夏のごあいさつとして贈るお中元ですが、どんな人に、どんな品物を贈るのか、わかっている人は少ないかもしれませんね。
お中元には、正しい贈り方や、ちょうどよいタイミングなど、知っておいたほうがよいことがたくさんあります。
お中元について、はっきりわかっていれば、今よりももっと、自信を持って贈れますよ。
今回はお中元について、解説していきます。
中元とはどんな意味?お中元にも由来があった
中元とは、中国の季節の節目を意味する言葉で、中元のほかにも上元と下元があり、三元と呼ばれていました。
この中元が7月15日だったために、日本のお盆と結びついて、ご先祖様への供え物を近所に配る行事になりました。
これがいつしか日頃お世話になっている人に、感謝の気持ちとともに夏のご機嫌うかがいをするための贈り物をする行事へと変わっていき、今に至っています。
お中元は義務ではありませんから、あくまで自分がお世話になっていると感じている人に贈ります。
会社の上司、お稽古ごとの先生、仲人さんに贈るのが一般的ですが、最近では実家の両親や友人に贈ることも珍しくなくなりました。
1年の半分が終わり、暑い夏を迎えて、自分の大切な人たちが元気に過ごしているか気になる人も多いでしょう。
そんなときに心を込めて選んだ贈り物を差し上げることで、大切な人をねぎらうのがお中元です。
お歳暮は1年の終わりに贈りますから、その年の感謝を表しますが、年の半ばで贈るお中元には、「お元気ですか?」と呼びかけるような親しみやすさがあります。
ですからお中元を贈るときには、ぜひねぎらいと感謝の言葉を添えるようにしましょう。
特に宅配便を利用してお中元を差し上げる場合は、品物が到着する少し前に相手に連絡するとよいでしょう。
ねぎらいと感謝の言葉とともに、どんな品物を贈ったのか、どうしてそれを選んだのかなどを伝えましょう。
相手は、お中元を受け取る心づもりをするだけではなく、嬉しい気持ちでその到着を待っていてくれるでしょう。
贈りっぱなしにしないために、心がけることとは
お中元を贈る前にする連絡で、最も丁寧なのは手紙です。
手紙の中では、封筒に入った封書が丁寧で、はがきはそれよりも簡単な連絡の方法です。
年配の人には、封書を出すのが無難ですが、あまり気を使わなくてもよい関係の人なら、はがきでも十分です。
美しい絵の入ったはがきなら、相手の目を楽しませることもできます。
・いつ、何を贈ったか
・自分の近況報告
・相手の体調を気遣う言葉
手紙にはこの3つを忘れないように書いてください。
電話での連絡は、かつては手紙よりも格下のように思われていましたが、現在ではそれほど気にしなくてもよいでしょう。
年配の人でも、思いがけないおしゃべりを楽しんでくれるようです。
しかし、電話をかけるときには、相手の生活時間を配慮することを忘れてはいけません。
働き盛りの30代、40代にとって夜9時は食後にくつろいでいる時間ですが、年配の人の中にはそろそろ寝る時間ということもあります。
厚意からお中元を贈ろうとしているのに、不用意な電話で相手の気分を害してしまったら、つまらないですね。
年配の人に電話をするなら、家事や雑事が終わって、食事時でもない午後3時頃がよいようです。
同年代の人とはメールやラインでの連絡が一般的になっていますが、お中元を贈ったことを連絡するときは避けた方がよいかもしれません。
お中元は、目上の人に贈ることがほとんどです。
年配の人の中にはメールに慣れていない人や、メールは業務連絡に使うものと思っている人がいます。
メールで連絡をされることで、自分が軽んじられているという思いを持つ怖れがあります。
もちろん、普段からメールやラインで連絡を取り合っている関係なら、問題はありません。
手紙よりも早く着き、電話のように時間を気にする必要もないメールやラインを存分に活用してください。
失礼がないように贈りたい!お中元の正しい贈り方とは
お中元はお世話になった人への感謝の気持ちなので、本来は相手のお宅に持参するものでした。
しかし最近は皆、忙しくなっていますから、そんな時間を取ることが難しくなっています。
お中元を受け取る相手も、訪ねて来られても困る人が多いかもしれません。
ですから、堂々と宅配便を利用してください。
お中元を贈るときには、気を付けるべきことが、いくつかあります。
1、お中元を贈ったら、その年のお歳暮を必ず贈ってください。
2、お中元やお歳暮は1度贈ったら、できる限り長い間、贈り続けてください。
お中元だけを贈ったり、その年1回だけ贈ったりというのは失礼にあたります。
もし、1年に2回差し上げるのが負担なときは、お歳暮を差し上げるようにすると失礼になりません。
3、贈り物の値段は毎年同じくらいにしてください。
少し負担になってきたからといって、前の年より値段を下げることは、失礼です。
これはお歳暮にもいえることですから、注意してください。
4、贈り物の値段は、お中元よりもお歳暮が少し高額になるようにします。
お中元、お歳暮の相場はどちらも3千円から5千円といわれています。
お歳暮との釣り合いを考えて、お中元の値段を決めるとよいですね。
また差し上げる相手との関係でお中元の値段は変えた方がよいでしょう。
気を遣う関係の場合(例えば会社の上司など)は、明らかに値段の安いものを贈られると、失礼と感じる人もいるようです。
少し高額なお中元を用意するようにしましょう。
感謝の気持ちを表すためにも、高額な品物を贈りたいという人もいるかもしれませんが、お中元は、途中で値段を下げることはむずかしいので、長い間贈り続ける間に家計の負担になることがあります。
また受け取る相手の立場でも、高額な品物を毎年いただくのを負担に感じる人もいます。
自分にも相手にも負担にならず、毎年贈り続けられる値段の贈り物を選ぶのも、お中元の正しい贈り方といえるでしょう。
お中元を贈らない方がよい場合がある?
