えびす講とは?①
えびす講(恵比寿講・恵比須講・夷講・蛭講・戎講)とは、いったいどのような行事で、いつ行われるのでしょうか。
恵比寿様をおまつりする行事
えびす講とは、七福神の1柱(※)・恵比寿様をお祀(まつ)りするために行われる行事です。恵比寿様については後ほど詳しく説明しますが、一方の手には釣り竿、片方の手には大きな鯛を抱えている姿でおなじみですね。筆者はビールを飲むとき、よくお目にかかります。
※神様は1人・2人…ではなく、1柱・2柱…と数えます。
恵比寿様は、商売繫盛・五穀豊穣・豊漁といったご利益があると信じられています。ご利益の守備範囲がかなり広いですね。多くの人々にご利益をもたらす、恵比寿様へ感謝を捧げるために行われるのがえびす講というわけです。
お祀りの方法については後ほどご紹介しますが、いろんな人にご利益があるだけあり、地域や職業などによって祀り方もさまざまです。
日程は地域によって異なる
えびす講は秋に行われることが多いのですが、地域によって日程が異なります。本来は神無月(旧暦10月)の20日に行われていた行事のため、新暦となった現代では実施日にバラツキがあるのです。
全国的には10月20日または11月20日に行う地域が多いようですが、1月10日や1月20日に実施する地域、10月20日と1月20日の両日に行う地域などもあります。
えびす講とは?②
えびす講の起源と、えびす講とよく混同されがちな酉の市との違いをご紹介します。
起源は恵比寿様がかわいそうだから?
えびす講の起源の一つに、おもしろくて悲しい説があります。神無月になると、全国の八百万の神様が出雲大社へ集まり、話し合いを行うという言い伝えがありますよね。出雲では旧暦の10月のことを神在月(かみありづき)と呼んでいます。
当然、恵比寿様も出雲へ出掛けるものと考えそうですが、恵比寿様は他の神様から留守番を頼まれるようです。いわば“置いてきぼり”をくらってしまう恵比寿様を慰めるため、始まったのがえびす講だと言われることがあります。
酉の市との違い
えびす講は酉の市(とりのいち)と混同されることがありますが、両者は別物です。間違えられる理由は、ともに露店などで縁起物の熊手が売られており、開催時期も近いためと考えられます。
酉の市とは、日本武尊(やまとたけるのみこと)をお祀りする大鳥(鷲/おおとり)神社で開かれる市です。毎年11月の酉の日(年に2~3回あることも)、東京および関東地方を中心として行われています。
えびす講 | 酉の市 | |
お祀りする対象 | 恵比寿様 | 日本武尊 |
時期 | 10月20日・11月20日・1月10日・1月20日などさまざま | 11月の酉の日 |
実施する地域 | 全国 | 東京・関東地方が中心 |
恵比寿様はどんな神様?
日本人にはなじみ深い恵比寿様ですが、詳しくご存じの方は多くないように思えます。恵比寿様とはいったい、どんな神様なのでしょう。
意外と知らない七福神の意味
七福神とはそもそも、福をもたらしてくれる神様をまとめたグループです。発祥は鎌倉~室町時代とされています。人気のあるコたちを集めた、アイドルグループにも似ていますね。人気が非常に高い恵比寿様は、七福神という神様グループに所属することになったのです。
- 恵比寿:日本出身/商売繁盛・豊漁・豊穣の神
- 大黒天:インド・ヒンドゥー教出身/福徳の神
- 弁財天:インド・ヒンドゥー教出身/財や富・芸術・学問の女神
- 毘沙門天(びしゃもんてん):インド神話出身/武の神
- 布袋(ほてい):中国に実在した僧/良縁・夫婦円満・子宝の神
- 寿老人(じゅろうじん):中国・道教出身/健康・長寿・福徳の神
- 福禄寿(ふくろくじゅ):中国・道教出身/長寿・福徳の神
神様たちの出身地を見ていくと、インドや中国など、七福神は国際色の豊かなグループであることがわかりますね。
いろんな神様のミックス?
