近頃はカエルを見かけることも減ってしまいました。
実際に日本のカエルは数が減っていますが、そんな中で雨蛙の数は決して減っていないそうです。
ガマガエルは苦手、という人もいるでしょうが、雨蛙は小型の可愛らしいカエルです。
昔から日本人に親しまれていて、俳句の季語にも使われています。
今回はそんな雨蛙がどんな特徴を持っているのか紹介します。
体の色や鳴き声、寿命についても解説します。
なぜ、雨蛙は数を減らさずに頑張っていられるのか、気になりますよね。
雨蛙はみどり色?雨蛙の特徴と注意点とは
雨蛙は正式にはニホンアマガエルといい、日本にいるおおよそ42種類のうちの1つです。
体調は3~4cmくらいで、卵を生むとき以外は木の上で生活します。
そのため乾燥に強く、森や林だけでなく街中でも生活することができます。
この生活場所を選ばなくて済むところが、雨蛙の強みであり、この強みのおかげで雨蛙は数を減らさずに済んでいるといえます。
雨蛙はお腹側が白色で、背中側はきれいなみどり色ですが、周りの環境に応じて色を変えることができます。
体の色を変えることで、周りの風景に溶け込み、目立たなくなって、自分の身を守っていると考えられています。
雨蛙の皮膚はつるつるした粘膜に覆われていますが、これには自分の身を細菌などから守るために分泌している毒が含まれています。
雨蛙は人を怖れないので、手に乗せて遊ぶ子どももいますが、傷ついた手で雨蛙を触ったり、触った手で目や口などの粘膜に触れたりすると激しい痛みを感じることがあります。
触った場所が目だと、失明する危険もあるため、雨蛙を触る際には十分な注意が必要です。
みどり色のカエルは雨蛙だけ?そのほかのカエルとは?
雨蛙の色はみどり色だと説明しましたが、実は日本には、ほかにもみどり色のカエルがいます。
日本で見られるみどり色のカエルには、ニホンアマガエルのほかにシュレーゲルアオガエルとモリアオガエルがいます。
モリアオガエルは本州中央から日本海側の森林に生息していますが、シュレーゲルアオガエルは北海道を除く日本全国の湿地(水田)の周辺に生息しているため、ますます雨蛙と混同しやすいのです。
大きさもシュレーゲルアオガエルは雨蛙より少し大きいだけなので、余程のカエル好きでないと見分けるのが難しいかも知れません。
ですが、ニホンアマガエルとシュレーゲルアオガエル、モリアオガエルは別の科に分類されていますし、ニホンアマガエルには顔の両脇から目にかけて、褐色のラインが入っています。
これはニホンアマガエルだけの特徴です。
よく雨蛙と青蛙は混同されていて、中には雨蛙の別名が青蛙だと思っている人もいますが、これで誤解は解けたのではないでしょうか。
季語として使われる青蛙は、雨蛙と同じく夏の季語になっています。
季語に使われている青蛙はかなりの割合で雨蛙と混合されているようです。
雨蛙と似ていたばかりに、中々世の中の人々に認められない青蛙、少しばかり気の毒に感じられますね。
「青蛙ぱっちり金の瞼かな」という俳句がありますが、これなどはシュレーゲルアオガエルの目の特徴を表しているので、もしかすると作者は、雨蛙との違いをわかっていたのかも知れません。
雨蛙の名前、夏の季語になった理由、決め手は鳴き声!
