虹始見という言葉をご存知でしょうか?この字だけを見ると、「虹を始めて見た人の感想かな?」と思ってしまうかも知れません。でも、これは日本の晩春を表わす美しい言葉なのです。では、一体どんな意味を持つ言葉なのでしょうか?
ここでは、虹始見の意味や読み方、虹についてを詳しくご紹介します。
虹始見とはどういう意味?
虹始見とは、日本の季節や風土、動植物や気候の動きなどをピンポイントに表わした「七十二候」というものの一つです。
1年間を24分割した二十四節気の清明の末候にあたります。具体的には4月15日から4月19日頃を指します。
文字を見ても分かるように、虹が出始める頃という意味を持ちます。虹は、大気が乾燥している時期には出辛く、出ても非常に薄いものなのです。でも、春になり、空気中が潤うに従い徐々に濃い虹が現われるようになるのです。春になると立て続けに連日虹を見るという人も多く、空の風景写真をとる人も増えてきます。また、この頃から夏にかけては、大気の状態が不安定なことが増え、ザァーっと夕立が降ることが多くなります。近年では、「ゲリラ豪雨」など、時に非常に強く雨が降ることもあります。そんな突然降る雨の後に、美しい虹が見られるようになるのです。春雨の後に見える虹は、薄いものになりますが、とても綺麗なものです。虹が見えるようになると、空を見上げることも楽しみになります。虹始見という言葉には、「たまには空を見上げてリフレッシュをしよう」という意味も込められているのかも知れません。
虹始見の読み方は?
虹始見の読み方は、「にじ はじめて あらわる」となります。虹が初めて見えるという読み方だと思っている人も居るかも知れませんが、見る=現ると読ませています。
虹は、太陽の光が反射し屈折してできたものです。大気中の水分がプリズムとなり、光が分解されて様々な色の帯状になり人間の目に見えるようになります。よく、ホースで水を撒く際や、水しぶきの多い滝の周辺で小さな虹を目にすることがありますが、これも光が水滴のプリズムに反射することにより現われるのです。厳密に言えば、虹は一年中、様々な場所で目にすることができますが、大空に掛かる大きな虹は、空気中に水分を含み始める春頃からとなるのです。
虹始見を挨拶で使いたい!使い方は?
虹始見という言葉を日常生活に用いる場合、どのような使い方をすれば良いのでしょうか?
普段の会話で使うのは難しいものですが、手紙やハガキ、ブログやコラム、会報などの文章で時候の挨拶として使うのが一番自然な使い方です。
例えば、「虹始見、美しい虹が見られる時期になってきました~」
「虹始見、近頃は春雨が降り憂鬱な日々が続きますが~」
など文頭の挨拶に使うと良いでしょう。
七十二候を普段使いこなすにはハードルが高いのではないかと感じてしまうかも知れませんが、時候の挨拶という使い方をすれば、自然に使いこなせるのです。
この時期に旬を迎えるものや行事は?
虹始見の時期に旬を迎えるものは、みつば、桜エビ、とびうお(アゴ)、メバルなどです。
メバルは春を告げる魚と呼ばれています、煮付け、刺身、塩焼きなど様々な方法で食べられています。とびうおは、アゴとも呼ばれ、身は淡白な白身で、あっさりとした味わいです。アゴ出汁という美味しい出汁もとることができます。
桜エビやみつばは一緒にかき揚げにしても美味しくいただけます。新物の三つ葉は柔らかく美味しいものです。
また、4月17日頃は、「春の土用入り」と言われます。土用の日には、土公神という神が土の中に居るとされている日です。そのため、この日に農耕のための土いじりや草むしり、穴を掘る、地鎮祭などを行うと神が怒り災いが起こるとされています。更に、開業や開店、新居への引っ越し、就職や転職、結婚など新しい事を始めるのも極力避けた方が良い日です。土用には土用殺が禁止となっているため、殺生も基本的に禁じられています。
旬とは少し異なりますが、この時期に蜃気楼が見えるというのも有名な話です。富山湾では、春の蜃気楼が見えます。蜃気楼は、夏に見られる不知火(しらぬい)や逃げ水が有名です。春から夏に掛けて見えるものもありますし、逆に冬の時期に見えるものもあります。
近年では、国際化が進み、イースターといわれる、キリスト復活祭も盛り上がっています。イースターもおよそ4月15日前後になります。
虹を見れたらラッキーな気分になる!
