生後100日頃の赤ちゃんの無事成長に感謝し、今後の豊かな食生活の実現を願ってお祝い料理を食べさせる「お食い初め」。行い方は地域によって少しずつ異なりますが、基本的なマナーは同じです。ここでは、お食い初めの意味や起源、祝い膳や使用する食器、歯固めの儀式などについて詳しくご紹介します。
お食い初めについて
意味
お食い初めとは、生後100日から120日頃の赤ちゃんの無事成長に感謝し、「生涯、豊かな食生活を実現し続けられるように」という願いを込めて、お祝い料理を食べさせるふりをする行事です。お食い初めに参加するのは基本的に生後100日を迎えた赤ちゃんとその両親、両家の祖父母です。
起源
平安時代に行われていた、生後50日頃の赤ちゃんの口に餅の入った重湯を含ませる「五十日の餅(いかのもちひ)」や、生後100日頃の赤ちゃんに餅を食べさせる「百日(ももか)」という儀式が起源だとされています。
その後、食べさせるものがお餅からお魚に変化したことで「真魚(まな)始め」という呼び名が登場しました。
鎌倉時代には源実朝が、室町時代には冷泉天皇がお食い初めをしていたという記録も残っており、現在に至るまで大切に受け継がれてきた行事だということが分かります。
日程
基本的には昔の風習に従って生後100日頃に行いますが、生後120日以降の吉日に行う地域もあったりと、行う日程はさまざまです。生後120日以降に行うお食い初めは「食い延ばし」と呼ばれ、長生きできるという言い伝えがあることから、あえて生後120日以降の吉日を選ぶご家庭も存在します。
この日までに行わなければいけないという決まりはないため、お母さんや赤ちゃんの体調などを考慮したうえで、都合の良い日に行いましょう。
別名
お食い初めは地域によって呼び方が異なります。
- 百日(ももか)祝い
由来:赤ちゃんの生後100日前後にお祝いすることから - 真魚(まな)初め
由来:お魚を初めて食べさせることから - お箸初め
由来:お箸を初めて使うことから - 歯固め
由来:歯固め石で丈夫な歯が生えることを願うことから
祝い膳について
形式
お食い初めの食事である「祝い膳」は、白米もしくはお赤飯、お吸い物、尾頭付きの鯛、煮物や和え物、香の物などを合わせた一汁三菜の形式が基本です。お食い初めには「生涯の豊かな食生活を実現する」という意味合いも込められているため、一汁三菜の形式で陸産物から海産物まで食材を豊富に取り入れられるようにしています。
ご飯は左下、お吸い物は右下、尾頭付きの鯛は右上、煮物や和え物は左上、香の物は中央に並べます。
献立の一例
- ご飯
白米もしくは赤飯を使用しますが、赤色は魔除けや厄除けの効果があるとされているため、赤ちゃんの無事成長を祈る意味も込めて、なるべく赤飯を用意すると良いでしょう。 - お吸い物
具材は貝を使用します。特にはまぐりは良縁に導いてくれるという言い伝えがあるため、祝い膳に用いる具材として最適です。また、お吸い物には「吸う力がつくように」という意味合いも込められています。 - 尾頭付きの鯛
おめでたい魚として古くから祝い事に用いられてきた鯛は、七福神の恵比寿様が釣っている魚としても有名で、現在でも数々の慶事で重宝されています。紅白の色合いもおめでたい席に適しています。 - 煮物
高野豆腐やエビの吹き寄せなどを用意します。高野豆腐は邪気を払うという言い伝えがあり、エビは煮ると背が丸くなることから長寿の意味があるとされています。 - 香の物
梅干しやタコなどを用意します。梅干しは、そのシワシワの見た目から長寿を意味します。タコは「多幸」の意味があり、たくさんの幸せが訪れることを願う意味で香の物に用いられます。
食べさせる順番
実際には食べさせるふりをするだけですが、順番としてはお吸い物を飲ませたらご飯を食べさせ、尾頭付きの鯛を食べさせたらご飯を食べさせ、煮物を食べさせたらご飯を食べさせるというように、他のメニューに移る前に必ずご飯を食べさせ、すべてのメニューをひととおり赤ちゃんに与えます。この工程を三度繰り返した後に「歯固めの儀式」を行います。
使用する食器
食器はどうやって選ぶ?
お食い初めに使用する食器は、基本的に漆塗りや素焼きの食器とされていますが、最近ではお食い初め後も長く使えるような子供用の食器を使用するご家庭も増えてきています。また、最近では食器をレンタルできるサービスも存在するため、購入を躊躇している場合は検討してみましょう。
男女で違いはある?
男の子の場合は外側も内側も赤い色の漆器を使用し、女の子の場合は外側が黒色、内側が赤色の漆器を使用します。赤色は古くから魔除け効果があり、毒に対する抵抗力が高まるといわれているため、お食い初めの食器に使用されます。昔は男の子のほうが体が弱いといわれていたことから、魔除け効果のある赤色が表面と内側に入った食器が使われるようになりました。ただし、地域によっては男女で色が逆の場合もあるので確認が必要です。
お箸は何を使う?
