慌ただしい葬儀の最中にも、遺族は色々と考えなくてはならないことがあります。
香典返しはその中の1つで、大きな問題といえるでしょう。
まず香典返しの品物は何にするのか、
葬儀の当日に香典返しを渡すのか、四十九日法要が終わる頃に改めて渡すのか、ということから順番に決めていかなくてはなりません。
無事すべてをクリアしてからも、香典返しの包装にまで気を配らなくてはなりません。
前もって香典返しの包装をどうすればよいか、少しでも知識があれば、とても助けになります。
今回は、香典返しの包装について解説します。
「のし紙」と「掛け紙」の違い!香典返しに「のし」を使わない理由!
お中元やお歳暮など、改まった贈り物をするときに、のし紙を包装紙の上からかけることがありますが、香典返しに使うのは、のし紙ではなく掛け紙です。
のし紙と掛け紙は同じものではないかと思われるかも知れませんが、大きな違いがあります。
のし紙とは、贈り物の包装紙の上にかける水引と「のし」が印刷された白い紙のことです。
水引も「のし」も以前は印刷ではなく、実物(のしは和紙で作ったもの)を使っていました。
「のし」はアワビを薄く伸ばした縁起物で、お祝い事の贈り物に添えるものでした。
それがアワビから和紙でできたものになり、ついには印刷されるようになりました。
(水引の結び目の右上に印刷されている、変形5角形の模様が「のし」です)
つまりのし紙とは、お祝い事のときに使うものなのです。
水引は贈り物の包みにかける和紙でできた紐のようなもので、誰も開けていないという封印の意味や、魔除けの意味がありました。
現在ではお祝い事には紅白、葬儀などの不祝儀には黒白のように用途により、違う色の水引を飾りとして使っています。
香典返しは不祝儀ですから、「のし」の付いていない掛け紙を使うことになります。
水引は黒白(関西地方では黄白のことも)のものが使われます。
水引の結び方はこれ以上不幸が重ならないように、結び切り、またはあわじ結びになっています。
この結び切りとは、本結びのことで両側から引っ張っても、決して解けないため、二度と繰り返さないことを表すようになり、不祝儀のほかにも結婚式やお見舞いのときの結び方として広く使われています。
あわじ結びは古くから存在していた結び方で、水引の結び方の基本といわれています。
引けば引くほど固く締まり解けないため、結び切りと同様不祝儀だけでなくお祝い事にも使われる結び方です。
反対に蝶結びの水引は、何度も結び直しができるため、何度あってもおめでたい出産などのお祝いに使われるようになりました。
この結び方が不祝儀に使われることはありません。
名前の書き方!大切なのは、誰からの香典返しかハッキリさせること!
掛紙に印刷されている水引の結び目の下には、贈り主(香典返しを出す家・喪家)の名前を書きます。
書き方は、名字のみ、または〇〇家とします。
亡くなった方と、葬儀の喪主を務める方の名字が違う場合には注意が必要です。
特殊な例だと思われるかも知れませんが、決してそうではありません。
嫁いだ娘さんが亡くなった親の葬儀で喪主を務める場合もあります。
そのとき、嫁いで変わった名字をそのまま書いてしまうと、ややこしいことになります。
このようなときは、亡くなった方の名字を書きましょう。
一目包みを見るだけで、誰の葬儀の香典返しなのかが、はっきりとわかる方が香典返しを受け取る人には親切なのです。
香典返しの表書きに何と書く?「志」の意味とは
水引の結び目の上には、表書きを書きます。
表書きは、その贈り物の目的を知らせる役目があると考えるとよいでしょう。
香典返しの場合よく見るのは、仏式の葬儀を行ったときの「志」または「満中陰志」という表書きです。
「志」には、気持ちばかりのお返しという意味があります。
「満中陰志」の中陰は四十九日という意味です。
無事四十九日を迎え、故人は成仏しましたから、気持ちばかりのお返しをします、という意味が込められています。
ほかにも表書きには宗教や地域によって、「粗供養(そくよう・西日本で使われる)」、「偲び草(神式やキリスト教式)」、「茶の子(ちょっとしたお菓子の意味・粗品などと同じ意味)」などがあります。
最も一般的なのは「志」で、仏教以外の宗教でも使えますし、地域も問いませんから、これを使っていれば間違いないでしょう。
蓮の花の模様が入った掛け紙がありますが、これを使うのは仏式の葬儀だったときに限られます。
ほかの宗教のときは止めておくのが無難です。
自分で表書きや名前を書く場合は、毛筆や筆ペンを使いましょう。
色はもちろん黒色が最適ですが、最近は薄墨を使う人も増えているそうです。
香典には薄墨を使うことが浸透した結果ですが、香典返しの場合は、普通の黒色で大丈夫です。
掛け紙に表書きや名前を書き入れるのは緊張するものですが、何も書かないのは、マナー違反です。香典返しを受け取る人に心配をかけてしまいます。
決してそのようなことがないように、注意してください。
香典返しの掛け紙のかけ方!内と外の違いとは?
