春になると店頭に並ぶ蛍烏賊を見掛けるようになります。
でも、食べ方が分からない、どんな生き物か分からないという理由で、手に取ることなく素通りしている人も多いのではないでしょうか?
蛍烏賊はそのほとんどが国内で水揚げされたもので、旬に食べると非常に栄養価が高く美味しいものなのです。
ここでは、そんな蛍烏賊がどんなものなのか、どうやって食べると良いのかという点を中心にご紹介します。
ホタルイカはどんな生き物なの?
蛍烏賊(ホタルイカ)とは、ツツイカ目のホタルイカモドキ科に属しているイカの一種です。
昔はホタルイカが松の肥料に使われていたため、マツイカと呼ばれていました。
今でも富山県の方言でマツイカと呼ばれているところも少しあるようです。
その後、美しく発光することから蛍の名を使いホタルイカとなりました。
この名前は、1905年に明治の生物学者である渡瀬庄三郎氏により呼ばれ始め、1913年に石川千代松氏により属名とされました。
英名ではfireflysquidといいこれにも「蛍のようなイカ」という意味があります。
ホタルイカの仲間は、世界中に約40種ほど存在すると言われています。
日本では日本海の全域、太平洋側の一部に生息しており、特に富山湾や兵庫県の日本海側で多く水揚げされています。
ホタルイカは通常、水深200~700メートルの深海に生息しています。
年に一度、晩春から初夏にかけ産卵のために水面付近まで上がって来ます。
蛍烏賊の漁はどんなもの?
蛍烏賊は、日本海側の兵庫県、富山県、福井県、鳥取県などで水揚げされています。
富山湾では定置網で漁が行われています。
定置網漁は、蛍烏賊を必要以上に傷付けることがなく、新鮮なまま水揚げできるという理由で好まれています。
定置網漁は、夜間に水面近くまで浮上してくる蛍烏賊を明け方までに捕獲する方法をとっています。
1月~2月初旬頃には、山陰地方で行われる底引き漁の際に捕れることがあります。
ただ、あまり早い時期に捕れたものは身が大きくなく、ミソも少ないと言われています。
富山湾のある滑川では、蛍烏賊の水揚げが行われる時期に、定置網漁を間近で見れる観光船が運行されています。
毎年行われている人気のあるイベントです。
水揚げしたばかりの蛍烏賊を持ち帰ることができるサービスもあり、新鮮な蛍烏賊を手に入れたいという人には嬉しいものです。
蛍烏賊の栄養価は?
蛍烏賊は、主に食用に捕獲されています。
近年では一部、養殖マグロの肥料になるのではないか?と研究が進められていますが、やはり捕獲された大部分が人間の食用となっています。
茹でた蛍烏賊100グラムあたりのカロリーはおよそ100キロカロリーです。
レチノールという成分が多く含まれています。
レチノールはビタミンAとも呼ばれていて、抗酸化作用があります。
レチノールは活性酸素を抑えて、動脈硬化や心筋梗塞を予防します。
そして、粘膜や皮膚を正常に保つ免疫力を強化する働きをします。
その他にも、ビタミンE、ビタミンB12、タウリンが多く含まれています。
タウリンは肝臓の機能を正常化する役割を持っていて、脂肪肝の改善を期待できるなど、様々な研究が進められています。
蛍烏賊おすすめの食べ方は?
蛍烏賊は、煮ても、炒めても、焼いても、揚げても、茹でても美味しくいただけます。
スーパーや魚屋の店頭で見掛けても、色が独特で、少しグロテスク、堅そうな印象を受けるため、美味しくないのでは?
と食わず嫌いをしている人もいるのではないでしょうか?
でも、実はとても柔らかく、クセもなくて美味しいものなのです。
通常のイカより蛍烏賊の方が好きという人も多いものです。
釜茹でされたものを酢味噌でいただくこともできますし、パスタの具にしても美味しいです。
炊き込みご飯にしたり、ピザの具にしても絶品なのです。
ガーリック、トマト、チーズ、オリーブオイルなどと相性が良く、近年では、アヒージョの具にするのも流行っています。
ひな祭りのちらし寿司の具として入れても豪華です。
トマトと合わせてマリネにしたり、春キャベツとペペロンチーノにしても良いでしょう。
春ゴボウと一緒に炊き込みご飯にしたり、お味噌汁にいれるという家庭もあります。
春に旬を迎える蛍烏賊は、春の食材とも合うのです。
調理の際は、食べ辛い部分を先に除去しておきましょう。
蛍烏賊の場合は、目玉、口、軟骨などです。
100円均一などで手に入る魚の骨抜きを使うと取り除きやすくなります。
蛍烏賊の生食は危険!
