「春雷」とはその言葉通り、「春に発生する雷」を言います。
しかし「春雷」には実はもっと奥深い意味があるのです。
今回は「春雷」の意味や言葉の由来、発生する時期や仕組みをまとめました。
あわせて、「春雷」を含む俳句やことわざからどのような使い方をされているのかもご紹介しています。
季節ごとに発生する「雷」にはそれぞれ意味があり、そしてわたしたちにもたらすものも変わってきます。
春雷が一体どのような位置づけで昔から扱われているのかなど非常に興味深いことがわかってきますよ。
春雷とは?意味を解説
雷、というと夏に発生するイメージが強いですが、「春雷」とは「春の雷」と書きます。
意味としてはそのままのざっくりした解釈で、「春に鳴る雷」のことを言いますが、もっと詳しく、細かくみていきましょう。
厳密に言うならば、春雷とは春の訪れを知らせる雷で、3月から5月くらいまでに発生する雷のことを言います。
冬の終わりを告げる雷、という言い方でもいいかもしれません。
立春を過ぎてから初めて鳴る雷を「初雷」とも言い、また、啓蟄の頃によく発生することから、春の訪れを虫たちに知らせ、虫たちを目覚めさせるものとして「虫出しの雷」という呼び方もされています。
春雷、とは単に「春に鳴る雷」のことを言うわけではなく、冬の終わりを告げ、春の訪れを知らせる雷を「春雷」と言うのですね。
一般的に雷というと夏場に発生する雷を思い、激しい雨と共に轟音が響く、ようなイメージを浮かべますが、春雷はそこまで激しくはなく、音も小さ目のケースが多いです。
とはいえ、時々雹(ひょう)を降らせることもあり、農家にとって非常に脅威になる場合もあるようです。
夏の雷のような激しさはなくても、春の訪れを十分に存在感をもって知らせてくれる、そんな現象なのですね。
春雷の時期は?なぜ起こる?
春雷の時期は、上記しましたが、3月から5月くらいまでに発生するものです。
この時期に発生する雷は、寒冷前線が通過するときに発生するもので、「界雷」という分類に分けられます。
春雷は「界雷」の一種ということですね。
界雷というのは、主に夏場によく発生する、熱せられた上昇気流によって形成された積乱雲による熱雷とは違い、低気圧に伴う寒冷前線や梅雨前線が移動する時に大気が不安定になることで発生する雷のことをいいます。
一口に「雷」といっても発生条件や仕組みは違うものなのですね。
ちなみに、この界雷は日本海側で大雪を降らせる時にも発生するのです。
雪なのに雷?とも思いますが、これが「界雷」の特徴なのです。
大雪の時期の雷は高さが低いところで発生することが多いために航空機などに影響を及ぼすこともあるようで、なかなかに脅威ですね。
「春雷は界雷の一種」から色々調べてみると意外なこともわかってなかなかに興味深いです。
春雷は春の季語!俳句をご紹介
春雷は春の季語として俳句などによく登場します。
使い方としてはやはり、3月から5月くらいまでの季節のときに入れるのが良いでしょう。
春雷という季語は、そのたった一つの言葉だけで情景がよく伝わるものでもあります。
たとえば、高浜虚子の「春雷や大玻璃障子うち曇り」、原石鼎の「春雷やどこかの遠に啼く雲雀」、水原秋櫻子の「春雷や暗き厨の桜鯛」、川端茅舎の「春雷や牡丹の蕾まつ蒼に」、など有名な俳人らの俳句にも多く登場する言葉です。
どの句も、まだどこか肌寒さが残るような雰囲気を感じさせつつ、桜や牡丹などの春に咲く花の名を出すことで春らしさが表れていますね。
春雷、のかわりに「春の雷」という表現をしている俳句も多くあります。
加藤楸邨の「春の雷焦土しづかにめざめたり」や石田波郷の「あえかなる薔薇撰りをれば春の雷」などです。
雷とは本来夏のものでは、という考えがどうしても頭にありがちですから、「春に鳴る雷」というのは一見異質なもののように感じがちです。
しかし、その文字と共に紡がれる春を示す情景に心を惹かれるのでしょう。
春雷という言葉を使った俳句はただ見ているだけでも美しいですね。
春雷が多い年は夏が暑い?関連ことわざをご紹介
ところで、春雷が多い年は夏が暑くなる、と言われているのをご存知ですか?
