風鈴と聞くと夏を思い浮かべる人が多いでしょう。四季のある日本では、夏と共に風鈴の音が聞こえ風情を感じます。
では、なぜ夏になると風鈴を飾るのでしょうか?ここでは、風鈴の起源から、なぜ夏に飾るのか、正しい付け方まで、風鈴のアレコレを詳しくご紹介します。
風鈴とは一体どんなもの?
風鈴とは、家の軒先などに吊るす鐘鈴で、風が吹くと音が鳴る仕組みになっています。
風鈴は主にガラスや陶器、金属でできていて、お椀型をひっくり返したようなものに、紐などを付けて音が鳴るようにしています。
お椀型の縁部分に「舌(ぜつ)」という部品を付け、舌が当たることによって音が鳴るようにしているのです。
また、舌から伸びる紐には風を受けやすいように短冊が付けられています。
形や色、素材も大きさも様々なものが存在し、ひとつひとつ微妙に音色が異なるのも風情があります。
外国人観光客にも人気のお土産で、日本でしか手に入らないウインドベルとして喜ばれています。特に和柄の模様が人気です。
風鈴の起源はなに?
日本の夏によく目にする風鈴ですが、その起源は中国にあります。
中国では昔、「占風鐸(せんふうたく)」と呼ばれる占いがあり、竹林に吊るした青銅製の風鈴の音で吉凶を占っていました。
占いがされなくなってきてからも、風鈴の音がしていると災いが起きないといわれ、寺の四隅に飾られてきました。
その後、起源である中国から日本へ伝わり平安時代には貴族が住む屋敷の軒先に吊るされていました。鬼門に吊るしておけば、強い風が運ぶ魔や疫病、災いなどを払うとされてきました。
日本に伝わったのは青銅製の風鈴でしたが、19世紀に江戸でガラス細工が盛んになると、ガラス製のものが主となってきました。
風鈴の季節はやはり夏!?
風鈴は夏の風物詩と考える人がほとんどだと思いますが、それは何故なのでしょうか?
風鈴が日本に伝わった当初、夏には気温や湿度が上昇し、カビや雑菌なども繁殖しやすく疫病も広がりやすく、災いが起こりやすいと信じられていました。
そのため、厄払い、暑気払いの意味を込めて温かい季節には軒先に音の鳴る風鈴を吊るすことが定着していったのです。
それ以外にも、人間の脳科学的に風鈴で涼しくなることが証明されています。
人は、風鈴の高い音を聞くと、「風が吹いている」と錯覚し、脳が末梢神経に体温を下げる指示をします。
それにより、身体が涼しくなるのです。この現象は、脳の思い込みにより起こるものです。
日本人は、「風鈴=風の力で鳴るもの」と知っており、風鈴の音は風が吹くことでするものだと知っています。
だからこそ、風鈴の音がするのは風が吹いていて、涼しいとイメージできるのです。このイメージを持てない小さな子供や外国人にはこの現象が起こりません。
更に、風鈴の音にはリラックス効果を促す「1/fのゆらぎ」があります。
リラックスに必要なα波を誘発し、心を落ち着けてくれるのです。夏の暑い時期にリラックスや癒しの効果を与え、興奮状態を冷ましてくれる力があるのです。
このように、風鈴が持つ力は、冬場よりも夏場に発揮されるのです。
風鈴の音は迷惑になるの?
夏の風物詩といわれる風鈴ですが、風情を感じる一方で生活騒音として迷惑になる場合もあります。
実際に風鈴の音に対して苦情を言われたことがある人もいるかも知れません。
音などには好みがありますので、自分の好まない音で隣家の風鈴が四六時中鳴りっぱなしだったら、確かにうるさいと感じてしまうかも知れません。
商業地区でお店が建ち並んでいるような場所であれば、多少の音は気にならないでしょう。
でも、閑静な住宅街や、何戸もの世帯が入居しているマンションやアパートでは迷惑と感じる人もいるのです。
夜勤で日中はゆっくり休みたい人もいますし、生まれたばかりの赤ちゃんの睡眠を邪魔されたくない人もいるでしょう。
生活リズムも多様化していて各家庭で様々な事情がありますので、自己満足で常に風鈴を掲げておくのは控えた方が良さそうです。
それでも風鈴を楽しみたいというのであれば、お祭りの日だけ飾るようにする、室内に飾るなどの工夫も必要です。
風鈴の音は舌と素材で変わるため、舌部分を柔らかい布などで覆い、音を小さくする工夫をしている家庭もあります。近頃は、音の小さい風鈴も販売されています。
なににせよ、風鈴のせいでご近所トラブルになるのは避けたいものですね。
風鈴の素材で人気なのは?
