中国から伝来された七十二候ではありますが、時を経て日本独自のものへと変化してきました。
七十二候は端的に表現された言葉の中に、その時の季節感が象徴されているのが特徴的です。
時候というものにこだわっている日本ならではの季節感が楽しめる七十二候ですが、中でも三十一候~三十六候までの詳細についてふれていきます。
こちらでは、細かく分けた時候の意味や読み方を一緒に考えていきましょう。
三十一候~三十六候の読み方を解説
七十二候を現在日常で使っている方がいるとしたら、手紙を書く時や俳句を作る時などではないでしょうか。
七十二候と聞いても、ピンと来ない方もいることでしょう。
七十二候とは1年を5日ずつにわけ、季節感を細かく表現したものになります、
現代では食事や物などに季節感が薄くなり、5日ごとに季節感を表現する方が難しそうですよね。
ですが昔の日本ではカレンダーや携帯などもないわけですから、当然自然の移り変わりや生き物の出現などで季節を感じることが当たり前だったのでしょう。
特に農耕民族である日本人にとって、作物が育つかどうかはとても重要であり生活に関わってきます。
毎日の天候の変化に敏感でないと、仕事もままならなかったということだったのかもしれません。
そんな七十二候の中で、こちらでは夏にあたる三十一候~三十六候までの読み方について解説していきましょう。
三十一候「温風至」と書いて、「あつかぜいたる」と読みます。
三十二候「蓮始開」と書いて、「はすはじめてひらく」と読みます。
三十三候「鷹乃学習」と書いて、「たかすなわちたくしゅうす」と読みます。
三十四候「桐始結花」と書いて、「きりはじめてはなをむすび」と読みます。
三十五候「土潤溽暑」と書いて、「つちうるおうてむしあつし」と読みます。
三十六候「大雨時行」と書いて、「たいうときどきふる」と読みます。
この漢字の部分だけを見るとそこまでわかりませんが、この中には季節それぞれの言葉がすべてに含まれています。
三十一候~三十六候はいつのことを指す?
七十二候が細かい季節を表現しているということはわかりました。
ことわざの様にも漢文に様にも感じる七十二候は、短い言葉から日本の四季についての特徴をそれぞれ見事に表しているといっても良いでしょう。
そんな七十二候で知りたいのが、それらがどの季節でいつなのかということ。
細かく分かれているだけに、意外とそれらがいつであるのかは知らない方が多いはずです。
そこでこちらでは、三十一候~三十六候までの詳しい時期についてご紹介していきます。
- 三十一候 7月7日~7月11日
- 三十二候 7月12日~7月16日
- 三十三候 7月17日~7月22日
- 三十四候 7月23日~7月28日
- 三十五候 7月29日~8月2日
- 三十六候 8月3日~8月6日
こちらが詳しい時期となります。
大体梅雨明けの頃から、お盆の1週間前くらいのことを指していますね。
ちょうど初夏から暑い盛りの季節というところでしょうか。
三十一候~三十三候までの意味は風・花・鳥が由来
七十二候全てに目を通した方はおわかりかと思いますが、全ての言葉には時候、俳句でいうところの「季語」が入れられています。
その季語を読み取り、三十一候からの季節を考えていきます。
七十二候の中には昔から誰しもが共有している季節感を表現している言葉が入れられています。
興味のある方は、その言葉に注目をしつつ季節の良さを感じていくのが良いかもしれません。
まずは三十一候~三十三候までの意味についてご紹介していきます。
三十一候「温風至(あつかぜいたる)」について
この温風という漢字から「春」を想像する方もいるのではないでしょうか。
温かい風が吹くという意味にも取れる「温風」ですが、実は湿った風のことを表現しています。
この時期は暦的にも梅雨明け時期。
ですがまだ梅雨が明けるかどうかの時には、空気もカラっとしておらず湿気を含んでいるのがこの季節の特徴です。
その湿気を含んだ南から吹いてくる風は「白南風(しろはえ)」と呼ばれており、梅雨明けの独特な風のことを指しているのです。
この白南風が吹くと、「梅雨明け」という合図だった可能性がありますね。
三十二候「蓮始開(はすはじめてひらく)」について
蓮という花は仏様をイメージさせる花として知られています。
お釈迦様が乗っている花でもありますし、釈迦の誕生秘話にも関係している重要な花でもありますよね。
そんな蓮が花開くのがちょうどこの季節。
