家族や親族など身近な人が亡くなると、お通夜を始めとしてしなくてはならないことがたくさん出てきます。
これらのことを一括して弔事と呼びますが、弔事ならではのしきたりもあるため、
戸惑う人も多いのではないでしょうか。
結婚式なら前もって予定が立てられますから、わからないことは調べておけますが、
弔事に関してはそのときになって慌てることが多いようです。
世間には弔事に関してQ&A方式でわからないことに答えてくれるサイトもあって便利ですが、
いざというときには答えを待っている時間がないのが現実というものです。
今回は、そんな弔事Q&Aで質問が多い、不祝儀袋について解説します。
今、自分には関係ないと思っていても、いつかどこかで役に立つことがありますよ。
不祝儀袋の疑問!香典には、どんなのし袋を使えばよい?
葬儀に参列するときは、香典を包みます。亡くなった人の供養のために金品を包むのが香典です。
不祝儀用ののし袋が販売されていますから、それを利用します。
水引の色は白と黒、白と銀、銀と銀が不祝儀用です(地域によっては白と黄の水引も不祝儀用です)。
水引は結びきりという結び方で結ばれています。これは不幸が何回もないようにという縁起担ぎです。
香典の金額によっては、水引が印刷された簡易的なのし袋を使っても構いません。
香典の金額は亡くなった人との関係で変わります。香典、相場などで検索すると、金額を知ることができますが、
それよりも親族でいくらならよいのか相談すると早いでしょう。一人だけ高額な香典で、
足並みが揃わないということも相談しておくことで防げます。
お金の包み方!祝儀と不祝儀では違うから、気を付けて!
水引が付いているのし袋の場合、のし袋の裏側を見ると上下が重なるようになっています。
のし袋は封筒のような形状ではなく、一枚の紙を折ってお金を包むようになっているからです。
のし袋にお金を包んで、最後にどちらを上にするか疑問を感じる人が多いようですが、
祝儀と不祝儀では重なり方が逆になりますから、注意が必要になります。
不祝儀は悲しみのあまり深く頭を垂れることから、下の部分を先に折り、上の部分を重ねます。
祝儀の場合は逆に上を先に折り、下の部分を重ねます。これは下からバンザイをする様子を表しています。
市販の不祝儀袋には、包装紙の裏の部分に、どちらが上になるのか必ず記入されていますから、
確認するとよいですよ。
表書きを間違えないために!宗教・宗派が違っても大丈夫な表書きは?
不祝儀袋の表部分には、表書きを記入する部分があります。
水引が結ばれている、結び目の上の部分ですが、今は表書きが印刷されている袋が多いので、
そのまま利用しましょう。
弔事Q&Aでは相手の宗教がわからないので、表書きをどうすればよいのか、
という質問をよく見かけますが、葬儀の際の香典なら「御霊前」という表書きを使ってください。
不祝儀袋としてよく「御仏前」という表書きのものも販売されていますが、
ほとんどの宗派で御仏前は四十九日法要から使います。
御霊前は宗教、宗派を問わず葬儀の際に使える表書きです。
もし自分が葬儀の後の法事にも招かれる立場であるなら、
葬儀の際に相手の宗教・宗派をよく確かめておくことが必要になります。
受付で丁寧な印象を与えるためには、袱紗を使おう!
