年が明けると、桜前線という言葉を見聞きする機会が増えてきます。まだ寒い時期なので、「もう桜の話?」と不思議に感じる人もいるかも知れませんが、日本列島の南の方では1月から桜が開花するのです。でも、桜前線って誰がどうやって調査をし、発表しているのでしょうか?ここでは、桜前線や桜の開花予想についてを詳しくご紹介します。
桜前線とは一体どういうものなの?
桜前線とは、全国の桜の開花予想日を結び、線で表わしたものをいいます。
桜前線は、基本的に南から北、低地から高地に向かって進みます。ただ、開花予想日はその年の気候などにより変わります。九州よりも関東の方が早く咲く場所もあり、必ずしも日本列島を横断する線になるわけではありません。
桜前線という名前は、世間に認知しやすいようにマスコミが作った名前です。気象庁が使っている正式名称は「桜の開花予想の等期日線図」といいます。
桜の開花には地域差があり、日本列島内で境界線のように分かれることがあるため、前線の名で呼ばれているとされています。
桜前線の意味は?
では、なぜ桜の開花予想をし桜前線を把握する必要があったのでしょうか。どんな意味があり桜前線を調査しはじめたのでしょうか。
明治から大正にかけて、日本の各地で冷害が起こり、農作物に大きな被害が出ました。その解決策の一つとして、天候の長期予報、植物の生育予測が必要になったのです。
大正15年から中央気象台では東京の桜の調査を開始し、昭和3年には初の開花予想が試されました。ただ、この予想は、あくまでも農業気象研究のひとつという意味をもっていたため、積極的に発表はされていませんでした。
気象庁からの開花予想発表がされるようになったのは、昭和26年からです。最初は関東地区を対象にしていましたが、昭和30年頃からは、全国を対象として行われてきました。(沖縄・奄美地方は除く)
平成22年からは、開花予想ではなく開花の観測となりました。
桜の木はどこのものを参考にしているの?
本州は染井吉野(ソメイヨシノ)、北海道ではエゾヤマザクラやチシマザクラ、沖縄ではカンヒザクラ(ヒカンザクラ)で計測されています。
染井吉野は本州の各地に存在し、同じ条件で開花を迎えるため、予想が立てやすいという利点があります。各観測所から近い場所にある桜の木を数本選び標本木と定め、その桜の木を観測します。標本木は毎年少しずつ変えているのではないか?とも言われていますが、どの木を選んでいるのかは発表がされていないため不明となっています。
有名なのは、東京の靖国神社内の桜、大阪の大阪城公園の桜などです。
桜前線は一体誰が予想をしているの?
桜前線や桜の開花予想は、気象庁が行っていました。ところが、民間でも予想の精度が上がってきたことから、平成22年からは民間事業者が開花予想を行うようになり、それからは気象庁はあくまで観測のみをするようになりました。
桜前線の開花予想を任されたのは、民間の5業者で、ウェザーニューズ、日本気象協会、ウェザーマップ、日本気象㈱会社、ライフビジネスウェザーです。
開花予想の方法は、各社のオリジナルとなっているため、的中精度は少々異なります。
桜の開花と満開の定義は?
気象庁における開花・満開の定義は、各観測所の定める標本木の桜のつぼみが5~6輪咲いた場合に「開花した」と宣言されていました。それより少ない数でも「開花間近」と発表する場合もありました。標本木のつぼみが80%咲いた時に「満開」としており、それは今でも同様です。
ウェザーニューズでは、平成22年から「対象の桜の木に一輪以上花が咲いたら開花とする」というかたちに変更しました。
開花から満開までの時間は、沖縄・奄美地方で16日程度、九州から関東地方で7日程度、北陸から東北地方で5日程度、北海道で4日程度となっています。北上するに従い満開までの期間は短くなる傾向にあります。
観測の方法は?
桜前線の観測方法は、標本木を午前と午後に1日2回気象台の担当職員が観察する方法をとっていました。
平成22年に民営化された以降は、各社様々な方法で観測を行い開花予想をしています。
例えば、ウェザーニューズでは、全国700箇所の桜の名所を調査し開花の予想をしています。
桜前線の北上スピードは1日平均20キロ前後と言われていますので、各地の気温などを参考にコンピューターなどで計算をおこなっているのでしょう。
開花予想が間違えるケースもあるの?