お箸は、祝い箸を使用します。祝い箸は両端が細くなっている仕様の箸で、「両口箸」や「柳箸」とも呼ばれます。お祝いの席でお箸が折れるのは縁起が悪いとされているため、お食い初めでは柳の木で作られた丈夫で折れにくい祝い箸を使用します。
祝い箸の両端が細くなっている仕様は神様と兼用する意味である「神人共食」を表しているため、ひっくり返して持ち手の部分を使用するのはタブーとされています。
歯固めの儀式について
歯固めの儀式って何?
歯固めの儀式とは、赤ちゃんに健康で丈夫な歯が生えてくることを願う儀式のことで、お食い初めと同じタイミングで行います。年齢を表す「齢」という文字に「歯」の字が入っているように、古くから健康で丈夫な歯は長寿につながるとされていたことから、石を利用して丈夫な歯が生えることを願う「歯固めの儀式」が誕生しました。歯固めの儀式で使う石を「歯固め石」と呼びます。
石はどこで用意するの?
歯固めの儀式で使用する石は基本的に1から2個とされていますが、地域によって異なります。神社によっては歯固め石を配布している場合もありますが、ご自身で用意する場合は産土神様(うぶすなのかみさま)もしくは氏神様(うじがみさま)が祀(まつ)られている神社の境内で石を拾い、煮沸消毒して使用しましょう。そのほかにも、河原で拾ったり、通販で購入するという方法もあります。当日までに用意できれば問題ないので、ご自身の利用しやすい手段を選びましょう。
歯固め石のサイズや形などに決まりはないため、お好みの石を用意しましょう。色は黒・赤・白を1つずつ用意するのが正式だとされていますが、無理に用意する必要はありません。
石の使い方
- 歯固めの石にお箸を付ける。
- 石に付けたお箸を赤ちゃんの歯茎に、優しくあてる。
※健康で丈夫な歯が生えることを願いながら行います。
※誤飲の恐れがあるので歯茎に石を直接あてないようにしましょう。
使用後の石はどうする?
使い終わった石は元あった場所に返すのが基本ですが、記念として大切に保管しておくのも良いでしょう。ただし、神社によっては返却期間が設けられている場合もあるので、注意が必要です。
歯固め石の代用品
歯固め石は地域によって使用するものが異なり、石の代わりにあらゆる食材を使用しています。歯固めの石を用意できなかった場合は、下記の食材などで代用しましょう。
- タコ(大阪・兵庫・四国)
歯ごたえがあることや、「多幸」と読み替えてたくさんの幸せが訪れることを願う意味で使用されます。 - アワビ(岩手)
タコと同様に歯ごたえがあることから、丈夫な歯が生えることを願う意味で使用されます。 - 梅干し
シワシワの見た目から長寿を連想するため、長生きすることを願う意味で使用されます。 - 紅白餅
お餅を「長持ち」や「持ちの良さ」などの言葉と掛けて、長寿を願う意味で使用されます。
そのほか、栗の実や墓石などが使用されることもあります。
お食い初めに招待された場合の準備
お祝いは必要?送るタイミングは?
お食い初めに招待された場合、お祝いを持参する必要があります。お祝いは基本的に参加当日に持参しますが、参加できない場合は事前に手渡しするか、郵送しましょう。お食い初めは基本的に近親者のみで行うため、お祝いは現金を送ることが多いですが、品物を送りたい場合は赤ちゃんが喜ぶおもちゃや、今後使用できる食器セット、赤ちゃん用のエプロンなどがおすすめです。
金額の相場は?
相場は5000円から10000円ほどですが、赤ちゃんとの続柄によって変化します。また、地域や家族内のしきたりによって相場は変化するので事前に確認しておきましょう。
一般的なお祝いの相場
- 祖父母:10000円
- おじやおば:5000円から10000円
- その他:3000円から5000円
のしの書き方
のしは、紅白蝶結びのものを使用します。表書きは「祝御食初」「祝膳御祝」などが使われます。送り手の姓名は下の段に書きます。
服装は?
男性であればスーツ、女性であればスーツや着物、ワンピースなどが適しています。しきたりに重きをおかないご家庭であれば普段着でも問題ありませんが、両家で事前に相談して決めるようにしましょう。ただし、写真撮影のことを考慮すると、あまりカジュアルになりすぎないようにした方が無難です。
まとめ
今回は、お食い初めの意味や起源、祝い膳の形式や食べさせ方、使用する食器や歯固めの儀式のやり方など、お食い初めに関するさまざまな情報についてご紹介しました。お食い初めを含め赤ちゃんに関連する行事は数多く存在しますが、お母さんと赤ちゃんの体調を第一に考え、焦らずにひとつひとつの行事を楽しんでいきましょう。
産後の子供のお祝いについての記事はこちら