古代の中国で作られたという七十二候には、カレンダーなど無かった頃の人々の知恵が詰まっています。
日本の風土に見合った季節感を表現する言葉に変えられ、より身近なものへと変わっていった時候。
現代では欲しい物がいつでも手に入ることもあり、あまり季節感を感じることもなくなってきていますよね。
ですが、せっかく日本人に生まれたのですから、少しだけその季節にしかないものを知り豊かさのありがたみを感じてみてください。
こちらでは十九候~二十四候までをご説明していきます。
十九候~二十四候の読み方解説
七十二候というと「言葉が難しい」「漢字を読むことができない」など、その文字自体に理解が容易ではないというイメージを持っている方がほとんどかもしれません。
もちろん中国から伝わったものなので、やや難しい言葉が使われていることも確かではあります。
ですが中国と日本の風土や習慣は違うところも多く、実はわかりやすく日本独自のものに変化しているのです。
良く見てみると日本の生活に密着している物も多いのが特徴的で、知れば知るほどとても身近に感じるでしょう。
そんな七十二候の中で、十九候~二十四候までを詳しく解説していきます。
まずは難しいとされている読み方について。
- 十九候「蛙始鳴」と書いて、「かわずはじめてなく」と読みます。
- 二十候「蚯蚓出」と書いて、「みみずいづる」と読みます。
- 二十一候「竹笋生」と書いて、「たけのこしょうず」と読みます・
- 二十二候「蚕起食桑」と書いて、「かいこおきてくわをはむ」と読みます。
- 二十三候「紅花栄」と書いて、「べにばなさかう」と読みます。
- 二十四候「麦秋至」と書いて、「むぎのときいたる」と読みます。
読み方はこのように基本的に漢字だけの3文字か4文字を、文章の様に読むのが特徴です。
まるで漢文の様だと思った方もいることでしょう。
まさに読み方は中国からの影響を大きく受けているといっても良いかもしれませんね。
また漢字を見ると、時候がわかるのが特徴です。
ただし日本人が思う季節感と漢字が一致しない場合も多いので、しっかりと日にちを覚えておくのがおすすめです。
十九候~二十四候はいつのことをいう?
基本的に七十二項とは季節をより細かく表現することで、日付を身近に感じさせる役割があったと言えます。
あまりに大きく分けすぎてしまうと、カレンダーなど無い時代に農業のスケジュールなども立てにくかったのかもしれません。
実際に人々が感じたもので季節を知るという方法が当時は主流だったのですね。
そこで十九候~二十四候が実際にいつくらいのことを指していたのかをまとめていきます。
- 十九候 5月5日~5月10日まで
- 二十候 5月11日~5月15日まで
- 二十一候 5月16日~5月20日まで
- 二十二候 5月21日~5月25日まで
- 二十三候 5月26日~5月30日まで
- 二十四候 5月31日~6月4日まで
これが十九候~二十四候までの具体的な日付になります。
日にちを見るとわかりますが、こどもの日あたりから梅雨の前頃のことを指します。
十九候~二十一候の意味を日本古来の伝承と共に解説
漢字文化の日本ですから、大体の雰囲気は文字から想像をすることが出来ますよね。
ですが以外にも昔の暦と現在の季節感が違う場合もあるので、一概に必ず漢字だけで判断できるとも言えません。
これらの時候には当然意味があり、四季の良さが端的に表現されています。
それでは一つずつ詳しく意味を考えていきましょう。
十九候 「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」について
春になると農業が盛んになり、田んぼにも稲の苗が育ち始めます。
昔から蛙には「雨」を連想することが多いですが、ちょうど田んぼに蛙が出現するのがこどもの日あたりだったのでしょう。
また蛙のお守りなどを土産店で目にしたことがある方も多いはず。
日本では蛙は縁起が良いとされており、蛙が出始めるのを季節に表現したと言えますね。
外へ出しても必ずもとに場所に戻ってくる蛙と、「何度でも帰る」という言葉に繋がりを見出し「無事帰宅する」などの願いも込められていると言われています。
二十候 「蚯蚓出(みみずいづる)」について
ちょうど冬眠していたミミズが、土から出てくる様を表現しています。
あまり気持ちの良いものではない生き物とされていますが、実は土をきれいにしてくれることを知っていますか?
