鼻腔をくすぐる独特の甘い香りで、秋の訪れを知らせてくれる金木犀(キンモクセイ)。
公園や生垣、鉢植えなどに幅広く使われている、秋の風物詩と言ってもいいほど有名な樹木ですね。
しかし、よく考えてみると「金木犀について詳しいことはよく知らない」という方も多いのではないでしょうか。
今回は金木犀の見頃や花言葉、育て方、剪定方法から香りの効能まで詳しく解説していきます。
金木犀の開花時期・花言葉などの基本情報を紹介
金木犀の開花時期は、9月下旬~10月中旬頃です。
この時期になると、直径5mmほどの4弁の小花を密生して咲かせます。
しかし開花日数はおよそ一週間と短く、あっという間に散ってしまいます。
素晴らしい香りで私たちを楽しませてくれる金木犀ですが、咲かせる花はとても小さく控えめです。
その姿から、花言葉は「謙虚」。
雨が降るとすぐに花が落ちてしまう儚さから「初恋」、潔く花を散らす様子から「気高い人」という花言葉もあります。
金木犀の原産は中国!三大香木のひとつ
金木犀はモクセイ科モクセイ属の小高木(5m以上10m未満の植物)で、白い花を咲かせる「銀木犀(ギンモクセイ)」の変種だと言われています。
金木犀の原産は中国南部。中国南部の桂林市が世界でも有数の産地で、中国では「丹桂(たんけい)」「桂花(けいか)」などと呼ばれています。
日本には江戸時代に伝わり、とてもいい香りがすることから、ジンチョウゲ、クチナシと並んで「三大香木(さんだいこうぼく)」と呼ばれるようになりました。
また、遠くまで香りが届くことから昔は「千里香」とも呼ばれていたそうです。
金木犀の英語表記は「fragrant olive」または「osmathus」
金木犀は日本を含むアジア圏を中心に咲く花で、英語圏やヨーロッパではあまり知られていません。
英語では「fragrant olive(香りのよいオリーブ)」などと言います。
金木犀が使われた香水などには、属名(ラテン語)の「osmanthus(オスマンサス)」が表記されていることが多いです。
「匂い、香り」という意味のギリシャ語「osme(オスメ)」と、「花」を意味するギリシャ語「anthos(アントス)」を組み合わせて、モクセイ属を指す「osmanthus」というラテン語ができたとされています。
このような由来からも、昔から人々が金木犀のいい香りに魅了されていたことがわかりますよね。
金木犀の植え方や育て方を地植え・鉢植えともに解説
金木犀は、苗を買って育てるのが一般的です。
挿し木にして育てる方法もありますが、開花までに5年以上かかってしまいます。
また、金木犀はおしべを付ける「雄株」とめしべを付ける「雌株」が別々に存在しており、日本に広まっている金木犀はほとんどが雄株のため実ができません。
種まきもできないので苗から育てるのがおすすめなのです。
金木犀は頑丈で生育旺盛なため、初心者でも育てやすい樹木。
地植えでも鉢植えでも育てられますが、3~6mくらいまで成長しますし、成木になってからの移植を嫌うため最初から地植えにするのが最適です。
金木犀を地植えにするやり方
植え付けは冬と夏を避け、3~4月、または10~11月頃に行うといいです。
金木犀はあまり寒さに強くないため、東北より南の土地でのみ地植えができます。
植える場所は以下のポイントを押さえてくださいね。
- 日当たりのいい場所
- 少し湿り気がある肥沃で水はけのいい土
水はけがよくない場合は、腐葉土や川砂を混ぜて調整しましょう。
【手順】
- 根鉢の2倍ほどの大きさ・深さがある穴を掘る(できたら深めに掘り、底をスコップで耕しておく)
- 有機肥料(堆肥や鶏糞など)と腐葉土を混ぜ合わせた元肥を、掘り起こした庭土に混ぜ、半分ほど穴に戻して埋める
- 根鉢を軽くほぐして穴に入れ、残りの土を戻しながら植え付ける(苗木の株元が地面の高さになるように)
植え付けたらたっぷりと水やりをして、棒などで突いて根と土を馴染ませましょう。
不安定な場合は支柱を立ててください。
水やりは、植え付け直後や夏の極端に乾燥するときだけで大丈夫です。
地植えの場合は基本的に植え替えは必要ありません。
金木犀を鉢植えにするやり方
金木犀はすぐに大きくなってしまうため、苗木よりも一回りから二回り大きい8号以上の鉢植えを用意しましょう。
【手順】
- 鉢植えの底に鉢底ネット、その上に鉢底石を敷く
- 赤玉土7:腐葉土3の割合で混ぜ合わせ、元肥(有機肥料)も混ぜる
- 用意した土を1/2~1/3ほど入れながら苗木を植え付ける
- 土の表面が鉢の3cmほど下に、苗木の株元が土の高さと同じになるように調整する
