季節を表す七十二候は、その昔中国から伝わってきた繊細な時候です。
日本の風土に見合った季節感を表現している七十二候は、今でもその言葉の美しさに魅了されている人が多いほど。
この世界観を知れば知るほど、日本の四季に対する愛着がわいてくるのではないでしょうか。
そんな中でこちらでは二十五候~三十候について注目していきます。
丁寧に考察していくことで、よりその季節についての理解度を深め、日本古来の良さを味わうことができるかもしれません。
二十五候~三十候の読み方を知りたい!
まず七十二候を知らない方に、突然時候を全て見せても興味を持ちにくい可能性があります。
それは漢字。
漢字だけで構成される季節表現は、パッと見てわかりにくさを感じてしまうのは仕方ありません。
ですが実は良く見ると、読み方は日本語で作られた文章になっているのです。
もともと七十二候は中国から伝来されたもなので当然漢字ばかりですが、そんな中でも読み方は日本風になっているのが特徴です。
漢字と同様にひらがなもとても大事なもの。
短い文章の様になっている時候には、その時々の良さが凝縮して詰まっています。
そこでこちらでは二十五候~三十候までの読み方をご紹介していきます。
二十五候「蟷螂生」と書いて、「かまきりしょうず」と読みます。
二十六候「腐草為蛍」と書いて、「かれたるくさほたるとなる」と読みます。
二十七候「梅子黄」と書いて、「うめのみきなり」と読みます。
二十八候「乃東枯」と書いて、「なつかれくさかるる」と読みます。
二十九候「菖蒲華」と書いて、「あやめはなさく」と読みます。
三十候「半夏生」と書いて、「はんげしょうず」と読みます。
以上が二十五項~三十候までの時候の読み方になりますので、覚えておきましょう。
漢文を読んでいる様な味わい深さがあり、文字だけで情緒を表すことができるのもまた魅力ですね。
またこの中には現代でも農家の人が気にしている「半夏生」などもあり、日本人の信心深さが伺えます。
二十五候~三十候はいつ頃のことを指す?
それでは七十二候の中の二十五候~三十候までは、一体いつ頃のことを指すのでしょうか。
こちらでは具体的な日にちをご紹介していきます。
二十五候「蟷螂生」は、6月6日~10日頃
二十六候「腐草為蛍」は、6月11日~15日頃
二十七候「梅子黄」は、6月16日~20頃
二十八候「乃東枯」は、6月21日~26日頃
二十九候「菖蒲華」は、6月27日~31日頃
三十候「半夏生」は、7月2日~6日頃
このような日付になっています。
大体梅雨に入るか入らないかという季節から始まりますね。
七十二候は季節の植物や生物などを時候にしているケースが大変多く、漢字だけで想像が付く方も多いはず。
ですが二十五候~三十候はパッと見ただけだと季節がわかりにくい上、意味も読み方も難しいですよね。
二十五候~二十七候の意味を生命の力強さと共に解説
それではまず二十五候~二十七候の意味を解説していきましょう。
もちろんそれぞれ深い意味があるので、漢字だけでその意味を表現した日本人の巧みな技にも注目です。
二十五候「蟷螂生(かまきりしょうず)」について
蟷螂という漢字を日常で使われる方もいるかもしれませんが、非常に難しいのが特徴です。
そんな蟷螂は秋にメスが卵を産み付け、この6月上旬に卵がかえることで知られています。
この蟷螂の産卵や生育の研究は、幼少期に経験がある方もいることでしょう。
蟷螂の卵の形はとても珍しく、そしてその生き方もクローズアップされることが多いですね。
いまだ謎が多いとされている昆虫の中でもより子供に人気がある蟷螂は、その生態を知らない方でも彼らの「生」に対する本能に驚かされるに違いありません。
蟷螂の一生は短く、彼らの出現は季節感を表現するのに印象的であったといえます。
二十六候「腐草為蛍(かれたるくさほたるとなる)」について
この時期は現代でも蛍鑑賞の時期として話題ですね。
昔から蛍の幻想的な世界に虜になっていた人々は、時候に蛍という言葉を使ったのでしょう。
この蛍の意味ですが、蛍は土の中で成長し土から出てきた時に光りだします。
このことから蛍はいつしか「朽草」と呼ばれるようになったのです。
まるで朽ちた草の中から突然現れる蛍。
もしかしたら朽ちた草が蛍に変わるのではないかと人々が思ったのが始まりでした。
蛍の光るその姿が目に浮かぶような表現ですよね。
二十七候「梅子黄(うめのみきなり)」について
この梅は、この6月の時期にとても重要な役割を果たしている植物になります。
