北半球では、一番昼間の時間が長くなる夏至の日。太陽のエネルギーを、最も感じることのできる一日です。そんな日を祝う夏至祭が、日本にもありました。今回は三重県伊勢市の二見興玉神社で行われている、厳かな夏至祭についてご紹介していきます。ヨーロッパなどの夏至祭とはまったく違うので、驚くかもしれません。
日本にも夏至祭がある
夏至祭といえば、ヨーロッパで行われているお祭りというイメージがありますね。特に、北欧の夏至祭を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。例えばスウェーデンでは広場に集まり、歌ったり踊ったりするなどして、盛大に夏至をお祝いします。北欧は冬が長いですから、夏至祭は重要なお祭りだそうですよ。
伊勢・二見興玉神社とは?
では、日本特有の夏至祭というものはあるのでしょうか。答えはイエスです。数は多くありませんが、特に三重県伊勢市にある二見興玉(ふたみおきたま)神社の夏至祭は全国的にも有名です。
二見興玉神社は、二見浦(ふたみうら)という海に面しています。猿田彦大神(さるたひこのおおかみ)と宇迦御魂大神(うかのみたまのおおかみ)を御祭神としてお祀りする、天平年間(729~749年)に創建したと伝わる神社です。縁結びや夫婦円満、交通安全などのご利益があるとされています。
夫婦岩
境内で特に目を引くのは、沖合にある大きな注連縄(しめなわ)の張られた大小の岩。夫婦岩と呼ばれる2つの岩は、海中に沈んだ御神体「興玉神石(おきたましんせき)」と「日の大神(太陽)」を遙拝するための鳥居とみなされ、二見興玉神社のシンボルにもなっています。この夫婦岩は夏至祭でも、とても重要な役割を果たしているんですよ。
伊勢・二見興玉神社の夏至祭
太陽のエネルギーが、最もあふれていると考えられている夏至の日。そこで二見興玉神社の夏至祭では夏至の当日、夫婦岩からの間から昇る朝日を浴びながらの禊(みそぎ)が行われています。禊とは、川や海の水で心身を清める行為のことをいいますよね。
伊勢神宮との関係
さて、三重県伊勢市には伊勢神宮があります。伊勢神宮は皇室の祖先神・天照大神(あまてらすおおみかみ)らをお祀りする、日本全国の神社のトップに君臨する神社です。
そして古くは伊勢神宮に参拝する際、海に入り、心身を清めるために禊を行う風習(浜参宮)がありました。その禊を行う場所こそ、伊勢神宮からも近い二見浦の夫婦岩付近一帯だったのです。よって夫婦岩付近一帯は清渚(きよきなぎさ)と呼ばれ、尊ばれてきました。
海から日の出を拝む
そんな歴史を持つ夫婦岩付近で行われるのが、二見興玉神社の夏至祭の禊修法(しゅほう)です。男性はふんどし、女性は白装束姿になって参加します。日が昇る前、本殿では祭典が執り行われます。その後、参加者は海に入って日の出を待つのです。運が良い年は、富士山から昇る朝日を拝めることもできるそうですよ。
禊修法はとても厳かな行事です。先ほど紹介したスウェーデンのにぎやかな夏至祭とは、ずいぶんかけ離れたものだということがわかりますね。
二見興玉神社「夏至祭」に参加するには?