雨蛙の名前の由来は、雨が振りそうになると鳴き出すことです。
普通のカエルが鳴くのは、繁殖期の夜です。
もちろん雨蛙も繁殖期に、オスがメスに自分の存在を知らせるために鳴きます。
そのため雨蛙の2つの鳴き方は、繁殖期に鳴くのが広告音、雨が振りそうなときに鳴くのが雨鳴きと区別されています。
雨鳴きは雨蛙に特有のものだといわれています。
カエルというのは、呼吸全体の30~50%を皮膚呼吸でまかなっています。
このため湿度が高いと活動的になって、鳴くことが増えるといわれています。もしかすると雨蛙以外のカエルも雨鳴きをするのかも知れませんね。
広告音の方は、雨蛙の産卵期である5~6月の夜によく聞かれます。
これは水田に水が張られる時期とちょうど一致しており、水辺の近くでオスが大きな声で鳴いてメスを呼びます。
5月の上旬には二十四節気の立夏があり、季節は春から夏へと移っていきます。
雨蛙が夏の季語になっているのは、この鳴き声で雨蛙の存在に人々が気づくのが立夏の頃であるためだと考えられます。
雨がつかない「蛙」なら、春の季語になります。
春の訪れを待ちわびた昔の人は、蛙が冬眠から目覚めたところを見守っていたのかも知れません。
春に目覚めた蛙が盛んに鳴き出すのは夏になってからですから、「蛙」と「雨蛙」で季節が違うのも当然のことでしょう。
昔から蛙はその鳴き声を楽しむもので、江戸時代の俳人たちも蛙の鳴き声を多く詠んできましたから、蛙の鳴き声には敏感だったのかも知れません。
人工的な音に比べて、カエルの鳴き声は人をリラックスさせる効果があるという人もいます。
人は人工の音を聞くと、そこから何か意味を読み取ろうとして頭を使ってしまい、疲れてしまいますが、カエルの鳴き声は人間にとって何の意味も持たないので、聞いていても邪魔にならず、リラックスできるということです。
夜にたくさんのカエルが鳴いていても、昔の人にとっては騒音にはならなかったのです。
雨が振りそうなときに鳴く雨蛙は、天気予報のない時代には、外で作業をする人々に雨を知らせてくれる便利な存在でした。
昼には天気予報をしてもらい、夜には鳴き声でリラックスしていたわけですから、雨蛙の存在が日本人の心に大きな影響を与えたとしても不思議はありませんね。
雨蛙の寿命は?人間が飼うと延びるの?
小さな雨蛙ですが、寿命は5年程度と意外に長生きをします。
自然界では長くても5年程度の寿命が、人間が飼うことでそれ以上に伸びるそうです。
中には10年近く生きるものもいるので、雨蛙を飼うのも楽しそうですね。
体はオスよりもメスの方が大きく成長しますが、鳴くのはオスだけです。
鳴き方も雨蛙ごとに違うので、飼っていれば自分だけの雨蛙に愛着が湧きそうです。
ただし雨蛙は生きたままの昆虫を食べていますから、動かないものを与えても興味を示しません。
飼育するにはペットショップで売っている、コオロギやハエなどを与えることが必要になります。
動かない餌は、ピンセットなどで動かしながら与えるとよいでしょう。
飼育環境を整えることも大切です。
カエルだから、と水を張った水槽で飼育する人がいますが、雨蛙は実際に水中で暮らしているわけではありません。
水を張った水槽では溺れてしまう可能性があります。
また、高すぎる温度もカエルにとっては危険です。
日当たりがよすぎる水槽の中で、干からびて死んでしまう事故も起きています。病気になる可能性もあります。
カエル特有のカエルツボカビ症という病気もあります。
雨蛙を飼う前には、信頼できるペットショップなどで、きちんとした情報を得ることをお勧めします。
昔の人たちが愛してきた雨蛙を、きちんと飼って長い付き合いをしたいものですね。
ずっと親しまれてきた証拠?歌や民話になっているカエルたち
カエルといえば、「かえるの合唱」を思い出す人も多いのではないでしょうか。
誰でも知っている歌ですが、実はこれは19世紀のドイツの童謡です。
親しみやすい歌なので、21世紀の今まで歌い継がれているわけです。
日本でも「雨蛙の親不孝」という民話が岐阜県に残っています。
何でも親の言葉と反対のことをする子どもの蛙に対して、病気になった親の蛙が、自分が死んだら川の側に葬ってくれと頼みます。
そうすれば川と離れた場所に墓を作ってもらえて、雨が降っても川に流されずに済むと親の蛙は考えたわけです。
ですが、子どもの蛙は自分の今までの行いを反省して、最後は親のいうことを聞いて、親の蛙を川のそばに葬りました。
雨が降る度に親の墓が流されそうになるため、雨蛙は今でも雨が降る前から、親が流れる、と鳴くのだそうです。
雨蛙は雨が降りそうになると鳴くことから、こんな民話ができたのでしょうが、せっかく自分を反省した雨蛙なのに何ともかわいそうな結末です。
歌といい、民話といい、昔から米作りをしている日本人にとって、カエルは身近で親しみやすい生き物だったという証拠のように感じられますね。
まとめ
今回は雨蛙について解説しました。雨蛙の特徴やどんなときに鳴き声が聞こえるのかについて詳しく説明しましたから、これからカエルの鳴き声が聞こえたら、雨蛙かどうか考えてみるのも楽しそうですね。
昔から日本人が親しんできた雨蛙は、季語として俳句に詠まれているほか、民話にも登場しますし、現代でも、子どもたちによって「かえるの合唱」が歌い続けられています。
私たちの周りからは自然が失われていく一方ですが、雨蛙が決して数を減らしていないというのは心強いですね。
雨蛙のことをよく知って、これからも雨蛙が暮らしていける環境を守っていきたいものです。