは、繁殖期のオスの行動で、縄張り宣言をしているのだそうです。
この縄張り宣言は古くから「揚雲雀」と呼ばれています。
身を隠すところが少ない草地に巣がある雲雀は、空高くから常に侵入者に対して警戒する必要があったのでしょう。
春のさえずりの印象が強くて、春以外は存在感がなくなる雲雀ですが、1年中同じ草むらの中で目立たないように生活しています。
体の色や模様は枯れ草の中での保護色になり、外敵に襲われないようになっています。
さえずり方も、春以外は地味なので、もし人が見かけても雲雀だとは気付かないかも知れません。
春だけでなく、雲雀は1年中私たち人間とともに生活してきたのですね。
雲雀は本来どこにでもいる鳥でしたが、草地や農地の減少によってその数が減っているそうです。
草地は住宅地などになり、残った農地も雲雀が好む麦畑ではなくなってしまい、雲雀の居場所はなくなってしまったのでしょう。
東京都では、現在雲雀は絶滅危惧Ⅱ類に分類されています。
日本野鳥の会では、雲雀を守るために寄付を募ったり、雲雀について知ってもらうための小冊子を配布したりしています。
雲雀は今まで人間と一緒に生きてきた仲間です。
その仲間が消えてしまってよいはずはありません。
季語、音楽、シンボル!昔も今も親しまれている雲雀!
日本では昔から雲雀が春の風物詩でした。
これは雲雀が今まで、人間と一緒に生きてきた証拠ではないでしょうか。
万葉集にも登場し、松尾芭蕉や与謝蕪村も歌に詠んでいる雲雀は、現在でも春の季語になっています。
その年初めて見る雲雀を初雲雀、空を昇っていく雲雀を揚雲雀、地上へと下降していく雲雀を落雲雀など、様々な雲雀が季語として使われています。
昔の日本では、飼いならした雲雀を空に向けて放ち、高さとさえずりを競わせる遊びがありましたが、これも揚雲雀といいます。
いかにも春の楽しさが味わえそうな風流な遊びですね。
空を昇っていくとき、空中に留まっているとき、地上へと下降するときでは雲雀の鳴き声はそれぞれ違います。
空中に留まっているとき(つまり縄張り宣言をしているとき)は、様々な声のパターンを組み合わせて複雑なさえずりを作り出します。
このパターンは1羽毎に違うため、揚雲雀のような遊びに繋がりました。
雲雀のさえずりにも個体差があるようで、上手な雲雀とそうではない雲雀がいるようです。
上手なさえずりを多く聞くと、雲雀のさえずりは上達するといわれており、かつては揚雲雀に使うために、上手なさえずりを聞かせようと、籠に入れた雲雀とともに出かける人たちが大勢いたようです。
現在雲雀を飼育することは禁じられていますが、それだけ雲雀のさえずりには人を惹きつける魅力があったことがわかります。
また雲雀が空高くまで昇っていくことは、「雲雀が高く昇ると晴れ」ということわざになっています。
自分の体の大きさの割には高いところまで昇る雲雀は、気圧の変化などの気象条件を敏感に感じ取っていると思われます。
そのため天気がよければ、雲雀は高く昇れるし、そうでないときは低いところまでしか昇らないのかも知れません。
春はなるべく雲雀に空高く昇っていって欲しいものですね。
夏の雲雀が俳句に登場する例もあります。
「練雲雀」がそれですが、6、7月頃の夏の羽に変わる頃の雲雀を意味する言葉です。
練とは毛を変えることで、その頃の雲雀は飛び方も速やかではなく、鳴き声も元気がないそうです。
春の雲雀に比べると、夏の雲雀は物悲しさがつきまとっています。
それだけ春の雲雀に対する人々の愛情が強かったということでしょう。
現在も雲雀は人々に愛されているようで、北海道から熊本までたくさんの市町村の鳥になっています。
どこまでも空高く昇っていく姿から、学校のシンボルになったり、校歌に登場したりする雲雀もいました。
かつて雲雀を芸名とした偉大な歌手がいましたが、多くの人に歌を届け、誰からも愛された彼女にふさわしい芸名だったのではないでしょうか。
たとえ縄張り宣言であったとしても、空高く登っていく雲雀の姿を人々は憧れと愛しさを込めて見つめ、空から降ってくる歌声に耳を傾けたのでしょう。
そして耳を傾けたのは、日本人だけではなかったようですね。
イギリスには雲雀のさえずりをイメージして作った楽曲がありますし、オーストリアの作曲家ハイドンの弦楽四重奏曲第67番は「ひばり」という愛称を持っています。
雲雀のさえずりが日本でも外国でも愛されているのは、嬉しいですね。
雲雀が登場する民話!あのさえずりが意味するものとは
人々から愛されている雲雀ですが、春に晴れると律儀に空高く昇っていくことから、岩手県ではこんな民話にされています。
実は雲雀はお日様にお金を貸していて、返金を求めて空高く昇っているというのです。
中々返金してくれないお日様は、夏には雲雀の羽を焦がし、秋には雨を降らせました。
冬には寒くて地上の巣でじっとしているしかなかった気の毒な雲雀は、今でも春になる度に、お日様に返金を求めているのです。
みなが愛しているあのさえずりは、こういっているということです。
「貸した金、よこせ。さあ、よこせ、よこせ」雲雀には少し気の毒な民話ですが、そういわれてみると、空高くでさえずる雲雀は必死になっているようにも聞こえます。
いつかは貸した金を返してもらえるとよいですね。
あのさえずりからこんな民話を生み出すとは、岩手の人たちのセンスは中々のものですね。
雲雀だけど鳥じゃない!「草雲雀」とは何者?
ところで雲雀は春の季語だと紹介しました。
だから夏の季語である練雲雀は、盛りの時期を過ぎた雲雀の物悲しい感じがつきまとっているわけですが、秋の季語に「草雲雀」というのがあります。
これは雲雀と付いていますが、鳥ではなく虫です。
コオロギの仲間で、秋になると草の間で美しい鳴き声を聞かせてくれます。
声の美しさから草雲雀の名前が付いたようです。
実際に鳴き声を聞いてみると、共通点がないこともないですが、(鈴を転がすような鳴き声が、長く絶え間なく続く点が共通しているようです)どちらかというと、鳴き声が美しいものを雲雀と形容した結果の名前ではないかと思われます。
草雲雀という昆虫の名前で反って、雲雀に対する日本人の愛情が見えてくるようですが、少し紛らわしい感じがするのも否定できません。
揚雲雀や落雲雀などの仲間の言葉であると勘違いする人はいないのでしょうか。
雲雀の句が集められているところに、1つだけ草雲雀の句が紛れ込んでいると、これは間違いではないのかと気になってしまいます。
草雲雀は昆虫の名前であると、ぜひ覚えておいてくださいね。
まとめ
今回は「雲雀」の読み方や意味について解説しました。
雲雀がどんな鳥なのか、特徴も紹介しましたから、自分の家の周りを春になったら、よく探してみてください。
雲雀は季語として日本人に親しまれてきましたが、それだけではなく、民話にもなっていましたし、現在でも地名として残っています。
それは雲雀と人間は密接な関係にあった証拠でしょう。
でも近頃では、そんな雲雀が減少しています。
長い間春が来たことをともに喜んできた仲間が、消えてしまうのは悲しいことです。
ぜひ、雲雀についてもっとよく知って、雲雀のために何をしたらよいのか
考えてみてください。