神社に足を運ぶのが好きな人でなくても、1年の記念行事としておこなわれている「祈年祭」をご存知の方も多いと思います。
祈年祭の字をみると、祈る年のお祭りという感じになりますが、少しイメージがわきにくいですよね。
祈年祭は神社でおこなわれるお祭りですが、どのようなものなのかいまいちピンときません。
今回は祈年祭について意味やいつおこなわれるのか、挨拶やお供えの仕方などを詳しくご紹介していきます。
祈年祭はいつおこなわれるの?
祈年祭は毎年決まった日時に神社でおこなわれる恒例祭のひとつで、豊作を願うお祭りのことです。
昔から旧暦の2月4日、つまり立春におこなわれています。
現在では旧暦の立春は2月17日にあたり、どこの神社でも毎年2月17日に祈年祭がおこなわれるのです。
春といえばさまざまな農作物の種まきをする、1年の中でもはじまりの時期ですよね。
春にまいた農作物の種が無事に育ってたくさん収穫ができますようにとの気持ちを込めながら、農家の人たちが栽培を開始します。
現代では2月17日というとまだまだ寒さ真っ盛りの時期ではありますが、旧暦の立春ということで春に入る前におこなうという考えなのですね。
祈年祭がおこなわれるのは2月17日と日付が決まっているので覚えやすいでしょう。
近くの大きな神社などでおこなわれる祈年祭に、足を運んでみるのも良いですね。
祈年祭にはどんな意味があるの?
旧暦の立春に毎年おこなわれる祈年祭ですが、一体どんな意味や目的があるのでしょうか。
漢字だけをみると「祈る年の祭り」となり、いまいちピンときません。
実は祈年祭の「年」は、ごはんのもとである「稲」のことを指します。
祈年祭はほかに「としごいのまつり」とも呼ばれていて「とし」が稲のことで「こい」が祈りという意味です。
雨乞いなどと言いますが、意味は雨を祈ることなので同じ使い方ですね。
とし、つまり稲はごはんのことで昔から日本人にとって命の源ともいえるとても大切な主食です。
みんなが食べ物に困ることのないように、立春になったら「みんなの命の源である稲が無事に成長して実りますように」と祈るためのお祭りなのです。
稲にはお米がたくさん実っていますが、一粒ずつに神様が宿っていると考えられています。
稲の豊作を祈ると稲に限らず、さまざまな農作物が豊作になると信じられているのですね。
稲に宿った神様にお祈りをすれば、さまざまな農作物の成長を願うことができます。
春に種まきをする前段階で、祈年祭をおこなうのは農作物を無事にたくさん収穫できますようにとの理由なのです。
農家の方だけでなく一般の人でもごはんを食べるので、全国各地の神社でおこなわれる祈年祭は関係が深いといえるでしょう。
祈年祭の目的「五穀豊穣」の意味
祈年祭はさまざまな農作物が、無事に豊作になるように願うことが目的で「五穀豊穣」と呼ばれます。
五穀豊穣となることで人々は命を守って子孫繁栄、国家繁栄につながっているのです。
五穀豊穣というくらいなので、現代でなじみのある米の他にも種類があります。
五穀は昔も今もブレンド米としてより栄養価の高いものを食べることには変わりません。
現代では認識が異なり、内容も変わってきました。
では時期による五穀の内容について、みていきましょう。
①昔からの五穀の内容昔での五穀は、書物によって内容が微妙に異なっていました。
穀物の中でも5種類に限定された意味があり、五穀といえばコレ!とされています。
古事記に記載されている五穀は「稲、麦、粟(あわ)、大豆、小豆」で、日本書紀に記載されている五穀は「稲、麦、粟、稗(ひえ)、豆」となっています。
他にも建立曼荼羅護摩儀軌には「大麦、小麦、稲穀、小豆、胡麻」と米が含まれていないものもあります。
②現代での五穀の内容現代で五穀豊穣の五穀といえば「米、麦、粟、豆、黍(きび)か稗」です。
5種類のブレンド米のことを五穀米といい、健康志向の人を中心に食べられています。
実は五穀米は石川商店の商標登録となっているため、スーパーなどに多く並んでいるのは雑穀米などという名前になっているものが多いです。
③必ずしも5種類とは限らない五穀豊穣の五穀は昔から5種類の限定された穀物の名前を示していましたが、近年では5種類に限らずさまざまな穀物のことを言うようになりました。
五穀の他にも緑豆や刀豆(なたまめ)、胡麻や蕎麦、よくいなどたくさんの穀物のことを総称して「五穀」というのです。
祈年祭と関わりのある神嘗祭とは?
