京都の時代祭とは?
京都の時代祭の概要・起源についてご紹介します。京都の時代祭の歴史は意外と浅いのです……が、創設にあたった京都市民の熱意は相当なものだったようです。
見どころは動く歴史風俗絵巻
京都の時代祭は、毎年10月22日(2019年は10月26日)に行われる平安神宮のお祭りです。時代祭の見どころは、何と言っても時代風俗行列でしょう。歴史上の人物や当時の人々などに扮(ふん)した、およそ2千人の市民(と馬・牛)が京都の街を練り歩きます。いわゆる、動く歴史風俗絵巻です。
明治維新から延暦(平安京が造営された時代)の時代までを、約2時間で振り返ることができます。例年の人出は5万人を超え、京都三大祭りの一つに数えられる大規模なお祭りです。
時代祭の起源は明治時代の町おこし
時代祭は千年の都と呼ばれる京都ではまだ若い、1895年(明治28年)より始まったお祭りです。きっかけは町おこしでした。京都は今でこそ日本を代表する人気の観光地ですが、明治維新後、一時は衰退を余儀なくされました。事実上の東京遷都(せんと)が行われたからです。
京都の人々は町を復興するため、平安神宮を創建し、大祭として時代祭を創始しました。10月22日というのも実は794年、平安京に都がうつされた日です。時代祭は、京都の誕生日に、京都の歴史・文化を堪能できるお祭りということですね。
平安神宮とは?
平安神宮は京都の栄華、京都復興にかけた市民の情熱を後世に伝えるために創建されました。京都復興のシンボルともいえる平安神宮のご祭神・時代祭の目的について紹介します。
平安神宮のご祭神について
平安神宮の創建は1895年(明治28年)のことです。歴史ある寺社仏閣が当たり前に建ち並ぶ京都の中では、新しい神社といえますね。ご祭神は桓武天皇と孝明天皇です。
桓武天皇といえば、794年に平安京に遷都した天皇です。まさに京都の生みの親と言えるでしょう。孝明天皇は江戸時代最後の天皇です。幕末の混乱期に妹を将軍に嫁がせ、公武合体(朝廷と幕府の協力体制)を目指したことなどで知られています。
時代祭の目的はご祭神に京都を見ていただくこと
平安神宮のご祭神について簡単に紹介したのには、ちゃんと理由があります。時代祭の目的は、ご祭神の2柱に京都の町を巡行していただくことにあるからです。
時代祭では2基の御鳳輦(ほうれん/天皇の乗り物)が出されますが、乗っているのはご祭神のご神霊です。およそ2千人もの市民は、御鳳輦に付き従っているのです。
行列はあくまでもご祭神の“お供”であって、昔の衣装を身にまとって行列をつくることがお祭りの目的ではありません。時代祭の真の目的は、ご祭神に京都市中をご覧いただくことなのです。
どんな行列が出るの?
とはいっても、時代祭にどんな行列が出るのか気になりますよね!
時代風俗行列の編成
時代風俗行列は8つの時代、20の列から構成されています。明治維新時代から延暦時代へと時代をさかのぼり、ご祭神のご神霊を乗せた神幸列へと続いていくのです。
- 【明治維新時代】維新勤王隊列・維新志士列
- 【江戸時代】徳川城使上洛列・江戸時代婦人列
- 【安土・桃山時代】豊公参朝列・織田公上洛列
- 【室町時代】室町幕府執政列・室町洛中風俗列
- 【吉野時代】楠公上洛列・中世婦人列
- 【鎌倉時代】城南やぶさめ列
- 【藤原時代】藤原公卿参朝列・平安時代婦人列
- 【延暦時代】延暦武官行進列・延暦文官参朝列
- 神饌講社列・前列・神幸列・白川女献花列・弓箭組列
行列の中には西郷隆盛や織田信長といった歴史上の人物から、当時の市井(しせい)を彩った庶民の姿も見ることができます。
時代考証済のファッション
時代風俗行列には各時代のファッションが取り入れられていますが、単なるコスプレ行列でありません。衣装・ヘアスタイル・祭具など、細やかな時代考証がなされているため、時代の変遷によるファッションの変化を正確に捉えることができます。
行列の中でも、特に人気が高いのが華やかな平安時代婦人です。十二単(じゅうにひとえ)を身にまとった清少納言、小袿衣(こうちぎ)姿の紫式部、鎧姿の巴(ともえ)御前……平安時代婦人の行列だけでも、数多くのファッションを楽しむことができるのです。
京都の三大祭りとは?
