「竹笋生」とは「たけのこしょうず」と読みます。
この言葉にはどういった意味があるのか、また、由来は何か、竹の子の生態の様子と織り交ぜながら解説、まとめました。
「竹笋生」という言葉の使い方についても、例をあげながらご紹介しています。5月の中旬の七十二候にあたるこの言葉は、本来わたしたちが認識している「筍の旬の季節」というものを少し違った形で見せてくれています。
あわせて、5月に旬となる筍の美味しい料理の例もご紹介しました。
ぜひ、この5月に堪能してみてはいかがでしょうか。
竹笋生の読み方、意味は?
「竹笋生」は「たけのこしょうず」と読みます。
ほかにも、「ちくじゅんしょうず」とも読みますが、「たけのこ」としたほうが一般には分かりやすいですね。
「竹笋生」とは二十四節気の立夏の末候にあたり、七十二候の第21候に該当します。時期・季節としては5月15日ころから20日くらいまでをいいます。意味は、文字のならびそのまま、竹の子が地面から顔を出し始めることを表現したものです。
ですが、筍の旬というと春先というイメージがありますよね。筍は大体3月~4月にかけて収穫され、わたしたちの食卓に「春の旬の料理」として並ぶことが多いです。実はこの、春早い時期に収穫される筍は「孟宗竹(モウソウチク)」という、中国江南地方が原産の筍なのです。この筍は17~18世紀に中国からきたものとされ、肉厚ながらやわらかくえぐみが少ない筍として現在では日本でもこちらの品種が主流となっています。
「竹笋生」の表す筍が指すのは、日本オリジナルの筍、「真竹(マダケ)」のことです。こちらの旬は5月から6月にかけて、ということですからまさに「竹笋生」なのですね。ただし、この真竹は別名「苦竹(ニガタケ」と呼ばれるほどに、えぐみが強く、アク抜きが難しい、ということであまりお店や家庭には出回らないのだそうです。しかし、収穫したての真竹はそのまま刺身で食べられるほどに絶品といいますから、貴重な味覚だと言えるかもしれません。
竹笋生の言葉の使い方は?
「竹笋生」という言葉の使い方はどうでしょうか。やはり手紙の時候の挨拶として冒頭に入れる、という使い方が一般的でしょう。使える時期としては上記しましたように大体5月15日から20日くらいまでの間に出すお手紙で、「竹笋生の候」、や、「たけのこが地面から顔を出す季節となりました」「たけのこが美味しい季節となりました」などという書き出しなどがおすすめです。
ちなみに、中国から七十二候が日本に入ってきた時は、この「竹笋生」は「王瓜生(おうかしょうず)」という言葉でした。王瓜、とはカラスウリのことで、中国では昔から薬などに使われて馴染みのあるものだそうです。カラスウリは秋になると赤や黄色の綺麗な実をつけますから、ちょうどこの時期、5月ごろに芽を出すもの、という想像はつくものの、実がなるまでは植物に詳しい方でなければカラスウリとはなかなか分からないものですよね。
この、王瓜生という言葉は中国から七十二候が輸入されてきてすぐに「竹笋」へと言葉の変更がされているようなので、当時既に日本にとってカラスウリとは馴染みが薄く、春の旬として馴染みのあった筍に変更されたのではないか、とみられています。現代でもカラスウリが生えてくる季節になりました、よりは、竹の子が、としたほうが想像がしやすく、季節感が伝わりやすいですから、そこはなるほど、と納得がいきます。
筍(たけのこ)の漢字の由来は?
