1年で最も寒い季節である2月ですが、立春が過ぎると気持ちは春へと向かいます。
立春が終わるとすぐにやって来るのが「雨水」です。
天気予報でも取り上げられることが多い雨水ですが、立春の後に雨水という文字を見ただけで、乾ききった大地に春の雨が染み込むのを想像できます。
雨水というのは、季節が春へと動いて行くのを感じる名前です。
今回はこの「雨水」の意味や主な行事について解説していきます。
「雨水」の読み方と意味!「雨水」が大切にされた理由とは
雨水は立春の次、二十四節気の2番目です。
読み方は「うすい」です。
文字から見てわかるように、雪ではなく雨が降って大地を潤すという意味があります。
現代の暦では2月18日か19日のことが多いようです。
期間としての雨水は3月5日頃までですから、雛祭りが雨水の期間の主な行事ということになります。
昔の人たちにとって、雨水は農作業の準備を始める時期でした。
徐々に春が近づき、作業がしやすくなる季節が来たということもありましたが、かつては寒中には、立春までに冬土用という日があり、農作業をしてはいけないといわれていました。
これは土公神という土を司る神様が、季節によって居場所を変えるためで、冬の間は庭の土にいらっしゃるため、土をいじってはならないとされていました。
やっと農作業の準備ができる日が雨水だったわけです。
江戸時代には本格的な作業が始まる前に、お伊勢参りに向かう人たちも多かったようです。
寒さが緩んでくるために、旅もしやすくなったのではないでしょうか。
もともと二十四節気は、農業など外で仕事をする人たちが、季節の移り変わりを敏感に察知するために使われるものでした。
現在でも農業に携わる人や、ガーデニングを楽しむ人は多いでしょうが、雨水というのは春の作業を控えて、準備を始める1つの基準点になるのではないでしょうか。
お伊勢参りに行った江戸時代の人たちのことを思って、旅行に出かけてみるのもよいかも知れませんね。
知らなかった!「雨水」と雛祭りの関係!
雨水で農作業の準備が始まることからもわかりますが、農作業には水は欠かせないものでした。
雨は人間に実りをもたらしてくれますが、反面水害の原因となったりもします。
このため世界中で雨は、神様からのサインとして人々に怖れられていました。
日本では雨で水がもたらされることから、水の神様が信仰されるようになりました。
水の神様で代表的なのは「ミズハノメ」という名前の女性の神様です。
この名前には水が走る、水が這うという意味があります。
井戸を掘ることもかなわなかった昔の人は農作業だけでなく、生活全般で湧き水や川の水、雨水を当てにするしかありませんでした。
ミズハノメは、人間に豊かな実りをもたらしてくれる大切な神様だったのです。
豊かな実りをもたらしてくれるミズハノメは次第に大地の母のような存在になり、いつしか安産や良縁の神様としても信仰されるようになりました。
雨水の時期の主な行事は雛祭りですが、雛祭りと水の神様にもある関係が生まれました。
雨水の日に雛人形を飾ると、水の神様のおかげで良縁に恵まれるという言い伝えができたのです。
雛祭りももともとは、人形にその人の穢れを移して水に流すものでしたから、水に深い関係があるわけです。
水の神様が関わってくるのも理解できますね。
家族に女の子がいる場合、雛人形を雨水の日に飾ってみてはいかがでしょうか。
また、水のありがたみを考えるのは、真夏の水不足が指摘されたときが多いのですが、雨水の日に私たちにとって欠かすことのできない水について、考えるのもよいのではないでしょうか。
数は少ないようですが、農業を守って下さる神社の摂社や末社には、ミズハノメ神が祀られていることがありますから、お参りに行ってみましょう。
東京都江東区の亀戸水神宮の御祭神はミズハノメ神です。
「雨水」の時期の主な行事は雛祭り!だから雛あられが気になる!