個人間でのお中元のやり取りには、ほとんど問題はないでしょう。
お中元をいただいて悪い気がする人はいないからです。
しかし、個人間でのやり取りでない場合には、お中元を差し上げるのを止めた方がよい場合があります。
例えば、病気の治療でとてもお世話になっている医師にお中元を贈りたい、息子がお世話になっているので、息子の勤務先にお中元を贈りたいという場合です。
現在はお中元、お歳暮などのやり取りをいっさい禁止にしている企業が珍しくありません。
お中元、お歳暮を差し上げるのは、自分をよく思って欲しい、という思いがあるからですが、仕事をする上では、お中元やお歳暮をくれる人を特別扱いするわけにはいきません。
お中元やお歳暮のやり取りを禁止するのは、公平に仕事をするためなのです。
また法律では、公務員はお中元やお歳暮のやり取りを禁止されています。
だから、お中元を贈りたい相手が個人でない場合は、あらかじめお中元を贈ってもよいかを確かめる必要があります。
これを確かめずに、お中元を送りつけてしまうと、相手を困らせるだけでなく、お中元を返送するという無駄な手間をかけさせてしまいます。
自分でお中元を持参する場合でも、相手は面と向かって断らなくてはなりませんから余計な負担をかけるのは同じです。
ぜひ、お中元の品物を用意する前に、お中元を贈ってもよいかを確かめるひと手間を惜しまないでください。
喪中のお宅にはお中元を贈らない方がよいのか、心配ですよね。
お中元はお祝いではありませんから、贈ってもまったく問題はありませんが、葬儀の後は忙しく、お付き合いのことを考える余裕もありません。
だからお中元は、四十九日の法要が終わった後に贈るとよいでしょう。
それではお中元を贈る時期が終ってしまうという場合には、暑中御伺いなどに名目を変更して贈りましょう。
お中元の包にかける、のし紙の紅白の水引がお祝いを連想させて気が引けるという人には、白の無地の掛紙も用意されていますから、それを利用するとよいでしょう。
お中元を贈る時期はいつ頃?
お中元を贈る時期は、地域によってまちまちでしたが、今では6月下旬から7月中旬頃までにはお中元を贈り終わっていることがほとんどです。
7月の中旬を過ぎると、お盆がやってきます。
お盆は先祖の霊を供養する行事ですが、お墓参りとともに親族一同が顔を合わせる機会です。
年配の人はお盆の準備で忙しくなることが多いので、7月の中旬までにお中元を贈っておけば、相手をわずらわせずに済むでしょう。
またドリンク類やスイーツを、お中元としてお盆の前に届けておけば、親族一同が集まったときに役に立ちます。
お盆は一般的には8月13日から15日までですが、
実は地域によって日程が違います。
だから7月の中旬までにお中元を届けておけば、間違いありません。
お中元を差し上げる時期が過ぎてしまうと、暑中御伺い、その後は残暑御伺いと名目が変わってきます。
その時期は地域によって違いがありますから、わからないときには、周りの人に確認するのがもっともよい方法です。
お中元を持参して、手渡ししたいときは、
相手の立場によって時間を考えましょう。
個人のお宅でも、オフィスでも、朝や夕方の忙しい時間帯、または、食事時間は避けましょう。
午前中なら10時から11時の間、午後なら2時から4時の間に訪問するのがおすすめです。
訪問する前には、事前に電話などで訪問の約束を取り付けましょう。
事前に約束できなかったのに、お中元を差し上げに行きたいときには、玄関先で失礼するなどの配慮が必要です。
お中元は包装紙やのし紙で包まれていますが、
さらに風呂敷で包んで持参します。
むき出しのままでは、包装紙に汚れやホコリが付いて、傷んでしまうかもしれないからです。
風呂敷がなければ、紙袋でも構いませんが、どちらも相手に差し上げるときには、取り外すのを忘れないようにしてください。
お中元に贈るなら、どんな品物が喜ばれるのか
この人にお中元を贈ろうと決めても、実際にはどんな贈り物を選べばよいのかと悩む人もいることでしょう。
相手の好みや、必要なものをリサーチしてから選べば問題はありませんが、
なかなかそれもできないという人は、季節と家族構成がお中元を選ぶヒントですよね。
例えばドリンク類は夏の必需品ですが、
どんな家庭にも応用がきくお中元ですよね。
