買い物やコーディネートで物や服を選ぶ際、みなさんはどんな点を重視されていますでしょうか。デザインであったり使いやすさもポイントですが、色味もかなり重要になってきますよね。特に流行色は、どこかにさりげなく添えることでお洒落度もUPするものですが、秋冬に人気が高まってくる色といえば「深紅」。流行色となることも度々ありますが、流行に関係なく落ち着いた赤色はどんな世代でも愛される色の一つですね。私たちを惹きつける深紅色ですが、実はその背景には理由があるのですよ。
今回は普段知りえない、深紅という色についての豆知識を詳しくまとめてみました。服装選びの参考になるポイントもご紹介しますので、日常生活でも役立つこと間違いなしです。
深紅の色は呼び方も色々!
深紅というと、「紅」の字からも分かるように赤系統の色ですね。ぱっと明るい赤色よりもワントーン落ち着いた色味のことをさし、その色調は私たちの心を惹きつける力があります。魅力ある色ということを示すかのように、実は深紅にはさまざまな呼び方が存在するとご存知でしたでしょうか。
●深紅の別名はこんなにある!
深紅は「しんく」と読むだけでなく、昔はこんな呼び方もされていました。同じ漢字でこれだけ読み方があるというのも珍しいですよね。
- ふかきくれない
- こきくれない
- こきべに
また深紅以外に「真紅」「韓紅(からくれない)」「艶紅」「京紅」と書いても同じで、落ち着いた赤色のことを表します。呼び方が一つではないということで、それだけ広範囲の地域で多くの人に愛されてきた色であるということがうかがえますね。
深紅は平安貴族の色!
「高貴な色」と聞くと、紫色をイメージする方は多いかと思います。確かに歴史の授業でも教わるとおり、冠位十二階では最高クラスの色と考えられていた色ですね。しかし実は今回とりあげている深紅も、昔は高貴な色として扱われていたのです。どうして深紅も高貴な色であったのか、こちらで理由を確認してみましょう。
●染め上げが大変だった!
日本で昔着られていたものといえば着物ですよね。現在の洋服よりも長く、それだけ一枚を作るのに大変な労力が伴いました。刺繍などの飾りもそうですが、布地を完成させるだけでも全て手作業ですから、かなり時間もかかったことでしょう。
手間暇かかる上、深紅に染め上げるには、一反(いったん。幅36cm・長さ12mで、大人一人分の着物サイズ)につき約6kgもの染料が必要だったようです。6kg分の染料となるとやはりコストもかかるわけですが、昔の方式で計算するとお米約6.5石分に相当したのだとか。一石が現在でいうところの150kgに相当するようなので、深紅の着物を持つことは、かなりの贅沢であったといえますね。
●禁色として着用が制限されていた
贅沢な深紅色の着物を着ることは貴族の特権と考えられ、平安時代には「禁色(きんじき)」として指定されていました。身分の低い人は着用を許されない色であったというわけです。そもそも莫大なコストがかかる深紅ですが、昔の人にとっても特別な色として、あえて区分を定めたくなるような魅力があったといえますね。
紅花は染色材料だった!