雨水の時期の主な行事は雛祭りですから、雛祭りに関連した食べ物が気になりますね。
雛祭りといえば、菱餅と雛あられですが、どちらかといえば雛あられのほうが親しみやすいお菓子ではないでしょうか。
雛あられには3色のものと4色のものがありますが、それぞれに由来があります。
3色の雛あられは、菱餅と同じ赤・白・緑の配色になっています。
赤は生命、白は雪の大地、緑は萌え出る木々の葉を表すといわれています。
3色でこの世のすべてのエネルギーを表しているわけで、女の子が健やかに成長できるようにとの願いを込めています。
4色の雛あられは、赤・白・緑に黄色がプラスされています。
赤は春、緑は夏、黄色は秋、白は冬を表しています。
1年の四季を表すことで、1年を通じて女の子が幸せに成長するようにとの願いを込めています。
この雛あられは、実は菱餅をくだいて作ったのが始まりだといわれています。
かつては「雛の国見せ」という、今でいうピクニックのような行事が行われていました。
名前の通りに、お雛様にも外の世界を見せてあげよう、という目的でお雛様を外に持ち出したのですが、そのときに菱餅では食べにくいということで、雛あられを作りました。
だから、雛あられは菱餅と同じ配色で作られていることが多いのです。
今ではスーパーなどでも手軽に買うことのできる雛あられですが、こうして由来を知ってみると、雛あられにも大きな願いが込められていることがわかります。
家庭に小さな女の子がいなくても、暦で雨水の文字を見付けたら、お茶の時間に雛あられを用意してみてはいかがでしょうか。
「雨水」が野菜を美味しくする?新鮮な春野菜を味わおう!
雨水の時期になると、明らかに空気が変わってきます。
冬のカラカラだった空気が湿り気を帯びてくるのです。
スーパーに並ぶ野菜にも変化が出てきます。
変化がわかりやすいものに、キャベツがあります。
冬に売られていたキャベツはちょっと平たい形をしていますが、雨水の頃から店頭に並ぶキャベツは盛り上がった形をしていて、春キャベツと呼ばれます。
冬のキャベツに比べると、柔らかくみずみずしいのでサラダにして食べても美味しいものです。
冬のキャベツと春キャベツは種類が違うので、種まきの時期も収穫時期も全く違います。
冬キャベツは巻きが固く重さのあるものがお買い得ですが、春キャベツは巻きがふわっと柔らかく、持ったときにあまり重過ぎない方が、美味しいそうです。
ほかの時期の野菜と違い、雨水の時期から並ぶ新しい野菜の美味しさは、どれも水分が決め手になっているようです。
肌の乾燥や荒れが急に気にならなくなるのも、この雨水の時期からです。
水の恩恵を身の回りで感じることができるのも、雨水の時期の特徴だといえるでしょう。
主な行事は雛祭りだけじゃない!「元宵節」が気になる!
日本では雨水の時期の主な行事は雛祭りくらいですが、
中国では元宵節(げんしょうせつ)という日本の小正月に相当する行事を行います。
台湾のランタン(提灯)フェスティバルも元宵節の行事の1つです。
とにかくたくさんのランタンを灯すお祭りです。
昔、天から舞い降りた鵞を人間の猟師が傷つけたことに神様が激怒して、正月15日に人間界を焼き払う計画を立てました。
それを気の毒に思った1人の仙人が、正月15日には各家で松明を燃やすようにと人間たちに伝えました。
正月15日に松明の灯りを見た神様は、仙人の思惑通りに人間界は焼き払われたと勘違いをしました。
こうして人間たちは難を逃れることができたのです。
これが元宵節の由来で、人間たちはそれから毎年難を逃れるために、各家にランタンを灯すようになりました。
この元宵節は実は長崎でも行われています。
長崎は古くから中国文化の影響を強く受けており、中華街もあることから母国の春節や元宵節を懐かしく思う人たちのために始められたそうです。
元宵節に食べられる元宵という名前の団子を振る舞う寺院もあるそうです。
この元宵という団子は、幸福を願って食べるそうで、丸い形は満月をイメージしているといわれています。
私たちも1月の小正月のときには、忙しい年末年始を過ごしてきて、少し疲れが出たりします。
雨水の時期もそれと同じで、寒さに疲れた体と心を少し休ませてあげたいものです。そんなときに元宵のような甘くて縁起のよい団子があれば、嬉しいですね。
まとめ
今回は「雨水」の意味や主な行事について紹介しました。
昔の人たちが農作業の準備を始める目安にした雨水を、私たちも引き継いで農作業やガーデニングの準備をするために活かして行きたいですね。
また水の神様が関係している雨水ですから、水の大切さを考えるためのよい機会にしてください。
水の神様のご利益にあやかって、お雛様を飾るのもよいですね。
中国の小正月・元宵節にも出かけてみたいです。
中国は少し遠いですが、長崎のランタンフェスティバルなら、何とか出かけられるのではないでしょうか。
これから本格的な農作業が始まり、様々なものが生み出される季節になります。
これから始まる春に向けての期待が高まる「雨水」をぜひ、じっくりと味わってくださいね。