祈年祭では農作物の成長や豊作を願いおこなわれますが、もし無事に豊富な作物が収穫できた時はどうなるのかと思いますよね。
祈年祭と対になっていて、秋に無事収穫ができましたということを感謝するお祭りが「神嘗祭」です。
神嘗祭は「かんなめさい」と読み、その年の初穂を天照大御神にお供えして、五穀豊穣を感謝する意味が込められています。
昔は伊勢神宮にて旧暦の9月17日に開催されていました。
明治5年より新暦の9月17日に開催されるようになりましたが、稲などの収穫を祝うお祭りなのにまだ収穫ができないということが続いてしまいました。
そのため、明治12年からは稲穂の成長が十分になり収穫ができる、10月17日に変更になりました。
他の神社では10月19〜23日まで、場所によって異なります。
祈年祭と関わりのある新嘗祭とお供え物
伊勢神宮をはじめとして神社でおこなわれる神嘗祭(かんなめさい)は、初穂の実りを神様に報告して感謝をするお祭りです。
神嘗祭と同じような名称ですが、似たような響きのお祭りに新嘗祭(にいなめさい)があります。
新嘗祭はその年の初穂を神様にお供えをして、宮中では天皇自らが育てた初穂を食しながら神様に食べ物の恵みについて感謝するというお祭りのことです。
日本書紀には飛鳥時代・皇極天皇の時代より始まったと伝えられていますが、詳しい起源はわかっていません。
新嘗祭がおこなわれる時期は毎年11月23日で、宮中の恒例祭典の中では特に重要なもののひとつになっています。
毎年宮中でおこなわれる恒例祭典のことを「宮中祭祀」といい、元日の挨拶である四方拝なども含まれます。
なぜ11月23日になったのかというと、収穫を感謝する目的に沿った日時を考えたところ11月の2回目の卯の日におこなうことになりました。
最初に決めた年の11月2回目の卯の日がちょうど23日だったので、以降の年からは11月23日固定となったのです。
毎年宮中をはじめとして、日本各地の神社で新嘗祭がおこなわれています。
日本神話の中では天皇は天照大御神の子孫と伝えられており、天皇自らが天照大御神に初穂をお供えすることで来年の五穀豊穣を約束するという意味があります。
実は新嘗祭はもともと祝日に指定されていましたが、神道色が強すぎるために除外されました。
新嘗祭の代わりに国事と特に関わりのない祝日として制定したのが、勤労感謝の日なのです。
意外なところで祈年祭ともつながりがあって、面白いですね。
祈年祭の正しい挨拶の仕方とは?
春におこなう祈年祭では、神様に「五穀豊穣でありますように」と豊作をお願いします。
祈年祭でお願いをした場合は、そのままにしておくと神様が「その後どうなったのか」と心配になってしまいますよね。
祈年祭と神嘗祭はセットとしてみられているので、お願いをした場合はその報告をするのが望ましいのです。
報告をするには、お願いをした時に具体的にどうしたいのかをはっきり伝えておかなければなりません。
「豊作でありますように」と単にお願いをしても、神様は豊作になった後どうしたいのかを知りたがっているのですね。
「食べ物を食べて国を栄させたい」という希望や「食べ物を独り占めしたい」という欲望などさまざまな答えがあると思います。
神様が願いを叶えてあげたいと思うのは、間違いなく前者でしょう。
たとえば「お願いが叶ったら〇〇のようにしたい、だからお願いします」というように、願い事が叶った後に実行したいことを神様に伝えておくのです。
先に展望を伝えておくと、神嘗祭で報告をした時に「願い事を叶えたので、実行すべきことを頑張りなさい」と神様も見守ってくれるでしょう。
祈年祭での挨拶は、目先のことだけではなく目的が達成した先のことまで神様に報告する必要があるのですね。
祈年祭でのお供え物とは?
祈年祭では神様に農作物がたくさん収穫できるよう、豊作のお願いをします。
お願いを聞いてもらえるように、祈年祭がある2月17日の早朝には天照大御神をはじめとした神様たちに食事をお供えするのです。
祈年祭でお願いした通り無事に収穫を終えたら、今度は神嘗祭で神様の中でも先駆けて天照大御神に初穂をお供えします。
次に1ヶ月後の新嘗祭にて、他の神様たちに初穂がお供えされるのです。
まとめ
祈年祭について、その意味や開催日、挨拶やお供えの仕方などを詳しくご紹介してきました。
祈年祭の意味は旧暦の立春の時期に農作物の豊作を願うお祭りで、現在では毎年2月17日に神社でおこなわれます。
祈年祭では神様に農作物の豊作をお願いするので、秋の実りの時期に神嘗祭で報告をする必要があります。
祈年祭での挨拶はお願いごとと一緒に、願いが叶った後に実行することを伝えると良いでしょう。
祈年祭では天照大御神をはじめとした神様に早朝から食事を、神嘗祭では天照大御神に初穂を、新嘗祭では他の神様たちに初穂をお供えします。
祈年祭は毎日美味しいご飯が食べられることに感謝できる、良いきっかけになりそうですね。