実際、「四月雷は日照りのもと」ということわざもあります。
火のない所に煙は立たぬ、とも言いますし、根拠もなしにこんなふうに言われることもないでしょう。
実際はどうなのでしょうか、ご紹介しましょう。
この場合の「四月」とは旧暦のことなので、今でいう5月ごろをさします。
春雷が多く発生するときは前線の発達が活発になっていきます。
そうすると太平洋高気圧が早く張り出してきてしまい、結果、梅雨明けが早い、もしくは空梅雨になりやすい、ということのようです。
梅雨明けが早いということは夏の訪れも早くなります。
そういうことから「夏が暑くなる」ということに繋がるのでしょう。
梅雨の時期に雨が降らないと、その先に迎える夏の季節、水不足などに見舞われることもあります。
そこから「日照り」ということにも繋がるのですね。
春雷と日照りだけ並べると全く関係がないように見えますが、ちゃんとした気象学上の理由があるのです。
似たようなことわざに「四月雷は地底が割れる」というのもあります。
こちらも、春雷が多い年は空梅雨になりがち、をたとえたものでしょう。
「春雷は不作」、ということわざもあります。
上記しましたように空梅雨になれば農作物にとっても大きな影響を与えることになります。
また、春雷は発達は小さ目とはいえ、時々雹を降らせることもありますので、春の時期の雹は、これも農作物にとっては大きな被害を与えることにもなります。
そのため、不作になる、と言われているようです。
春雷、という言葉は春の訪れを表す素敵な言葉だなと思う一方で、現実には農家の方々にとってはあまり歓迎されない自然現象でもあり、暑すぎる夏は嫌だなと思う方も多いでしょう。
なかなかにそのギャップも興味深いですね。
秋雷や冬雷はあるのか?
ところで、「春雷」という言葉・季語はありますが、「秋雷」や「冬雷」というのはあるのでしょうか。
「秋雷(しゅうらい)」や「秋の雷(あきのらい)」という言葉はあり、秋の季語として俳句などに使われています。
ですが、春雷のように色々と定義づけのある種類の雷ではなく、単に「秋に鳴る雷」という意味で使われます。
ちなみに「雷」は夏の季語ですが、「稲妻」は秋の季語になります。
雷と稲妻は同じものでは?と思いますが、雷は音を伴いますが、稲妻は、雲の内部で光が見えるだけで音が聞こえないこともありますし、実際気象学上でも定義が異なります。
「稲妻」という文字に「稲」という字が含まれることから分かるように、稲穂が実を結ぶ季節に多くみられることからこの名前がついたようです。
昔から、秋に稲妻が多く見られると豊作になる、という言い伝えがあるようで、春雷が多いと不作になる、と言われているのに同じ雷でも随分と違うものですね。
実際、米どころといわれる新潟県は稲妻発生率が高いそうで、単に言い伝えだけではないようで、興味深いですね。
冬の雷は、「寒雷」と言います。
冬の雷は主に日本海側で発生することが多く、仕組みとしては大陸からきた寒気や寒冷前線が通過するときに大気が不安定になって起こるものです。
そしてこの冬の雷は「鰤(ぶり)起こしの雷」とも言われ、寒雷が多い年は鰤が大量にとれる、ということで漁業関係の方々には喜ばれる現象のようです。
秋の雷も、そして冬の雷も、わたしたちにとっては恵みなのですね。
雷というと不吉なことの前触れ、のようなイメージもありますが、秋の雷や冬の雷に関しては決してそうではないようです。
春雷から少し話を広げ、秋の雷や冬の雷にも触れましたが、同じ雷でも発生する季節によってわたしたちにもたらすものが変わってくるのですね。
まとめ
今回は「春雷」について、その意味や発生時期、発生の仕組みをまとめ、さらに「春雷」を含む俳句やことわざなどもご紹介しました。
春雷と関連して、秋の雷や冬の雷についてもまとめています。
春雷が単に「春に鳴る雷」という意味だけではなく、春の訪れを告げるもの、そして啓蟄と絡めて虫たちを起こすもの、として呼ばれていること、使われていることがなかなかに興味深いです。
反面、春雷が多いとその夏が暑くなることや、農作物に影響を及ぼすことにつながる、ということも驚きですよね。
一口に「雷」といっても発生する季節によって意味合いやわたしたちとの関わり方も変わるようです。
普段、季節に関係なく雷の音を聴いていても、こういうことを知識として知っていくと、雷の音をまた違った気持ちで感じることができそうですね。