雨上がり、虹を見れたら何だかラッキーな気分になりませんか?そして、誰かにそのことを伝えて共感したくなってしまいます。それは何故なのでしょうか?
虹は旧約聖書のノアの箱舟にも出てきます。神がノアとの約束のしるしに空に虹を掛けたとされ、そこから人類が増えていったとされているのです。そのため、人は虹を見ると本能的に神のご加護を受けているように有り難く感じるのかも知れません。
また、虹はいつも必ず見えるものではありません。その日、その時、その方角に、その色で見えるのは一生に一度なのです。しかも、早く見つけないと比較的すぐに消えてしまいます。虹にはそんな希少性があり、それ故に見れたらラッキーと感じられるのです。
虹は何色?何色あるの?
虹と聞くと、瞬時に7色を思い浮かべる日本人が多いと思います。日本では内側から、紫色→藍色→青色→緑色→黄色→橙色→赤色の順番で虹が掛かるとされています。
でも、実はこの定義は国により様々なのです。欧米では、虹は6色とされていて、藍色を考えません。ドイツなどでは、更に橙色を抜かした5色という認識です。アフリカ諸国に至っては、虹は暖色と寒色の2色だと言われているのです。そもそも、色の名前が多く、色の認識も多い日本と、そうではないアフリカ諸国の色彩感覚を共通認識とするわけにはいかないのです。
また、虹が発生するタイミングや時期、場所などにより、若干の色の濃淡がありますが、色彩学上では7色あるとされています。ただ、虹の色には、はっきりとした境目がある訳ではないので、人の目で7色をくっきり認識できるとは限りません。ですから、地域により様々な見解が出ているのです。
虹は一度で2本できるって本当?
虹は、必ず2本でワンセットとなっています。
虹は、太陽の光が水に反射、屈折したものですので、必ず対になっているのです。濃く見えているのが「主虹」と呼ばれ、薄く、一回り大きく見えているのが「副虹」と呼ばれています。
この2つは、まるで鏡を見ているように、色も真反対です。
日本が同時にしっかり見えるというのは、非常に珍しいため、もし目にしたらラッキーですね。
また、飛行機などに乗ったり、高い山に登ると虹を上から見るという機会があります。これらは、雲の影に光が反射するブロッケン現象で起こります。丸いリング状に見える非常に珍しい虹ですので、見れたら更にラッキーです。
中国の宣明歴でも虹始見となっている
中国で作られた宣明歴でも、4月15日から19日は虹始見です。中国で作られた宣明歴は、日本に伝わってきてしばらくは、そのままの形で使われていました。でも、徐々に日本の風土や気候、動植物などの誤差が出てきてしまい、日本独自のものへ改良されました。そのため、七十二候と宣明歴では少し違いがあるのです。虹始見は宣明歴と同じですので、やはり中国でもこの時期から虹が見え始めるのです。
中国では虹が大蛇(龍)と考えられており、そこから虫へんの字になったのでは?と言われています。古代中国では、虹が天に住む大蛇だとされ、良くないものが空から来る、不吉の前触れであるとされていました。得体の知れない超常現象として怖がられていたのです。でも、現代では神が龍に化けていると信じられているところもあり、幸運をもたらすといわれています。
まとめ
虹始見は、七十二候の一つであり、晩春を表わす季語で、美しい言葉です。具体的には4月15日から19日頃を表わしていて、その頃の日本は桜前線真っ只中です。春になると大気中に水分が増え、太陽の光が反射するため大きな虹が見えるようになります。この頃の虹は、まだ色が薄いのですが、梅雨時期、夏にかけて色が濃くなっていきます。
虹は幾多の条件をクリアした時だけに見える、美しい自然現象です。そのため、見れたら幸福が訪れると信じられています。
虹始見の頃は、新生活が始まり、まだまだ緊張が続く頃です。ストレスを溜め過ぎず、たまには空を見上げてリフレッシュをしてみましょう。雨上がりであれば、綺麗な虹が見えるかも知れませんね。