「桜人」という言葉をご存知ですか?
なかなかに風流で美しい言葉ですよね。
桜人とは「桜を愛でる人」「花見をする人」という意味があり、源氏物語などにも登場する言葉です。
桜人は日本の歴史においていつから登場し、またこの言葉はいつから使われるようになったのかなどまとめ、解説しています。
あわせて、日本のお花見の歴史についてもまとめました。
桜人とは?意味を解説
「桜人」と聞いて何を連想するでしょうか。
「サクラビト」といえばEvery Little Thingが2008年に発表したのシングル曲のタイトルですし、 「さくらびと」といえば2010年にSunSet Swishが発表したシングル曲のタイトルになります。
ここから分かるように「桜人」とは「さくらびと」と読むのですが、どういう意味があるのでしょうか。
「桜人」とは、「桜の花を愛でる人」「桜の花を見る人」「桜の花見をする人」「花見をしながら歩く人」などの意味があります。
なかなか風流な言葉ですよね。
最近できた言葉のように思えますが、実は「桜人」という言葉は平安時代にはもう使われていました。
また、源氏物語の巻名としても登場しています。
残念ながら源氏物語の「桜人」は今は内容が失われてしまっているものとして扱われています。
源氏物語は、現在は54巻とされていますが、昔は60巻、とされていた時もあったようです。
どの範囲までを源氏物語と呼ぶべきか、正規化されていくと共に、桜人は除外されていき、本文も失われていってしまったのでしょう。
しかし源氏物語に関する資料の中に、桜人に関する記述が存在します。
今となっては、どのような内容だったのか、失われてしまったことは少し残念ですね。
桜人という言葉の使い方、使われ方
「桜人」という言葉は平安時代からもう使われていたことが分かっていますが、どこに登場するかというと、催馬楽(さいばら)の曲名として登場しています。
催馬楽というのは平安時代に日本の各地の民謡をもとにして生まれた雅楽における謡物(うたいもの)で、雅楽器で伴奏をし、そこに民謡などを合わせて歌っていたものです。
民謡は庶民の間で歌われていたものだったので、最初は特に旋律は決まっていませんでしたが、主に貴族や天皇などの間で楽しまれるようになっていくうちにだんだん雅楽風にアレンジされていきました。
最終的には「律」と「呂」の2つの旋律に定まっています。
そして「桜人」は「呂」に入っています。
歌詞は、「桜人その舟止(ちぢ)め、」で始まるもので、大勢の人が桜の花見を楽しんでいる様子がうたわれています。
少なくとも平安時代から、庶民の間でもお花見というのが楽しまれていたのだ、ということがこの歌から分かります。
さて、「桜人」という言葉がずいぶんと昔から使われていたことは分かりました。
つまり昔から日本人は桜の花を愛でる、いわゆる「花見」という行事を行なってきていたわけです。
ところで、お花見という行事はいつから定着したのでしょうか、桜人はいつから存在していたのでしょうか。次にまとめてみます。
なぜ日本人は桜が好きなのか?花見の歴史と由来
日本人が桜を愛でる、その歴史はかなり昔にさかのぼります。
古くは古代、農民が豊作を祈っての行事として桜の木にお供え物をしたり宴会をしたりしていたのが始まり、とされています。
つまり、桜の木を神様とし、それを崇めておもてなしをする、そういった行事だったのです。
それが桜の花を見ながら宴会をする、楽しむ、といった形にかわっていったのは奈良時代だとされています。
すでに「万葉集」には桜のことをうたった歌があり、当時の貴族たちが既に桜の花見を楽しんでいた様子がわかります。
平安時代になると、桜の人気がさらに高まり、古今和歌集におさめられている春をうたった歌ではほとんどが桜について詠まれています。
また、源氏物語にも花見の宴会の様子が描かれていることから、既にお花見というの行事が定着している様子がわかります。
また、花見といえば桜、というのももうこのころからイメージとして定着していたようですね。
そして江戸時代には花見は庶民の間にも定着し、現在のように桜の木の下でお酒を楽しむような形へとなっていきました。
庶民の間にも広まるようになった理由の一つに、品種改良がすすみ、身近なところで桜を楽しむことができるようになった、というのが挙げられます。