また、香典を受付に出す際に、不祝儀袋をむき出しのまま扱うのは、ぞんざいな印象を相手に与えてしまいます。
不祝儀袋がシワにならないように、購入したときに入っていたビニール袋に入れている人も見かけますが、
丁寧な感じは受けないものです。
不祝儀袋は(祝儀袋もですが)持ち運ぶ際には、袱紗に包みましょう。
祝儀と不祝儀によって使う袱紗の色が違いますが、紫ならどちらの場合にも使うことができます。
一つだけ袱紗を購入するなら、紫(薄紫は除く)がお勧めです。
一言でいうと、袱紗は風呂敷が小さくなったものです。
現金はのし袋に入れ、更に袱紗で包むことで、礼節と心遣いを表すことができるのです。
風呂敷状になっている袱紗は、祝儀と不祝儀ではのし袋の包み方が違います。
また、台の付いたものとそうでないものがあり、のし袋の差し出し方が違います。
簡単なのは、ポケット袱紗と呼ばれているもので、のし袋をポケットに納めればよいものです。
包み方も関係ありませんから、持っているととても便利です。
ポケット袱紗は文具店などでも販売していますから、購入するのにも便利です。
袱紗から取り出したのし袋は、袱紗に載せて(台付きの場合は台に載せて)
畳の上を滑らせるように相手に差し出しますが、葬儀ではそこまですると受付が渋滞してしまいます。
受付の人に向けて、丁寧に両手で香典を渡してください。
不祝儀袋は使わない?寺院・神社・教会へのお布施の包み方、渡し方
もし自分が葬儀を行う施主の立場なら、大抵は寺院や僧侶へ、お布施を差し上げなければなりません。
仏教で葬儀を行うなら、お経をあげてもらい、戒名(亡くなってからの名前)を頂くことへの謝礼です。
料金としてはっきりと提示している寺院もありますが、
そうでない場合は、いくら包めばよいのか不安になりますね。
これもネットなどで調べるよりは、地元のお年寄りや葬儀会社に大体の目安を聞いておきましょう。
直接自分で尋ねるのも確実でよい方法ですが、「おいくらですか」という聞き方ではなく、
「目安を教えてください」、「みなさんどれくらいお包みになりますか」とやんわりと聞いてみてください。
直接的に値段を尋ねても「お気持ちで結構ですよ」という返事ばかりで、埒が明かないことがあります。
お布施を入れるのは不祝儀袋でなく、半紙に包んだ後に奉書紙で包むか、白封筒に入れてください。
表書きの部分に「お布施」と印刷されている封筒が市販されていますので、それを利用するのが無難です。
また、お布施を差し上げるとき、水引は必要ありません(水引があってはいけないということではありません)。
お布施は葬儀をする側がお礼として寺院や僧侶に差し上げるものなので、祝儀か不祝儀かは関係ありません。
だから水引も必要ないし、表書きや名前を薄墨で書いて悲しみを表す必要もありません。
お布施を差し上げるときは、直接手渡すのではなく、お盆に乗せて差し出すのがマナーとされています。
お布施には金額を明記する必要はありませんが(お礼の気持ちで出すという建前なので)、
もし用意した封筒などに金額を記入する欄があるなら、記入しても問題はありません。
金額を旧字体で記入するのがマナーのように思われていますが、
これは金額を改ざんされないようにという目的で行われるようになったそうです。
お布施の金額を改ざんして得をする人はいないでしょうから、無理せずに漢数字で記入しましょう。
仏式の葬儀なら、差し上げるのはお布施になりますが、神式の場合は「御神饌料」になります。
神饌とは神様にお供えする米、酒、魚、野菜などで、その代りに供えるので、御神饌料になります。
これは葬儀のときだけでなく、地鎮祭や棟上げ式など祝儀の際にも使われます。
キリスト教では表書きは「献金」となります。この場合御霊前のように宗教・宗派を問わずに使える言葉がありません。
表書きを変える必要がありますから、注意してください。
仏式、神式、キリスト教のいずれの場合も、僧侶や神職の方に葬儀の会場まで出向いて頂いた場合は、
「お車代」を出します。送迎や車の手配ができなかったときに渡すものなので、やはり不祝儀袋は使う必要がありません。
まとめ
今回は弔事の際の不祝儀袋に関する疑問について解説しました。
ネットや本で弔事に関するQ&Aを読んで情報収集するのは、確かに役に立つでしょう。
しかし、いざ弔事が自分のことになったとき、そういったものを読んでも頭に入ってこないでしょうし、
そもそも情報収集をすることにも気が引けてしまうかも知れません
(いざとなると人は縁起が悪いなどと、そういった情報を遠ざけることがあります)。
ですからくれぐれも、情報収集は何事もないときにしておくようにしてください。
今回の記事を一度読むだけでも、きっと情報や知識が自分のどこかに引っ掛って、
いざというときに役に立つに違いありません。
本当にいざというとき、どうしたらよいのかわからなくなったら、
Q&Aよりも周りの年長者に頼ってください。弔事に関するしきたりには、大きな地域差があります。
長年その土地に住んでいる年配の方に聞いたほうが早く、確実な情報が得られるはずです。
地域のしきたりを大切にしてもらえるのは、年長者にとっては嬉しいことですから、
聞くことに遠慮をする必要はありません。
弔事はいつも不意に起こるものです。疑問を解決して、しきたり通りに行うのも大切ですが、
もしそうできなくても、心がこもっていればきっと道は拓けるはずです。弔事のときに、しきたりと違うからと
文句をいう人とは、今後距離を置くくらいの気持ちで、弔事に臨んでくださいね。