現在では、コンピューターで過去の開花時の気温や天気などの情報を平均化しており、そのデータに当てはまる頃に開花がなされるとされています。ただ、コンピューターの不具合や計り知れない気象現象などが起こることにより、開花予想に狂いが出る場合もあります。過去にコンピューターの不具合から桜前線の開花予想がずれた際には、発覚次第、速やかに訂正されました。日本の気象予報精度は非常に優れているのですが、それでも自然を予測するのは困難なのです。そのため、100%的中するものではないと考えて、参考にするのが基本です。
桜前線にはさくらプロジェクトが活躍している!
桜の開花予想を担うウェザーニューズでは、全国のサポーターが参加する「さくらプロジェクト」という企画が用いられています。全国の会員が自分で桜の標本木を定め、その開花状況をスマホなどの写真機能を使ってリポートをするものです。
平成22年には、全国から2万人を超えるリポーターが参加している巨大なプロジェクトです。さくらプロジェクトを駆使し、各地の開花情報を仕入れることで、よりタイムリーな予想を届けられるのが大きなメリットです。春は入学式をはじめ、大きな行事がありますので、それに合わせて情報を得ることができるのは嬉しいですね。
桜前線の始点と終着点は?
桜前線は、例年2月頃に南の方から北の方に向かいます。
桜が最初に咲き始めるのは、沖縄の北部で1月中旬からになります。通常、桜前線は北上するものですが、沖縄県内では北部から南部へ南下するのが大きな特徴です。これには、桜の性質が大きく関係しています。桜は前年の夏には次年度の芽が出来始めます。そして、そのまま冬を越すのですが暖かいままでは成長せず、一度寒さに晒されないと開けないのです。寒波は高緯度から伝わるため、基本的に北部が先に寒くなり、先に開花を迎えるのです。
桜前線の終着点は、北海道根室市の清隆寺のチシマザクラです。このチシマザクラは、3~4メートルまでしか育たない小さな木が特徴です。近年では5月中旬に開花を迎えており、日本で最後に見れる桜として有名です。
桜の時期は天気が不安定
桜の咲く時期は、天気が不安定な傾向にあります。
桜前線を確認し、お花見の計画を立てたものの、直前に春の嵐で桜が散ってしまうという苦い経験をした人も多いのではないでしょうか?それが故にお花見は幹事泣かせのイベントともいわれています。
春は、移動性高気圧と低気圧が通過していく関係で非常に天気が変わりやすいのです。
ベストな日にお花見ができるよう、桜前線と合わせて天気予報も確認しておく必要があります。また、昼と夜とで気温差も大きい時期になりますので、体調管理にも注意しましょう。
巷の開花予想「600度の法則」って?
桜前線の発表される時期になると、「600度の法則」というものを耳にすることがあります。
この600度の法則とは、一体どんなものなのでしょうか?
それは、2月1日以降、毎日の最高気温を足していき、その累計が600を超えた頃に桜が開花を迎えるというものです。
桜の開花には気温が大きく関係しているため、この方法でも大きく外れないといわれているのです。
ただ、自然には、様々な気象の要因が関係してきますので、必ず600度になってから桜が開くという訳ではありません。あくまで一つの目安として捉えておくと良いでしょう。
まとめ
桜前線は、元々は気象庁が観測し発表していた桜の開花予想図です。開花予想を線で結ぶと、日本列島を覆う前線のような形になるため、マスコミが一般に理解しやすく「桜前線」と名付けたのです。これは、日本が春になっていく軌跡ともいえます。
近年では、民間事業者が桜前線及び桜の開花予想をして世間に発表しています。中にはAIが独自に桜前線及び桜の開花予想をしているところもあり、その高い的中率が注目されています。桜の開花には、気温や天候が大きく関係しています。巷では600度の法則(中には400度の法則としている地域もあります)で開花予想をするのも流行っていますが、様々な情報を参考にしてお花見の計画を立てたいところですね。