たけのこは、「竹の子」とも書きますが、「筍」とも書きます。
この漢字の由来はどこからきたのでしょうか。「竹」が「旬」である、と書くので、そのまま、竹の旬である状態だから、と思われる方も多いかもしれませんね。ところが「筍」の漢字の由来は、「一旬(約10日ほど)であの大きな竹に成長してしまう」というところからきているのだそうです。そう考えると、食べられる「筍」である状態はさらにもっと短い間になるわけですから筍がいかに貴重であるか、その間に食べることのできる幸運さを改めて感じます。
食べられる筍である状態はそんなに短いのに、竹そのものの寿命は120年ほどもある、とされています。そう考えると、なんだか不思議な気持ちになりますね。120年という寿命にも驚きなのですが、そんな長い間生きている植物なのに、人間が食べられる時期がそんなに短いものなのだ、というところにも、竹という植物の不思議さを思わずにいられません。
それでは次の項では、そんな竹の120年について、まとめてみましょう。
竹にまつわるミステリー?120年に一度しか咲かない花
竹はイネ科の植物です。
ここで既に、意外だと感じる方も多いのではないでしょうか。あの見た目からイネというのはちょっと想像がつかないですよね。ところが、花が咲くと、イネ科ということにも納得がいくほどに、稲穂のような花をつけるのです。そもそも竹に花が咲く、ということも信じられない、という方は多いかもしれません。
竹はまるで稲穂のような花をつけますが、真竹の花はなんと120年に一度しか咲かないのです。そして、咲いたあとは他のイネ科の植物と同様、枯れてその一生を終えます。竹の花は滅多に見られないということから、不吉なことの前触れ、よくないことが起きるのではないか、などと言われることも多かったそうです。120年というスパンですから、一生に一度も見られない人も多いですよね。
120年の時を経て開花し、子孫を残すべく種子を散らす竹ですが、実際は種子がなくても、地下に残った茎などから再生することも多いのだそうです。開花して種をつくらなくても繁殖していく能力をもちながら、そして120年も生きながら、最後には花を咲かせて枯れていくその竹の生態はなかなかにミステリアスといえるのではないでしょうか。
ちなみに、真竹は1970年代に一斉に開花しています。これが、前回の開花から約120年だった、ということで、「竹の一生は120年」ということがわかったのですが、このときは日本の真竹の3分の1が枯れてしまい、日本の竹関連の産業や竹加工業界には多大な影響が出たそうです。中国から製品を輸入する、という事態にも陥りました。次回の真竹の開花は2090年ごろとされています。まだまだ先の話すぎて、その頃がどんな世界になっているのかも想像がつきませんね。
初夏の旬の味覚、筍料理を堪能しよう
「竹笋生」という言葉から竹にまつわるお話まで書いてきましたが、最後に旬の筍の美味しい食べ方をご紹介します。せっかくですから「竹笋生」が示す筍である「真竹」を取りあげてみましょう。
真竹は、収穫してからしばらくたつとえぐみが強く、食べるには困難なものになってしまいますが、収穫したての真竹はアクも少なく、甘みもあるため、和食と大変相性が良いです。本当に採りたてのものでしたらそのまま刺身としても食べられますよ。調理するのでしたら、煮物はもちろん、天ぷらやホイル焼き、蒸し焼きなどはいかがでしょうか。筍は栄養も満点で、疲労回復や便秘の解消、ダイエットなどにも効果があるそうですよ。
良い筍の見分け方は、あまり伸びすぎていないもの(伸びすぎているものはアクが強いことが多いです)、そして皮の色が薄いものがおすすめです。また、皮にはつやがあり、しっとりしているものがいいですね。そして見た目よりも重量感のあるもの、細いものよりは太くて短いもの、節目の間隔の狭いもの、も美味しい筍には欠かせない要素です。
収穫後、日がたっているものは、普通の竹に施すようなアク抜きをしてから料理に使いましょう。真竹は孟宗竹よりはあまり出回らないものではありますが、こちらのほうが好みだという方は多いです。是非、5月の半ばころ、スーパーなどを見てみてください。
「竹笋生」から色々お話を広げましたが、普段あまり聞き慣れない言葉ではあるかもしれませんが、日本人が古来から大事にしている「旬のものをその時期に食する」文化には非常に根付いて関係の深い言葉なのですね。
まとめ
今回は「竹笋生」という言葉について、読み方や言葉の意味、使い方などについてまとめました。
「竹笋生」から筍にも話題を広げ、竹というものの一生についても触れています。筍というと3~4月にかけての旬、と思われがちでしたが、5月に旬の筍もあるのですね。しかもそちらのほうが日本古来のものである、ということですから、5月、「竹笋生」の季節にはスーパーなどでちょっと意識してみたいものですね。逆に、5月に筍を見かけたら、「ああ、竹笋生の季節だな」と考えを馳せるのもいいですね。
ぜひこの季節感あふれる言葉を、お手紙の冒頭などで生かしてみてください。贈られたお相手にも季節の伝わる、素敵なお手紙になることでしょう。