クリスマスやハロウィン、正月にお盆と日本には様々な行事があります。
しかし、灌仏会を知っている人は少ないのではないでしょうか?
灌仏会とは、「花まつり」のことです。日本で暮らしていても、灌仏会を見聞きしたことが無いという人もいると思います。
ここでは、日本人なら知っておきたい灌仏会(お花まつり)について詳しくご紹介します。
灌仏会の由来
灌仏会とは、お釈迦様の誕生を祝う仏教行事のことを指します。
お釈迦様は、紀元前5世紀前後に現ネパールのルンビニという場所で誕生しました。
誕生に際した有名なエピソードに「産まれてすぐに7歩だけ歩き、右手で天左手で地を指差し、天上天下唯我独尊といった」という話があります。この時の姿を模したものが、お釈迦様の誕生仏像として作られ、現在でも灌仏会で用いられています。旧暦の4月8日が、お釈迦様の誕生日とされています。そのため、灌仏会も4月8日に行う寺院がほとんどです。
灌仏会と呼ばれる以外にも、花まつり、降誕会、花会式、浴仏会、仏生会、龍華会などと言われます。また、日本以外でもアジア諸国を中心にお釈迦様であるゴーダマ=シッダールタの誕生日を祝う行事が催されています。
日本で灌仏会を行うようになったのは、推古天皇の時代であり、法隆寺で初めて行われたと言われています。灌仏会はお花まつりとも呼ばれるように、お花をふんだんに使用します。これはお釈迦様が産まれたルンビニ花園を表わしているのです。
灌仏会はどんな意味が込められているの?
灌仏会は、お釈迦様の誕生日を祝い敬う意味が込められています。誕生日である4月8日は、日本でも様々な花が咲く時期であるため、お釈迦様が産まれた花園を再現するようにたくさんの花々を用い、花御堂が作られます。その中に灌仏桶を置き、誕生仏像を安置し甘茶を満たして祝います。灌仏会はお釈迦様の誕生日をお祝いするものですが、五穀豊穣や国家の繁栄を併せて願うこともあります。
日本で4月というと、厳しい寒さが和らぎ山開きや農村での活動が始まる頃です。元来、山の神を祀るのにたくさんの花を使っていました。そのため、灌仏会でもその年の豊作と安全を同時に祈願しているのです。
灌仏会はいつ行われているの?
基本的に灌仏会は、お釈迦様の誕生日である4月8日に行われます。
日本では春らしく過ごしやすい気候となり、色とりどりのお花を用意できる時季です。春の花であるチューリップやフリージア、モクレン、桜、マーガレットにカーネーションなどが咲き誇ります。灌仏会が春を告げる行事として親しまれるのも、この時季であるからと言えます。
しかし、お釈迦様の亡くなった2月15日頃を誕生日として祝う寺院もあれば、新暦や旧暦で少しずれた日に祝うところもあります。特に、日本以外の国では、歴の定めの違いで祝う日も異なる場合があります。
灌仏会に甘茶を用意するのはなぜ?
日本の灌仏会・お花まつりでは、華やかな花々を用意し花御堂を飾ります。その御堂の中に灌仏桶を置き、桶の中にお釈迦様が天地を指し示す誕生仏像を据えます。桶の中は甘茶で満たし、参拝客はそこへ柄杓を使い甘茶を掛けて誕生を祝います。甘茶は、お釈迦様が産まれた時に天から注がれたとされる産湯を表わしています。
お釈迦様が誕生した際、九つの頭を持つ九頭龍という龍が現われて甘露の雨を降らせました。古くからの言い伝えで、神仏が現われる時には空からいろいろなものが降り注ぐとされていますが、お釈迦様の場合は甘露と言う甘い雨が降ったのです。この甘い雨を甘茶で表現しています。
お釈迦様の誕生を祝う灌仏会では、甘茶がふるまわれ、皆で飲むという習慣があります。甘茶の味にもそれぞれの寺院の特徴があり、甘いところもあれば甘さ控えめのところもあります。甘茶には独自の香りやクセがあるのですが、縁起物なので是非口にしてみると良いでしょう。
甘茶とはどんなもの?飲むときの作法はあるの?
