「蓮華」、これは花の名前ですが、大抵の人は懐かしさとともに、田植え前の田んぼに咲いていた薄紫の小さな花、れんげ草を思い出すのではないでしょうか。
でも子どもの頃によく花摘みをして遊んだれんげ草は、本当は別の名前を持っています。
今回は蓮華という名前の由来や花言葉、花の咲く時期や特徴について解説します。
れんげ草の本当の名前についても紹介します。
懐かしい小さな花について、きっと発見することがたくさんありますよ。
「蓮華」は生活に役立ってきた?読み方と由来!
蓮華は「れんげ」と読みます。
もともとれんげは、日本ではゲンゲという名前の花でした。
マメ科ゲンゲ属に分類されるので、ゲンゲという名前が本名に相当するようです。
今でも蓮華はゲンゲの別名だと紹介されています。
ゲンゲは感じで書くと「紫雲英」です。
これは遠くから蓮華が咲いているところを見ると、まるで紫色の雲のように見えるから、という意味があります。
蓮華という名前の由来は、あの小さな花が蓮の花に似ているからといわれています。
また、蓮華は中国からの帰化植物です。
蓮はもともと仏教と深い関係がありました。
仏像の足元には蓮の花がありますし、「蓮華経」という名前のお経もあります。
蓮華も仏教も中国から来たので、昔の人は何か関係があると感じたのかも知れません。
仏教は日本人の精神に深い影響を与えましたが、蓮華もまた日本人の生活に大きな影響を与えました。
蓮華の根には、バクテリアが共生して、空気中の窒素を蓄える働きをします。
この窒素は植物が育つためには、必要な栄養となるので、田んぼの肥料が現在のように豊富ではなかった頃には、蓮華の働きを利用するために、田植え前の田んぼに蓮華を咲かせていたのです。
また、蓮華は野菜のように食用にも利用されていました。
現在でも蜂の蜜源として蓮華は有名です。
れんげ蜂蜜を食べたことがある人はきっと少なくないはずです。
蓮華の咲く時期と特徴!花言葉は?
田植え前の田んぼに咲いているところからも分かる通り、蓮華は春の花です。
蓮華の発芽には気温が15度から20度になっていることが必要なので、多くの場所で4月になってから咲き始めます。
茎の高さは10cmから25cm程の場合が多く、花はマメ科特有の蝶の形をしていますが、輪生状にひとまとまりに付いています。
何の気なしに花を摘んでいると気が付きませんが、1本の茎には7個から9個の花が付いているわけです。
この様子を近くからよく見てみると、蓮のような形に見えるのです。
花の後にできる種はさやに入っており、豆そのものです。
蓮華には薬効があることが、花言葉にも表れています。
「あなたがいれば、私の苦痛は和らぐ」
蓮華には解毒作用があり、乾燥したものは咳や喉の痛みに効果があるそうです。
また生の葉の絞り汁は、外傷に効果があります。
薬効があるから、という理由だけでなく、蓮華は見る人をほっとさせる力があるようです。
子どもの頃の記憶と関係があるのかも知れませんが、確かに心が和らぐような気がします。
みんな蓮華が大好き!蓮華の祭りもある!
化学肥料が発達したことによって、蓮華を見かける機会はかなり減ってしまいましたが、春には埼玉県久喜市、茨城県坂東市、神奈川県大和市、愛媛県西予市など各地で蓮華に関する祭りが行われています。
祭りでは農業に親しみを持ってもらうための、野菜の販売やハチミツの販売を行っているところが多いようです。
蓮華の花摘みが体験できるところもありますから、ぜひ自宅の近所で蓮華に関する祭りが行われていないか、調べてみてください。
小さなお子さんがいるなら、無理して遠くに出かけるよりは、のどかな蓮華の畑で過ごせる祭りの方がきっと喜ばれるはずです。
大人には懐かしい蓮華畑は、現代の子どもたちにとっては新鮮に映ることでしょう。
祭りのためには決まった時期に蓮華が咲いていなくてはならないため、祭りを行う自治体では様々な苦労があるようです。
毎年祭りの後には、蓮華の種を採取して、種まきをすることが必要になります。
一口に種を取るといっても、咲き終わった蓮華を刈り取り、それをしばらく寝かして乾かしてからになります。
蓮華を刈り取って寝かせるだけでも、1日がかりの大仕事になってしまうそうです。
種をまいた後も、害虫の防除などやることはたくさんあって、市の職員とボランティアが一丸となって取り組まないととてもできることではないそうです。
蓮華の数が減ったことには、蓮華を食い荒らす害虫の存在も無視できません。
「アルファルファタコゾウムシ」という害虫が海外から入ってきてしまったのです。
蓮華は今や放って置いても育つ植物ではなくなってしまいました。
このため蓮華から作られるハチミツは今では貴重品になってしまいました。
そこで養蜂家の方々が蓮華の増殖事業を行っています。
熊本県では蓮華のハチミツ作りのため、種をまくところから始めています。
また日本のあちこちで、蓮華畑が見られるようになるかも知れませんね。
小さな蓮華の花ですが、先程の愛媛県西予市、山梨県中巨摩郡昭和町、そして岐阜県ではそれぞれ
市、町、県の花に蓮華を指定しています。
小さな蓮華の花に寄せる愛情が垣間見えるような気がしますね。
歌になった蓮華の花!蓮華の花と子どもの深いつながりとは?
