秋祭りとは?1
秋祭りとは、いったいどんなお祭りなのでしょう。実施時期・目的・宮中祭祀(さいし)について説明します。
秋祭りはいつ?
秋祭りは文字通り、秋に各地の神社で開催されるお祭りのことです。9~11月の間、特に10月に行われるところが多いようです。問題は“なぜこの時期にお祭りを行うのか”ということです。
秋祭りの目的は収穫への感謝
秋といえば、実りの秋ですね。秋祭りは農作物の収穫を神様に感謝するために行われています。神社では新穀でつくった神饌(しんせん)や神酒で神様をもてなし、直会(なおらい/神職や氏子らが神饌をおろして共同飲食をすること)が行われているのです。
神嘗祭と新嘗祭
日本全国で行われる秋祭りですが、宮中祭祀としても行われています。神嘗祭(かんなめさい)と新嘗祭(にいなめさい)という祭儀をご存じでしょうか。
神嘗祭
神嘗祭は、伊勢神宮で10月17日に行われる祭儀です。天皇の勅使が、新穀を天照大神に奉ります。伊勢神宮では年間1千5百ものお祭りが行われますが、神嘗祭は最重の厳儀の一つに数えられています。
新嘗祭
新嘗祭は宮中などで11月23日に行われる祭儀です。天皇が新穀を神に捧げ、自らも食します。収穫を感謝する意味では神嘗祭と一緒ですが、新嘗祭は翌年のため、稲の霊を誕生させるための儀式でもあります。
11月23日は戦前、祭日とされていました。現在は国民の祝日(勤労感謝の日)になりましたが、日にちそのものは残っていますね。
春祭り・夏祭り・冬祭りとの違い
秋祭りの目的は、収穫への感謝ということはわかりました。他の季節に行われるお祭りの目的は何なのか、気になりませんか?
春祭りの目的
春祭りの目的は、豊作祈願です。多くは2~4月頃に実施されます。代表的なのは御田植祭(おたうえまつり)です。田植えとありますから、実際に田植えを行う場合もあります。おもしろいのは田植えの“真似”をする場合です。
予祝(よしゅく)といって、期待する結果(=豊作)を模擬体験しておくと、期待通りの結果が得られるという俗信に基づいて行われます。収穫を感謝するための秋祭りとは対照的に、どうか豊作であってほしいという願いから行われるのが春祭りです。
夏祭りの目的
夏祭りの目的は、災厄などをはらうためです。多くは5~8月頃に実施されます。今では夏祭りというと浴衣姿で楽しむイベントになっていますが、本来は夏に流行する疫病退散を願ったり、虫害・風害などはらったりするためのお祭りです。祖先の霊を慰めるものもありますね。
一見、災厄とは関係ないお祭りでも、ルーツは上記である場合も珍しくありません。(例:京都の祇園祭→【平安時代】疫病の流行を鎮めるため)
冬祭りの目的
冬祭りという語は一般的ではありませんが、11~翌年1月頃に行うお祭りを冬祭りと呼ぶことがあります。新年の幸せの祈願を目的としたお祭りです。
有名な秋祭り情報1
地元の秋祭りも素敵ですが、全国的に有名な秋祭りにも一度は足を運んでみてはいかがでしょう。いくつかピックアップしてご紹介します。
岸和田だんじり祭(大阪府岸和田市)
大阪・岸和田のだんじり祭は、一度は目や耳にしたことがあるのではないでしょうか。だんじり(=山車/だし)が勢いよく角を曲がる「やりまわし」で有名なお祭りですね。
岸和田だんじり祭は1703年、当時の岸和田藩主が城内に京都の伏見稲荷を勧請し、五穀豊穣を祈った祭りが始まりとされています。今では岸城(きしき)神社と岸和田天神宮の例祭として行われています。
岸和田だんじり祭は豪快でカッコイイお祭りですが、危険と隣り合わせであるとも言えます。見物客にも一定の心得が必要ですので、しっかりと予習してから行きましょう!
時代祭(京都市)
京都の時代祭は、京都三大祭の一つにも数えられる大規模なお祭りです。明治時代、事実上の東京遷都によって、京都は一時衰退を余儀なくされます。京都市民がそんな状況を打開しようと、創始したのが時代祭(平安神宮の大祭)です。
見どころは京都御所から平安神宮まで、およそ2千人の市民が練り歩く「時代風俗行列」です。明治維新から延暦(平安京遷都の時代)まで、時代ごとのファッションに身を包んだ行列が続きます。京都の栄華、京都市民の情熱を感じることのできるお祭りです。
有名な秋祭り情報2
引き続き、全国的に有名な秋祭りについて簡単にご紹介します。
長崎くんち(長崎市)
長崎くんちは長崎市・諏訪神社の大祭です。「〇〇くんち」というお祭りは九州北部に多く見られますが、中でも大規模なのが長崎くんちです。龍踊(じゃおどり)などの奉納踊が有名で、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
長崎くんちの起源は江戸時代の1634年、二人の遊女が神前に踊りを奉納したことと伝わっています。「くんち」とは旧暦9月9日、つまり重陽の節句を指します。秋の収穫祭と合わせ、盛大に祝うようになったといいます。異国情緒を感じることのできるお祭りです。
川越まつり(埼玉県川越市)
川越まつりは川越市・川越氷川神社の例祭です。見どころは山車同士が鉢合わせすると、向き合って囃子(はやし)の競演をするという「曳っかわせ」です。夜の曳っかわせは、特に盛り上がります。「川越氷川祭の山車行事」として、国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
川越まつりの起源は江戸時代の1648年、当時の川越藩主が氷川神社に神輿や獅子頭などを奉納し、祭りを奨励したことに始まります。1651年には江戸の神田祭と山王祭にならい、神幸祭が始まりました。川越は都内からもアクセスしやすいので、ぜひ一度足を運んでみて見てくださいね。
秋祭りに行くときの服装はどうする?
秋祭りに、浴衣を着ていくのはどうなのでしょう。浴衣の着用時期は決まっているのでしょうか?
秋祭りに浴衣はダメ?
浴衣の着用時期に明確なルールはありません(目安は立秋までとも)が、7~8月末までの期間に着用されることが多いようです。夏祭り・花火大会・盆踊りなどに着ていけば、夏っぽさが倍増しますよね。
ところが9月の浴衣姿は「季節外れ」「非常識」と思う人も多いので、注意したいところです。秋祭りのピークは10月ですので、夏っぽさ全開の浴衣は避けたほうが無難です。和服にこだわりたい方は、着物で参加するのはいかがでしょうか。着物ならば浮くことなく、ほどよく目立つことができます。
浴衣を秋らしく着こなす
どうしても浴衣を着たい、という方も多いでしょう。そんな方におすすめなのは、浴衣の秋らしい着こなしです。簡単なのは、色味・柄を秋らしくすることです。ブラウンや紺などの落ち着いた色、トンボやススキといった秋モチーフの柄などを選ぶと、一気に秋っぽい着こなしになります。
浴衣を着物風にして着る、という手もあります。浴衣の下に長襦袢を着用したり、帯には帯締めをしたりすると、浴衣が着物っぽくなるのです! 足元も素足に下駄ではなく、足袋と草履にしてはいかがでしょうか。
まとめ
9~11月頃に実施される日本の秋祭りは、本来、収穫を神様に感謝するためのお祭りです。豊作を祈願する春祭り、疫病・災害をはらう夏祭りと比較すると、性格の違いが際立ちますね。全国には有名な秋祭りがたくさんあります。お近くの神社などでも、きっと秋祭りが開催されているはずです。ぜひ参加して、日本の秋を満喫してくださいね!