葬儀に参列する人は香典を持参します。
香典は遺族を助けるためのものなので、本来お返しは必要ありませんでしたが、現在では必ずお返しを渡しています。
これを香典返しといって葬儀には欠かせませんが、葬儀の当日と、四十九日法要などの後、忌明けをしてから渡す場合があります。
早い場合と遅い場合で、ずいぶん時期にズレがありますが、なぜこんな違いができたのでしょうか。
今回は香典返しを渡す時期が早い場合と遅い場合の両方の理由を説明します。
また金額や、どんな品物がよいのかについても説明しますので、実際に香典返しを渡す場合には、きっと役に立ちますよ。
遅い?香典返しは、本来「四十九日法要の後」に渡します!
本来香典返しを渡すのは忌明けの日です。仏教では忌明けの日は、四十九日法要です。
遺族は四十九日法要までは亡くなった人の冥福を祈って生活しますが、この日以降は徐々に普通の生活に戻って行きます。
亡くなった人の魂が、いよいよ私たちのいる世界からあの世に旅立つのが忌明けの日だといわれています。
忌明けの日は、葬儀から始まった法要が一区切りつく日でもあります。
このため、この日に葬儀に参列してくれた人にお礼と報告をするようになり、香典返しが渡されるようになったのです。
香典返しを渡す時期は、宗教や宗派によって違いますが、それは忌明けの時期が違うからです。
神道では五十日祭、キリスト教のプロテスタントは亡くなって1カ月後の昇天記念日、カトリックなら30日目の追悼ミサが忌明けの日です。
忌明けの時期は違っても、亡くなった人が旅立つ区切りの日であることは同じです。だからどの宗教であっても、忌明けの日に香典返しを渡します。
どの宗教でも、香典返しは葬儀が終わってから1カ月以上が過ぎてから渡すことになるため、遅いと感じる人もいるかもしれませんが、香典返しの意味を考えれば、忌明けの日よりも前に渡すのが早すぎるのだと理解できますね。
無宗教で葬儀を行った場合はいつ香典返しを渡しても自由ですが、特別なことをする人は少なく、世間の風習に従って渡すことが多いようです。
葬儀当日は早い?即日返しを行う理由とは
葬儀の当日に香典返しを渡すことを即日返しといい、関東や北海道では一般的に行われていますが、これは最近になって始まったことです。
即日返しの場合は葬儀の当日に用意をするため、香典の金額に関係なくすべて同じ香典返しを渡します。
そのため、高額な香典の方には、後から追加でお返しの品物を届けなくてはなりません。
また、会葬御礼(葬儀に足を運んでくれた人に渡すお礼の品物。香典を出していない人にも渡します)と間違われて、香典返しを受け取らない人がでる怖れがあります。
ただ即日返しには遺族にとって大きなメリットもあります。
葬儀の当日に香典返しを渡せるため、遺族はスッキリできます。
四十九日法要が終わるまで香典返しを渡せないのは、やり残した仕事を持っているのと同じ気持ちになってしまいますし、あらためて後日、香典返しを手配して、届けるのは手間がかかって大変です。
葬儀の当日にすべて終われば、スッキリできるというのは、納得できますね。
先ほども紹介した通り、香典返しには無事にすべてが終わりましたと、お礼と報告をする意味がありますから、即日返しは本来の意味とは離れていると思われるかもしれません。
でも、葬儀の当日なら必ず手渡しできるため、お礼の気持ちをしっかりと伝えることができますし、葬儀会社の力を借りることもできますから、心強いと感じる人も多いでしょう。
香典返しの手配に慣れている人はあまりいませんから、これも大きなメリットです。
地域の風習があるので、必ずしも取り入れられないでしょうが、遺族にとってメリットが多い即日返しは検討する価値がありますね。
香典返しの金額!相場は半返し?それとも3分の1?
