「蚯蚓出」とは、「みみずいずる」と読みますがどんな意味があるのでしょう。また、どういうシーンで使うのでしょうか。
今回は「蚯蚓出」について意味や使い方、由来などについてまとめました。
そしてそこからお話を広げ、ミミズの生態や体の仕組み、ミミズがわたしたち人間にとっては益虫である、と言われている理由についてもご紹介しています。
普段何気なく見ているミミズですが、意外な一面があるのです。
そして「蚯蚓出」という言葉をもっと広く知っていただければと思います。
蚯蚓出の読み方、意味は?
蚯蚓出とは、「みみずいずる」と読みます。
立夏の次候、七十二候の20番目にあたり、月日でいうと5月10日頃から14日頃までをさします。
この時期は冬眠していたミミズが地上に出てくる時期ということでこの名前がついたのでしょう。
啓蟄、というと3月のはじめですが、ミミズは蛙や蛇たちよりも目覚めが遅いようですね。
ちなみに、七十二候とは、二十四節気をさらに3つに細かくわけたもので、由来は中国にあります。
ただし、七十二候はかなり日本でのアレンジが加えられており、日本の風土や気候に合わせたものに変化してきています。
そういった変化の中でも、蚯蚓出は中国から伝わってきた言葉そのままに、現在も残っているものです。
蚯蚓出の「蚯蚓」はミミズと読みますが、「きゅういん」とも読み、中国では「ねじり、ひきずる」というミミズの行動をあらわすものです。
「きゅういんいずる」でもいいのですが、やはり日本で親しみやすい「みみず」と読むほうが一般的なようです。
たしかに、「きゅういん」では一瞬、なんのことをさすのかわかりづらいですよね。
みみずいずる、のほうが「暖かくなってミミズが地面からはい出てくる様子」という情景としても浮かびやすいですし、こちらのほうが分かりやすいでしょう。
蚯蚓出、手紙などでの使い方は?
蚯蚓出(みみずいずる)、という言葉の使い方として主にどういうところに使われるかというと、季節の言葉ですから、手紙の書きだしや俳句などに使われることが多いようですね。
上記しましたが、「蚯蚓出」は5月10日から14日くらいまでの期間を言います。その間に書く手紙の冒頭などに、「蚯蚓出の候」や、「蚯蚓出、ミミズが土から出てくる季節となりました」などとして使うのがおすすめです。
俳句に使う場合ですが、蚯蚓は夏の季語になります。
蚯蚓出も夏の季語になりますが、蚯蚓つながりでご紹介しますと、面白いことに、「蚯蚓鳴く」は秋の季語なのです。
蚯蚓が鳴く、というのも変なお話ですよね。
実はこれは秋に鳴く「おけら」の声を蚯蚓が鳴いている、としたものだそうです。
それにしてもミミズが鳴く、とはどう考えても有り得なさそうですが、なぜこのような言葉が生まれたのでしょうか。
日本昔話に、「蛇は昔歌が上手だったが目がなかった。
歌声がほしかった蚯蚓は蛇のところに行き、目と引き換えにその歌声をもらった」というお話があるそうです。
発声器官をもたないミミズが歌声をもらった、とはなんとも面白いお話です。
蚯蚓鳴く、はそのあたりからもしかしたらきたのかもしれません。
ちなみにこのお話の結末は、声をもらって大喜びだったミミズは歌を歌いすぎてしまい、喉が枯れてしまって、大きな声がでなくなってしまった、とあります。それで今では土の中で、か細い声で歌いつづけているのだとか。
ちょっと切ない結末ですが、いずれにしてもどことなくファンタジーが感じられてなかなかに興味深いですよね。
ミミズとはどんな生き物?