お酒を嗜む人ならビール、オフィスで皆に飲んで欲しいなら注ぐだけのアイスコーヒー、小さなお子さんがいる家庭ならジュース類などと贈り分けられます。
買い物のとき、重くてかさばるドリンク類は厄介です。
お中元として贈ることが、相手の買い物の手間を省くことにもつながります。
他にも夏には、ゼリーや素麺も年齢を問わず喜ばれる贈り物ですよね。
お中元やお歳暮には、使うと無くなる消耗品が喜ばれる傾向にあります。
ただし生鮮食品などの消費期限が短いものは、相手の好みを知っていないと、かえって相手を困らせてしまうかもしれません。
どんなに自分がおいしいと思っていても、生鮮食品を贈りたいときは、あらかじめ相手の好みを確かめましょう。
相手の好みや愛用の品を知ることは難しくても、家族構成ならすぐに知れます。
家族構成さえ知っておけば、夫婦2人きりの家庭に食べきれないほどの生鮮食品を贈るとか、家族の数よりも少ないお菓子を贈って相手をがっかりさせるなどの失敗はしなくて済みます。
お中元には消耗品がよいとはいえ、年配の人の中には生活必需品を贈られることに抵抗を感じる人がいます。
生活必需品を贈ることには、生活が苦しいのを助ける意味もあるからです。
もし調味料などを贈りたい場合は、あらかじめ手紙などで知らせておくとよいでしょう。
『とてもおいしいお醤油で、私も日頃愛用しています。〇〇様にもぜひ、使っていただきたいと思い、お贈りいたします』このように知らせておけば、失礼にはなりません。
次に会うときには、贈られたお醤油について話がはずむことでしょう。
お中元を贈ることに付き物のリスクとは
心を込めて選んだお中元であっても、
他人に贈るときには、リスクが付き物です。
それは自分が贈ったお中元が
相手の好みに合わないかもしれないということです。
人にはそれぞれこだわりがあります。
洗濯洗剤が必要でも、合成洗剤ではダメでせっけんでなければいけないという人がいるものです。
そんな人が合成洗剤をお中元でいただいても、多分無理して使うことはないでしょう。
自分に必要ないものをいただいたら、その気持だけありがたく受け取って、必要とする人にまわせばよいのです。
品物をまわしてしまっても、お中元に込められた感謝の気持ちまで、無駄になるわけではありません。
もちろん相手が喜んでお中元を使ってくれれば1番ですが、自分が贈ったお中元を相手が他人にまわすことがあるかもしれないことを、心に刻んでおきましょう。
だから、好みがわからない相手にお中元を贈るときには、相手がそれを他人にまわすときのことまで考えられるとよいですね。
消費期限の長いものや常温で保存できるものなら、他人にまわしやすいのではないでしょうか。
お中元につける「のし」には意味がある?
当然のことですが、お中元は裸で差し上げることはありません。
包装紙で包んだ上に、のし紙がかけられます。
のし紙には水引が付き物ですが、お中元は何回も差し上げるものなので、蝶結びの水引を選んでください。
蝶結びは何回も結び直しができるので、何回おとずれてもよいお祝いごとに使われます。
水引の上、中央には「お中元」と表書きを書き入れます。
水引をはさんで表書きの下、中央には自分の名前を書き入れます。
表書きの右上には、赤い変形五角形が印刷されています。
これが「のし」です。
のしは和紙で包んだ「のしあわび」を表しています。
神様への供え物として欠かせない、あわびを干して平たくしたものが「のしあわび」です。
のしあわびは贈り物に添えられていたのですが、いつしか和紙で作ったもので代用するようになり、さらに近年ではのし紙に印刷されたもので済まされるようになりました。
今では実際の「のしあわび」は結納の席で見るくらいになりました。
お中元やお歳暮に魚介類や肉を贈るときには、のしを付けないので、注意してください。
のしあわびが生物だったので、
重なってしまうのを避けるためだといわれています。
またのしあわびは縁起物なので、おめでたいときにしか使いません。
仏事などでのしが付いていない場合は、のし紙ではなく掛紙といいます。
なんとなく見ていたのしですが、
意味がわかるとあるべき存在なのがわかりますね。
次にお中元を差し上げるときには、水引や表書きなどと一緒にのしにも注目してください。
知らなくても困ることは少ない、のしについてですが、知っていると自分に自信がつきますよ。
お中元をいただいたら、お返しが必要?
