日本各地には数多くのお祭りがあります。
中でもけんか祭りと呼ばれているものは、勇壮で迫力があり、誰でも楽しむことができます。
角館のお祭りは日本三大けんか祭りの1つです。
町内を練り歩く18台の曳山が、どちらが先に行くかで争って激しくぶつかり合うのが、けんか祭りの由来であり、見どころです。お祭りに参加する人も、見物する人もこのぶつかり合いを楽しみにしていますが、実は他にもたくさんの見どころがあります。
今回は角館のお祭りの隠れた見どころとともに、歴史も紹介します。
きっと今まで以上にお祭りを楽しむためのヒントが見つかりますよ。
秋田の桜の名所、角館はお祭りも有名!
まずは角館という町とお祭りの歴史を紹介します。
角館は東北の桜の名所として有名な土地です。
現在は秋田県仙北市の一地域になっていますが、もともと角館は佐竹北家の城下町として栄えていました。町は内町と外町にわかれており、内町には武士が、外町には町人が住んでいました。
外町が中心となって行っているのが角館のお祭りで、毎年9月7日、8日、9日に角館神明社と成就院薬師堂のお祭りとして行われています。
角館のお祭りという名前で呼ばれるようになったのは1990年ですが、このお祭りが初めて文献で紹介されたのは1694年です(当時は鹿島祭りといいました)から、長い歴史があることがわかります。
現在も祭りの2日目には、佐竹北家当主に曳山と踊りを見てもらう上覧が行われています。祭りの伝統と町の人々の佐竹北家への思いを感じますね。
ちなみに現在の佐竹北家の当主は、秋田県知事の佐竹敬久氏です。
のどあめのCMに殿様姿で出演したことを覚えている人もいるのではないでしょうか。
曳山がぶつかる!ケンカする!人形が乗っているのはなぜ?
祭りで激しく曳山をぶつけ合うことを、角館ではやまぶっつけと呼んでいます。
参拝や上覧などの目的を終えていない曳山は上り山、終えた後は下り山と区別されています。
曳山が町で出会うと、どちらが先に行くかを交渉しますが、優先権があるのは上り山と決まっているので、交渉はすぐに決裂して、やまぶっつけに突入します
やまぶっつけは観光客向けと地元の人に対しての本番との2種類が行われています。
時間や場所が決まっている観光やまぶっつけは、八百長といわれることもありますが、観光客にとっては、合図もなしに突然やまぶっつけが始まる本番よりも、怖くなくてよいかもしれません。
曳山は18台あり、それぞれ前と後ろに人形が飾られています。ぶつけ合う曳山になぜ人形を飾る必要があるのでしょうか。
曳山に人形が飾られている理由!前と後ろでは人形が違う!
お祭りのときには、神様を天から降ろして、人々が生活する町にお連れしますが、神様は天から降ろしても普通の人々の目に見えません。そこで、みなにわかりやすくするために曳山に人形を飾るようになりました。
曳山の前の部分に水屋(みんじゃ:神様の水飲み場)と呼ばれる神聖な場所があります。
そこに1体から3体の武者人形が飾られて、歌舞伎の名場面や歴史上の有名人物を表現しています。
江戸の歌舞伎の影響を受けている人形はほぼ人間と同じ大きさで、下から見上げたときも迫力満点です。
人形が表現している場面はお祭りのチラシに紹介されていますから、自分の見たい場面をえらんで曳山を追いかけるのも楽しいですね。2017年なら、大坂夏の陣、桶狭間の戦い、歌舞伎で有名な勧進帳や外郎売などがありました。
曳山の後ろ側に飾られているのは、送りっこ人形です。こちらは前に飾られている人形とは違い、滑稽人形といわれる、見ると笑ってしまうようなおかしな人形がそろっています。
滑稽な送りっこ人形を見ていると、やまぶっつけに負けた曳山のことを考えてしまいます。
人形が滑稽な分、さぞ悔しい気持ちで見送ったに違いありません。
やまぶっつけの興奮の渦の中では、曳山の細かいところまでは見えません。
9日の日中、曳山はゆっくりと丁内(後ほど説明します)を巡行していますから、前の武者人形と、後ろの送りっこ人形をぜひじっくりと観察してください。
人形に注目するのは、小さなお子さんがいる家庭にもおすすめの、安全で安心できるお祭りの楽しみ方です。
曳山の魅力!曳山ごとに着ている半纏が違う!