深紅に染めるには莫大なお金がかかるということで、深紅は高貴な色であったことが分かりましたね。では、着物一枚を染めるのに6kgも必要で、かつお米よりも高価であった染料とは一体何なのでしょうか。
●深紅にするまでが大変な紅花染色
日本の伝統的な深紅の色は、元々紅花で染め上げてできるものでした。紅花といえば現在では油の原料というイメージがありますが、名前に「紅」とつくように、本来は赤く染めるための染料としてやってきた植物なのですね。
シルクロードで運ばれて、飛鳥時代には日本に生息していたと考えられている紅花ですが、深紅に染めるには何と12回以上繰り返し染色しなければなりませんでした。1回の染色では、桜色程度にしか染まらないのだそうです。
江戸時代にはかなり普及していたようですが、当初はまだまだ栽培地も限られていたため、大量に紅花を生産するのは難しかったといえるでしょう。先ほど深紅に染めるには大量の紅花が必要となることはお話しましたが、希少な植物を使って何度も染め重ねる必要があるためなのですね。
●庶民が着られる色も作り出せた
何度も染色をしないと深紅にはならないということで、紅花で染色した着物でも庶民が着用可能な色はありました。ごく少量の紅花で染めた薄いピンク色「聴色(ゆるしいろ)」は、一般人でも着用を許された色だったそうです。しかしそれ以上深紅に近づけてはいけないとされていたようで、深紅がかなり特別視されていたことが分かりますね。
色にはそれぞれ意味やイメージが
そのコスト・貴重さから平安時代には禁色とされていた深紅色。日本でも古来より特別視されていた色味ですが、実は深紅は海外でも古くから王家や貴族に愛用されてきました。もちろん染色が大変で希少な植物を用いていたということも理由のひとつですが、それ以外にも深紅の色そのものに秘められた力があるからなのです。
●深紅は権威とパワーの象徴
色彩を利用したカラーセラピーなどがあるように、色が人に与える影響・印象の視覚的効果は実証されています。同じ系統かつ基調となる赤色は、生命力や富・力の象徴と考えられ、アグレッシブなイメージを持っています。赤色にはそもそもプラスのイメージがあるわけですが、そこに落ち着いた雰囲気が加わることで、深紅にはさらに「権威」「崇高さ」「安定感」といった印象を人に与える効果があるのです。
日本でも貴族が着る色でしたが、海外の絵画でもよく見かけるように、権力者は深紅色の洋服を身にまとっていませんか?昔は科学的に実証されたものではなかったはずですが、無意識的にも色が人に影響を及ぼすことが分かりますよね。深紅は各国共通して、身分の高い人が身につける色であり、パワーを感じさせる効果があったということです。
深紅の服はこんなシーンで最適!
昔は高貴な身分の人に制限された色であった深紅ですが、現代ではもちろん多くの人に愛され使用される色として普及していますね。先ほど述べたように、深紅は流行色となる年も多いですが、流行とは関係なく人を惹きつける魅力を持つ色味です。普段深紅を生活に取り入れるのであれば、どのように使うと効果的であり、どういった場に相応しいといえるのでしょうか。上述した深紅が人に与える印象を踏まえて確認していきましょう。
●コンサートやパーティーに
落ち着いた雰囲気がありながら、他者に対しプラスのイメージを与える深紅の服は、周りから一目置かれたい時や注目されたい時にもぴったりな色味です。派手過ぎない印象でありながら人を惹きつける力があるので、発表会やお呼ばれのパーティーで深紅のドレスを着るのはかなり効果的といえるでしょう。
●アクセントに使えばお洒落な雰囲気に
流行色であれば前面に押し出しても良いと思いますが、深紅をポイントで使ってみるのはいかがでしょうか。例えば靴下やスーツの胸元に深紅を取り入れることで、流行り廃りに関係なく「落ち着いたお洒落感」を演出することができます。さりげない所に人を惹きつける色を使うのが効果的というわけですね。
●お部屋に温かみや活力を添えたい時に
深紅は暖色系なので、冬場のインテリアにももってこいの色味です。明るすぎないのでお部屋にも馴染みやすく、赤系の持つ生命力・温かみを違和感なく取り入れることができますよ。書斎や会議スペースを深紅基調とすることで、ご自身の気持ちも高まりお仕事がスムーズに進む手助けとなってくれるでしょう。
まとめ
今回はあまり知られていない深紅という色味の歴史的な背景や影響力について紹介してまいりました。高貴な色といえば「紫」のみを連想していた方も、また新しい引き出しが増えましたね。日本のみならず世界中の人を惹きつけ、深紅を高貴な色とするのには理由があることもお分かりいただけたかと思います。色が人に与える効果を利用して日常生活に深紅を取り入れる工夫もご紹介しましたので、こちらの記事をお読みになって、多くの方が深紅についての魅力を理解してくだれば幸いです。