時代祭は京都三大祭りの一つとご紹介しましたが、他の二つ(葵祭・祇園祭)はどんなお祭りなのでしょうか。簡潔に説明します。
葵祭
葵祭(あおいまつり)は毎年5月15日に行われる、上賀茂神社と下鴨神社の例祭です。欽明天皇(在位539~571年)が飢餓疫病の流行を鎮めるため、勅使(ちょくし)を派遣して祭礼を行ったのが起源とされています。
流鏑馬(やぶさめ)神事(5月3日)に始まり、御蔭祭(みかげまつり)(5月12日)などをへて、5月15日に斎王代(さいおうだい/神に仕える未婚の女性)の行列が京都御所から下鴨・上賀茂神社を巡幸します。平安朝の優雅さを感じることのできるお祭りです。
祇園祭
祇園祭(ぎおんまつり)は毎年7月1~31日に行われる、八坂神社の例祭です。京都に疫病が蔓(まん)延した869年、庭園(神泉苑)に66本の鉾(ほこ)を立て、神(スサノオノミコトら)に祈ったことが起源とされています。
祇園祭の見どころは山鉾という、大きな山車が京都の町を練り歩く山鉾巡行(7月17・24日)です。山鉾巡行は2009年、ユネスコ無形文化遺産にも登録されました。暑い時期にも関わらず、例年数十万人もの人が訪れる、京都三大祭のみならず日本三大祭の一つにも数えられるビッグなお祭りです。
京都・時代祭の日程・アクセスなど
京都・時代祭の日程・行列のルート・アクセスなど、お祭りを見学する予定の方に役立つ情報をご紹介します。
日程・時間
京都の時代祭は毎年10月22日に開催されますが、2019年は即位礼正殿の儀のため、10月26日に変更されました。雨天順延で、判断は当日の早朝に行われます。諸々の祭典が終わり、時代風俗行列がスタートするのは昼の12時です。
行列のルート
時代風俗行列は、京都御所から平安神宮(応天門)までの道のりを進みます。詳しくは下記のリンクをご確認ください。
平安神宮「時代祭行列の順路」へ
京都御所や平安神宮は混雑しますが、道程はおよそ4.5kmもあるため、わりとどこからでも見ることができます。
行列をすべて見るなら有料観覧席がおすすめ
行列を全部見ようとすると、およそ2時間かかります。座ってゆっくり見学したい方におすすめなのが、3カ所に設けられる有料観覧席(一般席2千5百円)です。
- 京都御苑
- 御池通
- 平安神宮道
パンフレットが付いてくるので、次はどんな行列なのかチェックしつつ見学できます。場所は御池通に限られますが、時代祭まなび席(時代祭の解説付き/5千円)と英語解説付き席(英語解説付き/4千百円)といった席もありますよ。
アクセス
有料観覧席の設置場所へのアクセスは次の通りです。
- 京都御所へのアクセス
- 地下鉄烏丸線・今出川駅より徒歩5分
- 市バス・烏丸今出川より徒歩5分
- 御池通へのアクセス(ブロックにより最寄駅が変わります)
- 地下鉄烏丸線・烏丸御池駅
- 地下鉄東西線・京都市役所前駅
- 平安神宮へのアクセス
- 地下鉄東西線・東山駅より徒歩10分
- 市バス・岡崎公園美術館・平安神宮前もしくは岡崎公園ロームシアター京都・みやこめっせ前より徒歩5分
時代祭館十二十二
時代祭当日、京都には行けないという方におすすめなのが、時代祭館十二十二(とにとに)です。時代祭館十二十二では映像によって、時代祭を疑似体験できます。館内にはお土産や飲食店も入っているので、平安神宮を訪れた際にはぜひ立ち寄りたいスポットです。
- 【所在地】京都府京都市左京区岡崎西天王町 97-2
- 【電話番号】075-752-1022
- 平安神宮より徒歩1分
まとめ
京都三大祭の一つに数えられる時代祭は、東京遷都で衰退した京都の町おこしのために創設されたお祭りです。一番の見どころは時代風俗行列ですが、単なるコスプレの行列ではありません。衣装などは厳密な時代考証がなされています。まだ歴史は浅くとも、京都市民の情熱によって始まった時代祭へ、ぜひ一度は足を運んでみてくださいね。