関西では「えべっさん」と呼び親しまれる恵比寿様は、七福神の中では唯一日本を起源とする神様です。もとは漁民から信仰を受けていましたが、すでに説明した通り、恵比寿様は多方面にご利益をもたらす神様とされています。
理由として考えられるのは、いろいろな神様が習合した結果だということです。例えば、
- 蛭子神(ひるこ):イザナギ・イザナミの間に最初に生まれた子で、骨がなく、海に流された神様(→海から来たとされる恵比須様と結びついた?)
- 事代主神(ことしろぬし):オオクニヌシの息子で、国譲りの際に釣りをしていた神様(→恵比須様の釣り竿へ?)
- 少彦名神(すくなびこな):オオクニヌシとともに農業・医薬・酒造・温泉などを広めた神様。国づくりをした後、海のかなたにある常世国(とこよのくに)へと帰る(→賢さが商売繫盛などのご利益へ?)。
などが考えられています。恵比寿様という存在には、いろいろなものがミックスされているようですね。
えびす講では何をする?
えびす講ではどのように、恵比寿様へ感謝をお伝えしたらよいのでしょうか。全国各地ではさまざまなイベントが開催されますが、先に個人の過ごし方を紹介します。
熊手などの縁起物を買う
えびす講の日は、恵比寿様をお祀りしている神社にお参りに行ってみてはいかがでしょう。昔の商家では商売繫盛を願い、神社参拝の風習がありました。参道には、縁起物を売る出店が並びます。熊手(※)や福笹(※)などを求める人々でにぎわい、歩いているだけでも雰囲気が楽しめます。
※穀物や落ち葉などをかき集めるために使う道具。福をかき集めるとして、縁起物にもなりました。
※笹に大判・小判・俵などの細工物を結び付けたもの。まっすぐ伸びる笹は、縁起がよいとされています。
お供え物をする
えびす講では、自宅の神棚にお供え物をする風習があります。全国一律のお供え物はありませんが、一般的には食べ物やお酒、熊手などの縁起物です。食べ物は恵比寿様にちなんで鯛であったり、地域で旬を迎えたものであったりします。生きたフナなどの魚をお供えするところもあり、地域によってお供え物もさまざまです。
行事食はないって本当?
えびす講の行事食はないと言われています。確かに全国共通で食べられているものはありませんが、京都では「笹に小判(九条ネギとはんぺんのお吸い物)」を食べる習慣があったり、東京にもえびす講がきっかけで誕生した「べったら漬け(甘い大根の漬物)」があったりもします。
有名なえびす講関連イベント
全国的に有名な、えびす講の関連イベントをご紹介します。
長野えびす講煙火大会
長野えびす講煙火大会は、長野市内で行われるイベントです。長野市岩石町にある西宮神社のえびす講の時期(11月18日~20日)にあわせて、毎年花火大会が開催されています。歴史は古く、1899年から始まったものです。2022年は11月23 日18時より打ち上げが始まります。
長野えびす講煙火大会は、優秀な煙火師を招いて行われる全国屈指の花火大会で、旅行会社でもツアーが企画されるほどの人気ぶりです。ゆったりと花火を観覧できる席(プレミアムシート・えびすシート)もあるので、チケットの確保はお早めに!
日本橋恵比寿べったら市
日本橋恵比寿べったら市は、東京日本橋で毎年10月19・20日に行われる人気イベントです(例年の来場者数は10万人)。寶田恵比寿神社周辺にはおよそ500もの露店が並び、べったら市の名の由来となったべったら漬けや七味、あめ細工などが販売されます。
19日にはお神輿が登場し、20日にはべったら音頭の盆踊りが行われます。夜には提灯に明かりが灯り、夜祭りの気分が高まります。日本橋の秋の風物詩を存分に楽しめるイベントです。
まとめ
恵比寿様をお祀りする、えびす講について簡単にご紹介しました。秋になると全国各地でえびす講や関連イベントが開かれています。ぜひ足を運んで、楽しい思い出を作ってください。参加する際は、えびす講とは本来どんな行事なのか、恵比寿様とはどんな神様なのかを押さえておけば、さらに興味深い体験ができることでしょう!