二見興玉神社の夏至祭への参加を検討されているの方のために、事前に知っておきたい事項をまとめました。なお、情報は2019年4月時点のものです。変更されている場合もありますので、参加される方は直接、二見興玉神社までお問い合わせください。
二見興玉神社の夏至祭スケジュール
例年、二見興玉神社の夏至祭のスケジュールは下記のようになっています。なお、2019年の夏至の日は6月22日土曜日です。
- 【夏至の前日】 15時30分~19時00分 鎮魂修法(本殿)
- 【夏至の日】 3時30分~夏至祭(本殿)・禊修法(夫婦岩)
申し込み方法
鎮魂修法・夏至祭~禊修法に参加するには、申し込みが必要です。申し込み開始は4月1日からとなっており、定員に達し次第、受付は終了となりますのでご注意ください。
なお、参加の申し込み方法は、
- 二見興玉神社にて直接申し込み
- 電話
に限られ、メールなどで申し込むことはできません。
初穂料
修法に参加するには、初穂料が必要です。
- 【全修法に参加(夏至の前日・当日)する場合】 5,000円
- 【禊修法のみに参加(夏至の当日のみ)する場合】 3,000円
服装
服装についても規定があります。
- 【鎮魂修法】白衣白袴(白ズボン・白シャツも可)
- 【禊修法】鉢巻き・《男性》ふんどし《女性》禊着
二見興玉神社へのアクセス
- 【所在地】三重県伊勢市二見町江575
- 【電話番号】0596-43-2020(二見興玉神社)
- 【車】伊勢・二見・鳥羽ライン「二見IC」から3分
- 【公共交通機関】JR参宮線「二見浦(ふたみのうら)駅」徒歩15分
夏至祭に参加できない人の楽しみ方
夏至の日は別の予定が……という方もいらっしゃると思います。そこで夏至祭に参加できなくても、二見興玉神社を楽しむ方法をご紹介します。
日の出と満月を見る
夫婦岩の間から日の出は夏至の日だけでなく、5月から7月にかけて見ることができます。また10月から1月にかけては、夫婦岩の間から満月が昇るのを見ることもできますよ。お目当ての方は、日にち・時間帯を調べてから出かけてくださいね。また、日の出と満月をモチーフにした、かわいらしい御朱印帳なども見逃せません。
現代の浜参宮をする
上記で少しご紹介した浜参宮ですが、実際に体験してみたい方もいらっしゃるのではないでしょうか。二見興玉神社では夏至祭以外でも、毎月第3土曜日と翌日の早朝に禊会が開催されています。興味のある方は神社に問い合わせてみてください。
とはいっても、さすがに禊をするのは大変とお考えの方のほうが多いのでは? そんな方は社務所で「無垢鹽(塩)草(むくしおくさ)」をいただくのがおすすめです。無垢鹽草とは、御神体・興玉神石から採取した海草のこと。現代では禊を行う代わりに、こちらを受けることで浜参宮とするのが一般的です。無垢鹽草は身につけるだけでなく、お風呂に入れることもできますよ。
夫婦岩大注連縄張神事に参加する
夏至祭に参加できないのであれば、「夫婦岩大注連縄張神事」に参加してみるのも良いかもしれません。夫婦岩の大注連縄は、1本あたりの重さが40kg、太さ10cm、長さは35mもあるといい、計5本が張られています。
これらは年3回張り替えが行われており、これらの日を狙って参拝するのもおすすめです。
- 5月5日 10時00分~
- 9月5日 10時00分~
- 12月中旬の土日曜日(潮の都合による) 10時00分~
氏子さんたちの手によって、大注連縄が夫婦岩に張り渡されます。参拝者は参道から、手送りで参加できますよ。
二見興玉神社周辺のおすすめスポット
二見興玉神社とあわせて訪れたいのは、伊勢神宮だけではありません。他にもおすすめのスポットがありますので、ご紹介していきます。
鳥羽水族館
二見興玉神社の隣には、伊勢夫婦岩ふれあい水族館(伊勢シーパラダイス)があります。しかし、今回あえておすすめするのは、二見興玉神社から車で約12分の場所にある鳥羽水族館。
その理由は、日本で唯一「ジュゴン」を飼育している水族館だからです(2019年4月時点)。さらにジュゴンのみならず、飼育種類数は日本一! せっかく遠くから足を運ばれる方には、特におすすめしたいスポットです。
赤福二見店
伊勢を代表するお菓子といえば、赤福です。お土産のイメージの強い赤福ですが、赤福の一部の店舗には、お召し上がりメニューがあることをご存じでしょうか。番茶や抹茶とともに、赤福をいただくことができます。ただし、伊勢神宮周辺にある赤福のお店は混んでいるので、なかなかゆっくりと過ごすことは難しいといった声もあります。
一方、穴場である二見店では、落ち着いて赤福をいただくことができるのです。さらに一部店舗でしか取り扱っていない、「赤福ぜんざい」「赤福氷」「冷やしぜんざい」といった季節限定メニューもありますので、二見興玉神社付近でゆっくりとお茶を飲みたい方にはおすすめの場所です。
まとめ
日本全国から参加者が集う、伊勢・二見興玉神社の夏至祭。大注連縄の張られた夫婦岩の間から昇る日の出を拝み、禊を行います。誰でも参加できますが、定員が決まっているので早めに申し込みを済ませましょう。
夏至祭に参加できなくても、夏至の日の前後(5月から7月)であれば、夫婦岩の間から昇る日の出を見ることができます。実際に足を運んで、現代の浜参宮をしてみてはいかがでしょうか。