曳山を引く人たちはなぜみなでおそろいの半纏を着ているのか、気になったことはありませんか?また、どうして曳山によって半纏の柄が違うのでしょうか?
半纏はもともと江戸時代の肉体労働をする人たちの労働着として発展しました。
今でも神輿を担いだり、曳山を引く人たち、つまり実際に祭りに参加する人たちの服装です。
祭りに参加する人たちは、常に危険にさらされています。
角館でも2015年にはやまぶっつけの際に事故が起こり、男性が死亡しています。
祭りに参加する人たちは、常に動きやすい状態で、しかも気を引き締めている必要があります。
角館で曳山を引く人たちは丁内単位で行動します。丁内とは、かつて町人が住んでいた9つの外町のことでした。江戸時代には9つだった丁内がそのまま保たれて、今は30をこえる数になりました。現在は丁内の若者の有志によって、曳山が管理されています。
丁内ごとに半纏の柄を変えることで、その団結力が高まります。
そろいの半纏は仲間であることの証であり、自分がどこの人間であるかを世間に知らせているわけなので、嫌でも気が引き締まります。
そろいの半纏はお祭り気分を盛り上げますが、それだけではありません。半纏を着ているだけで個人の勝手な行動は少なくなり、お祭りが安全に行われるというわけです。
角館では18台の曳山があるために、18種類の半纏があります。
角館のお祭りグッズを販売しているさんさん企画では、18種類の半纏をストラップにしていますから、お祭りの良い記念になるはずです。
さんさん企画では、ブログで半纏の柄についても詳しく説明しています。由来などもわかりますから、きっとお気に入りの柄が見つけられます。
例えば岩瀬という丁内の半纏の柄は、二の字といいます。二という字が斜めにつながって、カゴの網目のように見えます。
二の字は、半纏の柄としてはポピュラーですが、岩瀬の半纏は、背中の「祭」の文字の周りの白抜きの部分が桜の花の形になっています。これは桜の名所・角館ならではの遊びではないでしょうか。これは自分ではなかなか気が付かないことですね。
このように半纏の柄について予習をしておくと、より一層祭り見物が楽しくなるのです。
確かにやまぶっつけの迫力は、一番の見ものですが、その曳山を操るのは人間です。
半纏を身に着けた人々の凛々しさは、普段はなかなか見られません。半纏に注目することで、お祭りの別の面が見えてくるかもしれません。ぜひ、お祭りに熱中する人間の姿を楽しんでくださいね。
角館のお祭りの花形!踊り手の魅力とは
曳山には魅力的な存在が乗っていることがわかりましたが、もう1つ忘れてはいけないのが踊り手です。水屋の下には前舞台があり、そこで踊り手が二人一組になって踊りを踊ります。
奉納の踊りとされる拳囃子、日本竹、町中をにぎわす秋田甚句、秋田おばこなど、踊りの雰囲気とともに衣装も違います。
踊り手は奉納や上覧のときには紫の紋付、町中ではかすりの着物を身に着けます。紫は古来よりもっとも格式の高い色だとされており、起源は冠位十二階にさかのぼるといわれています。
秋田おばこ(娘の意味)といえばかすりの着物をイメージする人も多いでしょう。どちらの衣装も比べようがないほどの魅力があります。
優雅に見える踊り手は、3歳くらいから20歳代までの女性がつとめます。
1年を通して練習する必要があり、曳山に乗れるようになるためには、大変な努力が必要だそうです。
二人一組になって踊る踊り手を横から見ると、あまりにそろっているため、一人に見えるという話もあります。本当かどうか、ぜひ確かめてみたいですね。
曳山ごとに踊りの所作が少しずつ違い、かすりの柄も違うそうですから、細かなところまで注意して踊りを見物したいですね。
まとめ
今回は角館のお祭りの見どころと歴史を紹介しました。
けんか祭りとして有名なお祭りですが、見どころはけんか(やまぶっつけ)だけではないとわかりました。
やまぶっつけは動の楽しみですが、角館のお祭りには人形や半纏、踊り手など、静の楽しみもたくさんあります。
静と動の両方あるのが角館のお祭りの魅力ですから、両方を楽しまないともったいない話です。
静の楽しみに注目すると、たくさんの人の手でお祭りが行われていることが実感できて、いっそうお祭りに感動できます。
角館のお祭りを今年は2倍楽しんでみませんか?