徳川三代将軍家光は隅田川や上野に桜を植え、八代将軍の吉宗は飛鳥山に桜を植えました。
そしてそれらは今でも桜の名所として人々に親しまれています。
こうして改めてお花見の歴史を振り返ってみると、日本人というのは随分昔から桜を愛おしみ、楽しんでいたのだなと感じますね。
桜人は古代の昔からいた、ということになります。
桜の花見は宴会だけではない?楽しみ方色々
お花見というとどうしても「宴会」というイメージが強いですね。
テレビなどでもお花見スポットの中継というと公園などでブルーシートを広げ、楽しそうにお酒や料理を楽しんでいる人々が映る、そんな光景が定番となっています。
上記しましたようにお花見での宴会は随分と昔からの伝統でもある、ということが分かりましたが、実際、みなさんはお花見をどんなふうに楽しんでいるのでしょうか。
宴会以外にどんな楽しみ方があるのか、ご紹介しましょう。
まず、「桜の木々の下をゆっくり散歩する」、こういった楽しみ方をする方は多いようです。
シンプル、かつ、お金のかからない楽しみ方ですよね。
特に雑誌に載っているような有名スポットでなくても、桜並木は意外と身近なところにもあるものです。
みなさんにもきっと、近所にあるご自分のお気に入り桜スポットがあるのではないでしょうか。
わざわざ混みあった場所に行かなくても静かにのんびり桜を愛でる、まさに「桜人」という感じがしますよね。
そして、特に有名スポットに行かなくても身近に桜の木がある、これも日本ならではの特長ではないでしょうか。
そして、「レストランやカフェなどから桜を楽しむ」、こういった楽しみ方をする方もいらっしゃいます。
賑わう場所ですとお店に入るまでに並んだりと大変かもしれませんが、席に座ることができればゆったりのんびりと桜を楽しむことができますよね。
景観のよさそうなお店を前もってチェックしておくのも良いかもしれません。
また、他にも、桜並木の下をドライブする、サイクリングする、など、宴会をする以外にもさまざまな楽しみ方をしていらっしゃるようで、色んな「桜人」がいるのだなと改めて感じます。
日本で桜が一番最初に桜が咲くのは?
桜は、日本全国、ほぼどこにでもあります。
日本は縦長ですから、桜の開花時期も南と北では随分違ったりするものですが、それでは、日本で一番最初に桜が咲くのはどの地域なのでしょうか。
日本で一番最初に桜が開花するのは、沖縄です。
一番南にありますし気温が高いですから納得、ですよね。
沖縄で咲くのはソメイヨシノではなく、緋寒桜または寒緋桜で、開花はなんと1月中旬くらいになります(その年の気候にも左右されます)。
本州で一番最初に開花する桜は、静岡県の河津桜です。
こちらは例年2月上旬ころ開花し、ゆっくりと満開の時期を迎えるために約1ヶ月ほど、楽しむことができる桜です。
毎年2月上旬から「河津桜まつり」も開催され、たくさんの「桜人」、花見客が訪れる観光スポットとしても有名です。
ソメイヨシノは大体3月後半、西日本と東日本の主に太平洋側で開花し始めます。
九州地方と関東地方とあまり変わらない時期だったりすることもあります。
ソメイヨシノは、開花から満開までだいたい1週間くらいと言われ、花見を楽しめる時期はあまり長くありません。
その儚さを求めて人々は桜の木の下に集まるのでしょう。
最終的に東北、北海道で桜が開花するのは4月後半から5月の上旬くらいになります。
日本全体として考えてみると、沖縄から北海道まで、桜は実に1月中旬から5月上旬まで楽しむことができるわけです。
全てを追うことは難しいかもしれませんが、桜を追って旅をする、というのも素敵なことです。
まさにそれこそ、究極の「桜人」と言えるのかもしれませんね。
まとめ
今回は「桜人」について、その意味や使い方、使われ方などについてまとめ、日本における「花見」の歴史についても触れました。
元は桜の木を神として崇め、豊作を祈る儀式から、今の形式にかわっていった、というその移り変わりはなかなかに興味深いものがありますね。
また、桜人という言葉も随分と昔から使われていたこと、日本人は昔から桜を愛し、その季節を心待ちにしていたということもわかりました。
今度桜の季節を迎える時には「桜人」というワードを心に留めながら、お花見を楽しんでみてはいかがでしょうか。