いつもは差し上げる側だった自分が、
お中元をいただくことがあると驚きますよね。
お返しはどうしたらよいのか、心配ですよね。
基本的にお中元やお歳暮にはお返しは不要です。
お返しは不要ですが、お中元をいただいたことに関しては、きちんと感謝の気持ちを伝えなくてはなりません。
宅配便でお中元が届いた場合は、
差し上げる側もきっと気をもんでいるはずです。
ちゃんとお中元が相手に届いたか、
気に入ってもらえたかと考えているはずです。
だからなるべく早く、お中元を受け取ったことと感謝の気持ちを伝える必要があります。
お礼は手紙が丁寧ですが、手紙を書くことが負担なら、電話でも構いません。
電話でも手紙でも、お中元を受け取ってから時間がたたない内に、お礼の言葉を伝えましょう。
なぜか時間がたてばたつほど、より面倒になってしまいます。
手紙はいわゆるお礼状というものになり、二の足を踏む人がいるかもしれませんが、難しく考えないでください。
・お中元を確かに受け取ったこと
・お中元に対してのお礼
・いただいたお中元をどうしたか
・近況報告や相手に対するねぎらいの言葉
これらの要素を取り入れれば、ちゃんとお礼状になるものです。
実際に文面にしてみます。
『すてきな〇〇を本日、確かに受け取りました。毎年、本当にありがとうございます。子どもたちの大好物なので、早速皆でおいしくいただきました。
我が家は毎日、暑さに負けず元気にやっております。
暑さが厳しい今日この頃ですが、△△様に置かれましても、どうかお体に気を付けてお過ごしください』
慣れれば、手が先に動きますよ。
間違いが気になる人、字が上手ではないから気が引ける人がいるかもしれませんが、お礼状を受け取る人もマナーや書道の先生ではありません。
お礼状をくれた事実をきっと喜んでくれるはずです。
お中元をいただいたときに、どうしてもお返しをしたい場合があるかもしれません。
そんなときはいただいた品物よりも高価な品を贈ってはいけません。
いただいた品よりも高価な品をお返しに贈ることは、次からはお中元を贈らないで欲しいというメッセージになってしまいます。
お中元でお付き合いが、こんなに変わる
私たちは生きていると、さまざまな人にお世話になります。
誰でもよく考えてみると何人かの顔が思い浮かぶのではないでしょうか。
学生時代の恩師、会社の上司、仲人さん、人生のステージが変わるとともに、お世話になる人も変わっていきます。
中には何年も顔を合わせない人もいるかもしれません。
しかし顔を合わせる機会が減っても、お世話になった事実は消えません。
その時お世話になったからこそ、今の自分がいるのだということがわかります。
お中元は、お世話になった人との関係を
いつまでも絶やさないためにあるのです。
たとえ関係が疎遠になったとしても、それを埋めるのがお中元です。
お中元を贈ることで、お世話になった人、つまり目上の人とのお付き合いがしやすくなります。
お中元はなくても別に困りません。
しかしお中元を贈ることで目上の人とのお付き合いが続けば、自分の人生が変わります。
確かに同年代の気心の知れた仲間とのお付き合いは、気を遣わなくて済むので、楽しいものですが、人生の先輩とのお付き合いは、自分も多くのことを学べます。
この世の中はさまざまな年代の人たちで成り立っています。
同年代に偏らずに、目上の人ともお付き合いをしていれば、自分という人間にも深みが出るように思います。
深みが出てきた人は、誰とでもよいお付き合いができるようになるのではないでしょうか。
まとめ
お中元という言葉の由来から始まり、お中元を贈る時期やどんな贈り物がよいのかまで詳しく解説してきました。
自信を持ってお中元を贈るためには、必要な知識ばかりです。
全部は無理でも、1つでも覚えていれば、きっと役に立つことでしょう。
お中元を難しく考えることはありません。
お中元は年代の違う人を結びつけてくれる便利なツールです。
この便利なツールを使わない手はありません。
お世話になっていたけれど、近頃ご無沙汰が続いている人がいるなら、勇気を出してお中元を贈ってみましょう。