御菓子屋さんやスーパーの和菓子コーナーで蓬餅を見掛ける機会は多いものです。
緑色のお餅なので、食わず嫌いをしている人もいるかも知れません。
また、蓬は一体どんな植物なのかを知らないという人もいるのでしょう。
でも、実は栄養価の高いものなのです。
ここでは、そんな蓬餅についてを詳しくご紹介します。
蓬餅とはどんなもの?
蓬餅(よもぎもち)は、蓬の葉を練り込んだ和菓子のことをいいます。
「草餅(くさもち)」や「草団子(くさだんご)」とも呼ばれ、日本国内全域で親しまれています。
上新粉や白玉粉に水や砂糖を入れて蒸し、茹でた蓬の葉を加えてつき、小豆餡などを包むものが一般的です。
蓬餅には、蓬の若芽を摘んで使用します。蓬には、独特の爽やかな香りがあり、春の味覚として人気があります。
蓬餅は、17世紀末から18世紀頃に書かれた日本歳時記や本草食鑑、年中定例記にも「ヨモギモチイ」という名称で載っています。
その当時の草餅は、母子草(ハハコグサ、現在の春の七草であるゴギョウです)という植物を使用していました。
でも、蓬には邪気払いや、寿命を延ばす力があると中国では考えられており、その思想から日本でも蓬を用いるようになりました。
よもぎ餅の由来は?
よもぎ餅を作るようになったのは何故なのでしょうか?
どのような由来があるのでしょうか。
6世紀頃の中国では、3月3日に母子草の汁を入れた粉を練り、疫病を除ける為に食べるという風習がありました。
後にその風習が中国から日本に伝わり、平安時代頃には定着していました。
そして、江戸時代には節句に草餅を用いることが一般的となりました。
餅に草を練り込んで作るのには邪気払いの意味があります。
草の香りが邪気を払うのです。
母子草を使っていたのに、蓬に変えたのは前述の通り蓬の持つ縁起の良い謂れからという理由と、母子をつき潰すというのが縁起が悪いとされたからです。
このように、中国の風習が由来となっているのですが、日本に渡ってきた後に変更されている点もあります。
蓬餅を作る時期・旬はいつ?
蓬餅に使う蓬は、3月から5月に新芽を出します。
野山に生えていますので、自分で収穫し使用している家庭も多くあります。
その年に出た芽を摘んですぐに使うと香りも良く、発色も非常に綺麗です。
若い芽であればあるほど灰汁も少なく、美味しく作れます。
そのため、蓬が育ってしまう前の初春の時期に摘まれたものが良いのです。
一方、蓬の葉を乾燥させた「よもぎ粉」というものがあり、それを使えば時期は関係なく一年中いつでも作れます。
美味しい蓬餅の作り方
蓬餅には、様々なものがあります。
餡を包んだもの、餡を入れずにきな粉などをまぶしたもの、甘くして串に刺した団子、そのまま焼いて食べたり、ぜんざいや汁粉、雑煮に入れる場合もあります。
では、具体的にどのように作るのでしょうか?レシピを見ていきましょう。
蓬餅(約20個分)
<材料>
- よもぎ 約200グラム
- 上新粉 350グラム
- 白玉粉 150グラム
- ぬるま湯 300㏄前後
- 重曹 小さじ1
- 塩 ひとつまみ
- 餡やきな粉など好みの物 適量
<作り方>
- お湯を沸かし、灰汁をとるために重曹、色を綺麗に保つために塩ひとつまみを入れます。そこへ、よく水洗いをした蓬の葉を入れます。
- 蓬の葉2~3分程を茹で、冷水に20分さらし、絞っておきます。※非常に柔らかい新芽ばかりの場合は、あまり灰汁は出ませんので、重曹は入れなくても構いません。冷水にさっとくぐらせて絞ります。
- 前工程で絞っておいた蓬を細かくします。包丁で刻んだ後、すり鉢ですり潰しても良いですし、フードプロセッサーなどで細かく砕いても良いでしょう。
- 大きめのボウルに上新粉と白玉粉を入れて軽く混ぜます。
そこへぬるま湯を少しずつ入れ、よくこねます。耳たぶ位の柔らかさになるまで練ります。 - ピンポン玉大にちぎり、丸めたものを上からつぶして平べったくしておきます。
- 前工程の生地を蒸し器に並べ、15~20分ほど蒸します。
- 蒸し上がったものにすり潰した蓬の葉を加え、全体をよく練り合わせます。
- 好きな大きさに丸め、餡を包んだりきな粉をかけて完成です。
蓬は、摘んで来たらゴミを取り、水洗いをして冷蔵庫で保管します。
徐々に傷んでしまいますので、2日以内を目安に使いましょう。
蓬を茹でたものを冷凍保存しておくことができます。
密閉袋などに入れて冷凍しておけば、数回に分けて使う事も可能です。
蓬の栄養価は?