蛍烏賊は基本的に生食はできません。
蛍烏賊には「旋尾線虫」という名の寄生虫がいて、それが人体に入ると内臓を突き破り皮膚や腸に悪影響を及ぼします。
皮膚病や腸閉塞になることもあり非常に危険ですので、生の蛍烏賊を調理する際には注意が必要になります。
充分な加熱や的確な処理を定められた時間行う必要があります。
国の指針では、沖漬けなど、生食に近い食べ方をする場合には、マイナス30度以下で4日間以上の冷凍をするなど、決められた処理をしましょうとしています。
きちんとした処理を施さなければ、食することができません。
ただ、この方針を無視して生の蛍烏賊を販売してしまう小売店も少なからず存在するようです。
寄生虫を持つ蛍烏賊は、漁獲漁の約7%前後と言われていますが、必ず安全とは言い切れないのです。
消費者の1人1人がきちんとした知識を持って処理をし食べることが大切になるのです。
蛍烏賊の旬はいつ?
漁をするのは2月から5月頃までになります。
兵庫県沖では、1月下旬から蛍烏賊漁が始まります。富山湾では、毎年3月1日が漁の解禁日となっていて、6月頃まで捕れますが、旬はやはり5月初旬までとなっています。
旬のうちは美味しい蛍烏賊ですが、その中でも美味しさのピークは3月~4月頃になります。
旬の時期を過ぎたものがパック詰めされて売られていることがありますが、これらは旬の時期に水揚げした蛍烏賊を冷凍保存してあったものです。
旬の時期に食べるよりも味が落ちているものがほとんどです。
蛍烏賊が光る意味は?
蛍烏賊の触手には、それぞれ3個ずつ発光器が付いています。
これらは、触れると発光するため、敵を威嚇攻撃する意味をもっていると考えられていますが、本当の意味は不明です。
また、海底側の腹部にも発光器が付いています。
これは、海底側にいる敵から見えにくくするためのものであると考えられています。
光ることで自らの身を守ると考えるのが一般的な考え方なのです。
蛍烏賊が光ると聞くと「食べるのに何か影響があるの?」と不安に感じるかも知れませんが、特に何の心配も要りません。
新鮮な蛍烏賊の選び方は?
蛍烏賊は足が速く、新鮮な時間がとても少ないのが特徴です。
店頭に並んでいるものの中で、なるべく新鮮な物を選ぶことが大切になります。
生の蛍烏賊を選ぶ場合は、身や脚ができるだけ透明で、艶や張りがあるものを選びます。
鮮度が落ちるに従い、透明の部分が白っぽくなり、身の色が茶色っぽく変色してきます。身も張りを失い、柔らかくなってしまいます。
茹でられた蛍烏賊を選ぶ場合は、身に艶があり、パンパンに膨らんでいるものを選びます。
大きいものの方が身が詰まり美味しいのです。
また、兵庫県産のものが店頭に並んでいることが多いのですが、富山県産の方が比較的身が大きく、ミソも多いというのが特徴です。
ホタルイカの身投げとは?
富山湾沖で見られる「ホタルイカの身投げ」という現象をご存知でしょうか?
なかなか物騒な名称ですが、これは、春、産卵のために水面付近に上がってきた蛍烏賊が、岸に打ち上げられる様子をいいます。
波に打たれる蛍烏賊たちは、その度に青白い光を放ち、非常に幻想的な光景になります。
蛍烏賊の身投げは、「ホタルイカ群遊海面」と呼ばれ、国の特別天然記念物になっています。
身投げが起こる時には、岸に集まる人が網ですくえるほど近くまで蛍烏賊がくるのです。
とても美しいので、興味がある人は是非見に行くと良いでしょう。
まとめ
蛍烏賊は、春の季語になっていることもあり、春に旬を迎えます。
日本海側で水揚げされる小さなイカですが、富山の定置網で捕れたものが美味しく、人気があります。
蛍烏賊は、和食でも、洋食でも、中華でも、イタリアンでも使いやすく、美味しく食べられる食材ですので、旬の時期に店頭に並んだ際には気軽に手に取ってみるのも良いのではないでしょうか。
また、産卵のために水面付近まで上がってきた蛍烏賊が、岸に打ち上げられる「ホタルイカの身投げ」も春しか見れない美しい光景です。