農家にとってはミミズが出ると良い土壌であるとも言われていますし、またミミズが土の中にいると土がやわらかく良く作物が育つとも言われているのです。
二十一候 竹笋生(たけのこしょうず)」について
たけのこと言うと、筍を思い浮かべますよね。
たけのこ狩りも最近注目されていますが、早いと3月中旬から。
ですが、こちらの二十一候で書かれているたけのこは、5月に芽を出す種類ではない可能性が高いです。
たけのこには大きく分けて2種類あり、こちらの七十二候で使われているものは「真竹」呼ばれる国産のもののことでしょう。
たけのこは土から芽が出るとすぐに食べごろが来てしまいます。
日にちにすると大体10日前後。
この成長の感覚が、「上旬」などの月の大体の言い回しを作りました。
実はこのたけのこは、昔から日本人になじみのある食べ物として知られています。
すぐに成長するたけのこは、こどものお祝いの席の料理でも良く使われますね。
そこには「すくすく育て」という意味が込められているのです。
二十二候~二十四候の意味を伝統産業や農業と共に解説
二十二候「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」について
まさに文字の通り、蚕が桑の葉を食べて成長する時期。
蚕が作り出す糸は、上質な着物や帯を作るものとして知られています。
今でこそ様々な製品が販売され手軽に購入できますが、昔は蚕産業は農業の生計を助けるものでした。
農家の4割は蚕産業を行っていたとの話もあります。
そんな蚕産業を取り上げ、ピーク時期についてを時候として表現しているのでしょう。
二十三候「紅花栄(べにばなさかう)」について
紅花は古代のエジプトでも、多くの人々に用いられてきた花。
水に溶けない赤い色が美しく、染色や口紅などに使われることもあります。
最近では食用油としても販売されているのを見かけますよね。
紅花は農家にとって歴史の深いものであるもの。
ちょうどこの5月の中旬から末にかけて、美しい紅花が咲き誇る様を表現していますね。
二十四候「麦秋至(むぎのときいたる)」について
漢字だけを見ると、まるで秋が来たかのように感じますが、季節としては初夏のことです。
実は前年の冬前にまいた麦が、収穫時期になるのがちょうどこの頃。
なぜ秋とついているかというと、麦の収穫時期=麦の秋という意味合いがあると言われています。
たしかに農作物は秋に収穫時期を迎えるというイメージがありますよね。
日本では米の収穫の印象が強いですが、農家にとっては麦もまた大事な収穫物の1つとなっています。
世界の暦の違い
日本はその昔から中国との交流が深かったことで、とても影響を受けてきました。
中でも七十二候などの季節を感じる言葉や、暦については特にです。
現在日本に暮らしていると当たり前のようになっているカレンダーですが、世界で統一されたのは一体いつからなのでしょうか。
例えば中国では現在でも2月を旧正月として祝っていますよね。
この春節と呼ばれる旧正月は太陽暦を使って計算するので、いまだに日にちが毎年変わります。
現代のカレンダーはグレゴリオ暦で作られています。
もともとグレゴリオ歴は1752年にイギリスで切り替えられたのが始まり。
それまでは少しズレの生じるユリウス暦を使っていました。
日本がグレゴリオ暦を採用したのはこの150年近く後なので、イギリスよりもとても時間がかかっていますね。
このようにグレゴリオ暦が日付として正しいものだと判明しても、それを取り入れるのに各国の時間に差があるわけです。
現在でもイスラム歴やユダヤ歴、エチオピア暦など、主に信仰している宗教や教会が中心ではありますが、様々な暦で生活スタイルを築いている方も多くいます。
そのためグレゴリオ暦がすべての方に「一般的」であるかというと、そうでもないのですね。
これらのことを見るとわかりますが、中国から伝わってきた七十二候などの季節感を独自のものに変えてきた日本は、島国であったということも理由の1つと言えるかもしれません。
今ほど飛行機や鉄道などの交通手段が少ない日本では、そこまで海外と交流を持てなかったはず。
そこでより日本の季節の繊細な移り変わりを、独自の方法により肌で感じることを大切にしてきたのでしょう。
まとめ
こちらでは七十二候の十九候~二十四候までをまとめてきました。
知れば知るほど魅力的な日本の季節感。
最近はどこでも何でも手に入る時代になり、季節感が薄くなってきていると言われています。
ですが旬の物や植物、生物などを愛でる気持ちはとても情緒が育ち大事なものですよね。
これからのお子様たちにもぜひ伝えていってあげたいものの1つでしょう。