灌仏会に使われる甘茶とは、一体どんなものなのでしょうか。
甘茶は、ユキノシタ科のヤマアジサイの変種アマチャの若い葉を蒸した後に揉み、乾燥したり煎じたりして作るお茶です。
ウリ科のアマチャヅルの葉を使ったお茶も甘茶と言いますが、正式にはヤマアジサイの変種であるアマチャの葉から作るものを指します。アマチャは落葉性の低い木で、寺院の庭などで多く育てられています。日本で出回っているのは長野県で栽培されているものが多いようです。
葉を乾燥させることで自然の甘みが出るため、糖尿病患者の甘味摂取の代用としても使用されています。ノンカロリーでカフェインもありません。
生薬としても有名で、抗殺菌作用や抗アレルギー作用があり、歯周病にも効果があります。春に飲むと花粉症などにも効果的と言われています。日本原産のものであり、生薬の中国名はありません。中国産のものでは甜茶が似ているので日本の甘茶と比べてみてもよいかもしれません。濃すぎる甘茶は中毒を起こし、食中毒症状として嘔吐などが起こることもあります。
安全に飲むためには1ℓの水に対し2~3gが推奨されています。甘茶を飲むことで無病息災が叶うと言われています。また、目に付けると目が良くなるとも言われています。これは、タンニンというブルーベリー等にも含まれるポリフェノール成分が目に効くからでしょう。
甘茶で墨をすり習字をすると字が上手になるとも言われています。甘茶には、昔から虫よけの効果があると言われていて、甘茶墨で害虫除けのまじない札を作る風習もありました。
寺院などで甘茶を振る舞われると聞くと「何か特別な作法があるのではないか?」と身構える人もいるでしょう。しかし、甘茶には、抹茶を飲む際のような特別な作法はありません。ふるまわれた場合はそのまま飲めます。
また、お釈迦様の誕生仏像へ甘茶を掛ける場合は、備え付けられた専用の柄杓を使いましょう。
白い象を置く理由は?
灌仏会にお花、甘茶以外に白い象を置くことがあります。白い象はお釈迦様の生みの親である麻耶夫人が、6本の牙を持つ白い象が自分の身体に入るという夢を見た直後にお釈迦様を身ごもったという言い伝えがあるからです。白い象がお釈迦様をこの世へ導いて来たと言われているのです。そのため、白い象の背中に花御堂を作るところも多くあります。
仏教系が運営母体の幼稚園や保育園、こども園などでは、灌仏会の際に稚児行列を行うこともあります。また、寺院などでも幼児~学童くらいまでの子供達を集い稚児行列を行うところもあります。稚児行列は、子供達がきらびやかな服を身に纏い、白い象の置物を引っ張ります。稚児行列にはお釈迦様の誕生日を祝うだけでなく、子供の健やかな成長を祈願する意味が込められています。
灌仏会の縁起物は?
灌仏会の縁起物としてタケノコやソラ豆を食べることもあります。タケノコは誕生仏像に姿かたちが似ているため、仏影蔬と呼ばれています。また、ソラ豆も鞘が天に向かって伸びるため、仏豆という別名があるのです。こういったお釈迦様のイメージを持つ食べ物を食し幸運を祈願することも大切な習わしです。
また、灌仏会の日にはよもぎ餅をお供えし、精進料理を食べるという人も少なくありません。よもぎ餅は春に採れるよもぎの葉を使用する季節ものです。
灌仏会の頃が一番美味しく頂けるためお供えにする家庭も多いのです。灌仏会の日だけ精進料理として精進ちらしなどを作る家庭もあります。
日本で有名な灌仏会
日本で有名な灌仏会は、東大寺のもので「仏生会」と呼ばれています。京都では西本願寺や東本願寺、清水寺、知恩院などでも行われています。関西でも関東でも多くの寺院が灌仏会を行っていますので、灌仏会の日に京都や奈良で寺院巡りをするという観光客も増えています。
また、龍谷大学など仏教科のある大学や、仏教系の学校では各校で独自に灌仏会が行われます。各地にある仏教会でも行われています。一般参拝客を招き入れている寺院や学校もありますが、開催日時が異なることもありますので、興味のある寺院については予め調べておくと安心です。
まとめ
灌仏会はなかなか聞き馴染みの無い行事ですが、お花まつりというと聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。お釈迦様の誕生日を祝い、それと共に国家の繁栄、五穀豊穣、子供の成長祈願などを行うのです。春先に行われるため、たくさんの花を用意し、お釈迦様の誕生仏像を甘茶で満たします。そして、参拝者が甘茶を掛け誕生を祝うのです。
甘茶を飲んだり、稚児行列に参加したり、各地でさまざまなイベントが催されています。イベントに参加しなくても自宅で花を飾り、甘茶を飲み、縁起物を食べるだけでも十分な灌仏会のお祝いになります。
灌仏会は、基本的に誰でも祝うことができます。
知れば知るほど親しみやすい行事ですので、気軽に参加してみてください。寺院によっては甘茶を貰うために水筒やコップなどが必要な場合もあるので、開催日時と併せて事前に調べてみる事をおススメします。