蚯蚓出、という言葉はミミズの生態などに関連して生まれた言葉と言えそうだ、ということがわかったところで、少し、ミミズという生物について触れてみましょう。
ミミズというとイメージするのは地面の上にいる細長くニョロニョロしたもの、という印象で、見た目などからどちらかといえば好まれるというよりは苦手、とする方も多いかもしれません。
見た目から、我々人間から比べると下等動物、なイメージのあるミミズですが、実はあの小さな身体には色々つまっており、さらにさまざまな役割をすることができるのです。
また、多くのミミズは雌雄同体なので、1匹で繁殖までこなすというある意味高度な生物であると言えます。
ミミズには目や耳、口などの目だった器官が見えませんが、体の表面には視細胞があって、光を感知することができますし、眼点もあります。
また、ミミズは傷の修復能力が大変高く、体に傷を受けると血管から細胞を移動させてすぐに修復することができます。
大きなミミズを捕まえると体がちぎれますが、これは自ら切る行為で自切といわれ、切った前半身から再生します。
とかげの尻尾切り、のようなものなのですね。
ミミズは主に土を食べて生活します。
そのミミズの行動が実はわれわれにとって、特に農家を営む人達にとってはありがたいものだったりするのです。
ミミズが益虫として主に農家の方々から重宝される理由について、次の項でご説明します。
ミミズの果たす役割
ミミズという生き物は土を食べ、その土の中に含まれる微生物や生物の死骸、落ち葉などを食べてそれを体の中で分解し、そして排出される糞が土にとって有効な成分が多く含まれているとされています。
しかもミミズは1日に自分の体重と同じくらいの土を消費すると言われています。
ミミズ1匹の大きさはそうでもありませんから、たったそれくらい?という印象もありますが、人間が自分の体重と同じくらいの食糧を消費しろとなると普通の人にはちょっと無理がありますよね。
それを考えるとミミズがいかにすごい食欲なのかがお分かりいただけるかと思います。
そしてその糞が土地改良や良い肥料になるとして、農家によってはミミズに生ごみを食べさせ、その糞を利用するやり方をとっているところもあります。
家庭で出る生ごみも消費されますし、まさに一石二鳥のやり方と言えますね。
また、ミミズはその死骸も土の養分となるのです。
ミミズの体には窒素やリン酸など、植物の栄養となる成分が含まれています。
ですから死んだ後土にかえったあとも役にたつ生物なのですね。
また、ミミズが土の中を動くことで土をほぐす役割も果たします。
土の中に丁度いい具合に空気が入り、やわらかい土壌を形成してくれるというわけです。
ミミズにとっては普通に生活をしているだけなのに植物や土、そしてわたしたち人間のために大いに役立っている生物だったのですね。
こういうことを知ると、土の上や道路などで見かけて思わず気持ち悪い、と思ってしまうミミズですが、少し見る目が変わってきそうです。
ミミズはなぜ雨の翌日に地面に出ているの?
ミミズは普段土の中にいるものなのに、時々、地面の上でひからびているのを見かけることがありますよね。
しかも、たまに何匹もいて、まだ生きて動いているものもいたりします。
なぜ彼らは地面の上に出ているのでしょうか。
地上に出てくるとひからびてしまうのなら最初から出てこなければいいのに、とも思いますが、彼らがそうするには理由があるのです。
ミミズが大量に地上に出ている日は、大体大雨が降った翌日だったりすることが多いです。
雨が降ると土の中の有機物が腐敗し、そのせいで炭酸ガスが発生し、土の中にいられなくなって外に出てきてしまうと言われています。
また、そのほかには、水が土の中に入り込んだせいで呼吸ができなくなる、という説もあります。
反対に、日照りが続いて土が乾燥し、住みづらくなったから外に出て移動する、というものや、天敵であるモグラなどから逃げている、という説もあります。
いずれにしても、ミミズにも理由があって外に出てきているわけですね。
そして、外に出てきたのはいいのですが、居心地の良い土壌を探して
地上を動いている間に鳥などに食べられてしまったり、夏の暑い日には太陽にやられて干からびてしまったりする、ということなのです。
夏のアスファルトの上はおそらくかなりの高熱になっているはずで、そんなところで干からびてしまうミミズのことを思うとなんとも言えない気持ちになってしまいますね。触れる勇気があれば、土の上に連れていってあげられるかもしれませんが、なかなか出来る行為でもないでしょう。
しかし、ミミズが地上に出てくる理由についてはまだはっきりとこれという理由も解明されはいません。
普段よく見かける生物であるミミズですが、まだまだ研究のされていない未知な部分があるのですね。
まとめ
今回は、蚯蚓出、という言葉の読み方や意味、使い方から、ミミズという生き物の生態などについてまとめました。
蚯蚓出、が、ミミズが土の中から出てくる様子を表す言葉である、ことからミミズについてもご紹介しましたが、害虫どころか逆に益虫である、ということは意外と知られていないことかもしれません。
ミミズに関してはまだまだ知られていない部分も多いそうなので、これから色々と解明されてくるのかもしれませんね。
蚯蚓出という言葉も耳慣れない言葉かもしれませんが、今後手紙の書き出しなどで積極的に使ってみてはいかがでしょうか。