不如帰という漢字を見ても、何のことかわからない方もいるかもしれません。
これは鳥のほととぎすのことを漢字で表現しているのですが、実はこう書かない場合もあります。
またこのような漢字で表記されているほととぎすに関しては、不思議な伝説なども多く、あまり良い意味で使われないこともあるのです。
そんなほととぎすですが、昔から俳句などになり戦国武将などにも詠まれてきました。
意外とその生態や習性を知らないという方も多いはずなので、こちらで不如帰(ほととぎす)の生態の謎や見分け方、また同名の花や伝説なども含めてご紹介しましょう。
カッコウに似ているほととぎすの生態と行動
ほととぎすと聞いても実際に見たことがあるという方は、どのくらいいるのでしょうか?
ほとどきすの全長は大体鳩よりも少しだけ小さいくらいであり、28cm前後となっています。
翼を広げると45cmを超えるものが大きく、遠くから見てもほとどきすだと目で見て認識できるサイズ感です。
ほととぎすは夏の鳥として知られており、渡り鳥の一種。
5月になると不如帰(ほととぎす)を見かけることも多くなりますが、実はほとどぎすはウグイスの巣を拝借して卵を産むとされています。
そのため基本的にはウグイスが生息している場所やエリアに姿を見せることが多く、草原などにも現れます。
またほととぎすはウグイスの巣に卵を産んでも、その卵をどこかに持っていくわけではありません。
そのままウグイスに育ててもらい、自分は秋になるとまた去っていくのです。
何とも不思議な関係ですね。
とはいえ産んでいるところをウグイスに見られてしまうと、追い払われてしまうのでバレないように行うということになります。
これら一連の流れを、ウグイスとほととぎすの托卵関係といいます。
またほとどきすはカッコウと似ているとされているので、鳥類好きの素人が見るとほととぎすだと区別がつかないかもしれません。
ただほととぎすかな?と思ったら、模様や若干差がある個体の大きさ、飛び方などで違いを見分ける必要があるのです。
そこでほととぎすの体の特徴を、外で見かけた時に見分けがつくように簡潔にまとめていきましょう。
・背中の色は青っぽいグレー
・目の周りには黄色の線
・尾っぽと羽は黒い褐色
・お腹の部分に黒い斑点
などの模様の違いがあります。
メスとオスで良く模様が違う鳥がいますが、ほととぎすは大体同じ模様となっています。
ほととぎすの名前の由来は鳴き声?
春に鳴き声が美しいウグイスと同じように、ほととぎすは初夏の訪れを告げる鳥として知られています。
その鳴き声が聞こえると「ああ夏が来るなんだな」と、少しワクワクした気持ちになるかもしれません。
そんなほととぎすの名前の由来ですが、鳴き声にあるとされています。
それは、ほととぎすは「ほとほと」という独特な鳴き声をするから。
そのためほととぎすという、名前が付いたと言われているのです。
ホトホトがほととぎすとなったのは、鳴き声の音に「ス」をつけたことで完成されました。
この「ス」という言葉ですが、カラスやスズメなどにもついている「ス」のことで、小さな鳥を表現する際に古来の日本で名づけられたと言われています。
しかも実はほととぎすの鳴き声の表現は、時代により変化していっています。
例えば「ホンゾンカケダカ」と「ホトホト」から変化し、その後は「テッペンカケタカ」という面白い鳴き声に変化していったのです。
戦後のほととぎすの鳴き声は何とそこからさらに発展し、「トッキョキョカキョク」とまで鳴いていたとも表現されるまでに。
ここまでくると本来の鳴き声はどこへいったやらで、表現の仕方の方が難しくも感じてしまいますね。
ですが、このようにほととぎすの名前に、鳴き声が関係しているということがわかりました。
ほとどぎすの漢字は不如帰と書き、縁起が良くない?
それではほととぎすの漢字は、どのように書くのでしょうか?