「梅雨」という漢字を見て下さい、梅の雨と書き「つゆ」と読みます。
この時期は文字通り、梅の実が熟して黄色くなる時期に雨が多いということで「梅雨」と呼ばれるようになりました。
そのくらい6月と梅の実はきってもきれないものがあるということなのでしょう。
毎日続く雨で電気もない時代には、緑色から綺麗な黄色に変わるこの梅が外を明るい雰囲気にしたのかもしれませんね。
二十八候~三十候までの意味は植物を使って表現
二十八候「乃東枯(なつかれくさかるる)」について
乃東という名前は耳なじみがないという方も多いことでしょう。
この乃東とは「夏枯草」の古い名前。
この乃東とはウツボグサと呼ばれる草と同じもので、漢方で使われる時に乃東と呼ばれていました。
ウツボグサとは紫色の綺麗な花を付ける植物で、万能薬とも言われています。
その効果を証明するように英名では「all heal」と言い、全ての症状を癒すという意味から付けられました。
この乃東は冬の頃に成長しだし、梅雨の頃に段々と枯れていきます。
乃東が枯れる頃になると、梅雨が来るということが知られていたのかもしれません。
二十九候「菖蒲華(あやめはなさく)」について
この文字であ菖蒲と書いてありますが、読み方は「あやめ」です。
一般的に菖蒲ときくと子供の日にお風呂に浮かべる、香りの強い植物を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
確かにこの菖蒲の読み方は「あやめ」でありますが、咲く時期は5月初旬から中旬まで。
だからこそ子供の日に使われていたのでしょう。
ですが二十九候の菖蒲華の意味は、実はこの菖蒲とは違います。
菖蒲華と聞くと菖蒲の花と思われますが、全く別物であります。
日本で改良された時に、葉の形が菖蒲に似ていることで付けられたのです。
名前もあやめはななと呼ばれ、混同しやすくなってしまいますね。
つまりこの時候で紹介されているあやめはなさくは、6月に咲く「華菖蒲」(現代では花菖蒲)ということになるわけです。
三十候「半夏生(はんげしょうず)」について
半夏生とは今でも農家の方が気にする日にちの1つです。
半夏生は夏至から11日目のことで、この日までに田植えを終わらせなければいけないという目安にしているのです。
多雨のこの時期には、空から毒入りの雨が降るなどと言われており、農家の人々が注意している日でもありました。
今でも各地で半夏生になると蛸を食べたり、うどんを食べたりと昔ながらの風習が色濃く残っている節目としても知られています。
時候の挨拶を知って手紙に活かす
正式な手紙を書くとき、時候の挨拶というものを書くことがマナーとなっています。
この時候こそが、日本で大事にされてきた七十二候の季節感を現代でも表現しているものとなりますね。
段々と身近で時候について使うこともなくなってきていますが、日本の良き文化である「手紙」にはまだまだ使われていることで知られています。
せっかく手紙を書くのであれば、美しい形式でしっかり時候の挨拶を入れたいところ。
それでは二十五候~三十候までの時期で使う時候の挨拶をご紹介していきます。
-
- 長雨の候
- 梅の実が黄色くなる頃
- 紫陽花の花が美しい梅雨の季節
などがあげられます。
長雨とは梅雨のことを指すので、拝啓の後にそのまま書き足すのが良いでしょう。
梅の実が黄色くなる頃は、まさに6月を指します。
七十二候の中にもあった様に梅雨を象徴する植物なので、もしも悩んだら時候の挨拶には梅を出すのがおすすめですね。
また紫陽花はまさに雨をイメージさせる花。
長雨の頃に日々美しい色になる紫陽花は梅雨に対する印象を悪いものではなく、美しく儚い印象に変えていきます。
手紙の中で使うのにはとても情緒があると言えるでしょう。
このように季節を表現するのは日本ならではの楽しみ。
ぜひ現代では少なくなりつつある手紙に活かしてみましょう。
まとめ
こちらでは七十二候の中でも、二十五候~三十候について注目しご紹介してきました。
それぞれ特徴的な植物や昆虫などを時候に用い、季節を表現する巧みな技はさすがです。
日本人の季節に対する細やかな配慮が伺えますね。
季節感のなくなってきた現代ではありますが、日本の良さをいかすためにもぜひ手紙などを書く機会をもち美しい言葉で文字を綴ってみましょう。
もしかしたら七十二候の中の季節感により興味を持て、理解を深めることができるかもしれません。