のし紙、掛け紙の掛け方には2種類あります。
品物に直接のし紙、掛け紙をかけてその上から包装する「内掛け(内のし)」と、品物を包装した上から、のし紙、掛け紙をかける「外掛け(外のし)」です。
2つの方法のどちらにもメリットがあります。
外からのし紙、掛け紙が見えない「内掛け」は控えめに感じるため、
香典返しなどの不祝儀に適しています。
包装紙で覆われるため、宅配便などを利用する場合でも、のし紙、掛け紙が傷みません。
一方、「外掛け」はひと目でのし紙、掛け紙が見えるというメリットがあります。
誰が何のために贈ったものか、わかりやすいのです。
お祝いごとのときは、見た目が華やかになることから「外掛け」を選ぶ人が多いようです。
直接持参して香典返しを渡す人なら、わかりやすい「外掛け」、宅配便などで配送してもらうなら「内掛け」を選ぶとよいでしょう。
知っていることが大切!香典返しの包装について知っていることのメリット
実際、香典返しを贈る側になったとき、何もかも自分でやる人はいないでしょう。
ネットショップには、香典返し専門のショップがありますし、カタログギフトでも香典返しを扱っているところはたくさんあります。
デパートなどから配送する方法もありますが、どこで香典返しを購入するにしても、包装紙、掛け紙から挨拶状まで用意してもらえるし、表書きや名前もすべて印刷してくれます。
これで香典返しを贈るときの負担は格段に減るはずです。
頼み方さえ間違えなければ、何の問題もなく香典返しが揃いますが、表書きを何にするか、名前はどのように入れるのか、掛け紙は内と外のどちらにかけるのか、決めるのは贈り主です。自分が何も知らないと、自信を持って頼むこともできません。
確かに香典返しを販売する人たちは、プロです。わからないことを聞けば教えてくれるし、こうしたらよいとアドバイスはしてくれます。
でも最終的には自分がきちんと決めて、それを伝えなくては、何も始まりません。
いうまでもありませんが、香典返しの届け先の住所リストなどは、自分できちんと整理しておくことが必要です。
どんなプロでも住所が不完全では、香典返しを送ることはできません。
香典返しの掛け紙の表書きや名前の書き方についてきちんと知っていることは、プロの手を借りるときでも、任せきりにしないことにつながります。
葬儀に来ていただいたことへの感謝を表す香典返しですから、任せきりにせず、自分の意志を反映しながら贈りたいですね。
祝儀、不祝儀については地域によっても違いがあります。
ネットや本で調べたことすべてが、日本のどの地域にもあてはまるとは限りません。
家族やご近所など、昔からのことを知っている人がいるなら、
ぜひ、話を聞いてみてください。きっと喜んで教えてくれるはずですよ。
まとめ
今回は香典返しの掛け紙について解説しました。
香典返しに「のし」を使わない理由がよくわかりましたね。
水引の色や結び方、表書きや名前の書き方についても詳しく説明しましたから、
これから役に立つことがあるでしょう。
誰でも1度は葬儀を行い、香典返しを贈る日が来ます。
縁起でもないと思われるかも知れませんが、こればかりは仕方のないことです。
かつてお釈迦様もいっておられましたが、葬式を出したことのない家はないのです。
まだ葬儀を行ったことがない人は、これから必ずその機会があります。
小さなことですが、今日香典返しについて知ったことは、いざというときの助けになるはずです。
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