実は7月13日からは旧盆であり、現在でも東京や住んでいる場所により7月にお盆をするところもあるでしょう。
ちょうど蓮が咲く時期でもあるので、旧盆と一緒に覚えるとわかりやすいでしょう。
蓮の花は大きく存在感があるので、花が咲くのを楽しみにしていた方が多かったのかもしれません。
三十三候「鷹乃学習(たかすなわちたくしゅうす)」について
漢字の中に「鷹」というものがありますね。
この鷹は誰もが知っている鳥の名前ですが、気になるのは「学習」という言葉です。
鷹が何の学習をしているのかというと、それは飛ぶこと。
鷹は5月と6月に羽化することで知られており、ちょうど7月の中旬あたりから飛行訓練を始めるのです。
現代で鷹は特別な鳥であるというイメージがありますが、昔の人々にとっての鷹は身近な鳥でもありました。
「能ある鷹は爪を隠す」や、「トンビが鷹を生む」など、日本に古くからあることわざに登場することも多い鷹。
鷹が独り立ちするまでの学習時期に、夏の暑さを感じていたのでしょう。
三十四候~三十六候の意味は、桐と天候が由来
それでは次に三十四候~三十六候までの意味を解説していきます。
三十四候「桐始結花(きりはじめてはなをむすび)」について
桐という言葉は、日本に馴染みの深い樹木ではないでしょうか。
良く嫁入り道具として「桐ダンス」などがあげられたりしますが、日本では昔から高級な木材として知られてきました。
桐の木を普段見る方は少ないかもしれません。
実は桐は10m以上の高さがあるものがほとんどで、身近では中々身近には感じない樹木。
桐は梅雨明けのこの頃花を咲かせ、その後に実をつけ飛散します。
桐の花が咲くと、そのあと本格的な夏が来ると考えていた可能性がありますね。
三十五候「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」について
土が潤うと聞くと、雨のイメージがありませんか。
この三十五候では、本格的な暑さがやってくる7月後半のことを表現しています。
そうなると雨と言う意味ではなさそうだということがわかります。
日本は高温多湿な気候であり、特に夏場の湿気は有名ですよね。
つまりここでは蒸し暑い夏には土も湿気で潤い、大地の草の青さが香ってくるという様な意味合いです。
夏休みに青い草のにおいの中で走り回る、子供たちの姿が思い浮かびますね。
三十六候「大雨時行(たいうときどきふる)」について
気圧や気候が安定しない夏の盛りには、大雨が降ることがありますよね。
今でいうゲリラ豪雨がそうでしょう。
この時期には入道雲が出てきたかと思うと突然の大雨に見舞われまたすぐに晴れるという様な、天気雨の状態も時折出現してきます。
そんな夏の特徴的な天気について表現しています。
三十一候~三十六候の大暑時期に生まれた日本人の知恵「打ち水」
日本には小暑・大暑と名付けられた時期があります。
それがちょうど三十一候~三十六候の頃。
文字通りそこまで暑くない夏と、とても暑い夏という意味ではありますが、実際に猛暑と呼ばれる日はこのあと始まります。
ですがこの大暑あたりから日ごとに暑さを増したことで、クーラーのない昔の日本人は「打ち水」という文化を作り上げました。
打ち水とは今でも続く独特な文化であり、日本では当たり前になりつつありますが、昔の人が何とか地面の熱を下げて涼を感じようと生み出した知恵といっても良いでしょう。
古代では神様の道という意味で打ち水を始めたと言われていますが、その後は暑さを和らげるために行われるようになりました。
コンクリート路面が増えた現代では、ヒートアイランド現象も気になるところ。
特に猛暑がひどくなっている日本では、エアコン以外に涼を感じる事ができる昔ながらの文化を試す価値が多いにあります。
暑くなったら水を撒き大地の熱を下げる、その様な習慣と共に季節を感じてきた日本人。
路面がコンクリートになった現代の熱ささえ緩和してくれる打ち水には、七十二候を肌で感じ、自然と共に生きていこうとしていた昔の人々の思想を感じざるおえません。
まとめ
こちらでは三十一候~三十六候までの、意味や時期などをまとめてきました。
知れば知るほど興味深い七十二候の時候は、日本人が自然と共に生きていく知恵を生み出してきました。
はっきりとした暦の無い時代に大体の目安となった三十一候~三十六候までの季節感は、夏を感じる大事なものであったに違いありません。
日本の風情や情緒を生み出した時候は、現代人でも頷ける様な素晴らしい言葉がたくさん入っていますね。