たっぷりと水やりをして、ぐらつく場合は支柱を立てて完了です。
その後も土の表面が乾いてきたらたっぷりと水をあげてください。
鉢植えの場合は根詰まりを防ぐために、2~3年に1回、3~4月に一回り大きな鉢植えへ植え替えましょう。
金木犀の肥料は1~2月に寒肥をあげよう
地植え・鉢植えともに、1~2月頃に寒肥として有機肥料を施すのがおすすめ。
さらに鉢植えの場合は、
- 夏が来る前の5月頃(追肥)
- 開花前の8~9月頃(花肥)
にも肥料をあげるといいでしょう。
鉢の縁に固形肥料を置いたり、液体肥料を与えたりします。
地植えでも様子を見て元気がないようでしたら、この時期に少量ずつ施肥してください。
花芽がつく前に肥料をあげ過ぎると花が少なくなってしまう可能性があるため、様子を見て必要な量だけ与えるようにしましょう。
金木犀の剪定方法!最適な時期は2月~3月
金木犀は一年に約15cmも枝が伸び、枝葉が対になって出るため生い茂りやすいです。
形を整えて、日当たりや風通しをよくするためにも毎年少しずつ剪定するといいでしょう。
金木犀は休眠期のない常緑樹なので、花つきを気にしないのであれば一年中いつでも剪定が可能です。
花を楽しむのであれば、剪定時期は2~3月が最適。
金木犀は春から夏にかけて花芽をつけるので、この時期の剪定は避けてくださいね。
また、軽い剪定や切込みであれば花が終わった冬の間(11月頃)にも行えます。
ただし、花後すぐは光合成を盛んに行って翌年の成長や開花に向けて準備をしていますし、あまり大幅に刈り込むと冬の寒さに耐えられなくなってしまいます。
冬の間は軽い剪定や刈り込みに抑えるようにしましょう。
11月に軽い剪定をして、2~3月に形を整える本格的な選定をするといいですよ。
葉がほぼなくなるくらいの強剪定をする(枝を深く刈り込む)と枝枯れを起こしてしまいますし、元に戻るまでに数年かかってしまいます。
毎年少しずつ剪定することがポイントです。
外側剪定は毎年行うのがベスト
金木犀の剪定には、枝の長さや形を整える「外側剪定」と、内側の枝を透かしていく「内側剪定」の2種類があります。
このうち外側剪定は毎年行うのがおすすめです。
一回り小さくするイメージで枝の長さを揃え、樹形を整えます。
金木犀は三つ又状に枝が伸びることが多いので、中央の枝は根元から剪定し、両サイドの枝は分かれ目から1~2節のところで切り落としましょう。
全体の形を眺めながら剪定する枝を決め、全体を整えたら丸みを帯びた形に微調整するときれいになります。
内側剪定は3~4年に1回でOK
外側剪定が終わった後、内側の枝を透かす内側剪定(枝抜き)を行います。
毎年行う必要はないので、3~4年を目安に行いましょう。
ただし金木犀は内側に不要な枝が多いため、剪定に慣れていない方は内側剪定から始めても大丈夫です。
- 内側に伸びている枝
- 下へ伸びている枝
- 枯れてしまった枝
- 交差している枝
- 徒長枝(勢いが強く真上に伸びすぎている枝)
- 近いところで平行している枝
新芽がついている枝は避けながら、上記のような枝は剪定していきましょう。
日当たりや風通しがよくなって病害虫の予防にもなりますよ。
金木犀の香りにはリラックスや美容など嬉しい効能が
金木犀は中国で古くから漢方として活用されてきたほど、さまざまな効能がある花木です。
現在でも芳香剤やアロマテラピーのオイルなど広く利用されています。
金木犀の香りには、以下のような効果が期待できると言われています。
- リラックス
- ダイエット(食欲を抑える)
- アンチエイジング
- 炎症を鎮める(消炎作用)
- 目の疲れを癒す
金木犀の香りは、香水やアロマオイル、ルームスプレーなどさまざまな方法で取り入れることができますよ。
また、金木犀のお茶「桂花茶」や、金木犀のジャム、金木犀のお酒「桂花陳酒」などもおすすめ。
おいしいだけでなくリラックス効果や美容効果も得られて一石二鳥です。
金木犀の香りを楽しみながら季節の変化を感じよう!
柑橘系のフルーティーな甘い香りで、夏の終わりと秋の訪れを知らせてくれる金木犀。
丈夫で育てやすい樹木ですから、苗から育てて毎年かわいらしい花と素敵な香りを楽しむのもおすすめです。
その香りにはリラックス効果や美容効果なども期待でき、アロマテラピーとしても楽しむことができます。
ただ、金木犀の花が咲く期間は一週間前後ととても短いです。
9~10月になったら金木犀がある公園などに出かけて、思いきり甘い香りを堪能してはいかがでしょうか。