香典返しは香典の半額くらいの金額をかけるのが相場です。
かつては、葬儀が終わる頃には香典が半分ほど残ったため、その半分で参列者やお寺にお礼をしました。
これが香典の半額を香典返しとして渡すようになった由来です。
これは半返しと呼ばれており、関東地方の風習です。
関西では3分の1のお返しが一般的です。住んでいる地域により、香典返しにかける金額は変わってしまうため、香典返しの金額を決めるときには、周りの人に地域の風習を確かめる必要があります。
親族などは高額な香典をくださることがありますが、それには援助の気持ちが込められていますから、必ず半額を返す必要はありません。
金額にこだわりすぎると、相手の援助の気持ちを無駄にすることにもつながります。3分の1くらいの金額でもお返しには十分です。
即日返しにする場合の金額は、2千円から3千円くらいです。
これでは半返し(または3分の1返し)にならないという場合は、先ほど紹介した通り、後からお返しの品物を届けます。
即日返しで渡した品物と合わせて、半額(または3分の1)くらいになるように金額を調節してください。
香典返しにおすすめの品物!消え物って何?
香典返しには、消え物がよいと昔からいわれています。
食べ物や飲み物、洗剤などの食べたり飲んだり、使ったりするとなくなるものが消え物と呼ばれています。
反対に形が後に残るものや、華やかなもの、お祝いを連想させるものは、香典返しには向きません。
消え物は生活必需品が多いため、どんな人にも喜ばれます。また、消えることが不幸や悲しみが消えて、後に残らないことに通じると考えられて、香典返しに欠かせません。
お菓子やのりの詰め合わせ、コーヒーや紅茶、日本茶のセット、タオル、洗剤などは種類も多く、誰にでも喜ばれる消え物です。
タオルは使っても消えませんが、悲しみを拭い去るという意味を込めて贈れるため、香典返しによく使われています。タオルは劣化しやすく、頻繁に取り換えが必要なため、消え物の仲間として考えても差し支えありません。
即日返しのときは、葬儀の会場から自宅まで持ち帰ってもらうことを考えて、なるべく軽くて持ちやすい物をえらびましょう。
また食べ物や飲み物の場合は、個包装になっているものや、賞味期限の長いものがよいでしょう。
賞味期限の迫ったものは、早く食べるように(飲むように)急かされている印象を持たれてしまいます。
香典返しには自宅に持ち帰った後も、負担にならないものをえらぶ心遣いが欲しいですね。
受け取る相手の身になって考えると、どんな香典返しをえらべばよいのかが自然とわかってくるはずです。
マナーが大切!香典返しののしと水引とは?
香典返しは普通の贈り物とは違いますから、かけ紙をかけます。
のし紙と間違われることも多いですが、葬儀などの不祝儀の場合は、お祝いののしが付いたのし紙ではなく、かけ紙を使います。
水引は白黒(関西地方は黄白の場合も)で結びきりをえらんでください。
結び切りは、1度結ぶとほどけないため、結び直しができません。そのため、2度と起きてほしくない不祝儀のときに使われます。
表書きは、関西地方では「満中陰志」、神道やキリスト教では「偲び草」などと書くこともありますが、「志」と書くと間違いがありません。「志」は宗教、地域を問わずに使える表書きなので、覚えておくと便利です。
特別な理由がない限りは必ず誰からかわかるように、表書きの下に自分の名前を書きましょう。
宅配便などを利用して香典返しを届ける場合には、直接あいさつができませんから、お礼と報告のために、必ずあいさつ状を添えましょう。
葬儀に参列してくれる人は、その後のことも気にかけているはずです。
香典返しでは品物と同じくらい、あいさつ状は大切な存在です。
あいさつ状には、重ね言葉を使わない、季節のあいさつは入れない、句読点は使わないなどの約束事がありますから、少し気を付けて書きましょう。
まとめ
今回は香典返しを渡す時期について解説しました。
香典返しを渡す時期が早い理由、遅い理由についてよくわかりましたね。
おすすめの品物や、マナーについても説明しました。
渡す時期が早い場合も遅い場合も、心を込めてえらんだ品物をマナーを守って渡すように心がけてください。
香典返しは忌明けの日に渡すのが本来の姿でしたが、現在は葬儀の当日に渡す即日返しが増えています。
葬儀に関係することは、亡くなった人のために行いますが、生きている人間が大きな負担を我慢することはありません。忙しい葬儀のとき、どちらが正しいかではなく、自分がやりやすい方法で香典返しを渡すことができればよいですね。
自分に余裕ができれば、香典返しに一層お礼の気持ちを込めることができますね。
香典返し!渡す時期が早い場合、遅い場合、金額についても解説!
自分の身内が亡くなれば、誰でも経験する葬儀ですが、これはとても手間のかかる大変… 記事を読む