実やほととぎすと書く漢字は、多く存在するのです。
まず一般的にほととぎすと読まれている漢字が、時鳥です。
この時鳥と書く理由は、夏の訪れを知らせるということから。
ほととぎすが渡来することで、「夏が来たな」と人々に時を知らせる役割があったとされていたからだと言われているのです。
また他には、不如帰という漢字が当てられています。
実はほととぎすにはあまり良い意味がないのですが、特に不如帰という漢字をあてる時には良くない意味を表現しているとも。
この由来は、ほととぎすの鳴き声にあるのです。
ほととぎすは、昼夜関係なく泣き続ける鳥として昔から知られていました。
その鳴き方があまりに強烈だったため、ほととぎすの鳴き声を真似すると血を吐くとまで言われていたというのです。
またほととぎすは夜も鳴くので、その鳴き方の尋常ではない様子から、命の危険さえ感じられる恐ろしさをも持っていました。
そのため、生命に危害を及ぼすものとして、ほととぎすを不如帰として表現したのですね。
不如帰と書いて、「帰るにしかず」という意味を表現しています。
もともとこの言葉が出来た由来は、古来の中国へと遡ります。
三国志などで有名な蜀の国。
その皇帝が当時の複雑な理由により退位をした後、また権力を持とうとしたところその望みは叶うことはなかったという伝説が残っています。
しかも、その後この元皇帝は、そのまま死んでしまったといいます。
まさに不如帰という言葉がぴったりであり、しかもその元皇帝はその後、ほととぎすとなって鳴き続けたというのでした。
だからこそほととぎすには不如帰という言葉があてがわれ、悪いイメージを定着させてしまったのでしょう。
ほととぎすという名の花が存在する!?
ほととぎすという名前を聞くと、鳥のことであるとすぐに思い浮かべることでしょう。
ですが実は、ほととぎすとは花の名前でもあります。
ほととぎすとはユリ科の植物であり、しかもほととぎす科です。
日本を始め台湾なども原産地として知られており、初夏の7月から秋口の10月までが開花時期となります。
基本的には湿った場所で成長する花であり、どちらかというと岩場などのゴツゴツした場所にあることが多いでしょう。
葉に点々が入る事でその名を油点草とも言いますが、白い花びらにも紫の点々模様が散らされているのが特徴です。
ユリ科であることでもわかりますが、茎が細くスラっと太陽に向かって伸ばしている格好が美しさをも感じさせます。
現在確認されているだけで19種類ものほととぎすがありますが、そのうちの10種類は日本だけで確認されている花となっています。
鳥のほととぎすも不思議な力のある霊的な鳥であるとされていますが、花のほととぎすも高貴な花であるとされています。
そのため昔から生け花などの花として、用いられてきたのです。
不如帰(ほととぎす)は有名な戦国武将も俳句に使用!
ほととぎすという鳥を実際に見たことがなくても、かの有名な俳句の中でなら知っているという方もいることでしょう。
戦国時代に君臨した三人の武将。
織田信長、豊臣秀吉、徳川家康がそれにあたります。
彼らはほととぎすを使い、歴史に残る有名な俳句を作りました。
それはこの武将たちの性格を見事に表現した俳句であり、後世にも残る事となったのですね。
その俳句とは以下のものです。
*織田信長作
鳴かぬなら/殺してしまえ/不如帰
*豊臣秀吉作
鳴かぬなら/鳴かしてみよう/不如帰
*徳川家康作
鳴かぬなら/鳴くまでまとう/不如帰
この俳句は本当に鳥のほととぎすのことを表現している、というよりはその当時の戦況や時代背景などを例えているととって良いでしょう。
この3武将が、天下統一を目指し奮闘していたことは有名です。
そこで天下統一を目指す道までに、どのような対応で敵や周りの諸国と争ってきたのかということが伺えますね。
実際に徳川家康に関しては、400年も続く安定した江戸を気付いています。
不如帰が鳴くのを待つだけの余裕があってからこそだと、言われていますね。
まさに徳川家康は待機晩成型の武将だった、ともとることができるでしょう。
ほととぎすはこのように、有名な歴史に残る俳句にたくさん出てくることで知られています。
もしも興味がある方は、是非調べてみるのをおすすめします。
まとめ
こちらでは不如帰という鳥の習性や生態をまとめつつ、どんな漢字があてられ、どの様な意味を持つのかということまでご説明してきました。
不如帰は夏を教える渡り鳥でもありますが、不思議で霊的な伝説が残る鳥でもあります。
その証拠に日本の歴史や中国の歴史の書物などにも、様々な表現として登場することが多いのです。
見た目はカッコウに似ている鳥ではありますが、実際にはとても独自の魅力を発揮している鳥であることも人々を魅了している理由でしょう。
ぜひこの機会にほととぎすの魅力について、感じてみてください。