昔の子どもと蓮華の花には深いつながりがありました。
子どもは花摘みが好きですが、自宅の庭の花を下手に摘むと大人に怒られます。
そこで蓮華の畑で好きなだけ花摘みをするのです。
何しろ蓮華は家に飾るための花ではなく、田んぼの肥料にされる花でしたから、いくら摘んでも大人は笑って見ていてくれました。
蓮華の花の茎を編んで、花かんむりや首飾りを作るのは、昔の女の子にとっては楽しい遊びでした。
今でもきっと子どもは夢中になることでしょう。
手を使って作品を一心不乱に作る楽しさは、ほかに例えようもありませんでした。
もし飽きたら、そのまま蓮華の畑に捨てても何も問題はありません。
だって肥料になるのですから。
だからでしょう、昔の童謡やわらべ唄には蓮華の花を歌ったものがあります。
『春の小川』や『れんげ摘もか』、『ひらいた ひらいた(この蓮華は、ハスの花であるという意見もあり)』など、今の子どもには馴染みがない曲ばかりかも知れませんね。
でも、子どもと蓮華の深いつながりがあるからこそ、歌になったのではないでしょうか。
子どもと蓮華の深いつながりを、このままなくしてしまうのは、何とももったいない話ではありませんか?
蓮華の花が世界を救う?蓮華の花の復活を願う!
現在、蓮華の祭りを行って、また蓮華が咲いている風景を復活させようとする動きが日本各地で見られるようになりました。
その中でも中心的な活動をしているの、日本レンゲの会です。
早稲田大学のサークルを母体とした緑化団体が、日本の春の風物詩だった蓮華の畑を蘇らせ、豊かな大地を取り戻そうと、土壌改良委員会を立ち上げました。
そしてレンゲ草作戦と称して、1981年に稲刈りが終わった直後の水田に、蓮華の種をまきました。
この初めての種まきは見事に失敗に終わってしまいましたが、これが日本レンゲの会の立ち上げにつながり、活動は現在も続けられています。
蓮華は枯れたら肥料になるため、耕されなく鳴った畑の命をつなぐことができますし、蜜源としてミツバチをよぶことができます。
現在ミツバチが減少していることも、地球全体の大きな問題となっています。
ミツバチが絶滅したら、まず農作物の受粉ができなくなり、大幅に食料が減ってしまいます。
そのためミツバチの全滅で、ほかの動植物がすべて滅んでしまうといわれているのです。
大げさな話ではなく、蓮華は世界を救うのかも知れません。
まとめ
今回は蓮華について解説しました。
蓮華という名前の由来や、花が咲く時期や特徴など、詳しく説明しましたから、蓮華の花を懐かしく思い出した人もいるのではないでしょうか。
また、蓮華がどれだけ私たちの生活に役立つ花であるかも、わかってもらえたと思います。
蓮華の畑を復活させようという活動を、ただ昔の思い出に浸っているだけ、と冷ややかに見つめていた人もいるかも知れませんが、そうではありません。
蓮華が消えてしまうことは、私たちにとって大きな損失になります。
まずは近所に蓮華の祭りがやっていないか、確かめてください。
そしてできれば祭りに出かけて、蓮華の花のある風景を実際に味わってください。
きっと蓮華を見直すに違いありません。
店先で売られる花とは違いますが、蓮華には大きな魅力があるのです。