古代中国から青銅製の風鈴が我が国へ伝わりましたが、現在では様々な素材で風鈴が作られています。
鉄や銅の金属、陶器、ガラス、木、水晶などの素材で作られていますが、
その中でも有名なのは、岩手県の南部鉄器で作られた南部風鈴、富山県の伝統産業である高岡銅器で真鍮製の高岡風鈴、神奈川県の小田原鋳物で砂張製の小田原風鈴などです。
これらは金属製で、風に吹かれるとリーンリーンという音が長く鳴り響きます。
ガラス製のものも多く、諏訪ガラスや琉球ガラスなど有名なガラス細工で作られています。
日本の有名なガラス細工になると価格も高くなってしまうので、一般的に流通しているものは、中国などで安価に大量生産されたものも多いです。
ガラス製の風鈴は、チリンチリン、カランコロン、コンコンと短く細かく鳴ります。
珍しいものでは、兵庫県の伝統工芸である明珍火箸を使った火箸風鈴があります。火箸を2組吊るし、その真ん中に舌を吊るしたものです。
通常の風鈴とはまた異なる華やかな音色を聴くことができます。
大分県の別府で作られる別府竹風鈴は、南部風鈴を竹籠で包んであります。
和歌山県の紀州備長炭を使用し作られる備長炭風鈴は、墨の大小で音色が変わります。2つとして同じ音が無いのも面白いと言われています。
福島県の会津地方では、会津クリスタルを使用した風鈴が作られています。伝統工芸である会津焼きとクリスタルを合わせて作られています。
サヌカイト風鈴は、讃岐地方で採れる黒い石を使用しています。サヌカイトとは、火山活動でできた岩で、石器時代から存在していたといわれています。
沖縄では、パイプウニというウニを使用してパイプウニ風鈴が作られています。
有名な陶磁器の有田焼や九谷焼で作られる風鈴もあります。
色や形、音も様々なものがありますので、自分好みのものを見付けたり、コレクションしても楽しいかも知れません。
風鈴の祭りがある!!
夏になると全国各地で風鈴のお祭りが行われています。
毎年7月に、神奈川県の川崎大師では風鈴市が開かれます。5日間に渡り行われる祭りで、日本各地の風鈴が販売され、全国各地から千種類近くもの風鈴が集まります。
また、この風鈴市では数量限定で風鈴型の開運お守りが販売されます。通常のお守りの形とは異なるため、風鈴型を手に入れたいと希望する人も多いようです。
埼玉県の川越氷川神社では、縁結び風鈴のイベントはが行われます。風鈴に付いている短冊に願い事を書き、天の川に恋の願いを届けるというものです。
奈良県のおふさ観音では、夏に2ヶ月もの間風鈴祭りが開かれます。全国から2千5百個もの風鈴が集められ、境内を彩ります。
愛知県豊田市の小渡町では、町おこしの一環で風鈴祭りが行われています。町内にはおよそ5千個の風鈴が飾られます。
福岡県の如意輪寺では、6月~9月頃まで風鈴祭りが行われます。参道から境内まで風鈴が飾られています。
ご紹介した場所以外でも、まだまだ沢山の風鈴祭りがあります。
夏の思い出作りに足を運んでみてはいかがでしょうか。
風鈴の正しい付け方は?
風鈴には正しい付け方があるのでしょうか。
軒先や窓辺など、比較的に高い場所に付ける物のため、落下を防ぐために安全な付け方をしたいものです。
外に付けておくと、騒音などで迷惑を掛ける以外にも、風で飛ばされ通行人などに当たるなど、危険が伴います。
そのため、できるだけ家の内側に付けるようにします。家の中に吊るす場合は、扇風機やエアコンの風が当たる場所にしておくと、程良く鳴りますので夏らしさが演出できます。
カーテンレールなどにS字フックで取り付けても良いですし、壁や天上にヒートンを付けても良いでしょう。
また、玄関などに付ければ、開閉時に鳴りますので、防犯対策にもなります。
まとめ
風鈴は、元々は中国から伝わった青銅製のもので魔除け・厄除けのために軒先に吊るすものでした。
現代では、夏に涼を得るために使うことがほとんどです。風鈴に馴染みの深い日本人は、風鈴の音を聞くだけで涼しくなるのです。
取り付け方によっては、風鈴の音が他人の迷惑になることがありますので、使用には注意が必要です。家庭内だけで楽しむのが一番です。
また、全国各地で風鈴祭りというものが行われていますので、夏の思い出作りに出掛けてみても良いかも知れませんね。