蓬には、食物繊維が多く含まれています。
蓬に含まれているのは不溶性の食物繊維で、便秘の解消やダイエットに効果的といわれています。
クロロフィルという成分も多く含まれています。
クロロフィルは、ヘモグロビンの生成を促し貧血の予防や改善にとても効果があるといわれています。
また、コレステロールを下げ、血中脂質を正常化に導く働きも持つのです。
その他にも、豊富なカロテンが含まれていて、ガンの抑制や目や髪、粘膜、皮膚を健康的に保ち、喉や肺など呼吸器を守る働きをします。
凝血作用のあるビタミンKも含まれていて、葉を揉んで傷口に貼ると良いとされているのはそのためです。
漢方では生薬としても用いられていて、鎮痛作用、咳の去痰作用、経路を温める作用、止血作用などに有効とされています。
アロマの効能もあり、リラックス作用や副鼻腔炎の治療などに効果があるといわれています。
福島名物「凍天」とは?
福島のご当地名物料理に「凍天(しみてん)」というものがあります。
凍天とは、蓬餅をドーナツ生地で包み、油で揚げた食べ物です。
正確には、蓬餅を乾燥させた凍り餅を使用します。
お餅+ドーナツなので、重たいのかな?と思いがちですが、案外お菓子のような軽い食べ応えでおやつとしても、軽食としてもぴったりです。
お餅のお陰で腹持ちも抜群です。
餡子が入っているものとそうでないものがあり、好みにより甘さが選べます。
余った蓬餅があれば自分でも簡単に作れますので、作ってみても良いかも知れません。
ひし餅に使われている蓬餅
春のイベントの一つである桃の節句では、ひし餅というひし形をした餅を飾る習慣があります。
江戸時代には、桃の節句を草餅の節句と呼んでいました。
昔から、草餅を用いていたのです。
ひし餅は、緑、白、ピンクと三色を使うのが一般的になっていますが、それぞれの色には意味があります。
一段目の緑は、若葉や新緑をイメージしています。
蓬を使うことで邪気払いや厄除けの意味もあります。
二段目の白は、雪をイメージしています。
長寿の意味もあります。
三段目のピンクは、桃の花をイメージしています。
先祖を尊び、健康への願いが込められています。
蓬を採取する際には似た草に要注意!
蓬餅を作る際、自分で野山に出て採取する人もいます。
でも、中には蓬に似た毒のある草も生えていますので、要注意です。
キツネノボタンやクサノオウという草は、新芽がよく似ているのですが、毒があります。また、ブタクサも間違えやすいため気を付けなくてはなりません。
トリカブトやヤマトリカブトと間違えてしまう人もいるようです。
蓬の若い芽は、全体的に綿毛を被ったように毛が生えています。
裏側も白っぽい毛が全体に生えています。
葉の形は丸いギザギザで尖っていません。
まとまって沢山生えていて、なにより匂いが良いです。
いわゆる蓬餅の香りですが、生えているものは、より新鮮な香りがします。
蓬以外の草は、毛が生えていなく、良い香りもしない、茎を折ると色の付いた汁が出るなど蓬とは異なる点があります。
自分で採る場合には、詳しい人に教えてもらったり、きちんと勉強をしてからにしましょう。
よもぎのアレルギーには注意!
キク科のよもぎは、アレルギーを引き起こす可能性があります。
よもぎの葉を摘みに行き、花粉などを吸ったり、触れる事で目の痒み、鼻水、咳、皮膚の痒みなどの反応が出ることもあります。
こういった場合には、すぐに採取を中止し、触るのも止めておきましょう。
また、蓬の葉に火を通すことでアレルゲンは弱まりますので、蓬アレルギーがある人でも食べられるといわれていますが、それでも100%安全とは言えません。
食べてアレルギー症状が出た場合も食べるのを止めて、すぐに病院に行きましょう。
まとめ
蓬餅は、春に若い芽が出る蓬の葉を使って作る餅のことを指します。
春の季語でもあります。
蓬さえあれば、スーパーで売っている食材で手軽に作ることができます。
非常に良い香りがして、それだけで春の訪れを感じられます。
蓬餅は、桃の節句に用いられることも多く、ひし餅にも使われています。
蓬は日本のハーブと言われていて、様々な効能がありますので、積極的に使ってみると良いでしょう。